NOKID編集部
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コラボ商品が当たるかどうかは、運や相性の問題だ——多くの人がそう信じています。良い相手と組めば当たり、外せば滑る。だから、当たったときも外したときも、理由をうまく説明できません。
でも、これは正確ではありません。
当たるコラボには、組む前の段階で共通していることが一つあります。隠れた内部情報でも、特別な人脈でもない、たった一つの条件。それを確かめるだけで、当たりはずれは組む前から大きく傾きます。ところが、この条件を見ている担当者は、ほとんどいません。
理由はシンプルです。この業界で出回る資料は、提案書もIPランキングも事例集も、どれも「そのIPがこれまで何を当ててきたか」でできています。過去の実績しか手元にないから、誰もが同じ場所を見て相手を選び、当たりはずれを運のせいにしてきました。有名IPと組んだのに売れ残ったとしたら、それは判断力のせいではなく、見るべき場所を教える物差しが存在しなかったからです。
その"見るべき一点"を、いちばんくっきり見せてくれるのがゴジラです。ゴジラのコラボは、なぜあれほど当たって見えるのか。担当者の目線でこの二年の動きを追うと、当たりはずれを分ける一つの条件が浮かび上がってきます。それがわかると、次に組もうとしているIPが当たる側なのか、契約の前に見当をつけられるようになります。
その条件が何で、なぜ当たりを左右するのか。ここから、ゴジラの展開を並べながら、事実と筆者の読み筋に分けて解いていきます。読み終えたとき、あなたはもう、コラボの当たりはずれを運とは呼べなくなっているはずです。
ゴジラは2024年から2026年にかけて、食品・ゲーム・体験施設・展示・海外ライセンスと、性質の異なる領域へ次々と展開を広げています。一つの大ヒットに頼るのではなく、触れる場所そのものを増やしているのが特徴です。
| 領域 | 主な展開 | 相手・場所 | 時期 |
|---|---|---|---|
| 食品 | ゴジラバーガー | 日本マクドナルド | 2024年1月 |
| 食品 | コラボスイーツ2品 | モンテール | 2025年4月 |
| 食品 | ゴジラシュー | ビアードパパ | 2026年7月 |
| ゲーム | 公式DLC | マインクラフト | 2024年1月 |
| ゲーム | 大型コラボ | Call of Duty: Mobile | 2026年4月 |
| 体験 | 常設アトラクション・ミュージアム | ニジゲンノモリ | 常設 |
| 海外 | 劇場配給・ライセンス | 北米 | 2023年〜 |
領域がきれいに散らばっているのが見えてきます。一つずつ見ていきます。
身近なところでは食品が目立ちます。スイーツメーカーのモンテールは、ゴジラと共に1954年生まれという縁を打ち出し、「ともに生誕70周年」を掲げてコラボしました。
このコラボ自体が二段構えになっています。2024年11月に始まった第1弾は、定番商品にゴジラ・キングギドラ・モスラなどをあしらったパッケージ9種。そのうえで第2弾として、ゴジラのゴツゴツした皮膚感を黒い生地で再現した「ゴジラシュー・ダークショコラ」と「ゴジラエクレア・ダークショコラ」の2品(各237円)が投入されました。第2弾の発表とスペシャル動画の公開は2025年3月18日に告知され、販売は同年4月1日から1か月間でした。
一度の露出で終わらせず、半年かけて二度立ち上げる。この作り方は、後で見るゴジラ全体の動き方の縮図になっています。
日本マクドナルドは2024年1月5日にゴジラバーガーを発売し、X(旧Twitter)では往年のファンに向けたオマージュ表現で発信しました。平成VSシリーズの細かなネタを説明なしで繰り出す投稿はファンの間で話題になり、同社広報はJ-CASTの取材に、ゴジラの世界観を大切にしてチームで投稿を考えていると答えています。
70年の歴史を持つキャラクターを、最新のコラボ商品として日常の購買接点に置く。ファンへの目配せと、新規客への露出を同時に取りにいく置き方です。
デジタル領域にも同時に広がっています。世界的なゲーム『マインクラフト』には、東宝監修の公式コンテンツ「ゴジラ」が2024年1月31日にマーケットプレイスで登場しました。価格はゲーム内通貨で1,510マインコイン、「逃げる」「戦う」「抗う」「捉える」という4つのテーマで遊べる設計です。
スマホゲームでは『Call of Duty: Mobile』が、2026年4月23日開始のシーズン4「永遠の牢獄」で「ゴジラxコング」との大型コラボを実装しています。
