2026.01.09

2026.01.23

ふなっしーに学ぶIP(キャラ)戦略:13年間の生存記録から読み解く「弱者」の戦い方

ふなっしーが世に出てから13年以上が経ちました。「ああ、そんなキャラクターもいたね」と、過去のブームとして処理してしまっている人はいないでしょうか。もしそうなら、あなたはビジネスにおける極めて重要な「生存のヒント」を見逃しているかもしれません。

多くの人が気づいていない事実があります。それは、ふなっしーが今もなお、1000人規模のホールツアーを即完売させ続け、独自の動画プラットフォームで安定的な収益を上げ、全国に直営店を展開する強固な経済圏を維持しているという現実です。

一過性のブームで消えていった数多のご当地キャラクターたちと、10年以上にわたり最前線で生き残り続けるふなっしー。その決定的な違いは、運や才能といった不確定要素ではなく、極めてロジカルに設計された生存戦略にあります。

そこで今回は、公認であることやマスメディアへの露出だけが正解ではないという事実を、具体的なふなっしーの事例をもとに解説していきます。

ふなっしーが“非公認”でも人気になれたIP戦略とは?

ふなっしーが“非公認”でも人気になれたIP戦略とは?

ふなっしーの事例を深く分析してみると、リソース不足という弱点を巧みに活かしてきたことが分かります。弱者には弱者の戦い方があり、それは強者が決して真似できない領域にあるのです。

すべての始まりは「拒絶」からだった

ビジネスにおいて、公的機関や権威ある組織からの「公認」は成功へのパスポートだと考えられています。しかし、ふなっしーの成功法則は、その常識を完全に覆すものでした。

2012年、ふなっしーの活動開始当初、運営者は船橋市役所を訪れ、公認キャラクターとしての採用を打診しました。ですが、その結果は「前例がない」という理由での門前払いでした。市役所の各部署をたらい回しにされた挙句、最終的には公認を断られるという結末を迎えています。

一般的な感覚であれば、この時点でプロジェクトは失敗とみなされ、お蔵入りになっていたでしょう。

ここでふなっしー陣営がとった行動は、拒絶された事実を隠すことではなく、積極的に発信してストーリーの核に据えることでした。彼らは「市役所に追い返された梨の妖精」というレッテルを、自ら額に貼って街に出たのです。

非公認をあえて「武器」にした"ふなっしー"

当時の松戸徹市長(後に和解)も、当初は公認に対して慎重な姿勢を示していましたが、拒絶された事実自体が、皮肉にもふなっしーという存在を全国区に押し上げる最初の起爆剤となりました。

例えば、あるベンチャー企業が大手企業への提携を持ちかけて断られたとします。通常は恥ずべきこととして隠しますが、もしもその企業が「大手には理解されなかったが、私たちはこの技術で世界を変えたい」と発信したらどうなるでしょうか。その瞬間に、新たな可能性への挑戦という物語に変わります。

ふなっしーが行ったのは、まさにこの物語への転換でした。公認が得られないことは、諦める理由にはならないということなのです。

参考:船橋市非公認ゆるキャラふなっしー 非公認理由を市が解説 - NEWSポストセブン

市役所(強者)へ挑戦する“梨の妖精(弱者)”という構造が応援を生んだ?

人々が本能的に応援したくなるのは、完全無欠のスーパーマンではなく、傷つきながらも立ち上がる挑戦者です。

ふなっしーはSNSやイベントの場で、「市役所に追い返された」「大人は冷たい」「お金がないから自分で着ぐるみを直している」というエピソードを繰り返し語りました。こうして世間には「強大で融通の利かないお役所」対「たった一人で健気に頑張る梨の妖精」という明確な対立構図が提示されました。

ストーリー作りの観点でも、対立構造は不可欠なほど重要な要素であり、不利な方をつい応援したくなってしまいます。

例えば、ふなっしーが当初の計画通りにスムーズに市公認となり、市長と握手をする写真が広報紙に掲載されていたとしたら、現在のような熱狂的な支持は生まれなかった可能性が高いでしょう。

