NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。
VTuber事務所「ホロライブ」所属の湊あくあが活動を終えたのは、2024年8月28日のことでした。YouTubeチャンネルの更新は止まり、新規の配信は行われていません。
ところが、彼女が登場するゲームは2026年5月の現在も配信が続いています。バンダイナムコ『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』のDLC(ダウンロード形式の追加コンテンツ)は、公式サイトに「好評配信中」のバナーが今も掲げられ、湊あくあの応援隊長としての肩書きも「お届け中!」という現在進行形のまま残されています。
VTuberとのコラボは、企業の広告担当者にとって長らくこう理解されてきました。
バズって、話題になって、SNSで拡散して、そして消えていく消費型施策である、と。期間限定で売り切れば成功、終わったら次のVTuberに乗り換える。タレントが引退すれば、コラボの効果も終わる。
しかし湊あくあの6年間が示したのは、その通念とは違う事実でした。
卒業しても、コラボは終わらなかったのです。
本記事では、湊あくあが2018年8月のデビューから2024年8月の卒業までに手がけた主要な企業コラボを、5つの企画形式(テイクアウト型/継続アンバサダー型/ゲーム内コラボ型/ユニット型/主演プロデュース型)に分類し、それぞれの効果データと公式の発表記録を整理します。最後に、卒業後も残り続けるコラボには3つの共通条件があったことを、事例の横断比較から取り出します。
湊あくあは、ホロライブ2期生として2018年8月にデビューし、2024年8月に卒業した、登録者225万人規模のVTuberです。配信の主軸はFPS(一人称視点シューティングゲーム)などのオンラインゲームで、Apex Legendsでソロでマスターランクに到達するなどゲーマー寄りのキャラクター設定を持ちながら、メイド衣装でアイドル活動も両立していました。
コラボの中身を読む前にこの基本属性を押さえておくと、各事例の狙いと結果が立体的に理解できます。
湊あくあは、2018年8月8日に初配信を行った「hololive 2nd Generation(2期生)」のメンバーです。所属事務所はカバー株式会社運営のホロライブプロダクション。
ホロライブの黎明期から活動した古参の一人で、卒業発表時にカバー株式会社は「黎明期よりその発展に貢献いただいた1人」と表現しました。
YouTubeチャンネル登録者数は2024年5月9日に200万人を突破し、卒業時点では約225万人に達していました。
公式プロフィールでは「マリンメイド服のバーチャルメイド。本人は頑張っているがおっちょこちょいでドジっ子」と紹介され、「銀河で最高のアイドル」を夢に掲げるアイドルキャラクターです。
ただし配信の中身はアイドル像と少し異なります。公式プロフィールが定常配信として挙げているのは「主にオンラインゲーム、特にFPSとアクション中心」。実際に『Apex Legends』ではソロでマスターランクに到達し、『ストリートファイター6』でも約50時間のプレイでマスターランクに到達しています。
つまり「アイドル衣装で本格的にゲームをプレイするタレント」というのが、湊あくあのキャラクター設定の核です。
後述するレッドブルの継続コラボがゲーマー文脈で成立した背景には、このキャラクター設定があります。
ファンネーム(ファン名)は「Aqua Crew(あくあクルー)」。「クルー」という呼称が、マリンメイドという船員モチーフから来ているのが分かります。
2024年8月28日の卒業ライブは、VTuber専門のデータサイトVSTATS調べで最大同時接続数約74万人(PLAYBOARDとユーザーローカルの計測では96万人超)を記録し、Xの世界トレンドで1位を獲得しました。
この6年間で、湊あくあは本記事で扱う5つの企画形式すべてのコラボを手がけています――スシロー(テイクアウト型)、レッドブル(継続アンバサダー型)、SAOラスコレ(ゲーム内コラボ型)、日清カレーメシ(ユニット型)、エンターグラム『あくありうむ。』(主演プロデュース型)。
6年で築いたものは、卒業後にも残るのか。次のセクションで結論から見ていきます。
湊あくあが手がけた主要な企業コラボは、テイクアウト型・継続アンバサダー型・ゲーム内コラボ型・ユニット型・主演プロデュース型の5つに分類できます。このうちゲーム内コラボ型のSAOラスコレDLCは、本人の卒業から1年9ヶ月経った2026年5月時点でも、公式サイトに「好評配信中」のバナーが掲げられた状態が続いています。
