ブロックチェーン技術が広く認知されるようになった現在、NFT(Non-Fungible Token)の活用事例もますます拡大しています。そんな中、多くの企業やプロジェクトで「NFT会員権」を採用することでPR効果や顧客の囲い込みを狙った方法が注目を集めています。
NFT会員権には、"保有するだけで"さまざまなメリットを享受できるという特長があり、数が限定されていることで顧客は優越感を得たり、売却することもできます。こうした点から、新たなビジネスチャンスとして国内でもさまざまな分野において導入が進んでいます。
そこで今回は、NFT会員権の実用化について、その概要や実例、今後の展開などを詳しく解説していきます。
その他のNFTを活用したPR事例は「NFT(画像・動画)をPR施策にどう活用するのか?参考事例も交えて解説」がおすすめです。
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会員権付きNFTとは
NFT会員権は、発行元の会員であることを証明できる、この世にひとつだけのデジタル会員権のことです。
通常の会員制度では、レストラン等の実店舗が発行したカードや紙といった実物の会員権や会員証が会員の照明になりますが、この実物の会員権をNFT化することで、実体のある店舗以外にWebサイトのログインやWeb上で会員のみが受けられるサービスなど幅広く利用できます。
そもそも、NFT(Non-Fungible Token)は作成者や保有者、取引履歴などが記録された証明書であり、NFTにブロックチェーン技術を利用することで、デジタルデータの改ざんやコピーを防げるため、NFTが付与されたデジタルデータは1点ものであることを証明できます。
つまり、NFTを付与した会員権は世界にひとつしかないため、会員情報の管理やセキュリティ管理に適しているといえます。
2022年4月には、NFTやMetaMask(仮想通貨を保管できるウォレット)を利用しログインやサービスの利用を可能にした、NFT×オンラインサロンシステムが日本初のIT導入補助金に認定されたことでも大きな反響がありました。
このIT補助金は、中小企業や小規模事業者が政府によって推進されているDX化やデジタル化を進める上で活用できることですが、この制度内にNFTが要件に認められたため、今後、このNFT会員権を導入しIT化を図るサービスなどがさらに増えることが考えられます。
会員権付きNFTのメリット
不正使用を防げる
前述した通り、NFTはデータの偽造やコピーができないため、改ざんや乗っ取りなどの不正使用を防止することができます。
これまでのデジタルデータは簡単にコピーや改ざんが行えたため、唯一無二を証明できず会員登録やログインに利用できませんでした。
しかし、ブロックチェーン技術を利用することで作成者や保有者、取引履歴などの情報が記録され、改ざんといった不正使用を防げます。
そのため、例えば入退室管理や有料サービスの加入証明にという会員特典にNFTを利用することが可能です。
販売ができる
NFT会員権は、NFTマーケットプレイスなどで自由に貸し出しや販売が行えます。
通常、サービスを受けるには会員登録が必要ですが、NFT化した会員権にサービスを受ける権利を付与することで、その権利の貸し出しや販売ができるようになりました。
必要なときにNFT会員権を購入し、不要になればNFT会員権を販売できるため購入のハードルが下がると考えられます。
さらに、発行数が少なく希少価値の高いNFT会員権を保有している場合は、高額転売で稼ぐこともNFT会員権の特徴です。
希有性の向上
会員権をNFT化することで、この世にひとつしかない会員権を保有できます。
そのため、NFT会員権を保有する会員やファンは特別感を感じられ、お店やサービスに対する愛着や親密度といったエンゲージメントを高めることが可能です。
エンゲージメントが高まれば、NFT会員権を転売することなく保有し続ける可能性が高くなるため、流動性が低くなりNFT会員権の希少価値がさらに上がる可能性もあります。
また、NFT会員権は現実世界とWeb上の両方で活用できるため、リアルイベントやバーチャルイベントを融合させたイベントを行えます。
会員権付きNFTの事例
ここからは、会員権NFTを活用した事例をご紹介します。
「Forbes」
Youtube等のサービスで、有料にすることで広告を非表示にする有料サブスクリプションに入っている方も多くいるのではないでしょうか。
その「広告非表示」をNFTの会員特典にしたのが、世界的な経済誌のForbesです。
