NOKID編集部
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。



他社の有名なキャラクターを借りるにせよ、自社でキャラクターを育てるにせよ、広げていけばいずれ費用は増えます。ここまでは、多くの担当者が想像するとおりです。
見落とされやすいのは、その増えた費用がどちらへ流れるかです。他社のキャラクターを借りて商品を作る場合、権利者に払う使用料は「商品の値段 × 料率 × 作った数」で決まります(KADOKAWAが企業向けに公開している計算式)。掛かるのは売れた数ではなく、作った数です。つまり広げようとして作る数を増やすほど、払う額はそのぶん増えます。
一方、自社でキャラクターを育てて他社に貸す側に回ると、同じ「広げる」が逆に働きます。サンリオが他社から受け取る使用料は、連結売上の49.7%を占めています(2026年3月期)。6年前は38.3%でした。広げた分だけ、受け取る額が増えています。
キャラクターマーケティングのやり方は4つに分かれます。この記事では、その4つを並べたうえで、それぞれの進め方と決めどころを見ていきます。4つのうち、広げた先で受け取る側に回れるのは1つだけです。 自社がどれを選ぶかを、社内で説明できる形にして持ち帰ってもらうことが狙いです。
キャラクターを活用したSNS運用については「キャラクターを使ったSNS運用のメリットとは?成功例やコツを紹介」をご覧ください。

キャラクターマーケティングのやり方は4つに整理できます。広告・CM起用やグッズ化といった手法の名前ではなく、キャラクターをどこから調達するかとキャラクターが手段か商品そのものかで割るのが、この記事の分け方です。この2つで割ると、権利者に出す企画書の宛先と、費用が出ていく場所が同時に決まります。
キャラクターの広げ方は、次の2つの分け方の組み合わせで4つになります。
1つめは、キャラクターをどこから調達するかです。他社から借りるか、自社で育てるか。2つめは、キャラクターが手段か、商品そのものかです。自社の商品を売るためにキャラクターを使うのか、キャラクターを載せた商品そのものを売るのか。
| キャラクターは手段(売るのは自社の商品) | キャラクターが商品(売るのはキャラクター) | |
|---|---|---|
| 他社から借りる | ① 借りて、自社商品をマーケティングする | ② 借りて、専用の商品を売る |
| 自社で育てる | ③ 育てて、自社商品をマーケティングする | ④ 育てて、他社に貸して使用料を得る |
普段は「広告・CM起用」「グッズ化」「コラボ」といった手法の名前で呼ばれているものが、この表のどこかに入ります。テレビCMも、パッケージへの掲載も、期間限定のキャンペーンも、コラボカフェも、自社の商品を売るためにキャラクターを使うなら全部①です。
この割り方が実務と噛み合うことは、実際の発表を数えると見えてきます。当社ではちいかわのコラボ発表2,303件を集めて分類していますが、そのうち共同企画にあたる1,217件を見ると、キャラクターを載せた商品が作られたものが642件、体験や告知にとどまるものが575件でした。同じ「コラボ」という言葉で呼ばれていても、およそ半々で2つに割れています。
権利者の側では、この2つは別の申請として受け付けられています。商品を作るなら商品化の許諾、自社の商品を売るために期間を区切って使うなら広告・宣伝の許諾です。どちらをやりたいのかを先に決めておかないと、出す企画書の宛先から間違えることになります。
この4つを並べる意味は、手法の名前を覚えることではありません。多くの担当者はこの区別を既に知っています。知られていないのは、4つそれぞれでお金が出ていく場所が違うことです。

他社から借りて自社商品を売る場合(①)、いちばん大きくなるのはテレビ局やWeb媒体に払う出稿の費用です。借りて専用の商品を作る場合(②)は、キャラクターを持っている会社に払う使用料が主になります。自社で育てる場合(③④)は、外に払う使用料が発生しない代わりに、デザインの制作費と、運用を続けるための費用が自社に残ります。
つまり自社がどれをやろうとしているかによって、見積書のどの行を見るべきかが変わります。「キャラクターマーケティングにいくらかかるか」という問いには、4つのうちどれをやるかを決めるまで答えが出ません。
ここまで見てきた4つは、いずれも既にあるキャラクターをどう広げるかの選択です。キャラクターを新しく作る工程は含まれていません。
自社にキャラクターがまだ無い場合、先に決めるのは「どう広げるか」ではなく「作るかどうか」。ゼロから立ち上げる手順は企業キャラクターの開発と運用にあります。アニメや実写の映像作品にする方法も、制作の座組みも費用の規模も別物になるので、原作のアニメ化の進め方と企業のアニメーション動画活用で分けています。
広げる相手が手元にあるなら、ここから先の4つが選択肢です。以降は①から順に、進め方と決めどころを見ていきます。