権威や予算がないという状況は、上手く活かせば個性や魅力であり、世の中の人々が感情移入するためのきっかけになるのです。

出典:非公認ふなっしー ご当地キャラ総選挙を制す - YouTube

実際に、2013年のご当地キャラ総選挙での優勝は、組織票を持たないふなっしーに対し、一般の人々が「私が支えなきゃ」と票を投じ続けられた事例と言えます。

欠点を隠して完璧に見せようとする企業の広報戦略は、実は応援されるチャンスを自ら捨てているのかもしれません。

参考:直撃!ふなっしーの"一梨"マーケティング - 東洋経済オンライン

参考:ふなっしーが「ご当地キャラ総選挙2013」で断トツの優勝 - 船橋経済新聞

ライバルとしての“市公認”エリートキャラとの対立構造

ヒーローの輝きは、ライバルの存在によって増幅されます。対立構造をさらにドラマチックにしたのが、船橋市側が対抗馬(ライバル)として公認キャラクター「目利き番頭 船えもん」を投入したことです。

船橋市側がふなっしーの対抗馬(ライバル)として起用した公認キャラクター「目利き番頭 船えもん」
出典:船橋市

船えもんは、市の予算を投入して作られ、デザインもプロの手による洗練されたものでした。さらに、目利きというコンセプトの通り、船橋の名産品をPRするという明確な行政的ミッションを背負っていました。

一方のふなっしーは、個人の手で制作され、費用も最小限の着ぐるみで、予測不能な動きで暴れ回る野良キャラクターです。

「エリート vs 叩き上げ」「体制側 vs 反体制側」「プロ vs アマチュア」という強烈なコントラストは、ふなっしーの持つ自由さ、反骨精神、そして人間臭さをより一層際立たせる結果となりました。

もし船えもんがいなければ、ふなっしーはただのよくある着ぐるみと思われて終わっていたかもしれません。ですが、隣にピカピカのエリートがいることで、人の心理として「どちらかを選択しなければ」という意識になり、ふなっしーを応援したくなる仕掛けになっていたのです。

ビジネスの現場に置き換えてみましょう。もし自社が小さな町工場で、競合が世界的な大企業だったとします。大企業の製品が洗練されたデザインで機能的であるなら、町工場は手作り感や職人の顔が見える泥臭さを前面に出すとコントラストがはっきりします。

欠点を隠すのではなく、競合との比較において特徴として再定義する。これが弱者の勝つためのポジショニング戦略と言えるでしょう。

参考:ふなばし産品ブランドPRキャラクター 目利き番頭 船えもん - My Funa.net

ふなっしーがあえてテレビから脱却(独立)した理由は?

ふなっしーがあえてテレビから脱却(独立)した理由は?

「最近テレビで見かけないね、消えたの?」という言葉は、IPビジネスにおいて最大の褒め言葉かもしれません。なぜなら、それは「消費される場所」から「愛される場所」へと戦場を移した証拠だからです。

マスメディアへ露出することはゴールではなかった

マスメディアは、コンテンツを育てる場所というより、消費する場所と言えるかもしれません。作物に例えるなら、居座り続ければ種も尽き、土地は痩せ細ってしまいます。

2014年頃、ふなっしーのテレビ出演はピークに達し、見ない日はないほどの人気ぶりでした。バラエティ番組はもちろん、ドラマやCMにも引っ張りだこでしたが、その裏側で現場は限界を迎えていました。

マスメディアは消費する市場だったからふなっしーは撤退した

ですが、テレビなどのメディアが求めるのは瞬間的な視聴率であり、そのためにはキャラクターの背景や文脈よりも、より過激なアクション、派手な爆破シーン、水責め、さらにはスカイダイビングといった、インパクトの強い演出にエスカレートして要求され続けました。

例えば、あるお笑い芸人が「一発ギャグ」でブレイクしたとします。テレビ局は彼に、来る日も来る日もそのギャグだけを求めます。視聴者が飽きるまで搾り取り、数字が取れなくなれば次の新しい芸人へと乗り換えます。これがIP(ふなっしー)にも同じことが起こったということです。

その瞬間は大きな話題となり盛り上がりますが、キャラクターとしての尊厳は無視され、奇妙な動きをする黄色い物体として消費され尽くしてしまうリスクがあったのです。実際、当時のインタビューでも、ふなっしー自身が「テレビに出すぎることで、飽きられることへの恐怖」を語っています。

