NOKID編集部
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2024年1月1日にウォルト・ディズニーが95年間守り続けてきたミッキーマウスの著作権が、ついに切れたと話題になったことを覚えていますか?
実際に、パブリックドメイン化(著作権切れ)からわずか48時間以内に、ホラー映画2本とホラーゲーム1本の制作が発表されるなど、世界中のクリエイターが一斉に動き出しました。
しかし、ここで立ち止まって考えてほしいのです。
著作権が切れた=何をしてもOKと思い込んでしまうと、取り返しのつかないリスクを背負うことになりかねません。
なぜなら、ディズニーは著作権というひとつの壁を失っただけであり、ミッキーマウスを守るための他の“壁”は今もしっかりと機能しているからです。商標権、不正競争防止法、そして日本特有の戦時加算問題。これらを理解しないままミッキーに手を出せば、個人クリエイターであれ企業であれ、ディズニーの法務部門から警告書が届く可能性は十分にあります。
そこで今回は、ミッキーマウスの著作権が切れて2年が経ち、ミッキーの活用事例が出た今だからこそ、改めて「何がOKで、何がNGなのか」を調査しました。
ディズニーライセンスの海外での活用事例、そして日本で安全に活用するために知っておくべきポイントまで、実務に役立つ形で整理していきます。
ミッキーマウスの著作権が切れたというニュースを聞いて、多くの人が真っ先に思い浮かべるのは、テーマパークでおなじみの赤いズボンに白い手袋をした、あのカラフルなミッキーマウスでしょう。しかし、この認識こそが最初の危険な誤解です。

2024年1月1日にパブリックドメイン(PD)となったのは、1928年に公開された短編アニメーション映画、蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)とプレーン・クレイジー(Plane Crazy)に登場する初期バージョンのミッキーマウスとミニーマウスです。
アメリカの著作権法では、1977年以前に創作された著作物の保護期間は発行日から95年と定められています。1928年に公開された蒸気船ウィリーは、95年後の2023年12月31日をもって保護期間が満了し、2024年1月1日からパブリックドメインとなりました。
パブリックドメインとは、著作権の保護期間が終了し、誰でも許諾なく自由に利用できる状態を指します。蒸気船ウィリーに登場するミッキーマウスの映像やキャラクターデザインは、原則としてディズニーの許可を得ることなく、商用利用を含めて自由に使えるようになったのです。
ただし、ディズニー自身も公式声明でより現代的なバージョンのミッキーは影響を受けないと明言しています。著作権切れは、あくまで1928年時点のデザインに限定されるという点は、正確に理解しておく必要があります。
参考:Mickey Mouse (at last!) in the Public Domain - HeinOnline Blog
参考:Steamboat Willie Enters Public Domain - New York State Bar Association
1928年の蒸気船ウィリーに登場するミッキーマウスと、現在のミッキーマウスには、明確なデザイン上の違いがあります。この違いを正確に理解していないと、意図せず著作権侵害を犯してしまうリスクがあります。
1928年版ミッキーの特徴は、白黒のデザインで、手袋をしておらず、目は小さな黒い点として描かれ、体型もやや細身で、全体的にシンプルかつラフなスタイルです。
一方、現代のミッキーマウスは、カラーで描かれ、トレードマークの白い手袋を着用し、目は白い部分があるより表情豊かなデザインで、赤いズボンに黄色い靴というおなじみの衣装を身にまとっています。
白い手袋は1929年のThe Opry Houseで初めて登場したデザイン要素であり、2024年時点ではまだ著作権の保護下にあります。したがって、パブリックドメインのミッキーを使う場合は、1928年の蒸気船ウィリーに登場するオリジナルデザインに忠実でなければなりません。