自社の商品を売るために他社のキャラクターを借りるなら、商品化とは別の窓口へ企画書を出します。この借り方で広告費がどこまで下がるかは、自社の商品がその名前だけで選ばれるかで決まり、同じ「借りる」でも売上に対する広告宣伝費の割合が10倍変わります。
自社の商品を売るためにキャラクターを使う場合、権利者の側では商品化とは別の枠で受け付けられています。
サンリオは企業向けの案内で、商品化とは別に「プロモーションライセンス」という枠を設けています。その案内には、「サンリオの個性豊かなキャラクター達を『タレント』として、『企業』や『行政など団体』の商品やサービスなどの『広告・宣伝』や『セールスプロモーション』に幅広くご活用いただけます」とあります。
商品化のほうは、衣類・玩具・家電・文具といった商品にキャラクターを使う許諾として、別に案内されています。
サンエックスも同じ形で分けています。法人向けの問い合わせ窓口が、商品化/キャンペーン・イベント/映像・出版・デジタルコンテンツの3つに分かれています。2社が同じ分け方をしているので、1社の社内事情ではなく、この業界の受け付け方だと読めます。
窓口が別ということは、片方の許諾がもう片方を含まないということです。商品にキャラクターを載せる許諾を取っても、それでCMを作れるわけではありません。逆も同じです。
そしてどちらの枠でも、企画が通るかは案件ごとの判断になります。サンリオは可否について「内容を確認のうえ個別に判断しております」とだけ書いていて、条件は公開されていません。
自社商品を売るための起用なら、CMもパッケージもキャンペーンも、まとめて広告・宣伝の窓口へ相談することになります。そのうえで、制作物は1点ずつ監修に出す前提で予定を組みます。
参考:サンリオ「サンリオのライセンスビジネス事例」/サンエックス「法人・公共団体のお客様へ」
答えは自社の商品によって大きく変わります。同じく他社の名前を借りて商品を作る会社どうしで、売上に対する広告宣伝費の割合が10倍ちがう例があります。
米国にジャックス・パシフィックという玩具会社があります。ディズニーや任天堂のようにキャラクターを持っている会社から使用許可をもらい、その姿をした玩具を作って売る会社です。この会社の広告宣伝費は、2017年から2025年までの9年間で、売上の1.96%でした。9年分を高い順に並べたときに真ん中に来る年の値で、以下の比率も同じ数え方をしています。
比べる相手として、同じ玩具業界のハズブロを置きます。こちらはトランスフォーマーやモノポリーなど、自社で持っているキャラクターが売上の中心にある会社です。ハズブロの広告宣伝費は、6年分の決算で売上の7.36%。他社から借りているジャックス・パシフィックの広告宣伝費の割合は、その約4分の1でした。

9年分を1年ずつ見ると、ジャックス・パシフィックの広告宣伝費は最も低い年で売上の1.65%、最も高い年で2.41%です。売上がいちばん多い年(日本円でおよそ1,190億円。1ドル150円で換算)も、いちばん少ない年(およそ770億円)も、割合は2%前後から動いていません。
9年のあいだに売上は4割ほど上下していますが、広告費の割合はその影響を受けていません。景気や売れ行きで増減させる費目ではなく、この商売のやり方に組み込まれた水準だと読めます。
ところが、調べた24社の中で広告宣伝費の割合が最も高かったのも、他社から名前を借りている会社でした。
インターパフュームズという米国の会社があります。モンブランやジミー チュウといった他社のブランド名を借りて、その名前で香水を作って売る会社です。この会社の広告宣伝費は、2016年から2023年の8年間で売上の19.63%。玩具のジャックス・パシフィックの1.96%と比べると、10倍にあたります。

