NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。
アニメやIP作品を復活させようとすると、「どこを変えて、どこを残せばいいのか」「ファンの期待を裏切らないか」など、さまざまな懸念が頭をよぎりますよね。
「昔のアニメ作品は、今の若者に刺さらない。」
こんな風に思ったことはありませんか?じつはそれ、もう過去の話と言える状況なのです。
今の10〜20代は「親世代が観ていたアニメ」に興味を持ち、自ら過去作を探して視聴する傾向が広がっています。リメイクは「懐かしい作品を再び届ける」というだけでなく、新しい世代へ橋渡しするための絶好のチャンスでもあるのです。
リメイクするアニメ作品に必要なのは、思い出を守るようなノスタルジー効果に加えて、「今ならではの価値をどう加えるか」なのかもしれません。
そこで今回は、2024〜2025年にリメイクされたアニメ作品の事例分析を行い、これからのアニメ作品に求められることのヒントとなるよう解説していきます。
まずは自社が持つIPの中で、“昔好きだった人”と“今初めて出会う人”が同じ作品を語れるような状況にできないか、棚卸ししてみてください。
まず、2024〜2025年にどんなリメイク作品が発表されたのか、整理してみましょう。
・らんま1/2(2024年10月〜)
・キャッツ・アイ(2025年9月〜)
・真・侍伝 YAIBA(2025年4月〜)
・地獄先生ぬ~べ~(2025年7月〜)
・魔神創造伝ワタル(2025年1月〜)
なぜリメイク作品が毎年公開されるのでしょうか?筆者は動画配信サービスの普及でアニメが一般化したことや、昨今においては自身もアニメを視聴する親世代と、その子ども達の双方にアピールしやすいことも関係していると考えられます。
SHIBUYA109 Lab.が調査した結果によれば、今の10代後半〜20代前半に「ノスタルジー消費」という「彼らの両親と同じくらいの世代が昔見ていたアニメに興味を持つ」という現象が起きていることもわかっています。
昔からリメイク作品は公開されていましたが、今は特に相性の良いタイミングなのかもしれません。
ノスタルジー消費って、具体的にどういうことでしょうか?
SHIBUYA109 Lab.のトレンド予測2025で注目されたのは、若者の「ノスタルジー消費」の拡大です。これを理解するために、実際の例を見てみましょう。
「お母さんに勧められて、らんま1/2見てみた。めっちゃ面白い!」
「昔のアニメの方が、恋愛描写がリアルかも」
「平成のアニメって、今見ても全然古くない」
つまり、古いけど新鮮という感覚なのです。これは、すごく重要な違いです。
例えば、らんま1/2の「水をかぶると女の子になる」という設定を挙げると、昔は単純に「面白い設定だね」で終わっていました。ですが今は「ジェンダーとは何か?」という以前より身近なテーマとして見方が変わります。
この変化に気づいたアニメ会社が、次々とリメイク企画を立ち上げた流れです。「今なら、昔の作品も新しい価値で受け入れられるかも」と考えたわけです。
ここで、すごい数字をお見せします。帝国データバンクの「アニメ制作市場動向調査2025」によると、2024年のアニメ制作市場は3,621億円と過去最高を更新しました。

そして、この成長を支えているのが、じつは過去作のリメイク・リバイバル作品なんです。なぜリメイク作品を出すのでしょうか?理由は明確です。
知名度ゼロから始めなくていい
新作アニメの場合、「この作品って何?」から説明しないといけません。ですが、リメイクなら「あの有名な〇〇の新作だよ」で済みます。宣伝費を大幅に節約できるんです。
確実な視聴者が一定数いる
昔のファンという「確実にお客さんになってくれる人たち」が最初からいます。新作だと「誰が見てくれるかわからない」というリスクがありますが、リメイクにはそれがありません。
海外展開する際にアピールしやすい
海外で作品を売る時、新作だと「これはどんな話?人気になるの?」という部分から説明が必要ですが、リメイクなら「日本で昔から愛されている名作」という看板があります。
ですが、重要なポイントがあります。それは、すべてのリメイク作品が成功しているわけではないということです。成功と失敗の違いには、明確な理由があるのです。
同じリメイクでも、前述のらんま1/2とは異なり、キャッツ・アイには複雑な反応が多かったのです。この違いはどこから生まれたのでしょうか?それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