食品とは客層もプラットフォームも違うゲームの中に、同じ時期にゴジラが顔を出している。触れる人の層を意図的に分散させ、別々の入り口からゴジラに出会わせる配置だと読めます。
2026年の夏には、シュークリーム専門店のビアードパパが、ゴジラとの初コラボ商品「ゴジラシュー」を2026年7月1日から7月末まで全国の店舗で販売します。竹炭を練り込んだ漆黒のシュー生地でゴジラの質感を表し、中には対照的に苺クリームを詰めた一品で、価格は390円です。
全国に店舗を持つチェーンが、1か月にわたってゴジラを売り場に並べる。この夏の露出が、後で触れる新作映画の公開と一本につながっていきます。いまは「夏のあいだ、全国のシュークリーム店でゴジラに会える」という露出が増えた、と押さえておけば十分です。
視野を広げると、海外でも同じことが起きています。『ゴジラ-1.0』は北米2,600館超で公開され、最終興収は5,641万ドル(約84億円)に達しました。東洋経済の表現では、邦画実写として歴代最高の北米興収です(東宝公式は外国語映画として歴代3位と整理しています)。
背景には、2023年7月に設立されたTOHO Globalと、北米配給を担う子会社の連携があります。
ここまでは、いまゴジラがどこに出ているかという話です。ゴジラの伸ばし方の核心は、この露出が一度きりで終わらず、次の催しが次々と控えているところにあります。
参考:ビアードパパ初コラボ「ゴジラシュー」2026年7月全国販売 - Fashion Press/『ゴジラ-1.0』北米興収5,641万ドル・邦画実写歴代最高 - 東洋経済オンライン
ここがこの記事の中心です。ゴジラの強さは、過去の人気そのものよりも、この先も人が集まる催しが途切れずに用意されていることにあります。次の話題がいつも控えているから、コラボ相手はそこに乗れば波に乗れる。そしてその催しは、ばらばらに散っているのではなく、後で見るように新作映画という一点へ向かって束ねられています。まず「途切れない」ことから見ていきます。
ゴジラには、淡路島のアニメパーク「ニジゲンノモリ」に世界初の常設「ゴジラミュージアム」があります。全長約120メートルの実物大ゴジラを使ったアトラクション「ゴジラ迎撃作戦」に併設され、映画の特撮美術を手がける東宝映像美術の協力で、歴代怪獣の展示やジオラマが並びます。
大事なのは、この施設が「ある」ことではなく、そこで催しが次々と更新されていることです。いまは、アトラクションのオープン5周年を記念した「モスラ特別展」を2026年9月13日まで開催しています。2025年12月に始まり、9月まで会期が続く長丁場です。周年を口実に、常設施設の中でまた新しい展示が立ち上がっているわけです。
そして夏にはビアードパパとのコラボ、秋には新作映画が控えています。一つの催しが終わる前に、次がもう動いている。ゴジラは、人が集まる機会を間を空けずに並べ続けています。
ここからは筆者の読み筋です。コラボ相手の企業にとって、いちばん怖いのは「組んだあとに、そのIPが静かになってしまうこと」です。商品を出しても、世の中でそのIPの話題が途切れていれば、売り場で手に取ってもらえません。
逆に、コラボの時期の前後に特別展や新作といった催しが続いていれば、商品が並んでいる最中も世の中の話題が切れません。ビアードパパの「ゴジラシュー」が夏に出て、秋に新作映画が控えている。この並びなら、商品が売れている最中に映画の話題が重なり、追い風が吹きます。コラボが当たるかどうかは、相手のIPに次の話題が控えているかどうかで、かなり決まります。
ゴジラは、その条件を満たす見本です。常設施設で催しを更新し続け、新作映画という大きな山も控えている。組む相手として見れば、これほど「次がある」と確認しやすいIPはそう多くありません。
そして、ここまで見てきた「途切れない催し」は、ただ切れ目なく続いているだけではありません。続いていく催しの中でも、いちばん大きな山が2026年11月の新作映画で、夏のコラボも特別展も、この公開へ向けて時期が重なっています。映画が出るころには世の中がゴジラで温まった状態になる。次はその「一点へ集まる」動きを、事実と読み筋に分けて見ていきます。
東宝は、山崎貴監督による新作『ゴジラ-0.0』を2026年11月3日に公開すると発表しています。11月3日は1954年に初代『ゴジラ』が公開された「ゴジラの日」で、北米でも同じ週の11月6日に公開される、日本製作のゴジラとしては初の日米同時期公開です。