どちらも他社から名前を借りて商品を作る会社なのに、広告宣伝費の割合が10倍ちがう。業種の違いで説明しようとすると、玩具と香水はどちらも小売店に並ぶ消費財で、決定的な違いには見えません。
玩具会社の1.96%と香水会社の19.63%を分けていたのは、借りた名前がそのまま「その商品を買う理由」になっているかどうかでした。
玩具の場合、子どもが欲しがるのは「そのキャラクターの玩具」です。キャラクターの名前が、そのまま買う理由になっています。だから広告で伝えるべきことは「そのキャラクターの商品が出た」だけで済みます。
香水は違います。ブランド名を見て手に取ることはあっても、名前だけで最後まで決まるわけではありません。どんな香りなのか、瓶はどんな形か、今年の新作は何が違うのか。買う理由になる部分は名前の外側にあり、そこを伝えるには宣伝が要ります。ブランド名は入口を作るだけで、中身の説明を肩代わりしてはくれません。
自社の商品がどちらなのかは、次の問いで見当がつきます。「このキャラクターが付いているという理由だけで、お客さんはこれを選ぶか」。 選ぶなら、宣伝の仕事はキャラクター側がかなり引き受けてくれます。選ばないなら、商品の中身を伝える宣伝が別に要ります。

そして広告予算の見積もりの桁は、この判断で変わります。前者なら売上の2%前後、後者なら20%近くという幅が、実際の決算に出ています。契約を結んでから調整できる部分ではなく、どの商品でキャラクターを使うかを決めた時点で、おおよそ決まっているものです。
社内で予算を説明するときは、この順番で組み立てられます。まず自社の商品がどちらかを述べる。そのうえで、自社と立場の近い会社の実際の割合を根拠として出す。「相場としては安くなると言われています」より、説明できる材料になります。
参考:JAKKS Pacific SEC Filings/Hasbro SEC Filings/Inter Parfums 年次報告
他社のキャラクターを借りるということは、そのキャラクターのファンも一緒に引き受けるということです。商品の出来とは別のところで、反発が起きることがあります。
ゲーム『ペルソナ5: The Phantom X』と初音ミクの周年コラボでは、怒りの矛先がキャラクターではなく進め方に向いた経緯があります。企画の中身ではなく、そのキャラクターがこれまでどう扱われてきたか、ファンが何を大事にしてきたかを踏まえたかどうかが問われた形です。
相手を決める前に確かめる条件については、ゴジラの事例で扱っています。
このやり方では、費用の見積もりより先に、誰から借りるかで結果が決まる部分が大きくなります。組む相手の検討には、費用の試算と同じだけの時間を割くことになります。
企画を通す前に、もう1つ確かめておくことがあります。その施策の効果を、あとで数字にして報告できるかどうかです。
当社がちいかわのコラボ相手22社を追ったところ、コラボの前後で売上の動きを確認できたのは1社だけでした。回転寿司チェーンのくら寿司です。コラボがあった月の既存店売上が前年同月比123.0%まで上がり、翌年の同じ月は89.0%でした。確認できた理由は単純で、この会社が月ごとの売上を公表しているからです。
残る会社では、コラボの前後で売上がどう動いたかを外から測る手段がありません。22社のうち決算書類を出す立場にあるのは7社で、15社は非上場か他社の子会社です。開示が無いので、当社にも分かりません。そして自社が公表していない立場なら、社内の別部署に説明する数字も自分で用意することになります。
効果を数字で報告すると先に約束してしまうと、あとから根拠を出せなくなります。何をもって成功とするかは、企画を出す前に決めておくことになります。
相手の選び方と、決まったあとの進め方はキャラクターコラボの戦略と事例にまとめています。