「オンライン記事を読むときに広告を表示させない」という機能を付与した会員権をNFTとして販売しており、このNFTはイーサリアムで購入でき、他人への転売もできます。
通常だと、広告非表示が必要なくなれば、ユーザーは「お金を払わない」という選択肢を取りますが、NFT化しているForbesの購読者は、「他人に権利を転売する」という今までにない選択肢を取ることが可能になります。
会員権の母数が限定的のため、その権利の価値は今後向上するとみられ、「広告を非表示にする」ことに対して投機的な側面を見出した特徴的な会員権となっています。
また、権利の二次流通が可能で不要になった段階で転売できるため、会員権の購入ハードルが下がるとされています。
参考:フォーブス誌が会員権を仮想通貨ETHで販売 NFTトークン化で転売が可能に
会員権バー「CryptoBar」
2022年5月8日に、日本初のNFTを会員権としたバー「CryptoBar」が、東京銀座にオープンしました。
クリプトという旗印のもと、様々な分野のスペシャリストが集まるよう、CryptoBar P2Pでは様々な仕掛けを用意。
専用のNFT会員権を公式サイトで発行した人か、その同伴者、もしくは店頭でBitcoinのLightning決済やEthereum等の暗号資産の送金を行える人だけがBarに入店できるシステムですが、このシステムはお店に入るために技術的なハードルを設けることで、自然とクリプトに一定以上の知識や興味を持った人が集まるためのものです。
またNFTや暗号資産決済を社会実装するための実験的な試みという一面もあり、現在は起業家、ブロックチェーン関連事業者、VC、エンジニア、個人投資家が多く来店している様子です。
参考:NFT会員権を用いた日本初のBarが東京銀座にOpen!
「HANEUMA Membership」
「HANEUMA Membership」では、イタリアに拠点を置く高級スポーツカーメーカー「Ferrari(フェラーリ)」が展開する「Spider(スパイダー)」に特化したNFT会員権を取り扱っています。
具体的な特典内容としては、毎月30km(12時間以内)の利用権利が付与され、使用料金などが一切発生しないほか、毎月の維持費は5,000円というかなり格安な設定となっており、この費用の中には対人・対物・車両保険代金・駐車料金・整備費用などが含まれているということです。
このように、HANEUMA Membershipはなかなか手の届かない高級車Ferrariを比較的身近に感じられる、画期的なNFTサービスとなっています。
NFT会員権発行プラットフォームについて
近年、NFT会員権を比較的シンプルな手順で発行できるプラットフォームが誕生しており、NFT会員権のさらなる普及に貢献しています。
具体的には、日本最大級のNFTマーケットとして知られる「HEXA(ヘキサ)」などが挙げられ、関連法令をしっかりと確認し、適法スキームで発行することを前提として、一定の審査基準をクリアしたプロジェクトがプラットフォーム上でNFT会員権を発行することができるということです。
これまで、NFT会員権の発行に当たってはさまざまな法令の調査や検討などが必須となっており、参入ハードルが比較的高いことが懸念されてきました。
しかし、NFT会員権の発行ができるプラットフォームが誕生したことによって、企業やプロジェクトがこれまでよりも気軽にNFT会員権を取り扱うことが可能になったというわけです。
ここでは、2つを紹介します。
HEXA
3名の日本人によって創業されたメディアエクイティ株式会社によって、2019年にリリースされ、HEXAメタバースやPlay-to-earn機能など、NFT取引に留まらないプラットフォームを目指しているサービスです。
「日本円だけで簡単にNFTを発行・売買することができる」点が特徴であり、仮想通貨決済に加えてクレジットカード決済にも対応しているため、パソコンやスマホから簡単にNFTを購入することができます。
また、アカウント作成も非常に簡単で、Twitterアカウントを持っていれば「Twitterアカウント認証」で簡単にアカウントを作成することが可能、仮想通貨やウォレットは一切不要で、すぐにNFTを購入・売却したり、発行したりすることができるように設計されています。
neut
「neut(ニュート)」は、株式会社Pictors & Companygaが2023年1月にプレオープンさせたデジタル会員権プラットフォームです。
