NOKID編集部
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サンリオの「クロミ」が人気と聞いて、どこかモヤモヤしませんでしたか。
黒いずきんにピンクのどくろ。従来のサンリオにはなかったダークなスタイルが新鮮だった。悪役設定がZ世代に刺さった──。たしかに納得はできる。でも、それだけでは説明しきれない何かが残る。
もっともらしく聞こえます。ただし、この説明には致命的な穴があります。
サンリオには1993年生まれの先輩キャラクター、バッドばつ丸がいます。いたずら好き、あまのじゃく、クロミよりも長い歴史を持つ悪役ポジションです。もし悪役っぽいことが人気の本質なら、ばつ丸はとっくにキャラクター大賞のTOP3常連になっているはずです。
しかし現実には、2024年の順位は13位。クロミとの差は開く一方です。
つまり、悪役っぽさは人気の本質ではありません。
では、何がクロミをここまで押し上げたのか。ぱっと見でわかるデザイン以外にも理由がありました。それがファンの感情の奥にある構造の話です。
多くのメディアがビジュアルの差別化で筆を止めてしまうのは、表面的な違いが目立ちすぎるからです。黒とピンクのコントラストは一目で説明できる。けれどその奥には、クロミ人気を支えている4つの層──ブランド・心理・メディア・関係性──が絡み合った構造が隠れています。
この構造を知らないまま、色や毒舌キャラというパーツだけを真似た企業は、次々と短命なマスコットを生み出してきました。
そこで今回は、その見落とされてきたクロミが支持される構造を分解し、他ブランドやキャラクターに転用できる3つのステップまで落とし込みます。

クロミについて分析する際、「悪役設定が新鮮」「黒いビジュアルが差別化」などと結論付けられていることがあります。
確かに、黒いずきんにピンクのどくろというビジュアルは、従来のサンリオの「カワイイ」の定義を拡張しました。しかし、これだけで近年の熱狂的な人気を説明することはできません。

サンリオには「バッドばつ丸」という先輩キャラクターが存在します。彼も「いたずら好き」「あまのじゃく」という設定を持ちますが、近年のサンリオキャラクター大賞ではTOP10の壁際で推移しています。
もし「ワルさ=人気」という単純な法則が成立するなら、ばつ丸も同等の「推し活」対象としてTOP3常連となっているはずです。
2020年代におけるクロミの躍進は、悪役(ヒール)としての人気というより、憧れのアイコンとしての地位を確立したことにあります。単なる「悪い子」であれば、Z世代のトレンド調査で上位に食い込むような社会現象にはなり得ません。
クロミは「悪役」から「なりたい自分を体現するリーダー」へと進化したのです。
参考:総合順位 | 結果発表 - 2024年サンリオキャラクター大賞 公式サイト
ファンは実際に何に惹かれているのでしょうか。Z世代を対象としたコミュニティを持つSHIBUYA109 lab.のトレンド分析やSNS上の声を分析すると、以下のようなインサイトが見えてきます。
「自分の気持ちを代弁してくれる」
「なりたい自分になるために努力している姿が好き」
「強がっているけど本当は乙女なところに共感する」
注目すべきは、「努力」「自分らしさ」「代弁」というキーワードが頻出する点です。これは、心理学における同一化のプロセスです。
ファンはクロミの「自分らしくありたいが、周囲の目を気にしてしまう」という葛藤や、それを乗り越えて「なりたい自分になっちゃおう」と行動する姿勢に、理想の自己像を投影しています。
クロミの公式設定と、2021年以降のブランディングを改めて確認しましょう。
公式サイトでは「乱暴者に見えるけれど、実はとっても乙女チック」と紹介されています。さらに重要なのが、2021年10月に始動した新プロジェクト「#世界クロミ化計画」でのメッセージです。
ここでクロミは、「誰もが自分史上最高の自分を目指せる世界を作る」ことを掲げ、1キャラクターから自己肯定感を高めるリーダーへと役割を変容させました。
博報堂生活総合研究所の調査(生活定点)によると、若年層において「自分らしさを出したい」という欲求が高まる一方で、「他人の目が気になる」というスコアも高止まりしています。
クロミの強気な外見と繊細な内面(乙女チック)、そしてコンプレックスをバネに努力するという多面性は、この「本音と建前のギャップ」に悩む現代の若者の心理とマッチしています。
ファンは、クロミの中に「社会で戦うための鎧(強気)」と「守りたい素顔(乙女)」の両方を見出し、そこに深い共感を覚えているのです。
参考:憧れの自分を目指すクロミとともに、“自分史上最高の自分”を目指す新プロジェクト #世界クロミ化計画 10月31日より始動 - PR Times
本章では、クロミ人気を構成する4つの層を俯瞰します。各層がどのように連動しているかを把握することで、成功の全体像が見えてきます。