各企画形式の代表事例と効果データは下表のとおりです。
| 企画形式 | 代表事例 | 主な効果データ |
|---|---|---|
| テイクアウト型 | スシロー(2022年4月) | お持ち帰り限定セット販売/登録者158万人時点 |
| 継続アンバサダー型 | レッドブル(2021〜2023年) | 4年継続/パープルEDキャンペーン当選枠1,000名 |
| ゲーム内コラボ型 | SAOラスコレ(2024年3月〜現在) | 卒業後も配信継続(公式X発表) |
| ユニット型 | カレーメシ×スパイスラブ(2020年10月) | 特別BOX 3,980円/楽曲CD制作 |
| 主演プロデュース型 | あくありうむ。(2022年10月〜2024年3月) | 段階リリース3版/ファミ通電撃アワード受賞 |
VTuberコラボのようなインフルエンサー系施策で繰り返し問われてきたのは、施策が続くかどうかでした。バズはするが残らない、売れるが続かない、タレントが引退すれば全てが消える――マーケティング部門でVTuberコラボを提案した経験のある方なら、この懸念を上層部から投げかけられた記憶があるはずです。
ところが湊あくあのケースは、その通りにはなっていません。卒業から1年9ヶ月が経った2026年5月時点でも、6年間の蓄積の一部はまだ稼働しています。
次のセクションから、5つの企画形式を順に見ていきます。
VTuber個別の事例として、星街すいせいの個人ブランド構築事例(自己プロデュース型)とシェリン・バーガンディの中規模IPの戦い方(コミュニティ熱量設計)も別記事で読めます。
スシローと湊あくあのコラボは、2022年4月22日から全国のスシロー店舗で「湊あくあセレクションセット」をお持ち帰り限定・先着順で販売した事例です。販売前にYouTubeでネタ決めライブ配信を実施し、配信を見たファンが翌日から店舗に足を運ぶ流れを作り込みました。
スシロー運営の株式会社FOOD & LIFE COMPANIESが発表したコラボセットの内容と価格は、次のとおりです。
販売条件は限定的でした。事前予約は不可、注文は店頭のみ、1会計につきお1人様各1点まで。「スシロー To Go」と「京樽スシロー」は対象外で、お持ち帰り限定です。
当時の湊あくあのチャンネル登録者は158万人を超えていました。配信視聴の習慣を持つファン層を、実際の店舗に足を運ばせるために組まれた仕組みでした。
販売の前日にあたる2022年4月5日、湊あくあは自身のYouTubeチャンネルでネタ決めライブ配信を実施しました。10貫のセット内容を本人が選ぶ過程を、リアルタイムで視聴者に共有する構成です。
これはよくある商品告知ではなく、商品開発の最終工程をエンターテインメントとして公開したものでした。視聴者は「自分の推しが選んだネタ」を、翌日以降に店頭で受け取れます。配信を見て興味を持ち、翌日店頭へ向かう――この参加感が購買行動の土台になりました。
事前予約不可・1人1点までという制約も効いています。配信を見ただけでは買えない。実際に店舗まで足を運び、レジに並んで初めて手に入る。この一手間が、画面の前のファンを店頭の客に変えました。
ステッカーやアクリルスタンドは、買ったファンの手元には残ります。しかし買わなかった人にコラボの存在を伝える経路は、販売終了とともに閉じます。
告知ページから消え、店頭からも消え、SNSの話題が落ち着けば、新規ファンがこのコラボに出会う入り口はなくなります。手元のグッズは「思い出」にはなっても、新しい人を連れてくる「入り口」にはならない。ここがテイクアウト型の限界です。
後で見るSAOラスコレのDLCや『あくありうむ。』の楽曲は、卒業後も販売チャネルに残り、今この瞬間も知らなかった人が購入できます。物理のお持ち帰りセットには、この「売り場に残り続ける」機能がありません。
もっとも、これはスシロー側が承知の上で選んだ設計です。プレスリリースには「中食を中心とした"新しい生活様式"が定着していることを踏まえ」とあり、コロナ禍で定着したテイクアウト需要を、配信に親しんだファン層へ短期集中で当てる狙いが読み取れます。最初から短期で売り切る前提の企画でした。
残らないことは、欠陥ではありません。短期で売り切る型を、承知の上で選んだ結果です。
次のレッドブルの事例は、この単発の企画を4年間の関係に変えていきます。
参考:
湊あくあは2021年6月8日に獅白ぼたんとともにレッドブル・ジャパン初代「バーチャル・アンバサダー」(VTuberが企業ブランドの公式広報を務める起用形態)に就任しました。その後、本人による連載コラムの月1更新、自販機限定パープルEDのSNSキャンペーン、ローソン限定の3缶セット販売を経て、2023年8月の夏コラボに至るまで、4年にわたって関係を維持しました。
継続アンバサダー型の特徴は、複数の施策を時系列で重ねていく構造にあります。湊あくあとレッドブルの4年間は、次の流れで進みました。
就任、キャンペーン、コラム、懸賞、複数回の店舗コラボ。単発のスポンサーシップではなく、関係を積み増していく多段構造です。「あの人とこの飲料はセット」という認識が、4年かけてファンの中に定着していきました。
この4年間で見逃せないのは、キャンペーンの規模が回を追うごとに拡大したことです。
2022年4月29日からの自販機限定パープルEDのSNSキャンペーンは、購入者が写真とハッシュタグ(#翼をさずあくあ/#翼をさずけらいおん)でTwitterに投稿して応募する形式でした。A賞は限定トークショー招待で合計30名、B賞は限定ボイスメッセージと壁紙で合計1,000名という当選枠です。
その後のローソンコラボは、対象エリアが回を追うごとに広がりました。2022年8月の初回は東京・埼玉・千葉・茨城の関東中心。同年12月の冬コラボでビッグサイト周辺2店舗の特別バージョンを加え、2023年8月の夏コラボでは北海道・東北・関東・近畿の92店舗まで拡張されています。価格は税込642円の3缶セットで、イラストレーターのbrat氏による描き下ろしステッカーが付属しました。
懸賞に応募する、店舗で買う、ステッカーを集める。この3つの動線を、商品設計と地域拡大で回ごとに積み上げていく構造でした。
湊あくあは配信前のルーティンとして、食事を取ること、レッドブルを飲むこと、FPS配信時はエイム練習ソフトで練習することを語っています。レッドブルは、コラボのために飲み始めたものではなく、もとの配信ルーティンに組み込まれていました。
だから彼女はレッドブルを「広告のために飲む」のではなく「もともと飲んでいたから語れる」。就任発表のリリースでも「無類のレッドブル好き」と紹介され、コラボのたびに無理のないメッセージを出せました。
4年続いた理由は、ここにあります。ゲーマーとして集中力を使う活動と、エナジードリンクという商材の機能が噛み合っていた。商材と本人が噛み合っていれば、継続関係は無理なく重ねられます。
逆に、商材適性のないコラボを4年続けるのは難しい。瞬間的に売れても、本人が語れない商材は、二度目三度目を組む理由を作れないからです。
参考:
バンダイナムコの『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』(以下、SAOラスコレ)に湊あくあが追加された無料DLC「来訪者『湊あくあ』」は、2024年3月7日に配信開始され、湊あくあの2024年8月28日卒業後も配信が続いています。コラボの権利をDLCというデジタルデータとして設計したため、タレント本体の活動終了とは切り離してIP(知的財産)が残った事例です。
湊あくあとSAOラスコレの関係は、2023年7月18日の応援隊長就任から始まりました。応援隊長として配信や告知を行う期間を経て、2024年3月7日のVer.1.15で、湊あくあがゲーム本編にプレイアブルキャラクター(プレイヤーが操作できるキャラクター)として実装されます。告知役から本編キャラクターへ、という段階的な移行です。
DLCの中身は、サブクエスト「来訪者」をクリアすると湊あくあとともに冒険できるようになる、というものです。
実装翌日の2024年3月8日20時からは、湊あくあ自身のYouTubeチャンネルで本人によるプレイ配信が行われました。プレイアブル化したキャラクターを本人がプレイするという構成で、ファンと作品の橋渡しになりました。
湊あくあの卒業発表は、2024年8月6日にカバー株式会社から行われ、卒業日は同年8月28日と設定されました。
その卒業日の2日前、2024年8月26日に、ソードアート・オンライン ゲーム公式情報X(@sao_gameinfo)が、来訪者「湊あくあ」の無料アップデートを卒業後も継続して配信予定だと発信しました。発信元はバンダイナムコ担当者個人のアカウントではなく、ゲーム公式の運営アカウントです。
タレントの活動終了に合わせてコラボグッズや特典を取り下げる運用が、VTuberコラボでは一般的です。そのなかでこの発表は、ゲーム本編に組み込まれたキャラクターデータなら本人の動向と切り離して残せる、という別の道を示しました。
