NOKID編集部
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2025年6月26日Steam版「ウマ娘 プリティーダービー」の海外版がリリースされた瞬間、誰も予想しなかった「奇跡」が始まった。配信直後の同時接続数およそ25,000人が、その後わずか3週間で87,453人、レビューの大半がポジティブな回答という驚異的な記録を達成したゲームの海外展開における成功事例があります。
結果的に、アメリカ、イタリア、カナダ、シンガポール、タイで売上ランキング1位を獲得したのです。しかし、この成功が業界に与えた衝撃は数字以上のものでした。「美少女ゲームは海外で売れない」「日本の競馬文化は理解されない」「推し活は日本特有の文化」といった”常識”がすべて覆されたからです。
また、ハルウララに胸を打たれた海外の人が牧草バンクに寄付までしていた通り、広告より強いのは、数字による話題性とストーリーで動く人の衝動です。
海外のゲーマーたちはなぜ、日本の競馬をテーマにした美少女育成ゲームに熱狂したのでしょうか?そして、この成功から他の日本コンテンツ企業は何を学べるのでしょう?
今回は、Steam海外版ウマ娘の成功事例を徹底分析することで、日本コンテンツの真の可能性を探っていきます。
多くの人は「日本的すぎる美少女ゲームは海外で理解されない」と考えています。ですが、ウマ娘の海外展開はその常識を大きく覆しました。
Steamでの成功は、単なる翻訳や広告ではなく、ファンの熱量、ゲーム設計の工夫、そして普遍的なストーリーが支えています。つまり、文化的な違いがあっても、感情を動かす仕組みを持った作品は海外でも受け入れられるのです。
文化的な壁や偏見は、コンテンツの本質的な魅力があれば乗り越えることができます。
Steamレビューの約90%以上がポジティブな投稿という圧倒的な支持率が、海外ユーザーの本音を表しています。これまで「日本の美少女ゲームは理解されない」と考えられてきましたが、実際には適切に届けられていなかっただけだったのかもしれません。
例えば、海外ユーザーからは「最初は擬人化されたウマ娘に違和感を感じたが、途中から“可愛いと思うようになる”“応援したくなる”」という心変わりが語られています。
つまり、「文化的な壁」は思っているほど高くなく、良質なコンテンツは言語や文化を超えて愛されるということです。
このように、日本ならではのキャラクター文化でも、それが魅力となる場合もあるのです。
以前は「日本の美少女ゲームは海外で通用しない」と言われることもありました。しかし、ウマ娘の成功はその常識を打ち破った事例です。
この理由で1番に考えられることは、リリース直後から数字で語れる結果が出たからです。良い数字が出ればメディアが報じ、興味を持つ人の目に留まりやすくなります。
Steam版は配信直後に同時接続25,505人を記録し、最終的には87,453人に到達しました。日本国内では2025年8月時点で6位を記録しており、十分な人気を維持しています。
一方で、グローバルでの現時点のランキングでは残念ながら100位圏内に確認できませんでしたが、リリースから間もない頃には「Game Spark」にてアメリカ・カナダ・イタリア・フランスでの売上1位が確認されています。
つまり、ウマ娘の海外成功は「文化ではなく数字が信頼を作る」という現実を突きつけたのです。
アニメに限った話にはなりますが、電通が2022年7月に全米18~54歳の男女を対象に行った調査では、3人に1人が「流行っているアニメを視聴する」という結果の通り、「周囲との話のネタ」「遅れを取らないようにしたい心理」などが影響を与える=1位を記録したことがさらなる人気を呼んだと言えるでしょう。
参考:数字でわかる!ANIMEは世界のZ世代へのキラーコンテンツに - 電通
普通は広告費を投じなければ海外での話題化は難しいと思われています。ですが、ウマ娘はユーザーの自発的な発信が最大の宣伝効果を生みました。
理由は、展開前から熱心な海外ファンが存在していたことです。VPNで日本版を遊んでいたファンが、TwitchやYouTubeで実況を行い、その動画によってSteamリリースの前から認知されていました。こうして「やっと正式版が遊べる」という期待感がSNSで高まり、ローンチと同時に大きな話題が作られたのです。
また、キャラクター「ハルウララ」のストーリーに感動した海外ユーザーが、生牧草バンクに寄付をする現象まで広がったようです。
つまり、ユーザー自身が熱狂した時、その声は広告以上に人を動かす力を持つのです。
実況は配信者が得をするだけという話もありますが、ウマ娘はシナリオを観たら満足するジャンルではなく所有・育成・対戦なので配信と相性が良いことも後押ししているのではないでしょうか。
関連記事:ゲーム実況配信(動画)は売上に影響する?無視できない効果やメリットを紹介
多くの人は「日本特有の文化は海外で理解されない」と考えがちです。ですが、ウマ娘は競馬だけでなく、アイドル的な要素を取り入れることで幅広い層を魅了しました。こうした言語に縛られない仕組みに、日本独自の要素を重ねたことが話題を呼んだのかもしれません。
レースというシンプルで誰でもわかるルールを基盤にしつつ、勝利後の「ウイニングライブ」というアイドル的演出を加えることで、ゲーム体験をより華やかにしました。
ライブでの音源は公式サイトでも販売されており、ゲームをプレイする時間以外にも想起させる工夫がされています。
つまり、日本のアイドル文化を組み合わせたことで、“新鮮さと共感”を呼ぶフックになったのです。リリースする国に合わせることも大切ですが、日本の魅力を残しつつ展開するバランスも意識してみてください。