キャラクターを載せた商品そのものを売る場合は、企画書から発売まで6段階の承認を通します。権利者に払う使用料は、商品の値段と料率に作った数を掛けて決まるので、売れ残っても払う額は減りません。作る数を決めることが、そのまま使用料を決めることになります。
商品化の手順は、権利者が公開しています。
小学館集英社プロダクションは、キャラクター使用の流れを6段階で示しています。企画の立案と社内承認、申請書の提出、契約の締結、監修、証紙の出庫と貼付、最終サンプルの提出です。デザインができあがった時点で終わりではなく、監修という工程が入ります。素材の使い方やデザインが適切かを権利者がチェックする作業です。
そのあとに来るのが証紙です。小学館集英社プロダクションは「全ての監修終了後、正規品だと証明する為のシール『証紙』をお渡しします。証紙は全商品への貼付が原則です」と書いています。生産した商品1つずつに、貼る作業が発生するということです。
KADOKAWAも6段階で公開しています。企画申請、許諾・契約、監修、量産と証紙の貼付、最終確認、発売という並びです。KADOKAWAの案内で目を引くのは監修の範囲です。同社のガイドラインには「商品本体、販促物、受注書など、内容を問わず、作品を利用したすべての制作物に対して監修が必要です」と書かれています。
権利者2社が同じ形で手順を公開しているので、この工程は1社の運用ではありません。商品を作る側から見ると、デザインが決まってからも承認を待つ工程が複数あることになります。そして制作物が増えるほど、監修の回数も増えます。店頭のPOPを追加すれば、その分の監修が1回増えるということです。
発売日から逆算して工程を組むときは、監修と証紙の時間を入れておきます。デザイン確定は、生産開始の合図ではありません。
参考:小学館集英社プロダクション「キャラクター使用の流れ」/KADOKAWA「初めての方へ」
商品化の使用料がどう決まるかは、KADOKAWAが計算式を公開しています。商品化のロイヤリティ計算式として、商品上代 × ロイヤリティ料率 × 製造数量という式が示されています。商品上代は商品の定価、製造数量は作った数です。
掛かるのは売れた数ではなく、作った数です。 1万個作って3千個しか売れなくても、使用料は1万個分で確定しています。売れ残りは在庫として残るだけでなく、既に払った使用料としても残ります。
料率そのものは公開されていません。KADOKAWAの案内には「企画により異なります」とあり、数字は載っていません。ここは相手と条件によって変わる部分です。
実際に支払われた額の水準は、決算書から見ることができます。他社のキャラクターを借りて玩具を作るジャックス・パシフィックが権利者に払った使用料は、2019年から2025年の7年間、売上の14.04%から16.53%の範囲で推移しました。ただしこちらは売上に対する割合で、KADOKAWAの計算式の分母である製造数量とは別の見方の数字です。同じ物差しの上には載りません。

このやり方で広げるということは、作る数を増やすということです。そして作る数を増やせば、その分だけ使用料が増えます。売れ行きが読み違って在庫が残っても、払った使用料は戻りません。
在庫のリスクと使用料のリスクは、作る数を決める同じ1回の判断から出ています。 商品化の企画で数量を詰めるとき、見ているのは在庫だけではありません。
同じ商品化の許諾でも、作るものの中身によって受け取られ方が変わります。既存の物にキャラクターの絵を載せるのか、キャラクターの形そのものを作るのかという違いです。
当社ではちいかわの公式アカウントが出した商品告知162件を、形を作った64件(ぬいぐるみ・マスコット・フィギュア)と、絵を載せた98件(Tシャツ・シール・クリアファイル・缶バッジなど)に分けて、表示100回あたりのいいね数を比べました。
件数を高い順に並べて真ん中に来る値は、絵を載せた側が0.0100、形を作った側が0.0148。形を作ったほうが1.48倍でした。月ごとの出し方の違いをそろえて計算し直すと、差は31.1%から63.6%の増加という幅に収まります。
サンリオの公式アカウントでも同じ向きの差が出ました。ちいかわを除く3つのアカウントをまとめても、形を作った側が高く出ています。ちいかわだけの話ではありません。
ただし、差の大きさは一定ではありません。期間で区切ると+28%から+69%まで動き、アカウントを変えても+27.7%から+46.4%まで開きます。「形を作れば何%上がる」と1つの数字で言える結果にはなっていません。 すみっコぐらしとポケモンについては、どちらかの件数が10件を下回るため、この2つだけを取り出しては数えていません。効果が無いと確かめたのではなく、確かめられていないということです。
この観測には、注意しておくところが2つあります。1つは、測っているのが投稿への反応であって売上ではないこと。いいねが増えたから売れたとは言えません。もう1つは、形を作る商品は主力として告知に力が入りやすく、写真映えも違うという点で、告知の出し方そのものが結果に混ざっている可能性が残っていることです。
それでも企画の判断材料としては使えます。話題のキャラクターだから話題になると考えて企画を通すと、絵を載せるだけの商品を出すことになります。自社が形を作れるのか、作れないなら誰に作ってもらうのかを、相手を決める前に決めておくという順番です。
そして借りるキャラクターが決まっているなら、そのファンがこれまで何に反応してきたかを見ることになります。他社の成功例をそのまま持ち込むと、アカウントの使い方が違う相手で外します。
契約の条項や料率の交渉、トラブルへの備えはキャラクターライセンスの仕組みで扱っています。