サンリオは創業以来、「Small Gift Big Smile」を理念に掲げてきました。しかし、クロミの躍進においては、従来のサンリオブランドからの逸脱が逆に奏功しました。
サンリオピューロランドでは、ハロウィンイベント「PUROHALLOWEEN」などでクロミをメインに据えた企画を実施し、従来の「かわいい」に加えて「クール」「かっこいい」という新しい価値観を提示しました。

重要なのは、サンリオという「王道」の中にいながら「異端」であるという立ち位置です。これが、「みんなと同じは嫌だが、完全にアウトサイダーになるのも怖い」というファンの共感を得たと言えます。

2020年代の若者は、SNSでの「他者承認」と「自己実現」の板挟みになっています。クロミは「#世界クロミ化計画」において、次のメッセージを打ち出しました。

> 「ほら、あんたもなりたい自分になっちゃおうよ!」
これは単なる自己中心的な主張ではありません。公式YouTubeやSNSで発信されるコンテンツでは、クロミ自身が悩み、努力し、時には失敗する姿が描かれています。
「完璧ではないが、自分の意志で突き進む」という人格設計は、完璧なインフルエンサーに疲れ、等身大を求めるZ世代の心理に対する処方箋のようになります。
参考:Z世代が選ぶ2026年注目トレンド「SHIBUYA109 lab.トレンド予測2026」 - PR Times
かつてのアニメ『おねがいマイメロディ』はテレビ放送でしたが、現在のブームを支えるのはデジタルメディアです。
| 種類 | 詳細 |
|---|---|
| TikTok/YouTube Shorts | 短尺動画で「クロミのダンス」や「ツンデレなセリフ」がミーム化しやすい素材として提供されました。 |
| 音楽(アーティスト)活動 | 2021年の「Greedy Greedy」でアーティストデビュー。歌詞を通じて内面世界を表現し、MVは数百万回再生を記録しています。 |
| SNS運用 | クロミの公式X(旧Twitter)やInstagramは、ファンの悩み相談に乗るなど、距離感の近い「姉御肌」なコミュニケーションを徹底しています。 |
これにより、クロミは「画面の中のキャラクター」から「スマホの中にいる友達・理解者」へと存在感を高めました。
出典:「KUROMI /クロミ【Sanrio Official】再生リスト - YouTube
クロミを語る上で欠かせないのが、永遠のライバル「マイメロディ」の存在です。ネット上では、「マイメロ=天然で毒がある」「クロミ=悪ぶっているがいい子」という解釈がミームとして定着しています。
この対比構造は、ファンによる「考察」や「二次創作」を強力に駆動します。「どっち派?」という議論や、二人の関係性を描いたファンアートがSNS上にあふれることで、公式が情報を発信しなくても話題が継続する「自走するコンテンツ」が生まれています。
サンリオ公式もこの関係性を理解しており、バレンタイン等のイベントでは二人をセットで扱い、相乗効果を最大化しています。
参考:バレンタイン期間限定「マイメロディ・クロミ×ゴンチャロフ」のチョコレートが登場♡ - サンリオ

