NOKID編集部
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。



「うちの地域でもゆるキャラを作りたい」。そう決まってから調べ始めると、出てくるのはコンセプトの決め方、公募の要領、着ぐるみの見積もり。どれも誕生までの手順です。
ただ、ご当地キャラで実際に困るのは、その手前ではありません。全国の市区町村に聞いた調査では、運用でつまずく原因の1位は「人員が不足している、職員の負担が大きい」で57.1%、2位が「十分な予算が確保できていない」で25.4%でした。どちらも、キャラを企画して制作まで済んだあとに起こる問題です。
つまり、作り方を最後まで調べても、いちばん多いつまずきには手が届きません。
ゆるキャラの成否を分けるのは、デザインの可愛さでも、誕生時の話題性でもありません。語れる物語と、担当者が異動しても止まらない仕組み。この2つが揃っているかどうかです。
ただし物語は、最初から在るとは限りません。熊本県の公式年表を見ると、くまモンは「くまもとサプライズ!」ロゴのおまけとして提案されたと記録されています。日本でいちばん成功したご当地キャラは、地域の物語から設計されたわけではありませんでした。物語は、あとから積むこともできます。
この記事では、作り方の5つのステップを示したうえで、続いている4つの事例を1体ずつ、物語と仕組みの両面から読んでいきます。
あなたの企画書に足りないのは、デザイン案でも予算根拠でもなく、3年後に誰が動かすかを書いた1行かもしれません。
キャラクターのようなIP活用するメリットは「【制作会社が解説】IPビジネスがアニメ事業のチャンスに!自社IPの可能性とは?」がおすすめです。
ゆるキャラを作る工程は、目的の設定・キャラクター設定・デザインの発注・費用と権利の取り決め・運用体制の決定の5つに分かれます。最後の1つを決めないまま進むと、公開後に更新が止まります。

ここでは最初の4つを順に見ていきます。5つ目の運用体制は、事例を読んだあとの章でまとめて扱います。
ご当地キャラの所管部署は、観光50.6%・企画27.9%・広報12.1%に分かれています(公益財団法人東京市町村自治調査会・有効回答1,084自治体)。
所管が3つに割れているのは、偶然ではありません。同じ「ご当地キャラを作る」でも、狙っているものが観光誘客・地域振興・情報発信と別だからです。観光課が持てば観光入込客数の話になり、企画課が持てば移住定住や地域振興の話になり、広報課が持てば認知の話になります。
つまり、目的が3種類あるということです。どれを主にするかで、担い手も、測る数字も、予算の出どころも変わります。
国の予算執行調査には、この順序を飛ばした場合に何が起きるかが書かれています。独立行政法人98法人935機関を対象にした調査で、マスコットの作製目的があいまいなものが殆どであり、なかには「他が導入しているので」という回答も見受けられたと指摘されています。自治体ではなく国の機関の話ですが、目的の欄が埋まらないまま作られたキャラクターが実在することの記録です。
最初に決めるのは、絵柄ではありません。どの課の、どの事業の道具にするか。ここが決まると、所管と予算の出どころが同時に決まります。
企業がキャラクターを作る場合も、出発点は同じです。企業キャラクターは経営課題の解決策という考え方と、目的を決めずに作った自治体キャラがどうなったかの実例は、そちらの記事にまとめています。地域のPRという目的そのものを問い直すなら、イベントで足りるかどうかを先に検討するという選択肢もあります。
参考:ご当地キャラクターの活用に関する調査研究 アンケート調査結果報告書 - 公益財団法人東京市町村自治調査会/予算執行調査 総括調査票 独立行政法人における広報関係経費 - 財務省
奈良県のライセンスガイドラインは、せんとくんを奈良の守り神として親しまれている鹿の角をたくわえた愛嬌のある童子の姿と定義しています。彦根市はひこにゃんを、井伊直孝公を雷雨から救ったと伝えられる招き猫と井伊軍団の赤備えの兜を合体させて生まれたキャラクターだと説明しています。
2県とも、公式文書で決めているのは姿の根拠です。性格の細部でも、口調の一覧でもありません。
この違いは、引き継ぎのときに効いてきます。姿の根拠が文書にあれば、担当が変わっても「なぜこの形なのか」を説明できます。逆に、性格や口調をどれだけ細かく決めても、それは次の担当者が説明を求められる項目ではありません。
設定は、書けば書くほどよいものではないということです。決めるのは、引き継ぐ人が説明できる最小限。姿の根拠、名前の由来、やらないこと。この3つを文書に残せば足ります。
ゆるキャラの設定づくりで迷ったら、分厚い設定資料を作る前に、この3つが1枚に収まっているかを確かめてください。
参考:奈良県マスコットキャラクターせんとくんライセンス使用ガイドライン - 奈良県/ひこにゃんのプロフィール - 彦根市
ひこにゃんの愛称は、全国よりお寄せいただいた1167点のなかから決定したと彦根市が公表しています。
1167点。これを受け付け、目を通し、選び、応募者に連絡する作業が発生します。
公募は「決める」工程ではなく、受け付けて選ぶ工程です。だから公募の費用は賞金ではありません。選考にかかる人手と時間です。応募が集まるほど作業は増えるので、公募が成功するほど担当者は忙しくなります。
つまり、公募か指名かという選択は、実際には「選考の人手を今払うか、制作費を今払うか」の選択です。安いほうを選んでいるつもりで、支払う先を変えているだけということが起こります。
選ぶ基準は費用ではありません。選考と権利処理を回せる人手が今あるかどうかです。無いなら指名にして、浮いた手間を運用に回すほうが、公開後の3年に効いてきます。
なお、名称は市民公募が55.5%、デザインは市民公募が39.5%と、名称とデザインで公募の割合は違います。名称だけ公募して、デザインは指名するという分け方も実際に使われています。
企業のマスコットで同じ判断をする場合の考え方は、企業マスコットの作り方にまとめています。
東京市町村自治調査会の報告書(本編)には、予算規模の推移が載っています。作成開始当初の予算額は100万円以上が全体の約3割、直近の2013年度の予算額は50万円以上が全体の約3割でした(単一回答・n=678)。
同じ「約3割」ですが、基準額が100万円から50万円に下がっています。