自社でキャラクターを育てる選択は、費用を消す選択ではありません。外に払う分が自社に残る分へ移り、その費用は予算が厳しくなったときに自社の判断で動かせます。使う場所とタイミングを他社の承認なしに決められることも、借りる場合との違いです。
自社でキャラクターを作れば、他社に払う使用料はかかりません。デザインを作る費用、設定や使い方の決まりを整える費用、そしてSNSや広告に出し続ける運用の費用が、代わりに自社の側に残ります。
金額の大小だけを比べても、どちらが有利かは決まりません。違いが出るのは、その費用を自社の都合で動かせるかどうかです。
他社に払う使用料は、契約で決まります。ジャックス・パシフィックが権利者に払った使用料は7年間、売上の14.04%から16.53%の狭い範囲を動きませんでした。会社の裁量で増減させる費目なら、業績の良し悪しに応じてもっと振れるはずです。契約で決まっているので、今期は控えようと決めても止まりません。
自社で育てる場合の制作費と運用費は、そうではありません。国内のキャラクター関連企業の有価証券報告書を調べると、費目が「広告宣伝費」で揃う13社の広告宣伝費は、いちばん低い円谷フィールズホールディングスが売上の1.43%、いちばん高いセガサミーホールディングスが7.84%でした。同じ「キャラクターを持っている会社」でも、約5.5倍の幅があります。
調べたのは国内14社ですが、そのうちブシロードは決算書の費目が「広告宣伝費及び販売促進費」となっていて、広告以外の販促費が混ざっています。中身が違うものを同じ列に並べると比率の意味が変わるため、この1社は比較から外しました。
高いほうから並べると、次のようになります。
| 会社 | 売上に対する広告宣伝費 |
|---|---|
| セガサミーホールディングス | 7.84% |
| タカラトミー | 7.07% |
| 任天堂 | 6.26% |
| バンダイナムコホールディングス | 6.13% |
| コナミグループ | 5.19% |
| KADOKAWA | 3.92% |
| スクウェア・エニックス・ホールディングス | 3.63% |
| 東映アニメーション | 3.46% |
| 東宝 | 3.05% |
| カプコン | 3.03% |
| IGポート | 2.57% |
| 東映 | 2.37% |
| 円谷フィールズホールディングス | 1.43% |
上位に来ているのは、ゲームや遊技機を自社ブランドで売っている会社です。下のほうには、作品を作って他社に供給する側の会社が集まっています。自分で最終商品を売って客に届ける会社ほど広告費が重く、作ったものを他社経由で流す会社ほど軽いという並びになっています。
同じ括りの中で最大5.5倍の開きがあるということは、キャラクターを持っている会社という括り方では割合が決まらないということです。決めているのは別の要素で、この並びでは「自分で最終商品を売るか、他社経由で流すか」がそれにあたります。業種が近いという理由だけで他社の比率を自社の目安にはできません。
そして5.5倍の幅があるということは、この費目には自社の判断で動かせる余地があるということでもあります。予算が削られる場面を想定するなら、どちらの費目に寄せておくかを先に決めておくことになります。
参考:セガサミー 有価証券報告書/タカラトミー 有価証券報告書/任天堂 有価証券報告書/バンダイナムコ 有価証券報告書/コナミ IR資料室/KADOKAWA 有価証券報告書/スクエニ 有価証券報告書/東映アニメーション 有価証券報告書/東宝 IRライブラリ/カプコン 有価証券報告書/IGポート IR資料/東映 有価証券報告書/円谷フィールズ 有価証券報告書/ブシロード 有価証券報告書
自社でキャラクターを育てるときに先に作るのは、使い方の決まりと運用の体制です。長く続いているキャラクターを見ると、担当者の熱意で続いたわけではないことが分かります。
不二家のペコちゃんは、1950年に不二家の店頭人形としてデビューしました(昭和25年)。店の前に立つ人形から始まり、いまはパッケージや店舗の看板に使われています。森永製菓のキョロちゃんは、「チョコレートボール」の時代からパッケージに登場し、そのまま現在のチョコボールまで使われ続けています。
この2つに共通しているのは、キャラクターの置く場所が決まっていることです。商品のパッケージという定位置があり、その商品が定番として売られ続けるかぎり、キャラクターも自動的に出続けます。毎回「今月はどこに出そうか」と人が判断する運用ではありません。
もっとも、長く続いた理由がこの置き場所だと言い切れる材料は手元にありません。パッケージに居続けた事実は原本で確認できますが、他の要素と比べてどれが効いたかは測れていません。ここで言えるのは、置き場所が決まっていた点が共通しているというところまでです。
自社で育てるなら、使う場所と使い方の決まりを資料にして、誰が投稿し誰が承認するかまで決めておくことになります。担当が変わっても止まらない形にするということです。
参考:森永製菓「チョコボールヒストリー」/不二家「ペコちゃんプロフィール」
自社で育てたキャラクターには、他社から借りる場合にあった工程がありません。
他社から借りる場合は、広告と商品化で窓口が分かれ、制作物ごとに監修を通します。店頭のPOPを1点追加すれば、その分の監修が1回増えます。自社のキャラクターには、この工程がありません。広告にも商品にもSNSにも、許諾を待たずに置けます。
自社で育てるという選択は、費用の話であると同時に、判断の速さの話でもあります。 企画から掲出までに他社の承認が入らないので、出す量とタイミングを自社で決められます。季節の話題に合わせて急に1本出す、といった動きができるのはこちらです。
社内で自社キャラクターの予算を説明するとき、費用の比較だけで話すと「借りたほうが安い」で終わりがちです。速さの違いは、費用とは別の根拠として稟議に書けます。
開発と運用の進め方は企業キャラクターの開発と運用で、作ったキャラクターをSNSで運用する方法はキャラクターを使ったSNS運用で扱っています。
育てたキャラクターを他社に貸すには、相手が迷わず使える資料と、監修する体制が要ります。作れば貸せるのではなく、貸せる形に整えて初めて貸せます。4つのやり方のうち、広げるほど受け取る側に回れるのはこれだけです。