現代の若者を取り巻く環境は、表面的には自由に見えますが、相互監視的な側面も強まっています。各メディアの記事でも指摘されているように、Z世代は「チル(まったり)」を好む一方で、将来への不安や同調圧力へのストレスを抱えており、「自立」への志向が強まっています。
クロミのキャッチコピーにある「アタイ」という一人称や媚びない態度は、社会的な同調圧力に屈しない印象を感じさせます。
しかも、単に反抗するだけでなく、ピンクのどくろやフリルのついた衣装に見られるように「かわいさ」を捨てていない点が重要です。
「社会には適合したい(かわいくありたい)が、自分らしさも捨てたくない」という、一見矛盾する欲求を、クロミはキャラクターデザインと性格の両面で体現しているのです。
参考:サンリオの大規模プロジェクト Z世代に向けた「#世界クロミ化計画」 - Adver Times
クロミは、現代のファンにとっての「代弁者」となっています。
たとえば、クロミの楽曲『Greedy Greedy』の歌詞には、「誰かのためじゃなくて 自分のために可愛くいるの」「欲張りで何が悪いの?」といったフレーズが登場します。謙虚さを求められる日本社会において、多くの人が口に出したくても言えない本音です。
クロミが代わりに叫んでくれることで、ファンは解放感を得ます。「クロミ推し」を公言することは、間接的に「私は自分の意志を大切にする」という自己表現の手段となっているのです。

完璧なヒーローは憧れの対象ですが、共感の対象にはなりにくいものです。クロミの魅力は、その「不器用さ」にあります。
・マイメロディに勝とうとして、いつも空回りする
・好きな男の子(柊しゃま)には一途で、尽くしてしまう
この「ドジな一面」や「報われなさ」が、ファンの「応援したい」「私が支えてあげなきゃ」という保護欲求を刺激します。
強いクロミ様ではなく、強がっているクロミちゃんだからこそ、ファンは彼女を自分事として捉え、共に成長しようという連帯感を抱くことができます。

クロミ人気の本質と構造を理解したところで、なぜ多くの企業がこの成功を再現できないのかを検証します。
クロミの成功や「地雷系・量産型」ファッションの流行を受けて、さまざまな企業が「病みかわいい」や「ダーク系」のマスコットを投入しました。しかし、その多くは短命に終わっています。
失敗の主因は、ビジュアル(表面だけ)の模倣になってしまい、「なぜそのキャラクターがそのような振る舞いをするのか」という物語が欠けている点にあります。
クロミの場合、アニメ『おねがいマイメロディ』(2005年)の時点で、「マイメロディにいじめられた(と本人は思っている)過去」や「柊恵一(人間の男性)への報われない恋心」といった、判官贔屓を誘うバックボーンが描かれていました。見た目のダークさは、彼女の孤独や反骨精神の結果であり、単なるファッションではありません。この文脈なきダークさは、Z世代には「あざとい」「作り物」と見透かされてしまいます。
プロモーション活動において陥りがちなのが、成功要因を切り離して考えることです。「Z世代には紫や黒がウケる」「毒舌キャラが流行っている」といった一面だけの分解は危険です。
クロミの成功は、以下の要素が組み合わさった仕組みによるものです。
| 要素 | 詳細 |
|---|---|
| 歴史性 | 2005年から積み上げた「苦労人」としてのストーリー資産 |
| 時代性 | 「多様性」「自己肯定感」を求める2020年代の価値観との合致 |
| 双方向性 | SNSを活用し、ファンの悩みを聞く「KUROMIES(クロミーズ)」としてのコミュニティ形成 |
| 関係性 | マイメロディという絶対的な「光」との対比 |
これらは単独では機能しません。たとえば、②の時代性だけを捉えても、①の歴史的背景(説得力)がなければ言葉は響きません。
多くの模倣企画は、この相互作用を無視し、表層的な要素だけを取り入れるため、ファンの感情移入を生まないのです。
参考:憧れの自分を目指すクロミとともに、“自分史上最高の自分”を目指す新プロジェクト #世界クロミ化計画 10月31日より始動 - PR Times
「サンリオだからできた」「クロミのデザインが良いから」という「センス」や「ブランド力」への帰結は、思考停止です。
実際、クロミはデビュー当初から現在のような「自己肯定感のカリスマ」だったわけではありません。2021年のプロジェクト始動に合わせて、アーティスト活動を開始し、歌詞を通じてメッセージを発信するなど、意図的なリブランディング(再設計)が行われています。
筆者が主張するのは、サンリオのクロミは「ただ運が良かった」で片付けられるヒットではないということです。時代の変化を読み解き、キャラクターのポジションを再解釈して提示した「戦略のあるリポジショニング」の成果だということです。
このプロセス自体は、他社でも参考にできるものです。
参考:クロミが、音楽の世界で本格始動!夢はワールドツアーを回ること⁉︎ アーティスト「KUROMI」がTOY’S FACTORYより10月にメジャーデビュー決定 - PR Times

