NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。
キャラクターとのコラボを企画しても、「自社の世界観に合うか不安」「ファンに受け入れられるかわからない」と感じていませんか?一方で、初音ミクとのコラボは成功事例が後を絶ちません。
じつはその裏に、他のキャラクターにはない“取り入れやすさ”があるのです。そのため、安易に「人気キャラだから売れる」という考え方だけでコラボするIPを選ぶと、失敗する可能性が高まるのです。
初音ミクがコラボ先に選ばれやすいのは、単なる知名度だけでなく、“使う側に委ねられている自由さ”があるからです。
従来のキャラビジネスは、世界観が固定されていて自由に表現できる余地がありませんでした。ですが、初音ミクは「最小限の設定」でありながら、誰でも自由に創作できることが前提の存在です。
つまり、企業が「自分たちらしい表現」を自然に重ねやすいキャラだということです。
そこで今回は、初音ミクと各社のブランドがコラボした事例をプロモーションのプロとして経験してきた視点で分析し、自社で取り入れるヒントを紹介します。
初音ミクが人気の理由については「【IP展開事例】“ただの歌声合成ソフト”だった初音ミクが今も人気の理由は共創にあった?」もチェックしてみてください。
「初音ミクは人気があるから、いろいろな企業がコラボするのだろう」そう考える人は多いと思います。たしかにそれも間違いではありません。
ですが、本当に注目すべき理由は、初音ミクが“ユーザーごとに異なる個性で創作される存在”だという点にあります。
「誰でも自由に使える」「最小限の設定で存在している」ことが、コラボ先と馴染みやすく選ばれる最大の理由だと筆者は考えています。
例えば、初音ミクの公式ページでは、イラストや音楽などの“二次創作”が許可されているだけでなく、ファンからの投稿を集めて企業と連携するプロジェクト(ピアプロ)も行われています。
つまり、「作る側と使う側」が明確に分かれていた従来のキャラビジネスとは大きく違い、創作の自由さと拡張性を持っているということです。
多くのキャラクターコラボでは、「このグッズを買ってください」という一方的なメッセージが中心になります。ですが、初音ミクは少し違った“関係性”が作られています。
企業は、初音ミクをただの広告素材として使うのではなく「一緒に作りましょう」とファンに期待している部分もあるのかもしれません。その理由は、初音ミクのファンの多くが、“見るだけの人”ではなく、“作る人”でもあるからです。
イラスト、曲、動画、衣装デザイン…そうした創作が活発なコミュニティがもともとあり、企業側もその熱量に期待しているのではないかということです。
例えば、ただコラボグッズを売るのではなく、「使うことで、自分の表現が広がる」という価値を提供するような場合が挙げられます。
つまり、ファンを「受け身の消費者」ではなく、「表現の仲間」として迎えているということです。
よくあるIPと企業のコラボでは、キャラクターが商品パッケージに使われたり、CMに登場したりします。一方で、初音ミクの場合は「参加型」や「体験型」のコラボが多いのが特徴です。
なぜなら、ファンの多くが「初音ミクと何か(作曲など)を一緒に体験してきた」からです。
例えば、カラオケ館とのコラボでは、録りおろしのボイスが流れる“専用ルーム”がありました。
これらはただの宣伝ではなく、「ミクと一緒に過ごした記憶」をファンに届ける仕組みになっています。
つまり、初音ミクのコラボは“物を売る”というより、“一緒に過ごす時間を作る”ことが目的になっているのです。
関連記事:【IPコラボ商品・キャンペーン】参考になる事例から学ぶ!成功させるポイントを紹介
初音ミクとプロ野球・パ・リーグ6球団がコラボした2022年の企画では、ただのキャラグッズ販売にとどまらないチャリティ性が設計されていました。
各球団のユニフォームを着たミクが描かれたグッズを受注生産し、売上の一部は東日本大震災の被災地支援として寄付されました。
例えば、楽天イーグルスでは「がんばろう東北」と書かれたロゴがミクの衣装にあしらわれ、被災地に本拠地を持つ球団とのつながりが感じられるデザインになっていました。