貸す側に回るというのは、ここまで借りる側の工程として見てきたものを、自社が担うということです。
権利者は用途ごとに窓口を分け、制作物を1点ずつ監修し、正規品の証として証紙を出しています。サンリオは可否を「内容を確認のうえ個別に判断しております」としています。借りる側から見れば手間のかかる工程ですが、貸す側から見ればこれが仕事の中身です。
なぜこの工程が要るのかは、貸した後を考えると分かります。他社が自由に描いてキャラクターの印象が崩れると、そのキャラクターを借りたいと思う会社が減ります。使い方の逸脱を止める仕組みが無いと、貸す商売そのものが成り立たなくなります。だから窓口と監修を自社に持つことになります。
いま貸す予定が無くても、使ってよい色や表情、してはいけない表現を資料にしておくと、後から整え直す手間が減ります。自社の商品に使うだけの段階でも、この資料は社内の運用に使えます。
外部に貸す前に、自社で売る場所を持っていた例があります。
ちいかわの場合、公式のオンラインストアが2020年12月、常設店が2021年8月に2店同時で開かれ、外部への許諾が本格化したのは2022年6月からでした。自社の売り場が先で、外部への貸し出しが後という順番です。当社が集めた当事者公式の発表36件と沿革の範囲では、順序が逆になっている事例は見つかっていません。
そして供給を止めない体制が、この順序の裏側にあります。ちいかわでは権利管理、常設店とオンラインストア、グッズ企画、アプリを、それぞれ別の法人が担っています。売り場を持つというのは、そこに商品を出し続ける体制を持つということでもあります。
自社の売り場が先にあると、借りる側から見た相手の立場が変わります。これから売る場所を用意する相手ではなく、既にある売り場に商品を足す相手になります。
ただし、この順序が理由でライセンスが伸びたとは言えません。同じ時期に同じことをして結果が違ったキャラクターを並べていませんし、市場全体の伸びを差し引いてもいません。確認できるのは順序であって、因果ではありません。 順序が逆の事例が存在しないと言い切ることもできません。確認した範囲が36件と沿革1件だからです。
貸す側に回る準備を考えるなら、自社で売れる場所を持てるかを見ることになります。卸だけで自社の売り場を持てない場合、この順序は真似できません。
ここまで見てきた4つを、お金の流れる向きで並べ直します。
他社から借りる①②では、商品化の使用料が商品の値段と料率に作った数を掛けて決まります。広げようとして作る数を増やすほど、払う額が増えます。自社で育てて自社商品に使う③では、外に払う使用料は発生しませんが、受け取るものもありません。
受け取る側に回れるのは④だけです。サンリオが他社から受け取る使用料は、連結売上の49.7%を占めています(2026年3月期)。6年前は38.3%でした。他社に使ってもらう分が、売上の半分近くまで育っています。
そして借りる側の費用を合計してみると、借りたほうが安いとも言えなくなります。広告宣伝費と使用料の両方を開示している年だけを取り出し、年ごとに2つを足して、その合計が真ん中に来る年の値を取りました。