クロミの成功は「自己肯定感の欠如」という問題の発見から始まりました。自社の企画でも、まずはターゲットの「満たされていない感情」を探ります。
SNS検索:X(Twitter)で「辛い」「モヤモヤする」「言えない」などのキーワードと、ターゲット層の関連語を掛け合わせて検索する
Yahoo!知恵袋:カテゴリ別の悩み相談から、本音の悩みを抽出する
書籍・記事:『メディア』や『世代調査』関連のレポートで、世代ごとの価値観(例:タイパ重視、失敗回避志向など)を確認する
特定した問題に対して、キャラクターやサービスがどのような「態度」で寄り添うかを決めます。
痛み:「いい子でいることに疲れた」
代弁:「いい子になんてならなくていい。自分のための自分になろう」
この段階で、「機能的価値(何ができるか)」ではなく「情緒的価値(どんな気持ちにさせるか)」を定義することが重要です。スローガンやタグラインとして言語化してみましょう。
※#世界クロミ化計画」のビジョン:「誰もが自分史上最高の自分を目指せる世界」
人間味のないキャラクターは愛されません。共感を生むための「ギャップ(葛藤)」を3層で設計します。
| 層 | 要素 | クロミの例 |
|---|---|---|
| 外見的特徴 | 一目で分かる特徴 | 黒いずきん、強気な目 |
| 行動原理 | 周囲に見せる態度 | 世界征服を企む、ツンツンしている |
| 内面的真実 | 実は抱えている弱さや願い | 寂しがり屋、乙女チック、認められたい |
この「外見・行動」と「内面」のギャップが大きいほど、発見された時の愛着が深まります。企業の広報担当者などをキャラ化する場合も、これらのフレームワークを参考にしてみましょう。
ここまでのポイントをまとめます。
クロミの人気理由は、“本音と建前の板挟み”という現代のしんどさを、強がりと弱さの両方で代弁できたことが今回の調査で分かりました。さらに、世界観・メディア・ライバル関係が噛み合うことも重要だと言えるのではないでしょうか。
キャラクターを「自社に合う見栄えか?」だけで作っても、顧客から受け入れられないことがほとんどです。なぜなら、ユーザーは多くの情報に晒されており、自分が興味を持つものしか見ないからです。興味を持つことは、共感したり何らかの感情的な刺激が必要になります。そのためには、キャラクターの人格や設定などが重要だということです。魅力的なキャラクターを作る要素などの「キャラクター作りのポイント」を「無料資料ダウンロードページ」で公開中です。ぜひ活用してみてください。
株式会社NOKID(ノーキッド)はショートアニメ/アニメーションCMの企画・制作・SNSアカウント運用・プロモーションを得意とする東京の企画・制作会社です。キャラクターIPの開発・企画立案・制作からプロモーション企画立案・実施まで話題性を意識したサービス提供が可能です。

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NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。