アニメーション動画制作を依頼することを考えた時、多くの方が「予算はどれくらいかかるのか」「品質は保証されるのか」「どの会社に依頼すればいいのか」といった疑問を抱えています。
特に、初めて外注依頼する場合、制作が始まったあとに見積もりを超えてしまわないか、納品物の品質が思ったものと違うことにならないかなど、不安な点は尽きません。だからこそ、あらかじめリスクを想定しておき、正しい方法で進めていくことが大切です。
アニメーション動画の制作を失敗せず進めるコツは、適切なディレクター選びにあります。期待通りの納品物に仕上げるためには、コミュニケーションと事前の計画が不可欠です。例えば、自社しか知らないような顧客の情報や重視する考え方などを伝え、丸投げし過ぎないことが大切です。
また、依頼先を個人または制作会社のどちらにすると失敗リスクが少ないかは、重視すべきことや目的によって変わるため、目的も明確にしておくと良いでしょう。
例えば、アイデアに行き詰まっているのか、明確なシナリオは持っていてもリソースが足りないのかで、選択が変わるためです。さらに、予算管理や納期の設定に注意を払い、予期せぬトラブルに備えることも大切です。
そこで今回は、アニメーション動画制作を外注依頼する際のリスクと、その対策について解説していきます。さっそく、どのようなリスクがあるかを見ていきましょう。
企画方法については「アニメの企画ってどうやるの?実は企画書のフォーマットは重要ではない理由をアニメ会社の視点から解説します」がおすすめです。
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<記事のポイント>
・アニメーション動画制作を外注する際のリスクが分かる
・アニメーション動画制作の依頼先ごとの違いとリスクが分かる
・制作依頼する際のリスクを回避する重要な観点が分かる
・なぜ目的を決めておくことが重要なのか分かる
アニメーション動画制作を外注依頼する際に起こりやすいリスクと原因
新しいことを始める際など外部の専門的知識を活用したり、社内の人件費を抑えたりできるメリットのある外注活用に関して、こんなリスクもあります。考えられるリスクはいくつかありますが、多くが技術的な問題で起こっているわけではなく、「ディレクターとのコミュニケーションの問題」だと言えます。
コミュニケーションの問題によって発生するリスクには、以下のようなことが挙げられます。
- イメージしていた品質(クオリティ)ではなかった
- 要望が反映されていなかった
- 予定通り納品されなかった
- 見積もりの金額を超えてしまった
納期の問題はよくあるケースですが、技術力が足らずに遅れることよりも、依頼主が「要望を満たせていないから修正しなければならない」と思うからこそ、予定通り進まず納期に遅れるという流れで起こります。
このように、ディレクターとのコミュニケーションがもっとも大切な部分なのです。
それぞれのリスクについて、詳しく見ていきましょう。
ディレクターに必要なのは専門知識を持った依頼主の代理としての役割
外注先は、依頼したい業務の専門家であり、制作ツールも年々進化しています。そのため、技術が足りないことよりも、全体を管理するディレクターが問題の原因となっているケースがほとんどです。
特に、社内に足りない専門的な知識を補完できるものの"社員ではないことによる弊害"が生まれます。つまり、自社の社員ではないことが原因で、当然知っていることを知らなかったり、制作技術についてしか知らないことで、意図を汲み取れないのです。
こうして、「思っていたものと違うものが納品されてしまった」といった事態を引き起こすのです。
重要なポイントは、ディレクターは制作者ではなく依頼主に代わって全体に一貫性を持たせて管理・進行できるか?です。そのためには、依頼主にとっての顧客が「どのような内容なら興味を持つか」「どこでその動画を視聴するのか」といったことを考え、その一貫性を持って各クリエイターを導くことが大切です。
上述の点を考慮すると、単に制作だけをしてくれる外注先よりも、社内のノウハウが溜まるようにアドバイスをくれて、方針に沿って進めてくれるパートナーのような依頼先を見つけることが大切になります。