他社から借りて玩具を作るジャックス・パシフィックは売上の17.70%(2019年から2025年の7年)。自社キャラクターが中心のハズブロは15.38%(2020年から2025年の6年)でした。借りている側のほうが、合計では2.3ポイント高くなっています。
広告費だけを見ていたときは、借りる側が4分の1で済んでいるように見えていました。借りることで減ったのは広告費という費目であって、社外へ出ていく金額そのものではありません。ジャックス・パシフィックの場合、広告費で浮いた5.4ポイントほどに対し、権利者への使用料として売上の15.90%を払っています。
なお、ここで言う「借りる側」「自前で持つ側」は、売上の中心がどちらかという意味です。ハズブロも他社から借りている部分があり、使用料を払っています。純粋にどちらか一方という会社は多くありません。
やり方を選ぶときの問いは、「どれが安いか」ではありません。広げた先で自社が払う側に残るか、受け取る側に回れるかです。①②③はどれだけ広げても払う側に残り、④だけが受け取る側に回れます。
ただしサンリオの49.7%は1社の例で、貸す側に回れば同じ規模になるという意味ではありません。ここで言えるのは、4つのうちその道があるのは④だけだということです。
自社がどれを選ぶかは、いま手元にある予算だけでは決まりません。広げた先でどちら側に立っていたいかで決まります。借りると決めるなら、広げるほど払う額が増える前提で採算を見る。育てると決めるなら、いま貸す予定が無くても貸せる形に整えておく。
自社で育てたキャラクターを広げていった事例は、初音ミクの展開、ポケモンの展開、キャラクターのリブランディング、キャラクターの海外展開で扱っています。
参考:サンリオ 決算説明資料

長く続いているキャラクターは、ここまで見た4つのどこに立っているかで、やっていることが違います。自社の商品の看板として使い続けた例、キャラクターそのものが売り物になった例、他社に貸して使用料を受け取る例。自社と立場の近い会社の事例を選ばないと、参考にした数字がそのまま使えません。

キョロちゃんは、「チョコレートボール」の時代からパッケージに登場し、そのまま現在のチョコボールまで使われ続けています。発売当初のパッケージには別のキャラクターが描かれていて、途中でキョロちゃんに替わり、そこから定着しました。

ペコちゃんは、1950年に不二家の店頭人形としてデビューしています(昭和25年)。店の前に立つ人形から始まり、いまはパッケージや店舗の看板に使われています。

ひよこちゃんも同じ形です。チキンラーメンという商品が先にあり、その目印としてキャラクターが働いています。
この3つに共通しているのは、先に売る商品があることです。 キャラクターは商品を覚えてもらうための目印で、それ自体を売っているわけではありません。だから商品が売れ続けるかぎり、キャラクターも出続けます。
自社に売る商品があってキャラクターを検討しているなら、参考にすべきはこの3社のような事例です。今年話題になった事例より、何十年も同じ商品に付いているキャラクターのほうが、置かれている状況が近くなります。
個別の事例はキョロちゃん、ペコちゃん、ヤン坊マー坊、ブラックパンダ、ヒゲのおじいさんの各記事で扱っています。
参考:森永製菓「チョコボールヒストリー」/不二家「ペコちゃんプロフィール」
ポケモン、ちいかわ、サンリオのクロミなどは、いま見た3社とは働き方が違います。これらはキャラクターそのものが売り物で、グッズもゲームも、キャラクターの人気があるから成立しています。
これらの例では、キャラクターの人気がそのまま売上につながります。フォロワー数や投稿の反応が伸びれば、グッズも動きます。だから人気を測る指標が、事業の指標として意味を持ちます。
注意したいのは、このパターンの事例が最も目に入りやすいことです。 キャラクターそのものの露出が多くなりやすく、話題にもなりやすいので、キャラクターマーケティングを調べ始めると最初に出てきます。
けれども自社が先ほどの森永・不二家・日清と同じで、売る商品が別にありキャラクターはその目印という立場なら、ここで使われている指標はそのまま持ち込めません。フォロワーが増えても、それが商品の売上に直結する構造にはなっていないからです。同じ「キャラクターの成功例」でも、何が成功を作っているかが違います。
個別の事例はポケモンの展開、ちいかわのグッズ、サンリオのクロミ、ポケモン30周年の各記事で扱っています。
3つめは、キャラクターを他社に貸して使用料を受け取る立場です。これまで見てきた「借りる側が払う使用料」を、受け取る側から見た形になります。