つまりこのコラボでは、「好きなキャラを応援すること」が「社会の役に立つこと」と自然に重なっていたのです。
参考:初音ミクとパ・リーグ6球団が今年もコラボ決定!グッズの受注販売は9月2日(金)から☆ - 初音ミク公式ブログ
このコラボでは、ミクが6球団それぞれのユニフォームを着て登場しました。ロッテならストライプ、西武ならネイビー、ソフトバンクなら黄色と黒など、それぞれの球団カラーやデザインがそのままキャラ衣装に落とし込まれていました。
ファンは自分の好きな球団を選ぶだけでなく、ミクの中でも“自分の好みの1枚”を選ぶ楽しさを味わえました。ただの限定ビジュアルではなく、「どのミクが自分っぽいか?」という視点が加わったのです。
つまりこれは、キャラのファンにも球団のファンにも、“選べる楽しみ”を与えたコラボだったと言えます。
参考:初音ミク×プロ野球「MIKU BASEBALL 2023」 パ・リーグ6球団コラボ紹介! - パ・リーグ.com
項目 | 2022年コラボ | 2023年コラボ |
描き下ろしビジュアル | 各球団ユニフォームを着たミク | 球団カラー+プロセカ衣装での再構成 |
販売方式 | 完全受注生産のみ | 受注+店舗即売併用 |
社会的意義 | 売上の一部を東北支援に寄付 | 共創キャンペーンでファンと参加連動 |
体験価値 | オンライン通販主体 | 展示・体験・投稿など多面的DX接点構築 |
このように、初音ミクとパ・リーグの連携は、2022年と2023年の両年にわたり実施され、その目的と手法が明確に進化していました。2022年は「応援と社会貢献の橋渡し」としての意味合いが強く、2023年は「ファン参加型」「共創体験」へ踏み込んで設計されている点が重要です。
2023年8月に実施された第2弾のコラボでは、前回のグッズ販売に加え、投稿キャンペーンやデザイン応募などの共創施策が登場しました。
また、2022年ではオンライン販売中心だったのに対し、2023年は展示・即売などリアルの場にも拡大され、“見る・描く・参加する”という多層的な関わり方が可能になっていたのです。
つまり、ただ消費するのではなく、「一緒に作る」「広げる」という意識が育つ、他にない構造のコラボだったと言えます。
参考:「初音ミク」と「プロ野球」のコラボ決定 ! 各球団をイメージした衣装のコラボグッズは 9月1日(金)から! - 初音ミク公式ブログ
2025年3月22日から、全国のラウンドワン100店舗以上で開催された「桜ミク×ラウンドワン」コラボは、“季節の体験”そのものを届ける内容でした。
コラボでは、2025年版の描き下ろし「桜ミク」ビジュアルを活用し、次のような企画が展開されました。
このように、店舗のどこで写真を撮っても映えるように設計されていました。カラオケルームの壁紙、メニュー、特典コースター、等身大パネルなど、すべてが“推しと一緒にいる”空気感を作っていました。
さらに、SNSキャンペーンに参加することで追加グッズがもらえるなど、ファンの発信を応援する導線が用意されていました。
参考:「桜ミク」と「ROUND1」のコラボキャンペーン開催! - PR Times
今回の主役は「桜ミク」とのコラボであり、春を象徴する限定ビジュアルです。初音ミクの中でも人気が高いこの姿は、春だけの特別感を演出する存在として定着しています。
ラウンドワン側も、3月下旬からの開催というタイミングを生かし、卒業・入学・新生活シーズンの「節目」を祝うような体験として仕上げていました。
結果として、このコラボは「春の思い出」「推しと迎える新学期」という意味をファンに提供することができたのです。
2023年にもラウンドワン×初音ミクのコラボは行われていましたが、当時は主にスタンプラリーやポスター展示といった“店内装飾中心のプロモーション”でした。
2025年版では、空間演出・音声・SNS誘導・コラボグッズの全方位設計が強化され、「体験に参加するファン」としての満足度が大きく高まったと言えます。
参考:「初音ミク×ROUND1」のコラボキャンペーン実施が決定! - 初音ミク公式ブログ