イメージしていた品質(クオリティ)ではなかった:テイストの選定ミス
当社に相談される依頼主から話を聞いてきた中でも、外注したアニメーション動画が依頼主のイメージと異なることは、非常によくあるリスクです。これにより、ブランドメッセージが視聴者へ伝わらなくなったり、ターゲット以外の視聴者ばかりが集まってしまう恐れがあります。
このリスクは、単純な技術力不足である場合もありますが、多くが制作会社とのコミュニケーション不足、任せる部分と指定する部分の間違い、または制作過程での誤解から生じることが多いと言えます。
具体的には、キャラクターデザインやストーリー展開、色使いやシーンの魅せ方などが依頼主の期待と異なる結果になる可能性があります。この結果、最終的な動画がブランドのメッセージや目的に合致しない場合があります。
要望が反映されていなかった:意図の汲み取りミス
外注したアニメーション動画が、依頼主の具体的な要望やフィードバックを反映していない場合もリスクとして挙げられます。たしかに「それらしい動画」は作れていたとしても、依頼主にとっての顧客が重要とするポイントを考慮されていないようなケースがあると、効果的な映像にはなりません。
具体的には、SDGsの取り組みに力を入れていたとしても、視聴者にとって「その企業がSDGsに取り組むことで自分に何の価値があるのか?」が伝わらなければ応援しようと思ってくれる人は少なくなってしまいます。
他にも、視聴者の世代が懐かしむ内容や、大切にする考え方などを考慮していなければ、「それらしい動画」ではあるものの、まったく共感を得られない映像となってしまいます。
これは、初期のすり合わせが不十分であるか、進行中のコミュニケーションが効果的でない場合に生じます。結果として、最終的なアニメーション動画が、ブランドの目的やターゲットとなる視聴者に観てもらえないといったリスクにつながります。
予定通り納品されなかった:進行管理のミス
納期の遅れは、特にアニメーションのようなイラスト、音声、編集、台本といった複数のクリエイターによって素材を用意するプロジェクトに起こりやすい問題です。外注先が、予算やスケジュールの管理を適切に行わない場合、プロダクトのリリースやキャンペーン実施の中止を余儀なくされることもあります。
上述でも触れましたが、納期の問題は「技術力が足らずに遅れる」ことよりも、依頼主が「要望を満たせていないから修正しなければならない」と思うような事態になるから起こる問題です。依頼主も、スムーズに終わらせたい気持ちは同じです。
依頼主がスムーズに進行したいのに、想定外の修正が必要な箇所が見つかることで、追加作業が発生して納期に間に合わなくなるのです。もちろん技術的な問題に加えて、修正を考慮していない無茶なスケジュール設定によっても遅れる場合はあります。ですが、スケジュールの問題は「修正をどのくらい想定したスケジュールなのか?」をすり合わせておけば解決します。
納期遅延はプロジェクトのスケジュールに影響を与えるだけでなく、キャンペーンやプロダクトをリリースするタイミングを妨げる可能性があるため、余裕を持って依頼しておくことが大切です。
見積もりの金額を超えてしまった:予算管理のミス
外注における予算超過は、不明瞭な契約条件という場合を除くと、依頼主からの追加要求などによって引き起こされることがあります。しかし、依頼主側の不手際によって追加が発生したのであれば、承知の上と考えられるため今回のケースでは除きます。
つまり、想定するイメージがあるのに、ディレクターに任せすぎてしまった場合か、依頼主の意図を汲み取っていなかったことで追加が発生するケースが挙げられます。特にアニメーション制作は複雑で、途中での変更や追加作業が発生しやすいため、予算管理は特に重要です。
これらに共通するのも、ディレクターとのコミュニケーションの問題です。依頼主側でなければ知らない「視聴者の実際の声」や、「過去のプロモーションなどの詳細」といった情報を伝えた上で、慎重にディレクター選びを行っていくことでリスクを防いでいきましょう。
関連記事:実写・アニメーションの映像制作を外注する流れとは?費用や依頼時のポイントをご紹介
個人・企業のどちらにアニメーション動画制作を外注依頼する方がリスクが少ない?