実際に、蒸気船ミッキーを使ったゲームMouseを開発しているFumi Gamesは、トレーラー映像で白い手袋をつけていない点をはっきりと示しており、1928年版と現代版の区別を意識していることがわかります。
参考:Mickey, Disney, and the Public Domain: a 95-year Love Triangle - Duke Law School
参考:Disney’s Public Domain Mickey Mouse Trap - Flaster Greenberg
著作権の保護期間が終了したことで、ディズニーはミッキーマウスに対する支配力を完全に失ったのでしょうか。答えは明確にノーです。ディズニーは著作権以外にも複数の法的手段(商標権・不正競争防止法・著作権延長法)を駆使して、ミッキーマウスというブランドを守り続けています。

著作権と商標権の違いは、キャラクタービジネスに関わるすべての人が理解しておくべき基本です。
著作権はイラストや文章、音楽といった創作された表現そのものを保護する権利であり、保護期間が終了すれば消滅します。一方、商標権は商品やサービスに使う目印(ブランド名やロゴマーク)を保護する権利であり、更新を続ける限り半永久的に維持できます。
ディズニーはミッキーマウスという名称はもちろん、さまざまなポーズや表情のミッキーマウスのイラストを、非常に多くの商品・サービスの区分で商標登録しています。2015年からは動きや図形等をつける位置なども商標登録できるようになり、ディズニーの商標による保護範囲はさらに広がっています。
パブリックドメインになった1928年版ミッキーマウスのデザインを使って映画やゲームを制作すること自体は可能ですが、そのキャラクターにミッキーマウスという名称を使用することは、ディズニーの許諾がなければ商標権侵害に問われるおそれがあるのです。
実際に、蒸気船ミッキーを使ったホラー映画を制作したスティーブン・ラモルテ監督は、Varietyの取材に対して法務チームと連携して問題がないよう注意を払っていると述べ、作品内ではキャラクターをミッキーマウスではなくスチームボート・ウィリーと呼ぶことで商標権の問題を回避しています。
参考:Copyrights, Trademarks, and a Certain Animated Mouse - Greenspoon Marder LLP
参考:Balancing Mickey Mouse and the Mutant Copyright - Marquette Law Scholarly Commons
参考:商標「DISNEY\ディズニ-」の詳細情報 - Toreru商標検索
商標権に加えて、不正競争防止法もディズニーの強力な武器となります。この法律は、他人の商品やサービスと混同を生じさせるような行為を禁止しています。
たとえば、1928年版ミッキーのデザインを使った商品を販売する際に、ディズニーの公式商品であるかのような印象を与えるパッケージデザインや宣伝文句を使用すれば、不正競争防止法に抵触するおそれがあります。
グッズの販売には特に注意が必要です。DVDのようにコンテンツそのものを提供する場合と、Tシャツやトートバッグのようにキャラクターを商品の目印として使用する場合では、法的評価が大きく変わりえます。後者の場合、商標的使用に該当すると判断されれば、たとえ1928年版のデザインであっても商標権侵害が認められるリスクがあります。
蒸気船ミッキーのホラー映画Mickey’s Mouse Trapのトレーラーには、以下のような免責条項が明確に表示されています。
DISCLAIMER: THIS IS NOT NOT A DISNEY FILM OR PRODUCTION. IT IS NOT TO AFFILIATED OR ENDORSED BY DISNEY IN ANY WAY.