「音楽の入口になるキャラ」として、ミクは“楽器”そのものに姿を変えました。
2023年に登場した「初音ミク16周年記念コラボモデル」は、単なるグッズではなく、本物の楽器とのコラボレーションとして展開されました。
ヤマハのオーディオインターフェース、キーボード、ギタレレなどが、初音ミクのカラーやビジュアルでデザインされ、機能面はプロ仕様のまま、“推し活しながら音楽制作ができる”というシリーズでした。
特にギタレレは、「初めて楽器にふれるきっかけ」を作るための効果的な施策となったのではないでしょうか。
つまり、ミクは“聴くキャラ”から、“一緒に音を出せる仲間”へと進化したのです。
2021年から始まったヤマハ×初音ミクの「Retro Future」コラボシリーズでは、“ミクがボーカロイドとして生まれた原点”を踏まえた、音楽文化を伝える視点が前面に出ていました。
この企画では、懐かしい電子楽器やシンセサイザーをミクのビジュアルで紹介しながら、
音づくりやサウンド体験を広く伝えるという教育的側面のある取り組みでした。
例えば、「ミクと未来のレトロな音楽室」というイベントでは、カセット型プレイヤーや昔の音源を実際に聴ける仕掛けがありました。
つまりこのコラボでは、“未来のキャラ”であるミクを通じて、“過去の音文化”に橋をかけていたのです。
このヤマハとの複数年にわたるコラボでは、売上や人気だけではなく、音楽のある文化そのものを広げる意図が感じられました。
例えば、Retro Futureイベントでは体験型展示に加え、ボカロPがDTMを教える音楽解説コンテンツも用意され、ファン層に「音ってこうやって生まれるんだ」と興味を持ってもらう設計になっていました。
つまり、初音ミクというキャラが、“商品”ではなく“教育コンテンツ”になった瞬間です。
ヤマハは「初音ミクの声の元」を作った会社でもあり、ミクにとっては“生まれた場所”とも言える存在です。そのヤマハと再び手を組むことで、ただのキャラグッズを超えた、「音をめぐる共創関係」が形になっていたのです。
参考:【グッズ(その他)】YAMAHAからボーカロイドキーボード初音ミクモデルが発売! - 初音ミク公式ブログ
RODY(ロディ)というブランド(キャラクター)をご存じでしょうか?これはイタリア生まれの乗って遊べるバランス玩具で、子供たちの間で長く愛されてきたキャラです。
そのRODYが、初音ミクとコラボしたのがこの事例です。このコラボでは、RODY風にアレンジされた丸くてやさしい雰囲気の初音ミクが登場し、ぬいぐるみ、ポーチ、缶バッジなどのアイテムが多数展開されました。
RODYはもともと、幼児向けの室内用おもちゃとして人気があり、そこに初音ミクがコラボしたことで、この企画は普段とは違う層──子供や親世代にまで届くものになったのです。
ポップなカラーリングや、丸みのあるシルエットは、いつもの「カッコいいミク」ではなく、「親しみやすくて安心感のあるミク」として描かれていました。
初音ミクとRODYがコラボした「39(サンキュー)」企画は、ミクとRODY誕生39周年をかけたものでした。このコラボでは、ミクとRODYが一緒に描かれたカラフルなアートが制作され、グッズやストア展開が行われました。
イラストレーションは、4氏とよい氏による描き下ろしで、「ミク×RODY」の世界観を“39=サンキュー”のテーマで表現し、「記念する」「感謝する」「かわいさを祝う」という3つが詰まった世界観があったのです。
このコラボは、主にアミューズメント施設向けのプライズ景品として展開されました。
2023年11月には、BIGクッションやブランケットなどが登場し、2024年2月にはギミックもしっかりしたフィギュアやぬいぐるみマスコットが導入されました。
これらは、ゲームセンターで遊びながら手に入る楽しさと、手元に置ける「かわいい記念品」としての価値の両方を提供していました。
つまり、遊び(体験)と所有(記録)が一体になった仕組みだったのです。
参考:初音ミク×RODY 39(サンキュー)コラボが2023年3月スタート! - RODY
参考:初音ミク×RODY コラボプライズが登場!! - RODY