ホテルや別荘など人生を豊かにするサードプレイスを共同所有することができるデジタル会員権を探したり、買うことができるプラットフォームであり、NFTを活用し、これまでアナログだった会員権がオンラインでより簡単に自由に売買することができるようになります。
会員になると、対象のホテルを毎年決められた日数使うことができ、不動産購入のように面倒な手続きや管理をせずに、祝日など予約が取りづらい日程に優先的に宿泊できたり、会員ならではの優待サービスを受けることができます。
これまでのリゾート会員権は、仲介業者に高額な手数料を払って売却を依頼する必要があったが、NFTの特徴を活かし、neutでの会員権は、いつでも自由に売買/譲渡が可能。
会員権第一弾として、伊豆の海を望める一棟貸切ホテル「PLAYLIVING IZU」の会員権が今年の春に販売開始とのこと。
会員権付きNFTを発行する際の注意事項
会員権付NFTは、前述の通り二次流通が可能な点が特徴です。しかし、逆に二次流通が可能になるが故に、法律的観点から大きく二つの点に注意する必要があります。
資金決済法に該当しない内容であること
資金決済法第3条第1項に定められている「前払式支払手段」に該当しない内容であることを確認することが必須です。
前払式支払手段とは、
- 金額等の財産的価値が記載・記録されていているもの
- 対価を得て発行されているもの
- 物品購入や役務提供の代金として利用できるもの
であり、原則として金銭による払い戻しが禁止されています。
典型的な例は、デパートなどの商品券が挙げられます。
暗号資産との共通点や相違点ですが、NFTとの関係では、どちらも物品購入や役務提供の代金として利用するためのものですが、
- 暗号資産:不特定の者に対して使用可能
- 前払式支払手段:特定の者に対して使用可能
という区別をすることが重要です。
景品表示法を遵守すること
会員権付きNFTを保有している人だけに何かが当選する、または会員権付きNFTを保有している方は当選確率が上昇するといった付加価値を付けることは禁止されています。
NFTの性質上、自由な販売価格で転売が可能となりますので景品表示法上の制限を満たすことが難しい(抽選期間の当該NFTの販売金額と単価が当選タイミングで適応されるためほとんどのケースで難しい)ため、上記のような特典を付与する場合、景品表示法違反や、場合によっては賭博に該当する恐れがあるため、発行者様にて罪に問われる可能性があります。十分お気を付けください。
会員権付きNFTの今後の展開
NFT会員権を導入したレストランやコミュニティ、サービスを提供している企業は国内外で増え続けており、今後もその流れは加速すると思われます。
NFT会員権の最大のメリットは、二次流通が可能になる点です。これを極端な言い方にすると、ユーザーにとってのメリットが追加するだけで、通常の会員特典の内容は変わらないということです。
発行元は、会員特典をNFT用に追加・変更する必要はなく、従来の特典のままNFT化で二次流通の要素が追加されます。もちろん導入コストやシステムには細心の注意が必要でしょう。
しかし、特典の中身ではなく仕組みを変えるという意味では、どの企業も参入検討は可能です。
例えば、多くの人が持っているポイントカードをNFT化して、NFT会員権にポイントを貯めるサービスが考えられます。
NFT会員権であればポイントカードを持ち歩く必要がなくなり、利用するときはスマホをかざすだけ、といったことが可能です。従来の方法でもすでにそのような仕組みはできています。
ただ、NFT会員権であれば、さらにポイントが貯まったNFT会員権が売却できる仕組みも作れます。
使い道がなかったポイントを売却して利益を得る、といったポイント管理の新しいあり方も出てくるのではないでしょうか。
他にも、NFT会員権に運転免許証や健康保険証などの情報を一体とする機能や、NFT会員権をスキャンすれば住民票などの書類を発行できるサービスが考えられます。
NFTを会員権に活用するPR施策についてのまとめ
NFT会員権は保有しているだけで現実世界におけるさまざまなメリットを享受できるほか、ほかのデジタルアセットと同様、簡単に取引できるという機能性の高いNFTとなっています。
最近では、今回紹介したホテルの宿泊権をはじめとする多種多様なNFT会員権が展開されているため、この機会に自身の興味のあるプロジェクトを見つけて、そのNFTをゲットすることでさまざまな特典を享受してみてはいかがでしょうか。
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