作るときには予算がつき、持ち続けるときには細っていく。報告書自身も、この数字について「イベント等の交通費や運用段階にある着ぐるみの修繕費用等の厳しい予算状況が推測される」と書いています。予算が全体的に足りないだけなら、当初も直近も同じ水準で不足するはずです。
実際には落差があります。制度の側が、一度で終わる支出は通し、毎年続く支出は通しにくい形になっているということです。
金額の目安は同じ報告書にあります。着ぐるみは国内製だと50〜100万円(サイズやパーツの多さ、形状等により異なる)、商標登録は区分数にもよるが概ね50万円程度とされています。国の予算執行調査では、独立行政法人98法人935機関の着ぐるみ48体の作製単価が平均590,262円で、なかには1体で133万円や94万円を支出している機関もあったと報告されています。こちらは自治体ではなく国の機関の数字ですが、実額として参照できます。
見積もるべきは制作費ではなく、5年ぶんの総額です。初期にかかるものと、毎年かかるものを分けて並べてください。
この「毎年いくら」の行を、初期費と同じ欄に書いてください。運用費の相場感は、企業マスコットの費用と運用体制でも取引データをもとに整理しています。
参考:ご当地キャラクターの活用に関する調査研究 報告書(本編) - 公益財団法人東京市町村自治調査会/予算執行調査 総括調査票 独立行政法人における広報関係経費 - 財務省
熊本県のくまモン利用規程は、第15条でイラスト等の利用料については、当分の間、無料とすると定めています。同じ規程の第2条は「イラスト等の利用に関する一切の権利は、県に属する」、第3条は事業者登録を受けた後に知事の利用許諾を申請することを求めています。