参考:初音ミク×RODY コラボフィギュア・ぬいぐるみがプライズで登場! - RODY
2025年4月には、RODY×ミクの新アートによる最新フィギュア(メルヘンver.など)が発表されました。これにより、「39周年」から一歩進化したテーマが表現され、シリーズの継続性を持たせています。
しかも人気シリーズの再展開により、ファンには「また集めたくなる」期待感が生まれました。単純な一回限りの記念ではなく、「続きがあるから追いかける」構造が生まれています。
RODYと初音ミクのコラボは、「39(サンキュー)」というテーマを起点に、プライズ商品展開を通じてファンに“集める楽しみ”を提供し、2025年の新アート展開で長期的な共創関係を促している点が特長的です。
参考:初音ミク×RODY プライズにNEWアート「メルヘン」が誕生! - RODY
2025年3月にNintendo Switch用ソフト「Fit Boxing feat. 初音ミク」がリリースされました。このコラボは、ゲーム中に初音ミクがインストラクターとして登場し、一緒にエクササイズすることができるという、まったく新しい形のコンテンツです。
注目されたのは、運動時の動きに合わせて3Dで動く“スポーツするミク”がモデリングされたことです。普段のライブやMVでは見られない、運動ウェア姿やパンチング動作など、ファンにとって新鮮な体験となりました。
“推しと一緒に運動できる”という体験が、ファンにとっては単なるゲーム以上の価値を生み出しています。
参考:『Fit Boxing feat. 初音ミク -ミクといっしょにエクササイズ-』本日発売! - 初音ミク公式ブログ
このFit Boxingとのコラボは、「運動しながらミクと一緒に過ごせる」という、身体的な体験とキャラIPが融合した新しい事例でした。
普段はスマホの中やステージの上にいるミクが、画面越しに「ナイスパンチ!」と励ましてくれる...こうして体を動かしているうちに、まるで“本当に一緒にトレーニングしている”ような体験を提供しているコラボだと言えるでしょう。
つまり、このコラボは、キャラクターが“日常の中に入ってくる”体験をつくっていたのです。
このコラボでは、完成されたゲーム体験だけでなく、制作の裏側=“創作のプロセス”も公開されていました。
※採用作品は「Fit Boxing feat. 初音ミク×piapro 「楽曲」・「衣装」・「イラスト」大募集!」で公開されています。
ピアプロ公式ブログでは、各部門のクリエイターのメッセージが掲載され、ファン(クリエイター)を熱狂させる仕掛けも施されています。
こうした企画も盛り込むことで、ファンは「ただ遊ぶ」だけでなく「どう作られたかを知ることで、もっと好きになる」という効果も期待できるのです。
参考:【ピアプロ公式コラボ】『Fit Boxing feat. 初音ミク×piapro 「楽曲」・「衣装」・「イラスト」大募集!』結果発表! - 初音ミク公式ブログ
ここまでのポイントをまとめます。
初音ミクのコラボは、デザインを取り入れた広告や限定グッズ販売だけにとどまらず、「一緒に過ごす」「一緒に作る」「一緒に広げる」といった、“共創”の設計が貫かれています。
だからこそ、ファンは受け取る側ではなく、一緒に動く仲間になっていきます。
人気や知名度だけでなく、“ファンの創造性が活かせる設計”があるからこそ、初音ミクは他のIPとは違う形でコラボされやすいのではないでしょうか。
この「共創設計」の視点を取り入れて、ブランドのファンをもっと熱狂させていきましょう。
キャラクターを活用したPR、ブランドのイベント企画といったPR活動は、動画制作だけでなく数々のイベントの認知拡大を支援してきた我々NOKID(ノーキッド)なら、幅広いご提案とクリエイティブ制作が可能です。
アニメーションという表現方法の中にも、スライドに動きをつけたものから3DCGを活用したもの、セル画など多岐に渡るテイストがあります。
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NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。