2026年5月4日時点で、公式サイトには「好評配信中」のバナーが表示され、5プラットフォーム全ての購入リンクが現役で機能しています。さらに「2023年7月よりラスコレ応援隊長として、『ソードアート・オンライン ラスト リコレクション』の魅力をお届け中!」という現在進行形の表記も残されています。
卒業から1年9ヶ月。湊あくあは応援隊長という肩書きを保ったまま、SAOラスコレの中で今も配信され続けています。
本記事の出発点となった事実――卒業しても終わらないコラボの、最も明確な証拠がこれです。権利をデジタルデータとして残す形で設計したとき、コラボはタレントの活動終了より長く生きる。
参考:
湊あくあは2020年に大空スバル・兎田ぺこらと組んだ限定ユニット「スパイスラブ」として日清カレーメシのアンバサダーに就任し、特別BOX商品と楽曲を共同制作しました。また2022年にはエンターグラムから主演兼プロデュース作品『あくありうむ。』を発売し、2023年3月22日に発表されたファミ通・電撃ゲームアワード2022のアクター部門で最優秀賞を受賞しています。
「日清カレーメシ ホロライブ 特別BOXセット」は2020年10月14日10時から日清食品グループ オンラインストアで予約を開始し、同月30日に発売されました。希望小売価格は3,980円(税別)。セットの内容は次のとおりです。
このコラボで作られたのは、商品だけではありません。湊あくあ・大空スバル・兎田ぺこらの3名による限定ユニット「スパイスラブ」という新しい関係性そのものでした。楽曲制作には作詞・作曲を烏屋茶房氏、作編曲を篠崎あやと氏、制作をTOKYO LOGICが担当しています。
特別BOXの販売期間が終わっても、このユニット名と楽曲はYouTubeで聴ける状態で残ります。コラボのために立ち上げた「スパイスラブ」というIPが、商品の販売期間より長く生き延びる――これがユニット型の特徴です。
主演プロデュース型の代表が、エンターグラムから発売された純愛ノベルゲーム『あくありうむ。』です。「絆は切れても また結び直せる」をコンセプトに、湊あくあの「本物のメイドでヒロインになりたい」という願いから企画が始まったとされています。
リリースは段階的に行われました。
プラットフォームごとに時期をずらし、ファンが触れられる窓口を時間差で広げていく構造です。
主題歌「未だ、青い」は湊あくあ本人が歌唱し、作詞・作曲・編曲・サウンドプロデュースをじん氏が担当。エンディングテーマ「カシオペア」もハム氏のMusic & Lyricsで湊あくあが歌い、本人の歌唱と作品が一体化しています。共演として宝鐘マリン、白上フブキも出演しました。
そして2023年3月22日、本作はファミ通・電撃ゲームアワード2022のアクター部門で最優秀賞を受賞します。VTuberが主演した作品が業界の主要アワードで評価された、ゲーム業界とVTuber業界をまたぐ事例です。
2026年5月4日時点で、エンターグラムの公式サイトには「ご購入はこちら」のボタンが現役で生きており、4プラットフォーム(Switch/PS4/Windows/Steam)での販売が続いています。ただし2024年3月28日の通常版発売以降、公式サイトのNEWSセクションは更新されていません。
買える状態は保たれている。しかし新しい展開は止まっている。これが『あくありうむ。』の現状です。
同じ「卒業後も生きているコラボ」でも、SAOラスコレとは濃度が違います。『あくありうむ。』は「販売中」、SAOラスコレは「販売中、かつ応援隊長として現在進行形で稼働中」。売り場に残っているだけの状態と、肩書きごと動き続けている状態は、同じではありません。
湊あくあの企業コラボには、本記事で扱う5パターンに収まらない案件も複数あります。
2020年9月にはKADOKAWAのMF文庫J人気ライトノベル『ようこそ実力至上主義の教室へ』の高度育成高校生徒会 広報担当に就任し、最新巻発売記念の生放送配信や月刊コミックアライブ12月号でのスペシャルインタビューを実施しました。
2021年11月には「よこすか海のアニメカーニバル」のイベントアンバサダーに就任し、京急横須賀中央駅Yデッキの横幅7m横断幕や、70を超える市内店舗が参加するスタンプラリーが展開されました。
2023年5月には湊あくあ・宝鐘マリン・沙花叉クロヱを含むユニット「UMISEA」が、通販サイト「北の特選ショップ吉田屋」と北海道海産物コラボを実施し、書き下ろし新曲のremixバージョン限定シングルCDを同梱する展開を行っています。
