NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。
コラボのやり方が、根本から変わり始めています。
ルイ・ヴィトンは2003年に村上隆とコラボし、バッグにモノグラムを載せました。2025年、同じ二者が再びコラボしたとき、ルイ・ヴィトンは世界7都市に没入型ポップアップを展開し、シネマ体験、修復ステーション、カフェ、限定ガチャマシンまで設計しています。バッグにアートを載せたのではなく、世界観ごと体験させる構造に変わっていました。
ゲーム業界でも同じことが起きています。ガンダムは2024年6月にCoD: Modern Warfare IIIでスキン3種を展開しました。ゲームプレイへの影響はありません。見た目だけが変わる、定番のIPコラボです。
そこから2年後の2026年3月、同じガンダムIPがApex Legendsでマップそのものを書き換え、新武器バスターライフルを追加し、コラボ限定ガンプラ3種を同時に投入しています。スキンを売る構造から、体験を書き換える構造へ。IPは同じです。変わったのはコラボの設計思想です。
ロゴを載せて終わるコラボと、体験を書き換えるコラボ。この2つを分けている設計原則を、ガンダム × Apexの2年間の記録から4つ抽出しました。

ライブサービス型ゲーム(継続的にコンテンツを更新する運営型ゲーム)の世界では、IPコラボのやり方に暗黙のルールがありました。
有名IPのスキンをゲーム内ショップに並べる。期間限定にする。SNSで告知する。売れる。次のIPでまた同じことをする。この循環が回っている限り、課金売上は維持できます。
Fortnite、CoD、Overwatch 2、Apex──主要タイトルのどれもが、このパターンを繰り返してきました。プレイヤーにとっては見慣れた光景です。好きなIPのスキンが来たら買う。来なかったらスルーする。ゲーム体験そのものは何も変わりません。
この構造が問題なのは、プレイヤーが慣れてしまうことです。スキンだけのコラボはもはや驚きではありません。見た目が変わるだけでは、離れたプレイヤーを呼び戻せない。スキン販売の同質化は、ライブサービス型ゲーム全体が直面する構造的な課題になっていました。
しかし、この現実に最も早く直面したのは、業界全体ではなく、1つのタイトルでした。
参考:Battles Collide as Mobile Suit Gundam Legends Join the Front Lines of Call of Duty - Bandai Namco

2025年5月、EAのFY2025 Q4決算で、ある数字が公になりました。
FY2026のApex Legendsのネットブッキング(課金を含むゲーム内販売総額)が、前年比約40%減になるという予測です。
スキンを売り続けてきたタイトルが、スキンだけでは売上を維持できなくなっていました。プレイヤー数の減少、コラボ疲れ、バトルパスへの不満──複数の要因が重なった結果です。
ここが転機でした。スキン販売という日常が、数字によって揺さぶられた瞬間です。
EA側がこの時点でApexのテコ入れを模索していたのは自然な判断です。大型IPコラボの準備期間は半年から1年以上かかります。2025年前半に企画・交渉が動いていたとすれば、2026年3月のローンチとタイムラインが合います。
だが、プラットフォーム側の危機感だけでは、あの深さのコラボは実現しません。もう1つの条件が必要でした。
参考:Electronic Arts Reports Q4 and FY25 Results - EA IR
ガンダムがFPSジャンルでコラボした履歴を時系列で並べると、試行錯誤の過程が浮かび上がります。
2024年6月、CoD: Modern Warfare III/Warzoneでオペレータースキン3種とフィニッシャーを展開しました。ゲームプレイへの影響はありません。見た目だけが変わる、第1段階のコラボです。
2025年4月、Overwatch 2でガンダムW 30周年記念のスキン4種。これもゲームプレイは変わりません。第1段階のままです。
2025年7月、CoD: Mobileで専用4v4モードが追加されました。ガンダムのオペレータースキンを着て、専用マップで、メック同士が戦う。ここで初めてゲームモードが動きました。第3段階への踏み込みです。
そして2026年3月、Apex Legendsでマップ改変、新武器バスターライフル、アビリティ4種、限定ガンプラ3種が同時に投入されました。