畑の栄養分が枯渇すれば、メディアは即座に関心を失います。多くのブレイクキャラクターが短期間で姿を消すのは、このメディアのサイクルの速さに絡め取られ、自分たちの価値をすり減らし、コントロール不能な状態に陥ってしまうためです。

参考:ふなっしー、熱中症の翌日に湖に沈められ…? TVの仕事をセーブする理由を語る - grape

「タレントになる気はない」ふなっしーの勇気ある撤退戦

このままでは潰されてしまうという危機感から、ふなっしー陣営は2015年頃からテレビ出演を意図的に抑制する方針へと転換しました。これは広報戦略として非常に勇気のいる決断です。

ビジネスにおいて難しい局面は、アクセルを踏むことよりもブレーキを踏むことです。特に、目の前に需要がある状態で供給を止める判断は、普通の経営者にはできません。

露出が減れば認知度は下がり、世間からは「オワコン(終わったコンテンツ)」というレッテルを貼られる可能性があります。実際、ネット上では「ふなっしー消えた説」が、まことしやかに囁かれました。

しかし、彼らは広さ(認知)よりも深さ(愛着)を優先するという戦略的撤退を選びました。

不特定多数への露出を減らし、自分たちのコントロール下にある活動(イベントや独自配信)にリソースを集中させることで、キャラクターとしての鮮度と、中の人の身体的健康を守ったのです。

例えば、高級ブランドのエルメスを考えてみてください。彼らは爆発的に売れることが分かっていても、バーキンの生産量を増やしません。希少性とブランド価値を守るために、あえて売らないのです。ふなっしーの決断もこれと同じです。

安売りのタレントになることを拒否し、高付加価値なブランドへと転身を図ったのです。このピボット(方向転換)こそが、ふなっしーの寿命を決定的に延ばしたと言えるでしょう。

もしあのままマスメディアの要求に応え続けていたら、数年で消費され尽くしていたことは想像に難くありません。

参考:ふなっしーを最近テレビで見ない理由、「本人」ロングインタビュー(上) - ダイヤモンド・オンライン

視聴率からLTV(生涯価値)の指標へ転換

多くの広報担当者はPV数やリーチ数をKPI(重要業績評価指標)にしがちです。しかし、現代のマーケティングにおいて、財布の紐を開かない100万人よりも、熱狂的な1万人が命運を握っています。

ふなっしーはテレビから撤退することで、ビジネスの指標を「視聴率」から「LTV(顧客生涯価値)」へと完全に移行させました。LTVとは、一人の顧客がそのサービスやブランドに対して、生涯(ECなどは年間)にわたってどれだけの利益をもたらしてくれるかという指標です。

100万人が名前は知っているが、お金は落とさない状態よりも、1万人が有料会員となり、毎年グッズを買い支え、イベントのチケットを買ってくれる状態の方が、ビジネス基盤としては遥かに強固です。テレビに出なければ新規の認知は減りますが、既存のファンとのエンゲージメント(絆)は深まります。

例えば、地方の温泉旅館が、一見客を呼び込むための派手な広告費を削り、その分をリピーターへのおもてなしや料理のグレードアップに使ったとします。結果として新規客は減るかもしれませんが、リピーターが何度も訪れるようになり経営は安定します。ふなっしーの現在の収益構造も、これと同じです。

もちろん新規獲得は常に必要ですが、ふなっしーの場合は十分な知名度を獲得できていたため、一時的に収益基盤を整えることに集中するのは正しい選択だったかもしれません。

テレビ出演料などのフロー収入(一時所得)よりも、グッズ販売やファンクラブ会費といったストック収入(継続所得)が大きな割合を占めていると推測され、景気やブームに左右されない状態を実現できたのではないでしょうか。

ふなっしーがテレビをやめて選択した施策はなんですか?

ふなっしーがテレビをやめて選択した施策

LTVやエンゲージメントという言葉を使うと難しく聞こえますが、やるべきことはシンプルです。ファンにとっての「実家」を作り、彼らを単なる顧客ではなく「運命共同体」にしてしまうことです。

プラットフォームの自社所有=実家の建設に取り組んだ

プラットフォームの自社所有=実家の建設に取り組んだ

他人の土地(テレビやSNS)の上に家を建てても、ルールが変わればすぐに追い出されてしまいます。自分たちの土地を持ち、自分たちのルールで運営することが、自由への第一歩です。

テレビという他人の土俵から降りたふなっしーが向かった先は、自分たちでルールを決められる自分の土俵でした。具体的には、2016年に開設された動画配信サービス「274ch.(ニイナナヨンチャンネル)」と、全国に展開する直営店「ふなっしーLAND」です。これらは、まさに彼らの「自社所有プラットフォーム」です。

出典:274ch.