群馬県の「ぐんまちゃん利用の手引き」も、無料と書きながら手続きを残しています。ぐんまちゃん本体とロゴタイプの利用料金は無料ですが、関連キャラクターとアニメのキャラクターは有料で料率5%・最低1,100円です。審査は書類が揃ってから2週間程度かかり、無料利用と有料利用が混在する場合は利用料は有料になると明記されています。
2県とも「無料」を掲げながら、申請と審査は残しています。
| くまモン(熊本県) | ぐんまちゃん(群馬県) | |
|---|---|---|
| 利用料 | 当分の間、無料 | 本体は無料。関連キャラは有料(料率5%・最低1,100円) |
| 権利の帰属 | 一切の権利は県に属する | 群馬県の登録商標。新規イラストの権利も県に帰属 |
| 手続き | 事業者登録+知事の利用許諾 | 利用許諾申請。審査は2週間程度 |
ここから分かるのは、利用料を取らないことと、権利を手放すことは別だということです。むしろ無料にするほど申請は増え、受ける側の手間は増えます。決めるべきは料金の有無ではなく、誰が申請を受けて、誰が可否を判断するかです。
権利を決めるときは、料金表より先に「申請を受ける担当」を決めてください。決めていないと、公開後に最初の問い合わせが来た時点で止まります。
誰を無料にするかも、同じ場所で決まります。群馬県は手引きに「県内の市町村が利用する場合の利用料は無料です」と書いています。無料の範囲を先に線引きしておけば、個別の判断を毎回することになりません。
なお、自治体キャラの著作権の帰属は自治体が77.9%、使用料は「徴収していないが、認可制」が86.1%で、無料かつ審査ありという形がすでに多数派です。
参考:熊本県キャラクターくまモン・くまもとサプライズロゴの利用に関する規程 - 熊本県/ぐんまちゃん利用の手引き - 群馬県メディアプロモーション課
続いているご当地キャラは、地域の何に基づくかを説明できる物語と、担当が変わっても動かす人が決まっている仕組みの両方を持っています。ただし、くまモンだけは物語をあとから積みました。

ここからは4体を1体ずつ、由来と担い手の両面から見ていきます。順番は、物語がなかったところから始めます。

熊本県の公式年表は、2010年2月の出来事をこう記録しています。
「くまもとサプライズ!」ロゴのおまけとして、くまモンが提案される
引用:くまモン年表 2010年 - 熊本県
おまけ、と県自身が書いています。
日本でいちばん成功したご当地キャラは、地域の物語から設計されたわけではありませんでした。熊本の風土や逸話を先に決めて、それを形にしたのではありません。ロゴの付属物として提案され、そこから始まっています。
では何を持っていたのか。同じ年表の続きを見ると、10月に「くまもとサプライズ特命全権大使」に就任して1万枚の名刺配りが始まり、12月にはイラストの利用許諾申請の受付が始まっています。誕生した年のうちに、動かす役割と、使わせる手続きの両方が決まっているということです。
担い手も明確です。この年表を公開しているページの担当は、熊本県知事公室国際・くまモン局くまモン課。キャラクターの名前がついた課が県庁の中にあります。利用のルールも第2条で「一切の権利は、県に属する」と定め、第3条で事業者登録と知事の利用許諾を求める形で文書になっています。
物語が最初に無いことは、失格ではありません。ただし、くまモンの場合はその分だけ仕組みの側が先に用意されていました。物語はあとから、活動を重ねるなかで積み上がっています。
くまモンの利用商品売上は2024年で1,626億7,323万円、2011年の調査開始からの累計は1兆6,222億円。この規模がどう作られたかは、くまモンの1兆円経済圏で詳しく扱っています。
参考:くまモン年表 2010年 - 熊本県/熊本県キャラクターくまモン・くまもとサプライズロゴの利用に関する規程 - 熊本県/2024年くまモン利用商品年間売上高1,627億円 - 熊本県オンラインプレスルーム