外注先には、直接制作を請け負う制作会社や広告代理店などの企業へ依頼する方法と、クラウドソーシングサービスなどでフリーランス=個人に依頼する方法があります。
どちらも何を重視するかで良し悪しが変わりますが、大きく異なるのは費用や品質の安定性と言えるでしょう。それぞれの利点を紹介していくので、選ぶ際の参考にしてみてください。
個人にアニメーション動画制作を外注依頼する場合の利点
個人は自社でディレクション業務を行う代わりに費用を抑えたい場合に適しています。反面、具体的な指示や進捗、請求書などの管理やノウハウ面を自社で補う必要があります。
まずは、個人に依頼した場合のリスクを紹介していきます。
クリエイター1人で完結するために安価となりやすい
個人に頼む場合は、制作に携わる人が少なく、フリーランス1人の方で制作が完結するため、人件費やマネジメントにかかる工数が少なくなることから安価となりやすい傾向にあります。
企業に依頼した場合に比べトラブルとなる可能性もある
個人でやっているクリエイターはプロと違い、タスク管理、スケジュール管理、トラブルへの対処、モチベーションの維持などに問題を抱えている可能性もありますので、このリスクを避けるためには、納品まで自分がうまくクリエイターをコントロールすることが求められます。
関連記事:アニメーション制作に困っている方へ。独学・外注どちらが良いのかを解説
制作会社(企業)にアニメーション動画制作を外注依頼する場合の利点
制作会社や広告代理店などの企業へ依頼する場合は、個人とは反対で費用が割高になっても、ディレクション業務や代行してもらったり、請求の一元化、アイデアや戦略部分をサポートしてもらいたい場合に適しています。
また、費用が割高とはいえ、自社で専任の担当者を雇うよりは、多くの専門家のチームに力を借りれることを考えれば割安という見方もできます。さらに、スポット的に利用できることや、他社の傾向を聞ける意味でも割高になるだけの魅力はあると言えます。
では、企業に依頼した場合のリスクを紹介していきます。
制作に関するノウハウが蓄積されている利点がある
企業(制作会社)にアニメ動画制作を依頼した場合、クリエイターやデザイナーだけでなく進行管理を行うディレクターまでが揃っています。そのため、スケジュールの調整や安定したクオリティで納品まで進められます。
その分、急な変更といった即時対応が難しいという柔軟性は個人に比べ劣ります。また、多くの人件費が発生しているため費用も個人に比べて大きくなります。費用よりも確実性や手間を減らしたい場合にはアニメ動画制作会社に依頼する方が良いでしょう。
自社でクリエイターを抱えているため個人に頼むよりも比較的トラブルが少ない
企業(制作会社)にアニメ動画制作を依頼することが、個人への依頼と比べて異なる点には、「予定通り進みやすい」といったことが挙げられます。例えば、1人が制作過程において遅延していても、会社として他のクリエイターやデザイナーによってカバーできるためです。
個人へアニメ動画制作を依頼する場合は、その人が実はノウハウを持っておらず頓挫してしまえばやり直すことになります。このように、個人に依頼する場合と比べて多くの人物が関わっていることで大きな違いを生んでいます。
関連記事:アニメーション動画の制作会社は増えている?上手な選び方をご紹介
アニメーション動画制作を外注依頼する際のリスクを回避する3つの観点
冒頭でお伝えしたようなリスクは、どのように回避できるのでしょうか?重要な点は次の3つあります。
- アニメ動画を制作する目的を明確にする
- アニメ動画の種類を検討する
- 依頼先の動画制作実績を確認する
これらの観点を身につけることでアニメーション制作を円滑にすすめることが可能になります。
アニメ動画を制作する「目的」を明確にする
よくある相談の中で、「商品の認知拡大と購買意欲の促進を同時にしたい」ということがあります。しかし、両方を目的とした内容にしてしまうと、視聴するユーザーにとっては「結局何が伝えたいのかわからない」という状況に陥ってしまい、どのターゲットにもメッセージが伝わりにくくなってしまいます。
内容が伝わりやすいアニメ動画制作に必要なことは、アニメ動画制作の「目的」を1つに絞り明確にすることです。この理由は、アニメ動画制作における工程(プロセス)が関係しています。
アニメ動画制作の工程(プロセス)
アニメーション動画制作において、工程の初めに行うことが「企画・シナリオ作成」という骨組みを作る部分です。制作された企画・シナリオに沿って各デザインの制作が進められます。アニメーション動画の目的は、まさにこの企画・シナリオに大きく影響するため、1つに絞らなければ曖昧なものになってしまうのです。