274ch.は月額会員制の有料サービスですが、ここではスポンサーの意向を気にする必要がありません。尺の制限もなく、コンプライアンスを過剰に気にした編集も不要です。

ただふなっしーが散歩をしたり、マニアックな話題についてスタッフと語ったりするだけの、「テレビならボツになるような動画」が配信されています。ですが、これこそがコアなファンに最適とも言えるコンテンツでした。

例えば、あなたが大好きなアーティストがいるとします。テレビで歌う完璧な姿も見たいですが、それ以上に、楽屋でメンバーとふざけ合っている姿や、移動中の寝顔など、“素”の部分を見たいと思うはずです。

274ch.は、その“素”を提供し続けることで、ファンにとって「いつでもそこに帰ればふなっしーに会える」という安心感を作りました。これはもはやコンテンツというより、デジタル上の実家です。

この実家感こそが、解約率の低い強固なサブスクリプションモデルを支えていると言えるでしょう。

活動資金の自給自足:スポンサーに依存しない収益基盤

「お金がないから何もできない」というのは言い訳です。「お金がないから、まずお金を作る仕組みを作った」のがふなっしーです。

多くのキャラクタービジネスは、ライセンス契約をして企業に商品を作ってもらい、そのロイヤリティを受け取るモデルや、企業のスポンサー料に依存して活動するモデルが主流です。

一方で、ふなっしーは前述の通り「ふなっしーLAND」という自社の直営店舗網を持つことで、グッズの企画・製造・販売(SPAモデル)を自社で完結させています。

これにより、メーカーや問屋への中間マージンを排除し、高い利益率を確保することが可能になりました。この収益が、次のイベント開催や動画制作の原資となります。スポンサーにお金をねだる必要がないため、活動の方針を捻じ曲げられることもありません。

つまり、稼ぐことが“自由を守ること”に直結しているのです。

これは、D2C(Direct to Consumer)と呼ばれる、メーカーが消費者に直接商品を売るビジネスモデルそのものです。

資金調達に苦しむ中小企業や地方自治体こそ、この「自ら稼ぐ力」を持つことが、外部環境に振り回されないための唯一の手段となります。

参考:ふなっしーLAND

推し活=生存支援という最強の動機づけ

人は「欲しいもの」だけでなく「応援したいもの」にもお金を払います。ふなっしーがこれまで取り組んできたことは、推し活にもつながっていく結果となっています。

ふなっしーの自社ECモデルには、重要な心理的側面があります。ファン(通称:梨友)たちは、ふなっしーが公的なバックアップを持たない個人の活動であることを熟知しています。

また、激しいパフォーマンスによって中の人の身体に大きな負担がかかっていることも、長年の活動を通じて理解しています。一部では、腰のヘルニアや身体の痛みに耐えながら活動していることも報じられています。

そのため、ファンたちには「私たちが支えなければ、ふなっしーはいなくなってしまう」という切実な危機感と使命感があります。

公式グッズを購入することや、有料会員を継続することは、ふなっしーの活動資金となり、着ぐるみのメンテナンス費となり、酸素ボンベ代となるのです。

つまり、ファンにとってのふなっしーへの推し活は、文字通りの生存支援なのです。

そこにあるのは対価としての商品の魅力だけでなく、「このプロジェクトを実現させたい」「この人を助けたい」という参加意識です。ふなっしーはリスクや弱さを隠さずに共有することで、ファンを受動的なお客様から、運命を共にする能動的な仲間へと進化させました。

これこそが、不況や流行の変化に左右されない、最強のコミュニティの正体と言えるでしょう。

参考:「いつもやる気いっぱい!」ふなっしー、 梨皮のウラにある『苦心』と『努力』 - やる気ラボ

ふなっしーと企業・自治体コラボ事例に見る成功の方程式

ふなっしーと企業・自治体コラボ事例に見る成功の方程式

「それはふなっしーという個人の特殊な事例でしょ?」と思うかもしれません。しかし、彼が企業や自治体と組んだ事例を見ると、そこにはビジネスパーソンが明日から使える極めて汎用的な「成功の方程式」が隠されています。