言語や文化の違いがある中では、複雑な内容のゲームは受け入れられにくいと考えられます。ウマ娘の場合は、前述の通りシンプルなレース構造が入り口となっているため理解しやすいジャンルです。
最終的に「1位を目指す」という明快なゴールは、競馬の知識がないユーザーでも直感的に理解できます。
なにより、育成要素やレースというジャンルは、ノベルゲームなどとは異なり観ても満足することなく、長期的に楽しめる終わりのないジャンルでもあります。
つまり、複雑さをそぎ落としたシンプルなゲームであったことも、グローバルで多くの人に受け入れられた要因だと言えるでしょう。
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「実在の競走馬を題材にしても海外では理解されない」と考える人もいます。ですが、ウマ娘はその逆で、実在の馬の歴史を物語に組み込み、キャラクターごとに個性を持たせることで感情移入を生み出しました。
例えば、113戦0勝の「ハルウララ」をプレイヤーの手で勝たせるシナリオは、「努力が報われる物語」として海外でも涙を誘いました。特に海外では、困難に立ち向かう挑戦する姿勢が好まれる印象があります。
つまり、史実とフィクションを掛け合わせたストーリーが、プレイヤーに「推し活」のきっかけを与えたのです。
また、こうしてキャラクターそれぞれが人気となることで、企業とのコラボも期待できるため、他社のプロモーションによってさらに知名度を上げる好循環を生むこともできます。
日本でも実在の歴史人物をキャラクターにしたシミュレーションゲームやアクションゲームは長く愛され続けているように、実在する人物や物語をキャラ化することでリアルな愛着が生まれるのかもしれません。
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海外ユーザーの多くは競馬を知りません。彼らが熱狂したのは、競馬の知識ではなく「応援したくなる物語」「感動的なキャラクター設定」「高品質なビジュアル体験」です。
ウマ娘の成功事例から学べることは、専門知識が必要とされるジャンルでも、その知識を持たないユーザーに愛されるようにする大切さです。
競馬の発祥はイギリスであり、多くの海外ユーザーに馴染み深いわけではありません。日本でもウマ娘をきっかけに競馬に興味を持つケースが見られるように、彼らは競馬の専門知識があったからハマったのではなく、ゲーム自体の魅力に引かれたのです。
例えば、競馬場に行ったことがないユーザーでも、ゲーム内でのレースシーンやキャラクターの成長ストーリーに深く感動してハマるようなケースです。
つまり、専門的なジャンルでも、わかりやすい感情設計があれば誰でも楽しめるコンテンツになるということです。
参考:JRA
ウマ娘の3Dグラフィックとアニメーション技術は世界最高水準です。こうした視覚的な表現はキャラクターの魅力を強化しますが、それだけではこれほどの熱狂は生み出せません。
特に重要なのは、高品質な表現力を前提としたストーリー部分です。ウマ娘では、各キャラクターのストーリーが存在し、「困難に立ち向かう勇気」「仲間との絆」「諦めない心」といった、誰もが共感できるテーマを含んでいるからです。
美しい映像と感動的なストーリーが組み合わさることで、言語や文化の壁を超えて感動を伝えることができたのです。
例えば、トーカイテイオーであれば実在馬の性格に沿ったキャラクター&ストーリーとなっており、歴史上の人物が登場するゲームのような「かつてこうだったであろう」と想像できるような構造を持っています。
つまり、高い技術力だけで勝負してもユーザーの心は掴めないということです。感動的な物語を組み合わせることで、世界的に愛されるコンテンツが作れるということです。
盛り上がりを作るにはUGCの増加が大切であり、ウマ娘はこの点でも優れた結果を見せています。海外のウマ娘ファンは、自分の牧場で飼っている馬や自国の名馬をウマ娘風にキャラクター化するファンアートを投稿しています。
あるファンアーティストは「オーストラリアの伝説的な牝馬3頭のウマ娘デザインを完成させた」と投稿し、大きな反響を呼びました。こうした二次創作が増えることは、初音ミクなどの事例からも話題作りや愛着の面で効果的だと言えるでしょう。
つまり、海外ファンは受動的な消費者ではなく、能動的な参加者として楽しんでいるということです。
関連記事:【IP展開事例】“ただの歌声合成ソフト”だった初音ミクが今も人気の理由は共創にあった?
ここまでのポイントをまとめます。
ウマ娘(Steam海外版)の成功は、「日本的だから通じない」という思い込みを崩し、「数字で信頼を作る」「入口を分かりやすくする」「物語で心を動かす」「コミュニティで広げる」という王道を示しました。
すでに熱のある層を解放し、配信とSNSで話題化し、普遍的な感情に結びつける。これらを同時にそろえると、文化の違いよりも“おもしろさ”が勝ちます。
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アニメーションという表現方法の中にも、スライドに動きをつけたものから3DCGを活用したもの、セル画など多岐に渡るテイストがあります。
動画を制作する場合には、要望通りに動画を制作することだけでは効果を発揮しないことが多くあります。NOKIDでは、動画の活用目的に沿った構成や表現を計画しております。
例えば、TikTokであれば認知に適したアルゴリズムになっておりユーザーが次々と動画をスワイプして観ていきます。そのため、冒頭の2〜3秒で注意を引くためのアイデア、PRに繋げるためにどのような情報を発信すべきかといった"ビジネス視点とクリエイティブ視点"のバランスを意識しております。
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