サンリオが他社から受け取るロイヤリティ収入は、連結売上の49.7%を占めています(2026年3月期の決算説明資料)。自社でグッズを作って売る事業もありますが、他社に使ってもらって受け取る分が、売上の半分近くになっているということです。
参考:サンリオ 決算説明資料
くまモンについては、「2024年の関連商品の売上が1,626億7,323万円」という数字が公表されています。ただしこの金額の読み方には注意が要ります。これは熊本県の売上ではありません。 くまモンを使って商品を作った各社の売上を合計したもので、県が受け取っているお金ではありません。県はくまモンの利用を原則として無償で認めているので、この金額と県の収入は別のものです。
こうした大きな金額は、社内資料でそのまま引用されがちです。「経済効果1,626億円のキャラクター」と書いてしまうと、誰の売上なのかを尋ねられたときに答えられません。金額を出すときは、それが誰の売上なのかまで添えると、資料としての強度が変わります。
個別の事例はくまモンの仕組み、ふなっしーのIP戦略、サンリオの収益構造の各記事で扱っています。
成功例だけを並べると、他社から借りるときに何を確かめるかが見えません。
ゲーム『ペルソナ5: The Phantom X』と初音ミクの周年コラボでは、怒りの矛先がキャラクターではなく進め方に向いた経緯があります。相手を決める前に確かめる条件については、ゴジラの事例で扱っています。
他社のキャラクターを借りるということは、そのファンも一緒に引き受けるということです。商品の出来とは別のところで反発が起きるので、費用の見積もりと同じくらい、誰から借りるかの検討に時間を使うことになります。
3つの立場を並べると、「長く続いている」の中身が立場によって違うことが見えてきます。
キョロちゃんやペコちゃんで起きていたのは商品と一緒に出続けたことで、サンリオやくまモンで起きていたのは他社が使いやすい形に整えたことでした。やっていることが違うので、「続いているキャラクターを参考にする」と決めただけでは、何を真似ればいいかが決まりません。
自社が商品の看板として使うのか、貸して広げるのかを先に決めて、そのうえで同じ立場の会社の事例を見るという順番になります。「愛されるキャラクターを作る」という目標を渡されたときも、自社の立場ではそれが何を指すのかを言葉にしておくと、施策が決めやすくなります。
キャラクターマーケティングのやり方は、キャラクターをどこから調達するかと、キャラクターが手段か商品そのものかで4つに分かれます。
| キャラクターは手段 | キャラクターが商品 | |
|---|---|---|
| 他社から借りる | ① 借りて、自社商品をマーケティングする | ② 借りて、専用の商品を売る |
| 自社で育てる | ③ 育てて、自社商品をマーケティングする | ④ 育てて、他社に貸して使用料を得る |
そして4つは、広げたときにお金がどちらへ流れるかで2つに分かれます。
他社から借りる①②は、広げるほど払う側に残ります。使用料は作った数で決まるので、広げようとして作る数を増やすほど払う額が増え、売れ残っても減りません。自社で育てる④だけが、広げるほど受け取る側に回れます。③には払う使用料がありませんが、受け取るものもありません。
契約前にやっておくことは3つです。
1つめは、自社がこの表のどこに立っているかを決めることです。 決まらないと、権利者に出す企画書の宛先も、見積書のどの行を見るかも決まりません。
2つめは、借りるなら「そのキャラクターが付いているという理由だけで選ばれる商品か」を先に確かめることです。 選ばれるなら宣伝の仕事はキャラクター側が引き受けてくれますが、選ばれないなら中身を伝える宣伝が別に要ります。この判断で、広告予算の見積もりの桁が変わります。
3つめは、育てるなら続く仕組みと貸せる形を先に作ることです。 置く場所を決めて担当が変わっても止まらない形にしておくことと、使ってよい色や表情を資料にしておくこと。貸す予定が無い段階でも、この2つは自社の運用に使えます。
どれも、契約を結ぶ前にできる判断です。そして根拠として使えるのは、決算書に載っている実数と、権利者が公開している手順です。
期間を区切ったコラボの進め方はキャラクターコラボの戦略と事例に、契約の条項や交渉で気をつける点はキャラクターライセンスの仕組みにまとめています。

キャラクターを「自社に合う見栄えか?」だけで作っても、顧客から受け入れられないことがほとんどです。
ユーザーは多くの情報に晒されており、自分が興味を持つものしか見ないからです。
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株式会社NOKID(ノーキッド)はショートアニメ/アニメーションCMの企画・制作・SNSアカウント運用・プロモーションを得意とする東京の企画・制作会社です。キャラクターIPの開発・企画立案・制作からプロモーション企画立案・実施まで話題性を意識したサービス提供が可能です。


NOKID編集部
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。