(これはディズニーの映画または制作物ではありません。ディズニーとは一切関係がなく、ディズニーの承認も受けていません。)
引用:MICKEY'S MOUSE TRAP FILM TEASER TRAILER (2024) - FIRST EVER MICKEY MOUSE HORROR FILM!!!! - YouTube
これは商標権と不正競争防止法の両方を意識した対応です。
参考:DASTAR CORP. V. TWENTIETH CENTURY Fox FILM CORP. - Berkeley Technology Law Journal
参考:人気ゲームの略称及びコスチューム等の無断使用に著名表示冒用行為の成立を認めた「マリカー」事件知財高裁判決について - イノベンティア
参考:EXCLUSIVE: The Minds Behind ‘Mickey’s Mouse Trap’ Discuss The Film’s Legality - The DisInsider
ディズニーと著作権法の関係を語る上で欠かせないのが、ミッキーマウス保護法と揶揄されてきた著作権延長法の歴史です。
アメリカの著作権保護期間は、もともと発行から28年間でした。しかし、ミッキーマウスの著作権が切れそうになるたびに、まるでそのタイミングを狙ったかのように保護期間が延長されてきたのです。
1976年の著作権法改正で保護期間は75年に延長され、1998年のソニー・ボノ著作権延長法でさらに95年に延長されました。この1998年の法律こそがミッキーマウス保護法と呼ばれたものです。
では、今後さらなる法改正でPD化が覆される可能性はあるのでしょうか。
現時点では、著作権保護期間の再延長の動きはないとされています。ただし、著作権法は国によって異なり、法改正は政治的な判断に左右されるため、将来的な可能性を完全に否定することはできません。
参考:Mickey, Disney, and the Public Domain: a 95-year Love Triangle - Duke Law School
海外では蒸気船ミッキーの活用が活発に進んでいますが、日本には独自の法的リスクが存在します。それが戦時加算の問題です。この論点は、日本国内で蒸気船ミッキーの活用を検討するすべての人にとって避けて通れない最重要テーマです。
戦時加算とは、第二次世界大戦中に日本が連合国の著作物を適切に保護しなかったことへの補償として、連合国の著作物の保護期間に約10年5カ月を上乗せする制度です。この制度はサンフランシスコ平和条約に基づいており、日本独自のものです。
つまり、アメリカでは2024年1月1日にパブリックドメインになったミッキーマウスであっても、日本ではこの戦時加算が適用される余地があり、保護期間が延長されうるのです。
参考:How Mickey Mouse entered the Public Domain in 2024 – but not in Germany - COMMUNIA Association
専門家の間でも見解が分かれる状況で、実務上どのように判断すればよいのでしょうか。
まず押さえるべきは、日本では戦時加算が適用されうる以上、アメリカと同じ感覚で蒸気船ミッキーを使うことにはリスクが伴うという事実です。特に商品を大量生産して販売するような事業では、後から著作権侵害と判断された場合の損害が大きくなるため、より慎重な判断が求められます。
対応として不可欠なのは、知的財産権に詳しい専門家への事前相談です。相談の際には、利用する具体的なデザイン(1928年版に限定されているか)、利用の態様(映像作品か、グッズか、イベントか)、商業的規模(個人の創作活動か、大量生産・販売か)といった情報を整理しておくと、より具体的な助言を得ることができます。
なお、仮に戦時加算が適用されないという法的判断を得た場合でも、商標権や不正競争防止法の制約は別途存在することを忘れてはなりません。著作権の問題をクリアしただけでは、安全とは言い切れないのです。
参考:Disney’s Public Domain Mickey Mouse Trap - Flaster Greenberg
ここでは実際に蒸気船ミッキーを活用した事例を分析し、成功と失敗の境界線を具体的に見ていきます。
2024年1月1日のPD化からわずか48時間以内に、少なくとも2本のホラー映画と1本のホラーゲームの制作が発表されました。このスピードは、多くのクリエイターがこの日を待ち構えていたことを物語っています。
最初に注目を集めたのは、ジェイミー・ベイリー監督によるMickey’s Mouse Trapです。アミューズメントアーケードを舞台に、ミッキーマウスのマスクをかぶった殺人鬼が若者たちを襲うスラッシャー映画で、ベイリー監督は「蒸気船ウィリーのミッキーが人を殺すのは馬鹿馬鹿しいが、楽しんで作った」という趣旨のコメントをしています。
“We just wanted to have fun with it all. I mean it’s Steamboat Willie’s Mickey Mouse murdering people. It’s ridiculous. We ran with it and had fun doing it and I think it shows.”