彦根市の公式プロフィールは、ひこにゃんの由来をこう説明しています。
彦根藩井伊家二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招きして雷雨から救ったと伝えられる"招き猫”と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編成のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクター。
引用:ひこにゃんのプロフィール - 彦根市
くまモンとは逆です。土地に伝わる逸話が先にあり、そこから姿が設計されています。
由来の出どころが土地にあると、担当が変わっても説明が要りません。「なぜ猫なのか」「なぜ赤い兜なのか」の答えが、市の公式文書に書いてあるからです。引き継ぎのときに、前任者の頭の中を聞き出す必要がない状態になっています。
仕組みの側も揃っています。このプロフィールの問い合わせ先は、観光文化スポーツ部エンタテインメント課ひこにゃんブランド推進室。ひこにゃんの名前がついた室が市役所の中にあります。
そして彦根市は、成果を毎年同じ方法で数えています。2023年の調査では観光客数159万人(前年比28%増)、観光消費額141億円(20%増)、ひこにゃんグッズの年間販売額3.4億円(前年比64%増)。土産代に占める割合まで、宿泊客24%(625円)・日帰り客30%(349円)と出しています。
由来が文書にあり、専門の室があり、毎年数える手順がある。この3つが1つの自治体でそろっているのが、ひこにゃんの形です。
参考:ひこにゃんのプロフィール - 彦根市/2023年彦根市観光の消費動向調査結果および観光消費による経済的波及効果の推計 - 彦根市

奈良県のガイドラインは、せんとくんの姿を奈良の守り神として親しまれている鹿の角をたくわえた愛嬌のある童子の姿と定義しています。奈良の象徴から設計された、という点ではひこにゃんと同じ型です。
ただ、この事例で見てほしいのは由来ではありません。同じガイドラインの冒頭に、こう書かれています。
せんとくんは、2010年に開催された平城遷都1300年祭をアピールするため2008年に誕生し、国内外で活躍してきました。引き続き、奈良を訪れる人々を古都の様々な魅力に誘い、みんなで手を携えて奈良の新しい歴史を築いていくという役割に加え、2011年からは奈良県マスコットキャラクターとして、日本国内外において、魅力溢れる奈良をPRします。また、奈良県政全般の情報発信などの役割を担います。
引用:せんとくんライセンス使用ガイドライン - 奈良県(基本編・PDF 2ページ目)
せんとくんは、2010年の行事のために2008年に生まれています。本来なら、行事が終われば役目も終わるはずでした。
そうならなかったのは、2011年に役割を書き換えたからです。「平城遷都1300年祭をアピールする」から「奈良県マスコットキャラクターとして県政全般の情報発信を担う」へ。しかもそれが、県のライセンス文書の冒頭に明記されています。
つまり、行事のあとに何をする存在なのかを、県が文書で決め直したということです。物語は最初からありました。それでも続いた理由は、役割を更新したほうにあります。
きっかけが単発の行事でも、次の役割を文書で決め直せば残せます。逆に決め直さなければ、行事とともに終わります。周年事業やイベントに合わせてキャラクターを作る場合は、行事が終わった翌年に何をするのかを、作る段階で書いておくことになります。
参考:奈良県マスコットキャラクターせんとくんライセンス使用ガイドライン - 奈良県