【流通】しまむらコラボ:全国への普及と手頃な推し活

高級ブランド化だけが正解ではありません。ファン層を広げるためには、あえて敷居を下げる「入り口」が必要です。

直営店である「ふなっしーLAND」は都市部(原宿、大阪、名古屋など)に限定されており、地方のファンにはアクセスしにくいという物理的な課題がありました。そこでパートナーとして選ばれたのが、全国津々浦々に広範な店舗網を持つ「ファッションセンターしまむら」です。

しまむらとのコラボ商品は、Tシャツや寝具などが中心で、全国どこでも購入可能、かつ非常に安価な価格帯で提供されました。ここで重要なのは「棲み分け」です。直営店ではコアなファン向けの高付加価値・高単価なオリジナルグッズを展開し、しまむらではライト層や地方在住者向けの低価格商品を提供する。このハイブリッド戦略により、ブランドの高級化によってファンを切り捨てることなく、常に新しい層へのタッチポイントを用意し続けています。

例えば、トヨタ自動車が高級車「レクサス」と大衆車「カローラ」を別のブランドとして展開しているのに似ています。レクサスでブランドの憧れを作りつつ、カローラで数を売って市場シェアを握る。ふなっしーも同様に、「直営店=レクサス」「しまむら=カローラ」という役割分担を明確にすることで、コアファンとライトファンの両方のニーズを満たしているのです。多くのメーカーにとって、このチャネル戦略(どこで誰に何を売るか)は大きな参考になるはずです。

参考:「しまむら」新CMにふなっしーを起用、機能性商品「ファイバードライ」をPR - AFPBB News

【権威】刀剣博物館・伝統工芸:ブランドの格上げ

「たかがバラエティキャラ」という偏見を覆すには、意外性のある「本物の知識」が必要です。ギャップが生む権威性は、ブランドイメージを一気に引き上げます。

ふなっしー(中の人)は古刀の収集家としても知られており、その博識な知識が専門家からも高く評価されています。単なる趣味のレベルを超え、刀剣の目利きができるレベルであることが知られるようになり、その結果、岡山県の備前長船刀剣博物館とのコラボレーション展が実現しました。

それまで博物館に足を運ばなかった層がふなっしーを目当てに来場し、一方で厳格な刀剣ファンがふなっしーの知識の深さに驚くという相乗効果が生まれました。初日の来場者数が通常の何十倍にもなるなど、地方の博物館としては異例の大ヒットを記録しました。さらに、石川県の伝統工芸品とのコラボグッズなども積極的に展開しています。

いわゆるオタク的でマニアックな知識であっても、極めれば「専門性」として認められ、伝統文化や権威ある組織との接続が可能になります。これにより、従来の「面白いキャラ」というイメージに「知的な文化人」という属性が付加され、社会的信頼度やブランドイメージが一気に格上げされました。企業広報においても、自社の製品とは関係ない分野であっても、担当者や社員が持つ「マニアックな専門知識」を活用することで、意外なコラボレーションが生める可能性があります。

参考:実は刀剣好き「ふなっしー」が備前長船刀剣博物館のPR大使に ふなっしー所有の刀剣展示も 岡山・瀬戸内市 - KSBニュース

【地域】震災復興・梨農家支援:信頼の蓄積

信頼はお金では買えません。それは、誰も見ていないところでの行動の積み重ね、つまり「信頼資本」によってのみ構築されます。そして、この資本は危機的な状況でこそ真価を発揮します。

忘れてはならないのが、東日本大震災や能登半島地震などの被災地支援、そして地元・船橋の梨農家へのPR活動です。これらは多くの場合、手弁当(無償)やチャリティーとして行われています。震災直後から被災地を訪問し、有名になる前から子供たちを励ます活動を続けてきたことは、ファンの間では広く知られています。

「口は悪く、予測不能な動きをするが、やることは誰よりも正しく、優しい」。この強烈なギャップが、炎上リスクに対する最強の防波堤として機能しています。仮に何かの発言で批判を浴びたとしても、「でも彼は震災の時に誰よりも早く動いた」「彼は本当に困っている人を助けてきた」という事実が、擁護の声を生むからです。