(蒸気船ウィリーのミッキーマウスが人を殺すんだ。馬鹿馬鹿しいよね。でも、私たちはそれを突き詰めて楽しみながら作ったし、それが作品に表れていると思う。)
引用:Trailer for Mickey Mouse Slasher Film Drops on Same Day ‘Steamboat Willie’ Character Enters Public Domain - THE Hollywood REPORTER
同時期に、The Mean One(グリンチのパロディ)を手がけたスティーブン・ラモルテ監督も、蒸気船ウィリーを題材としたホラーコメディ映画の制作を発表しています。
ゲーム分野では、Nightmare Forge Gamesが協力型ホラーゲームInfestation: Originsを発表し、蒸気船ウィリーのミッキーマウスが敵キャラクターとして登場します。
これらの作品に対して、ディズニーが法的措置を取ったという報告は現時点では確認されていません。その理由は明確です。
これらの作品はいずれも、
| ・1928年版のデザインのみを使用し ・現代のミッキーマウスのデザイン要素を含めず ・ディズニー(公式)との関連を明確に否定する免責条項を表示しており ・ミッキーマウスの名称を商標的に使用していない |
からです。
法的にクリアしていれば何をしてもいい、というわけではありません。PDキャラクターの活用には社会的リスクも存在します。
くまのプーさんのホラー映画「Blood and Honey」は法的には問題なくリリースされましたが、一部のファンや評論家から「子供たちの思い出を汚す行為」、「創作的な意義がない」という批判を受けました。
つまり、パブリックドメインの意義は「クリエイターが本当にクリエイティブなことをすることにある」という疑問が呈されているのです。
ミッキーマウスの場合、このリスクはさらに大きくなります。ミッキーはディズニーの象徴であると同時に、世界中の子供たちにとっての友達でもあります。その存在を単なる話題作りのために利用していると受け取られれば、SNSでの炎上やブランドイメージの毀損につながりかねません。
特に日本市場では、ディズニーファンのコミュニティが強固であり、推しとしてキャラクターを大切にする文化があります。
蒸気船ミッキーを活用する場合は、法的な安全性だけでなく、ファンの感情やキャラクターへのリスペクトも考慮した設計が求められます。
一方で、蒸気船ミッキーをホラー以外の方向で活用し、ポジティブな反応を得ている事例もあります。
Fumi GamesのMouseは、1920年代のアニメーションスタイルを忠実に再現したFPSゲームであり、レトロな世界観とゲームプレイの新しさを融合させた作品として注目を集めています。
好意的に受け止められている理由のひとつは、1920年代のアニメーション文化へのリスペクトが感じられる点にあります。
また、The Vanishing of S.S. Willieは、1928年の無声ドキュメンタリーを模したスタイルの短編ホラー映画であり、蒸気船ウィリーの世界観を活かしたクリエイティブな作品として評価されています。
これらの活用事例とディズニーからの法的措置を受けていない事例を横断的に分析すると、4つの共通ルールが浮かび上がります。
・1928年版のデザインを忠実に使用すること
・ディズニーとの関連を明確に否定する免責条項を表示すること
・ミッキーマウスの名称を商標的に使用しないこと
・キャラクターやその時代背景へのリスペクトを作品に反映させること
2023年にくまのプーさんのPD化に伴って制作されたホラー映画「Winnie-the-Pooh: Blood and Honey」の前例からもわかるように、PDキャラクターをホラー化するという手法はもはやひとつのジャンルとして確立しつつあります。
しかし、法的な安全性と社会的な評価の両方を得ている作品は、いずれも上記4つのルールを守っています。
参考:EXCLUSIVE: The Minds Behind ‘Mickey’s Mouse Trap’ Discuss The Film’s Legality - The DisInsider
ミッキーマウス著作権切れとディズニーのライセンス事情についてのまとめ
ここまでのポイントをまとめます。
2024年1月1日に著作権が切れたのは、1928年の蒸気船ウィリーに登場する初期デザインのミッキーマウスだけであり、現代のカラフルなミッキーマウスは依然として著作権の保護下にあります。著作権が切れても、ディズニーが保有する商標権は半永久的に存続し、ミッキーマウスの名称やロゴを無断で商品に使用することは商標権侵害となりえます。
日本においては、戦時加算や著作物の種類の解釈によって保護期間が異なり、最長で2052年まで著作権が存続しうるため、国内での利用には特に慎重な判断が求められます。
海外では蒸気船ミッキーを活用したホラー映画やゲームが複数制作されており、1928年版デザインの使用、名称の回避、ディズニーとの混同を避ける免責表示という共通ルールが形成されつつあります。
ミッキーマウスの著作権が切れたことは、なんでも自由にやっていいという許可証ではありません。正しい知識と創造性をもって、新しい価値を生み出す機会が開かれたというメッセージなのです。
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NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。