志木市観光協会は、公式のキャラクター紹介ページにこう書いています。
「市内に古くから伝わる河童の民話をモチーフに誕生。にも関わらず、すぐにお蔵入りして10年近くも放置されるという黒歴史を持つ。H23年に復活三次元化してからは振舞きゅうりをしながら飛び回る。」
引用:カパル / カッピー - 志木市観光協会
ここまでの3体と、決定的に違う点が2つあります。
1つは物語です。カパルには最初から物語がありました。市内に伝わる河童の民話で、土地に根ざした由来という意味では、ひこにゃんやせんとくんと同じ条件を満たしています。
それでも、10年近く止まりました。物語だけでは足りない、ということです。
もう1つは、担い手の置き場所です。同じページはカパルを、志木市広報大使で(公財)志木市文化スポーツ振興公社の公式キャラだと書いています。
ここまでの3体は、県や市の組織そのものがキャラクターを持っていました。カパルは違います。権利を持つのは市の外にある公益財団法人で、市はそこに広報大使という立場を与えて関係を作っています。役場の中に担い手を置かない形です。
止まった10年を、運営者自身が公式の場に「黒歴史」と書いている点も見ておく価値があります。止まったキャラが失敗として終わるのなら、運営者は公式ページにその期間を書かないはずです。実際には書いたうえで続いています。止まった事実を記録に残したことが、再開の判断を可能にしました。
いま止まっているなら、まず止まっていることを文書に書いてください。書けば、再開するか終えるかの判断を、誰かがする形になります。書かないままだと、判断する人が現れません。
4体のうち3体は、金額の規模が大きく違います。くまモンの利用商品売上は2024年に1,626億7,323万円。彦根市の経済波及効果は190億円(2023年・前年比21%増)。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算では、せんとくん誕生10年間(2008〜2018年)の経済波及効果は約2,105億円とされています。
いずれも、県や市の規模、投じた予算、置いた体制がそろって初めて出る数字です。人口数万の自治体が同じ形を再現するためのものではありません。
だから、これらの金額を企画書に引くと比較されます。「うちでこれは無理」で話が終わります。同規模の事例を探しても見つからない、という行き止まりに入るのも同じ理由です。
大きな事例と自分の企画は、規模が違うのではなく、参照する場所が違います。金額を参照すると再現できません。置き方を参照すると再現できます。
引くなら、金額ではなくこちらを引いてください。くまモンは県庁に専門の課を置き、ひこにゃんは市に専門の室を置き、せんとくんは行事のあとの役割を文書で決め直し、カパルは役場の外の財団法人が担いました。担い手をどこに置いたかなら、規模によらず自分の企画書に書けます。
自治体が自前で作らず、既存のIPに乗る形もあります。ロマンシング佐賀の事例とゆるキャン△と自治体の連携は、担い手を外に置いた型の具体です。
参考:2024年くまモン利用商品年間売上高1,627億円 - 熊本県オンラインプレスルーム/2023年彦根市観光の消費動向調査結果および観光消費による経済的波及効果の推計 - 彦根市/「せんとくん」の経済効果 - 関西大学
秩父市では、ご当地キャラクターが生まれた平成27年の9月議会で公式ブログの更新が滞っていると指摘され、同じ年の12月議会で市長室長が「専任となるとちょっとこれは難しい」と答弁しています。止まる兆しは初年度に出ます。

作り方の5つ目、運用体制を決めるステップです。4事例が持っていた仕組みの側を、自分の企画書に落とし込む段になります。
秩父市議会の平成27年9月定例会で、大久保進議員がこう指摘しています。
「あと、「ポテくまくんの部屋」を見ても、ブログ「ポテくまくんのひとりごと」、なかなか更新がなされないんですね。やっぱりこういうのは数多く」
引用:秩父市議会 平成27年9月定例会 09月07日 一般質問 p125
同じ年の12月、新井秀弘市長室長の答弁です。
「確かに「ポテくまくんの部屋」に対して、ちょっと物足りないというようなお話を伺うこともあるんですが、ただ現状として、職員のほうで対応しているんですが、専任となるとちょっとこれは難しい」
引用:秩父市議会 平成27年12月定例会 12月10日 一般質問 p188-189
9月に症状が指摘され、12月に原因が答弁されている。同じ年の、同じ議会です。
しかもこの平成27年は、ポテくまくんが生まれた年でした。立ち上げた年のうちに、更新が滞り、専任を置けないことが公の場で確認されています。
熱意が続かないから止まるのだとすれば、本来は数年かけて減っていくはずです。実際には、誕生した年にもう指摘されています。更新の停止は、運用が長引いた末の疲れではありません。体制が決まらないまま公開した時点から始まっています。
全国調査の人手不足57.1%・予算不足25.4%という数字は、現場ではこういう形で現れます。議会の場で、担当部長が言葉にする。同じ議会では別の議員から「この税金を生かすか、殺すか」という発言も出ており、効果を問う声は初年度から上がっています。
日本建築学会に2025年9月に掲載された研究では、関東圏149自治体が4つの類型に分類され、そのなかに改善を要する状態と受け身の運用が含まれています。止まっている状態は、例外ではなく分類として存在します。
専任を置けないことは、企画の前提として最初から書いてかまいません。むしろ隠して企画を通すと、置けない状態が想定外の事故として3年後に返ってきます。
参考:ご当地キャラクターの活用に関する調査研究 アンケート調査結果報告書 - 公益財団法人東京市町村自治調査会/人口規模からみた自治体のご当地キャラクター活用実態と効果に関する研究 - 日本建築学会計画系論文集 第90巻 第835号
須崎市のしんじょう君に関わる守時健氏は、元・市職員です。市役所を退職した後、株式会社パンクチュアルを設立して関わり続けています。
「都会が元気であるためには、地域が元気である必要があります。だから地域にいながら世界と戦える町を創っていきたいなと。田舎にいても都会より面白いことができる、田舎にいても都会より高い給料がもらえる。そんな地域を実現したいと思っています。」
引用:守時健氏インタビュー - 株式会社LIG(元・須崎市職員、株式会社パンクチュアル代表取締役)
これは成功した側の1例なので、そのまま真似できる形ではありません。ただ、こういう経路がありうるという記録として読めます。