「林原めぐみさん続投決定!」
この発表があった瞬間、TwitterやXが「感動で泣いた」「神対応すぎる」という投稿で埋め尽くされました。なぜ、声優の続投発表だけで、これほど大きな反響があったのでしょうか?
答えは簡単です。ファンにとって声優は「キャラクターの印象を左右する存在」だからです。
考えてみてください。あなたの大好きなキャラクターの声が、急に全然違う人になったら?恐らく、「これは私の知ってるキャラじゃない」と感じると思います。それくらい、アニメファンにとって声優は重要なのです。
ですが、なぜらんま1/2の制作陣は続投を選んだのでしょうか?
じつは、過去に声優変更で炎上したリメイク作品があったからです。声優が変わると、コアなファンが離れていってしまう…これは業界では有名な話でした。
らんま1/2の制作陣は、結果的に「声優変更リスク」を避けられたことでプロモーション戦略の土台を固めました。
「でも、声優さんって年齢もあるし、続投って難しいんじゃないの?」
その通りです。実際、他の作品では年齢や体調を理由に声優交代せざるを得ないケースも多いのです。だからこそ、林原めぐみさんをはじめとする旧キャストが続投できたことは、制作陣にとって「最大の武器」になったと言えます。
話題になるのと、実際に最後まで見てもらえるのは、全然違います。らんま1/2は、にじめんが実施した「2024年秋アニメユーザー視聴継続ランキング」で1位を獲得しています。
「視聴継続ランキング1位って、どういうこと?」
これは「最初は話題だったけど、途中で飽きて見なくなった」という作品ではなく、「最後まで楽しく見続けられた」作品だということです。つまり、本当の意味で愛された作品なんです。
なぜ、らんま1/2は最後まで視聴者を引きつけることができたのでしょうか?
昔のファンが「あ、これこれ!この感じ!」と思える要素をきちんと残しました。ですが、ただ同じことをするのではなく、現代の技術で美しく描き直したのです。
「この作品を初めて見る人」のことも、きちんと考えられています。第1話で世界観をわかりやすく説明し、キャラクターの関係も分かりやすく描かれています。
各話に「今回はここが面白い!」という明確な見どころを作りました。SNSで「今回の〇〇が最高だった」と話題になるように計算されていたのです。
特に注目すべきは、アニメ!アニメ!の総選挙「一番好きなTVアニメ」でも1位を獲得していることです。
これは一時的な話題性ではなく、継続的な支持を得ていることの証明です。「最初は話題だったけど、結局忘れられた」という作品ではないんです。
らんま1/2の販促戦略で注目すべきは「デジタルとリアルの組み合わせ」も挙げられます。
・Netflix独占配信による世界同時展開
・放送直後配信でリアルタイム視聴体験の維持
・海外ファンとの同時体験によるグローバルコミュニティ形成
・コラボカフェ「猫飯店」の全国巡回展開
・渋谷・心斎橋・名古屋での段階的話題拡散
・ファンの「聖地巡礼」行動の促進
では、なぜデジタルとリアルを組み合わせる必要があるのでしょうか?答えは、今の視聴者たちの行動パターンにあります。
1.オンラインで作品を見る
2.オフラインで体験を深める
3.SNSでその体験をシェアする
この循環を作ることで、ファンのエンゲージメント(愛着度)を何倍にも高めることができるんです。
実際に、コラボカフェ「猫飯店」では、ファン投稿が溢れ、それをきっかけに作品公開を知る人や好意的な印象が広がる好循環が生まれました。
「友達と一緒にらんま1/2カフェ行ってきた!」
こうした投稿(UGC)は、お金をかけた広告よりも効果的な宣伝になります。
従来の「会社が一方的に宣伝する」スタイルから、「ファンが主役になって盛り上げる」スタイルへの転換を示す事例とも言えるでしょう。
関連記事:TikTok広告で使うUGC(風)動画とは?効果的に活用する方法を紹介