中身も話題を呼ぶ要素がそろっています。アカデミー視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』の2年後を描く直接の続編で、神木隆之介と浜辺美波が続投します。邦画として初めて「Filmed For IMAX」の基準で制作され、ティザー映像では、ゴジラがニューヨークの自由の女神に迫る場面も映りました。
タイトルとロゴは2025年11月のイベントで、公開日はその後にと、情報が小出しに解禁されています。そのたびにファンの間で話題が積み上がる。公開そのものだけでなく、公開までの過程が一つひとつ催しとして働いているわけです。
時期を並べてみます。夏の7月にはビアードパパの「ゴジラシュー」が全国の店舗に並び、ゲームのコラボも続き、常設のミュージアムは年中開いている。そして11月3日に新作映画が公開される。これらは事実として、映画公開へ向かう数か月の間に重なって配置されています。
ここからは筆者の見方です。この映画公開という確定した予定を先に持っているからこそ、東宝はその手前に露出を積み上げる形でコラボを配置できます。公開のころには世の中がすでにゴジラで温まっている。映画の宣伝をゼロから始めるのではなく、温まった土台の上に公開を乗せられる。露出の一つひとつが、最後の本丸に効くように置かれている、と読めます。
もう一段、読み筋を続けます。コラボ商品は、相手の企業が自社の予算で作り、宣伝します。ビアードパパは自分の費用で「ゴジラシュー」を開発し、店頭で売り、SNSで発信する。その一つひとつが、結果としてゴジラの露出を全国に広げます。
これはビアードパパだけの話ではありません。マクドナルドは自社のTVCMでゴジラ映画のオマージュを流し、モンテールは古舘伊知郎を起用したスペシャル動画を制作・公開しました。いずれも制作費を出しているのはコラボ相手の側です。ゴジラはその間、ライセンスを許諾し監修する立場にいます。
つまり東宝はライセンス料を受け取りながら、同時に相手の費用でゴジラの名前を広げてもらえる。それが映画公開の数か月前に集中していれば、相手のコラボ活動がそのまま映画の前宣伝の役割も果たすことになります。東宝がそこまで明言しているわけではありませんが、決まっている公開日と各コラボの時期を並べると、そう読める形になっています。
参考:世界初の常設「ゴジラミュージアム」 - ニジゲンノモリ プレスリリース/ゴジラミュージアムで「モスラ特別展」を2026年9月13日まで開催 - ニジゲンノモリ公式/『ゴジラ-0.0』2026年11月3日公開・邦画初Filmed For IMAX - AV Watch
ここから視点が一度切り替わります。ここまでは「組む相手をどう選ぶか」という、コラボする側の話でした。ここからは、選ばれる側——IPを預かる東宝が、その「次がある状態」をどうやって作っているかを見ます。自分のIPを持っている人には、こちらが本題になります。
なぜ東宝は、これだけの催しを次々と並べ、同じ方向にそろえて動けるのか。ゴジラを専門に担う社内組織が、依頼を待たずに自分から動き、判断を一社で下しているからです。
東宝には、ゴジラ専従の部署「ゴジラルーム」があります。2019年に新設され、組織名にゴジラが冠されたのは同社の歴史で初めてのことでした。
現在は14名・4グループ(戦略/企画制作/ライセンス/マーチャンダイジング)の体制で動いています。映画もコラボも施設も、この一つのチームが見渡しているからこそ、どの展開がいつ来るかを一元的に把握できます。
この組織には「ゴジラ憲章」と呼ばれる、ブランドの約束と原則を定めた取り決めがあります。コラボや商品化の依頼が来たとき、これに照らしてブランドを損なわないかを確認し、外れるものは断る。逆に、毀損のおそれがなければ幅を持たせて柔軟に通す。広げると同時に、広げる際の基準を持っているということです。基準があるからこそ、量を出してもブランドがぶれません。
ゴジラルームのもう一つの特徴は、コラボを待つのではなく、自分から仕掛けることです。東宝の採用サイトでは、タイアップ担当者が版権元の役割を「相性が良さそうな企業に営業活動を行う攻めの役割」と表現しています。
実際、通常は公開3か月前に始めるタイアップ営業を、『ゴジラ-1.0』では公開10か月前から始動しました。担当者本人は、約200社のコラボ先と組み、東宝の歴史で歴代No.1のタイアップ件数を実現できた、と振り返っています。
公開10か月前から動けるのは、公開日という大きな山が先に決まっているからです。その山に向けて、自分から相手を選んで早めに声をかける。受け身で依頼を待つのではなく、決まっている予定を軸に先に動くからこそ、次々と催しを並べていけます。