担い手が組織の中から外へ移っても、活動は続きうる。そう考えると、異動や退職は担い手が消えることではなく、担い手の置き場所が変わることとして扱えます。
前の章で見た4事例も、この観点で並べ直せます。置き方は3つです。
| 型 | 実例 | 人が変わったときの引き継ぎ先 |
|---|---|---|
| 役場の中に置く | 熊本県(くまモン課)、彦根市(ひこにゃんブランド推進室)、秩父市(職員が兼務) | 後任の職員。専門の課や室があれば引き継ぎ先が明確だが、兼務だと枠が付きにくい |
| 外の団体に置く | 志木市(市の外の公益財団法人。市は広報大使に任命) | 団体の中で引き継ぐ。役場の異動と切り離せる |
| 外の法人に委ねる | 須崎市(元職員が設立した法人) | 契約の相手方。契約が切れると止まる |
企画書の担い手の欄には、役場の課の名前以外も書けます。観光協会、商工会、外の法人、任期のある職員。どこに置くかを決めておけば、人が変わる日が来ても引き継ぎ先が空欄になりません。
自治体が担い手を持たない形もあります。非公認キャラのふなっしーの13年は、行政の外側だけで続いた例として、3つの型の対照になります。
参考:ご当地キャラなのに町をPRしない?フォロワー総数36万・しんじょう君のファンマーケティングに迫る - 株式会社LIG
彦根市が毎年集計している数字を、前の章で見ました。観光客数、観光消費額、グッズ販売額。いずれも市が自分で数えている項目です。
一方、外部の調査に頼る数字もあります。日本リサーチセンターの全国キャラクター調査は2014年から毎年続く時系列調査で、2025年7月には89種のキャラクターを対象に、日本全国15〜79歳への訪問留置調査で認知率を測っています。
ただし、この調査が測っているのは認知率です。露出を続けているかどうかは測っていません。だから「認知が高い=運用がうまくいっている」とは読めません。