この変化を整理すると、コラボの深さは4段階に分けられます。
第1段階はスキンやコスメティクス(キャラクターの外見装飾)の追加。プレイヤーの見た目だけが変わります。
第2段階はアイテムや武器の追加。ゲーム内の選択肢が増えます。
第3段階はゲームモードやマップの改変。プレイ体験そのものが変わります。
第4段階はデジタルとフィジカル(リアル)の統合。ゲーム体験が物理商品の購買動機に転換されます。
ガンダム × Apexは、この第3段階と第4段階を同時に実現しました。
ゲーム体験自体を改変し、かつ同一IPの物理商品をほぼ同時期に投入するという組み合わせは、FPS/バトルロイヤル(最後の1人になるまで戦う対戦形式)ジャンルではほぼ前例がありません。Fortniteは2023年12月にLEGOとの完全新モードを追加しましたが、LEGOセットの発売は2024年10月と、モードのローンチから約10ヶ月後でした。Apex自身も2024年のFF7Rコラボでバスターソードやマテリアを導入しゲームプレイに手を入れていましたが、マップそのものの改変や物理商品の同時展開には至っていません。
では、なぜApex × ガンダムでこの深さが実現したのか。ここに、この記事で最も重要な発見があります。
参考:The Overwatch 2 x Gundam Wing collab is landing on April 29 - Overwatch公式
参考:Call of Duty: Mobile Season 6 — Gundams Arrive - Call of Duty公式
参考:LEGO Fortnite is Live - Epic Games
参考:LEGO Fortnite Sets Reveal - LEGO公式

コラボの深度は、IPホルダーとプラットフォーム双方の戦略的タイミングが一致したときに最大化します。これが今回の事例から引き出せる最も実務的な発見です。
バンダイナムコ側から見ます。同社のChief Gundam Officer(CGO)は、Integrated Report 2025で、2029年の50周年に向けてガンダムIPの認知を世代と国境を超えて拡大することを明言しています。手段として挙げているのが、外部パートナーとの連携強化です。
数字がこの戦略を裏付けています。ガンダムIPのグループ連結売上はFY2025.3で約1,535億円に達し、6年前の約793億円からほぼ倍増しています。ガンプラの好調、GQuuuuuuXの好評、万博パビリオンとのシナジーに加え、モバイルゲームSD「Gundam G Generation Eternal」が好調な売上を記録しています。バンダイナムコはいま、ガンダムIPの接触点をあらゆるカテゴリに広げるフェーズにあります。
つまり、バンダイナムコにとって今回のコラボは、単なるスキン提供ではありませんでした。50周年に向けたIP認知拡大戦略の一環として、ゲーム体験の深いレイヤーまで踏み込む意思を持っていたのです。
EA側から見ます。前述の通り、Apexのネットブッキング大幅減が見込まれていた局面です。テコ入れのために、コラボの設計思想そのものを変える開発リソースの投入に合理性がありました。
なお、この判断は結果を出しています。2025年10月のFY2026 Q2決算でApexは前年比二桁成長に転じ、Q3決算でもその勢いが継続しています。
ここから実務に転用できる視点があります。パートナー候補の決算発表やIR資料をリサーチし、IPホルダー側が接触点を広げたいフェーズか、プラットフォーム側がテコ入れを必要としている局面かを見極める。双方のタイミングが重なるポイントでアプローチすれば、スキンだけで終わるコラボではなく、体験書き換え型を引き出せる余地が広がります。
しかし、今回のコラボで最も見落とされていて、かつ最も転用しやすい仕掛けは、ここからです。
参考:Integrated Report 2025: Message from Chief Gundam Officer - Bandai Namco Holdings
参考:Bandai Namco makes major revision to Gundam IP's yearly revenue forecast - AUTOMATON

ゲーム内コラボの開始は3月10日。プレイヤーはここから数週間、ガンダムのスキンを装着し、ガンダムの武器を使い、ガンダムのマップで戦います。毎日のプレイを通じて、自分が使っているモビルスーツに愛着が形成されます。
そしてガンプラのオンライン先行予約開始は3月18日。ゲーム開始から約8日後です。
この8日間は設計されています。
デジタルで馴染ませてから、リアルに転換するという導線です。ゲーム内で毎日使っているスキンのモビルスーツが、手に取れるプラモデルとして目の前に現れます。しかもRGグレード──高精細だが手が届く価格帯──が選ばれています。ガンプラ初心者でも入りやすい設計です。
この体験→愛着→購買という流れは、直感に反するかもしれません。物理商品はコラボ開始と同時に出した方が話題性を最大化できるように思えます。
しかし、同時発売には構造的な弱点があります。プレイヤーがまだそのIPの体験に没入していない段階で物理商品を見せても、欲しいという感情が生まれません。コラボの告知で一瞬盛り上がっても、購買動機の核になる愛着が形成されていないからです。
今回の約8日間は、ゲーム内でスキンに馴染む時間としてちょうど良い設計です。短すぎれば愛着が形成されず、長すぎればコラボの熱量が冷めます。
この時差設計はゲームに限った話ではありません。アニメ × アパレルであれば放送クールの中盤以降に物理商品を投入する。映画 × 食品であれば公開2~3週目に限定パッケージを切り替える。デジタル体験の特性に応じた最適な時差を見極めることが、物理商品の売れ行きを左右します。
ただし、この実行にはハードルがあります。物理商品の生産・物流リードタイム(発注から納品までの所要期間)とデジタルイベントのスケジュールを逆算して同期させる必要があるからです。
ただし、これらを外部の製造パートナーに依存する場合、同期の難度は格段に上がる点は注意が必要です。
ここまでで、コラボの深度設計と時差設計の2つの原則が見えました。しかし今回のコラボには、もう1つ、IPの出し方に関する見逃せない判断があります。
参考:Apex Legends x Gundam Event - EA公式