5パターンからは外れますが、湊あくあがコラボ媒体としていかに幅広く起用されたかを示す事例です。
参考:
湊あくあのコラボのうち卒業後も稼働し続けたものには、3つの共通条件があります。権利をデジタルデータに紐付けること、単発でなく多段階で関係を積むこと、本人の個性と商材の機能を噛み合わせること。この3つすべてを満たした事例だけが、本人の活動終了後も生き残りました。
DLC、楽曲、ゲームソフトのように、データとして販売チャネルに登録されたコラボは、タレント本人の活動終了とは独立して動き続けます。
SAOラスコレの無料DLCは、配信開始から2年以上が過ぎた2026年5月時点でも公式サイトで「好評配信中」、5プラットフォーム全てで購入可能です。『あくありうむ。』も4プラットフォームで販売中、カレーメシのスパイスラブ楽曲もYouTubeで聴ける状態を保っています。
一方、スシローのお持ち帰り限定セットやレッドブルのSNS応募懸賞のような期間限定の物理体験は、その瞬間に高い熱量を生みます。しかし販売終了後はファンの手元のグッズに留まり、新規ファンへのリーチは別の施策に頼ることになります。
コラボを投資として設計するなら、一部は必ずデジタルデータに紐付ける。卒業後も売り場に残るかどうかは、この一点で分かれます。
レッドブルとの4年間は、就任発表、Amazon限定キャンペーン、月1コラム連載、自販機SNS懸賞、ローソン限定コラボ(夏・冬・夏の3回)という多段階で形成されました。ローソンコラボの対象エリアは、関東中心(2022年8月)から、ビッグサイト周辺2店舗の追加(同年12月)を経て、北海道・東北・関東・近畿の92店舗(2023年8月)へと広がっています。
単発で終わるコラボは記憶に残りにくく、「あの企業と関係がある人」というポジションがファンの中に定着しません。複数回のキャンペーンを連続させると、タレントと企業の組み合わせが認知に固定され、新しいキャンペーンへの信頼も累積していきます。
関係性マーケティングの基本ですが、VTuberコラボでは1社1案件で終わるケースが多く、継続関係を意図して設計した事例は今でも稀です。
レッドブルとの4年間が成立した背景には、ゲーマーというキャラクターとエナジードリンクの機能的なフィットがありました。配信前にレッドブルを飲むというルーティンを本人が語れるからこそ、コラボのたびのメッセージが広告くさくならずに済みます。
スシローも同じです。回転寿司というカジュアルな外食と、配信に親しむ若年層の親和性に支えられていました。どちらもコラボのために後付けした「らしさ」ではなく、本人の活動の延長線上に商材が来る構造です。
逆に、本人の個性と無関係な商材を組み合わせると、その瞬間は売れても、ファンの記憶には「広告のための広告」としてしか残りません。二度目を組む素地が育たないのです。VTuberを選ぶ段階で、商材との相性を本人の発言・配信履歴から確かめる。この当たり前のステップが、長期効果を左右します。
湊あくあのSAOラスコレDLCは、この3条件をすべて満たしていました。ゲーム本編に組み込まれたデジタルデータという権利構造、応援隊長から本編キャラクター化への段階的展開、ゲーマーとゲーム作品の相性。3つが揃った結果、本人の卒業後も配信が続いています。
3条件をより広い文脈で学びたい方は、VTuberマーケティング完全ガイドも合わせてご覧ください。市場規模、起用判断の手順、社内稟議の通し方、年間計画の作り方まで体系的にまとめています。
湊あくあは2024年8月28日にホロライブを卒業しました。彼女のYouTubeチャンネルは更新を止め、新たな配信は行われません。
それでも、スシローのステッカーを今も持つファンがいて、レッドブルの缶ステッカーをしまっているリスナーがいて、SAOラスコレを起動すれば交易街であくあが今も歩いています。『あくありうむ。』は今も販売され、スパイスラブの楽曲はYouTubeで聴けます。
卒業しても、コラボは終わらなかったのです。
VTuberコラボを、バズで終わる消費型施策と捉えるか、残り続けるIPを共同で作る投資と捉えるか。湊あくあの6年間が示したのは、その違いを決めるのはVTuberの選定よりも先に、企業側の企画形式の設計だという事実でした。
あなたの次のコラボ案件は、卒業しても残るでしょうか。
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