そして実務上の問題があります。企画書や議会の説明に認知度を持ち出すと、翌年も同じ数字を出すことを求められます。外部の調査に依存する数字は、自分の課では動かせません。
測る項目は「来年も自分の課で、同じ手順で数えられるか」で選んでください。出動回数、許諾申請の件数、グッズの販売額。これらなら、担当が変わっても数え方が引き継げます。
あわせて決めておきたいのが、どうなったら見直すかです。関東圏149自治体の研究に改善を要する状態が類型として含まれている以上、自分のところがそうなる可能性はあります。続けるかどうかを後から判断するには、判断する人と判断の材料が要ります。それを決めずに始めると、止まった状態のまま誰も終わらせられません。
やめる条件を書くことは、続ける意思を弱めることではありません。続ける判断を可能にすることです。企画書の体制欄には、次の3つを書いておいてください。
参考:第12回 NRC全国キャラクター調査 Part1: ご当地キャラクター - 日本リサーチセンター
4つの事例は成功と失敗の差ではなく、物語と担い手をいつ揃えたかの差で並べ直せます。くまモンは物語をあとから積み、カパルは10年止まってから担い手が決まりました。
ここまで見た4体を、成功か失敗かではない基準で並べてみます。物語と仕組みを、それぞれいつ持ったかという基準です。
| 事例 | 物語(由来) | 仕組み(担い手・役割) | 揃えた時期 |
|---|---|---|---|
| くまモン | ロゴのおまけとして提案された | 誕生の年に大使就任と利用許諾の受付開始。県庁にくまモン課 | 仕組みが先。物語はあとから |
| ひこにゃん | 井伊直孝を救った招き猫と赤備えの兜 | 市にブランド推進室。成果を毎年集計 | 最初から両方 |
| せんとくん | 奈良の守り神である鹿の角と童子 | 2008年は1300年祭のため。2011年に県の常設キャラへ役割を更新 | 物語が先。役割はあとで更新 |
| カパル | 市内に古くから伝わる河童の民話 | 10年放置ののち、市の外の公益財団法人が権利者に。市は広報大使に任命 | 物語が先。担い手はあとから |
4体とも、最初から両方が揃っていたわけではありません。揃っていたのはひこにゃんだけで、残る3体はどこかが欠けた状態から始まっています。
くまモンは物語がないまま仕組みだけで走り出し、活動を重ねながら物語を積みました。せんとくんは物語を持って生まれましたが、役目が終わる予定でした。カパルは物語を持ちながら10年動きませんでした。
違いは、揃っていたかどうかではありません。足りない側を、いつ揃えたかです。
この読み方が意味するのは、いま両方そろっていなくても手遅れではないということです。くまモンは物語をあとから積めましたし、カパルは10年たってから担い手を決めました。決めるべきなのは、足りない側をいつ揃えるかです。
とはいえ、あとから揃えられるなら順序はどうでもいい、とはなりません。
秩父市の例を思い出してください。ポテくまくんは誕生した年のうちに更新が滞り、専任を置けないことが議会で確認されました。あとから揃えるという選択肢はありますが、揃うまでの期間は止まったままになります。カパルの10年が、その長さの実例です。
だとすると、企画書を出す前に決めることは1つに絞れます。デザインの方向でも、公募の要領でもありません。3年後にこれを動かしている人と、その人が動かせなくなったときに誰が判断するかです。
この2つが決まっていれば、初年度の議会で問われても答えがあります。決まっていなければ、答えは意気込みになります。
作る前に、続ける体制を決める。それが、地域PR担当者として任期中に成果を出し、次の担当者にバトンを渡すための、最も実用的な指針です。
ゆるキャラの作り方は、目的の設定・キャラクター設定・デザインの発注・費用と権利の取り決め・運用体制の決定の5つのステップで進みます。最後の1つが、続くかどうかを分ける仕組みの側にあたります。
続いている4事例が持っていたのは、地域の何に基づくかを説明できる物語と、担当が変わっても動かす人が決まっている仕組みでした。ただし4体とも、最初から両方が揃っていたわけではありません。くまモンは物語をあとから積み、せんとくんは行事のあとに役割を書き換え、カパルは10年止まってから担い手が決まりました。
つまり、作り方を最後のステップまで進めた人は、続ける条件の半分をすでに満たしていることになります。あとは企画書に2行書くだけです。3年後に誰が動かしているか。どうなったら見直すか。
自力で「ゆるキャラ」を作成するのは大変です。コンセプトやペルソナ設定が終わり、ある程度イラストの内容が決まったら、無理をせず外注することも検討しましょう。
イラストが理想の形に仕上がり、プロモーション活動を始めてからが本当の勝負です。キャラクター作成やイラストのことでお悩みの方はぜひ、お気軽にご相談ください。

キャラクターを「自社に合う見栄えか?」だけで作っても、顧客から受け入れられないことがほとんどです。
ユーザーは多くの情報に晒されており、自分が興味を持つものしか見ないからです。
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株式会社NOKID(ノーキッド)はショートアニメ/アニメーションCMの企画・制作・SNSアカウント運用・プロモーションを得意とする東京の企画・制作会社です。キャラクターIPの開発・企画立案・制作からプロモーション企画立案・実施まで話題性を意識したサービス提供が可能です。

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NOKID編集部
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。