今回選ばれた8機体は、ウイングガンダムゼロ(W)、フリーダム(SEED)、エピオン(W)、エアリアル(水星の魔女)、デスティニーSpec II(SEED DESTINY)、GQuuuuuuX(GQuuuuuuX)、デスサイズヘル(W)、クスィー(閃光のハサウェイ)。少なくとも5つの異なるガンダム作品にまたがっています。
これは作品単位の切り出しではありません。ガンダムというメタブランド(個別作品を超えた包括的なブランド)としての切り出しです。
バンダイナムコのCGOは、Integrated Report 2025でガンダムの強みについて、多様な世界観の映像作品を継続的に制作してきたことでファンが初めて触れる作品が国・地域・年齢によって異なる点を挙げています。世代ごとにエントリーポイントがある構造が、45年以上の長寿を支えています。
今回の作品横断型選定は、まさにこの方針の実践です。20代のプレイヤーには水星の魔女のエアリアルが刺さります。30代にはSEEDのフリーダム。40代にはWのウイングガンダムゼロ。さらにGQuuuuuuXは2025年放送開始の最新作であり、リアルタイムの視聴者をゲームに引き込む導線も設計されています。
この切り出し方ができるのは、バンダイナムコがガンダムIPの全権利を内部保有しているからです。外部ライセンスのIPでは、複数作品をまたいだキャラクター選定には権利者間の調整が必要になり、実現の難度が格段に上がります。
ここから引き出せるのは、IPの切り出し方がコラボのリーチ幅を決定するという視点です。
認知拡大が目的なら、複数作品や複数ラインを横断して多世代にリーチするメタブランド型が有効です。既存ファンのエンゲージメントを深めたいなら、特定作品に絞って世界観の一貫性を守る作品単位型が適しています。
どちらが正解かはケースバイケースですが、この選択を意図的にデザインしているかどうかが、コラボの成果を大きく左右します。自社のコラボ企画を設計するとき、まずこの二択のどちらを狙うかを決めることが出発点になります。
参考:Integrated Report 2025: Message from Chief Gundam Officer - Bandai Namco Holdings
参考:Unlocking New Value with Mobile Suit Gundam GQuuuuuuX - Bandai Namco Holdings

ガンダム × Apex Legendsのコラボは、年間売上約1,535億円のIPと大規模なプレイヤーベースを持つプラットフォームの組み合わせです。この規模感を自社にそのまま当てはめることはできません。
しかし、この2年間の物語から抽出できる設計原則は、規模に依存しません。
1つ目は、コラボをどこまで踏み込むかの合意です。スキン止まりで終わるのか、体験そのものを変えるのか。この合意がパートナー間でなされていなければ、企画は表層にとどまります。
2つ目は、パートナーの戦略的タイミングを見極めた上でのアプローチです。IPホルダーが接触点を広げたいフェーズか、プラットフォーム側がテコ入れを必要としている局面かを、決算資料やIR資料から読み取ります。双方の動機が重なるポイントで提案すれば、深いコラボを引き出せます。
3つ目は、デジタル体験で愛着を形成してからリアルに転換する時差の設計です。同時発売ではなく、体験への没入期間を確保してから物理商品を投入します。今回の8日間という長さは、ゲームの特性に最適化された数字です。アニメなら放送クール中盤、映画なら公開2~3週目と、媒体ごとに最適な時差は異なります。
4つ目は、IPの切り出し方の戦略的選択です。認知拡大ならメタブランド型、エンゲージメント深化なら作品単位型。この二択を意図的にデザインします。
2024年6月のCoDスキンから、2026年3月のApex体験書き換え型まで、わずか2年。この間にIPコラボの設計思想は根本から変わりました。
もしこの事例を読んで、自社の次のIPコラボに1つでも組み込めるフレームが見つかったなら、その企画書はすでにスキン販売の先に立っています。
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株式会社NOKID(ノーキッド)はショートアニメ/アニメーションCMの企画・制作・SNSアカウント運用・プロモーションを得意とする東京の企画・制作会社です。キャラクターIPの開発・企画立案・制作からプロモーション企画立案・実施まで話題性を意識したサービス提供が可能です。

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1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。