また、企画・シナリオは骨組みのため「やり直し」をする場合はちょっとした修正というわけにはいきません。アニメーション動画の質を左右するほど根幹を担う企画・シナリオを良いものにするためにも目的は1つにすることを心がけるのがおすすめです。
達成したい目的によってアニメーション動画の種類や長さ、強調するべき内容が変わってきます。サービスや商品の認知拡大なのか、企業価値を高めて認識を変えるためのブランディングなのか、商品購入を直接促すのかといったように目的を考えるにも方向性は存在します。楽曲の魅力を伝えるようなMV(ミュージックビデオ)の場合も同様です。
上述のことを理解するためにも、アニメの企画書について知っておくのもおすすめです。アニメの企画については「アニメの企画ってどうやるの?実は企画書のフォーマットは重要ではない理由をアニメ会社の視点から解説します」で詳しく解説しています。
アニメーション動画の種類を検討する
制作の目的や企画内容の詳細が決まったら、次にアニメーションの種類と実績について検討する必要があります。狙いとする目的によって、アニメーションの種類が異なります。まずはアニメーションの種類を見ていきましょう。
制作したいアニメーション動画の目的に応じて、企業を選定することが重要となってくるため、その企業が「どのような種類のアニメーション動画を制作しているのか」「得意とするアニメーション動画はなにか」をきちんと調査し、把握しておく必要があります。
アニメーション動画の種類と制作料金について詳しくは以下の記事がおすすめです。
なお、自主制作アニメクリエイターによる「インディーアニメ」を活用することで、さらに費用を抑えることが可能です。詳しくは以下の記事で解説しています。
依頼先のアニメーション動画制作実績を確認する
次に、実績について見ていきましょう。実績において注目するべきポイントは以下が挙げられます。
- 取引会社の数
- 過去制作したアニメ動画の数
- 年間のアニメーション制作数
アニメーションの種類と同様に、制作したいアニメーションの目的に沿って企業を選定することが重要となってきます。
これまでに見てきたとおり、アニメーション制作や企業選定において、金額のみで判断をしてしまうのはリスクがあります。得意分野を知り、制作を依頼したい会社の料金相場の両方を知ることで、想定していた動画イメージと、実際に制作された後の動画との乖離を防ぐことができるのです。
制作会社の選び方や依頼のコツは「【保存版】ショートアニメの制作を依頼するコツは?制作会社の選び方をプロがご紹介」がおすすめです。
動画によって叶える目的を明確にすることが失敗しない鉄則
アニメーション動画を作成する際、もっとも重要なのは「なぜその動画を作るのか?」という目的を明確にすることです。見栄えが良く、構成が素晴らしいものでも、結局は何に活用するかという目的と一致しない動画では良い結果は生まれないからです。
例えば、新しい商品の紹介、ブランドイメージの向上、特定のキャンペーンの宣伝など、動画によって達成したい具体的な目的はさまざまです。これらの目的に基づいて、どのようなストーリーを描くか、どのようなビジュアルを用いるか、どのようなメッセージを伝えるかを決定する必要があります。目的が明確でなければ、結果として視聴者に混乱を与えたり、メッセージが伝わらなかったりする恐れがあります。
また、動画の活用目的を明確にすることは、制作プロセスにおいても非常に重要です。これにより、どの種類の技法を用いるべきか、どのような構成が適しているか、どのようなアイデアが効果的かを決定しやすくなります。
アニメーション動画制作を外注依頼する際のリスクについてのまとめ
ここまでのポイントをまとめます。
・アニメーション動画制作の外注では、意図した品質と異なるリスクがある
・要望が反映されていない場合もリスクとして存在する
・予定通りの納品がなされないケースもあり得る
・制作費用が見積もりを超えることが起こりうる
・個人への依頼は安価だがトラブルリスクも伴う
・制作会社への依頼は安定性があり、進行がスムーズ
・目的が明確でない動画制作は失敗の原因となる
・制作技法や構成を考慮することが重要
・依頼先の実績や制作種類の確認が大切
アニメーション動画制作の依頼は、計画的な進行と適切なパートナー選びが大切です。目的を明確にし、リスクを把握しておくことで、効果的かつトラブルのない動画制作が実現しましょう。
動画のポイントを押さえた企画方法やPRの考え方などの資料も公開しているので、以下のダウンロードページで手に入れてみてください。
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