ビジネスにおいて、CSR(企業の社会的責任)活動は「コスト」と見なされがちです。しかし、ふなっしーの事例は、それが長期的な「保険」であり、ブランドの根幹を支える「資産」であることを示しています。短期的な利益を追わず、長期間かけて積み上げた信頼資本は、何にも代えがたいものです。地域との連携においては、まずは「テイク(利益を得る)」ではなく「ギブ(貢献する)」から入る姿勢が、結果として大きなリターンを生むことを証明しています。

参考:ふなっしー降臨10周年を振り返る ファンの子の名付け親にもなった - withnews

明日から企業担当者が真似すべき5つのマインドセット

明日から企業担当者が真似すべき5つのマインドセット

ふなっしーの成功は、決して奇跡ではありません。確かに類稀な才能はありますが、実行してきた戦略自体は非常に泥臭く、再現性のある要素が含まれています。明日から現場で取り入れられる5つのマインドセットを提示します。

1.  欠点を隠すな

「非公認」「予算ゼロ」「前例なし」は恥ではありません。応援されるための強力なフック(武器)になります。公式見解で塗り固められたPRよりも、担当者の悩みや葛藤が見える発信の方が、今の時代は共感を得られます。

2.  マスだけに頼るな

100万人の視聴率よりも、1人の共犯者を作ることに注力してください。エンゲージメントの深さこそが資産です。広く浅く届ける広告費を、今いるファンを喜ばせるための体験づくりにシフトしてください。

3.  場所を作れ

他社のプラットフォーム(SNSなど)やメディアに依存せず、自分たちでコントロールできる実家(自社サイト、直営店、コミュニティ、ニュースレター)を持ってください。プラットフォームのアルゴリズム変更に振り回されない基盤が必要です。

4.  想いを語れ

無難な正解やプレスリリースよりも、担当者自身のガチな熱量や個人的な想いをコンテンツに乗せてください。「中の人」の顔や名前を出す必要はありませんが、その「魂」や「好き」という感情は隠さずに出すべきです。

5.  リスクを共有せよ

強がらず、課題や弱みを見せて、ファンと一緒に解決策を探ってください。「助けてください」と言える関係性こそが、最強のリスクヘッジになります。

新しい企画の稟議が通らないと嘆く前に、まずは手元のスマートフォンからできる情報発信があります。ふなっしーも最初は、たった一人でTwitter(現X)でつぶやくことから始めました。誰かの許可を待つ必要はありません。あなた自身の熱量を放出することから、すべての変革は始まります。

ふなっしーのIP(キャラ)戦略の事例分析についてのまとめ

ここまでのポイントをまとめます。

  • ふなっしーは「市に公認されなかった」という事実を物語の火種に変えた(非公認の経緯) 
  • 「強者=市役所」vs「弱者=梨の妖精」という分かりやすい対立構図が、応援したくなる感情を生んだ
  • 市公認キャラ「船えもん」の登場で、エリートとのコントラストが強まり、ふなっしーの“野良の自由さ”が際立った
  • テレビ露出はゴールではなく、過激化・消耗のリスクが大きい消費の場になりやすいと判断した
  • テレビ露出を抑え、「視聴率」より「長く支えるファン」を優先する方向へ舵を切った
  • 自分たちでコントロールできる“実家”として、有料の公式動画サイト「274ch.」を運営している
  • 物販でも、直営・常設の「ふなっしーLAND」や公式通販を持ち、活動資金を自分で回せる形を作った
  • 全国流通の「しまむら」などと組み、手に取りやすい入口も用意して裾野を広げた
  • 刀剣博物館のPR大使など「意外な本物」を重ねてブランドの格を上げる動きもある
  • 震災支援や地元の梨PRのように、目立たない貢献を積み上げて信頼を増やした

ふなっしーの本質は「公認かどうか」ではなく、弱点(非公認・小規模・不利)を、応援や継続課金の理由に変える設計です。

露出を増やしたあとは、帰って来られる場所と、支えたくなる物語にしてファンに届ける...もし自社や自治体の企画が思ったようにいかないのなら、ここが突破口になるかもしれません。

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