キャッツ・アイから学べるのは、情報の出し方と接点の増やし方次第で、昔のIPでも新しい熱量を作れるということです。
まず、新作は三姉妹の声優を一新して発表し、コメント付きの記事や特設ページで“今の作品像”を丁寧に伝えました。声の変更は賛否が出やすいテーマですが、誰がどの役を演じ、どんな狙いなのかを正面から説明することが期待値を整える近道になります。
実際、小松未可子さん・小清水亜美さん・花守ゆみりさんの起用は、記事や公式発表でわかりやすく告知され、作品の方向性が共有されました。
そして、IP作品同士のコラボも行っており、古いファンと新しい層を同時に呼び込む狙いも感じます。キャッツ・アイは「ルパン三世」と公式コラボを行い、作品世界を並走させることで話題を大きくしました。

物語の舞台設定やクリエイター情報がまとまった公式サイトでは、単なる人気IPとのコラボという見せ方ではなく、親和性のあるコラボだと印象付ける説明(コラボ制作の意図)まで記載されています。
関連記事:キャラクターを用いたコラボ戦略と活用事例から成功の秘訣を探る
参考:『キャッツ♥アイ』完全新作アニメ豪華声優陣が一挙発表!ティザービジュアル第二弾&予告編も解禁 - ディズニープラス

口コミの面から見ると、ぬ〜べ〜は「懐かしい部分が残っている」という声と、「キャラの個性がが薄まった」という声の両方が出ています。声優の一部続投やホラー演出が評価された一方で、「平成版の怖さには届いていない」という意見もありました。
つまり、ファンは良い面も悪い面もはっきり感想を共有しているのです。
注目すべきは、賛否の声がどちらもSNSや記事で多く取り上げられ、結果として作品の存在感を強めている点です。ニコニコの夏アニメ人気投票で6位という悪くない位置にランクインしたこともその証拠です。
ここからのヒントは、「批判も含めて口コミが続く作品は、それだけ人の関心を集めている」という点です。リメイクは“全員に褒められる”より“多く語られる”ことが長く残る条件だと学べます。

YAIBAから学べるのは、派手な盛り上がりがなくても「安定して見てもらう仕組み」を整えることが強みになるという点です。放送は土曜17:30という夕方の家族が集まる時間帯に設定されました。こうして、SNSで話題を狙うよりも、家庭で親子が一緒に視聴できる状況を作っています。
作品の受け止め方を見ていくと、YAIBAは「親子で一緒に楽しめる」という肯定的な声が目立ちました。オリジナルを知らない世代でもストーリーがわかりやすく、新しい視聴者にとって触れやすい作品になっていたのです。
一方で、SNS上では「作画や演出が少し古い」「話題性に欠ける」という意見もあり、熱狂的な盛り上がりは限定的でした。
つまり、口コミは「派手ではないが、安心して見られる」という見方ができます。これはファミリー向け枠の役割と一致しているため、リメイクによって“IPを長持ちさせる”ことにつながっています。
必ずしもSNSで大きな話題を狙う必要はなく、作品の特性に合った場所で安定して存在感を保つ戦略があるということです。リメイクは爆発的なヒットを狙うだけでなく、“定番として根付く”というもう一つの狙い方もあることが分かります。
視聴率はあくまで「テレビをリアルタイムで見た人の割合」を示すものであり、今の時代の視聴行動を反映しきれていません。深夜帯や多チャンネル環境では、この数字だけを根拠に「成功・失敗」を語るのは危険です。
アニメの現代的な成功は、配信数やSNSでの話題性によって測られるべきです。ファンが自主的に作るファンアートや考察スレッド、感想動画などが拡散され、新規視聴者を呼び込む。これこそが「広がり方」であり、リメイクの真価を決める要素です。
リメイクの本当の価値は「原作を超える」ことではなく、「過去と現在をつなぐ」ことにあります。親世代がかつて夢中になった作品を、今の子どもと一緒に観る。あるいは、SNSで昔のファンと新しいファンが同じ作品を語り合う。こうした“広がり方”こそ、リメイクが未来に残る成功の形です。
ここまでのポイントをまとめます。
今、アニメ業界では「昔の名作をどう現代に届けるか?」が重要なテーマになっています。単なるリメイクではなく、“今の時代の価値”を付加できるかが勝負の分かれ目です。
現代において重要なのは、リメイクの成功は視聴率だけでは測れないということを改めて意識する必要があるということです。配信、SNS、ファンコミュニティの広がりを総合的に見て初めて、その価値が判断できます。
つまり、リメイクとは、“知ってる”を“また好きになる”に変える体験設計にあるのかもしれません。

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