なぜここまで速く、自由に動けるのか。出資構造に理由があります。多くの大型コンテンツは、複数の企業が出資し合う製作委員会方式で作られます。リスクを分散できる賢い仕組みですが、関わる企業が増えるぶん、意思決定に合意の手間がかかります。
ゴジラは、東宝が単独で抱える形を取っているため、判断を一社で下せます。だからこそ、専従組織が憲章という一つの基準で、速く一貫した展開を回せる。意思決定者が一つだから、食品からゲーム、展示、海外まで、ばらばらに見える施策に同じトーンを通せます。
ただし、単独で抱えるということは、うまくいかなかったときの損失も一社でかぶるということです。製作委員会なら分散できる興行不振のリスクを、東宝は自分で引き受けています。専従組織を置き、3年で約150億円規模の投資を続ける体力も要ります。
ここを見ずに「ゴジラのように多面展開しよう」と考えると、足元をすくわれます。ゴジラの伸ばし方は、専従の人員と継続投資という土台があって初めて成立している。この前提を踏まえたうえで、では体力に限りがあるIPは何を真似できるのか。ここが本題です。
参考:東宝が「ゴジラルーム」を新設 - 文化通信/ゴジラルーム14名・4グループ体制とゴジラ憲章 - 映画ナタリー/ゴジラのタイアップは攻めの役割・歴代No.1のタイアップ件数 - 東宝採用サイト
冒頭で約束した「たった一つの条件」の答えを、ここで確定させます。組む相手のIPに、次の話題が控えているか。これだけです。契約の前に確かめるのは、この一点で足ります。
以下に四つ並べますが、増えたわけではありません。一つ目が、いま確定させた「その一点」そのもの。残る三つは、その一点を裏側から見たときに出てくる応用です。あなたがコラボする側なら、一つ目だけ読めば足ります。IPを預かる側なら、同じ原則を今度は「自分が選ばれる側」として使うことになるので、二つ目以降が効いてきます。
一つ目は、コラボ相手のIPを選ぶとき、過去の人気だけでなく、この先に人が集まる催しが控えているかを見ることです。次の特別展、次の新作、次のイベントが用意されているIPなら、自社のコラボもその波に乗れます。逆に、かつて大ヒットしても次の話題が続いていないIPは、組んでも盛り上がりに乗れません。組む前に「このIPは半年後、一年後に何が控えているか」を確かめる。これが当たりはずれを大きく分けます。
二つ目は、自分がIPを預かる側なら、次に人が集まる催しを切らさないことです。ゴジラは特別展、周年、新作と、催しを間を空けずに並べていました。同じ規模は無理でも、次のイベント、次の発表、次の小さな企画を、一つ終わる前に次を用意しておく。そうすれば、コラボ相手に「この先も話題が続く」と示せて、組んでもらいやすくなります。見せるべきは過去の量ではなく、次に控えている予定です。
三つ目は、バラバラに展開せず、一つの節目に寄せることです。ゴジラのコラボや催しは、新作映画の公開へ向かって時期が重なっていました。自分のIPでも、新商品の発売や周年といった節目を一つ決め、その手前に催しを集めるだけで、一つひとつが本丸に効きます。散発的に出すより、狙いを定めて重ねるほうが波になります。
四つ目は、依頼を待つ受け身をやめ、同時に広げ方の基準を持つことです。ゴジラルームは自分から営業をかけ、その一方でゴジラ憲章という線引きを持っていました。こちらから相性のよい相手に声をかけ、「これだけは守る」を数行決めておく。攻めと守りをセットにすれば、量を出してもブランドはぶれません。
ゴジラのコラボがよく当たって見えるのは、運や知名度だけでなく、東宝が次に人が集まる催しを切らさず並べ、それらを新作映画という一点に寄せているからです。
次の話題が控えているから、コラボ相手はその波に乗って勝ちやすい。相手の費用で露出が全国に広がり、すべてが映画公開へ近づいていく。この流れを専従組織が束ね、東宝が一社で抱える形が、速さと一貫性を支えています。
施設の規模や投資額は真似できないかもしれません。それでも、次の話題があるIPと組むこと、自分のIPなら次の催しを切らさないこと、一つの節目に展開を寄せること、待たずに仕掛けて基準で守ること。これらは、預かっているIPの大きさに関わらず、明日から検討できるはずです。
ゴジラが見せているのは、コラボを運任せで当てるのではなく、次の話題を切らさないことで「当たりやすくする」仕組みです。
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