2026.07.01

2026.07.01

キャラを貼らずに“容器ごと”作った。ドラクエ×エイトザタラソのコラボ商品が、地味にすごい

2026年5月27日、「ドラゴンクエストの日」。この日、いくつものブランドが一斉にドラクエ40周年のコラボを発表しました。メガネ、アイスクリーム、ハンカチ……SNSのタイムラインが一日じゅう、ドラクエ一色になった日です。

その中に、ヘアケアのコラボがありました。保水美容液ヘアケアブランド「エイトザタラソ」と、ドラゴンクエストの初コラボ。発表を見たとき、正直なところ「ああ、ヘアケアもコラボするんだ」くらいの感想でした。キャラもののシャンプーなんて、世の中にいくらでもありますから。

ところが、よく見ると様子が違いました。ボトルにキャラを貼っただけのコラボじゃないんです。容器ごと、このコラボのために作り変えている本気のコラボです。

そして、すぐに公式オンラインストアの先行予約が当初の予定数に達していました。

何がそんなに刺さったのか。そして、その刺さり方は「キャラが人気だったから」では説明がつきません。コラボ商品を企画したり、宣伝したりする立場の人にとって、自分の次の企画にそのまま持ち帰れる判断材料が詰まった事例だと思うので、順番に見ていきます。

エイトザタラソ×ドラクエのコラボで出た全7種と価格

ドラクエ40周年を記念した、エイトザタラソとの初のヘアケアコラボです。全7種類が数量限定で、オンライン先行予約から店頭発売まで段階的に売り出されました。

全7種を3段階で売り出した発売スケジュール

ざっくり言うと、エイトザタラソと、姉妹ラインのエイトザタラソ ユーが、ドラクエデザインのヘアケア商品を全7種類、数量限定で出しました。価格は税込で1,100円から3,300円まで。ラインナップは次のとおりです。

商品容量価格(税込)
モイスト シャンプー&トリートメント キット各475mL3,080円
同 ツルハグループ限定パッケージ各475mL3,080円
リペアショット&EXモイスト 美容液オイル100mL1,540円
ハイドロクレンジング モイスト ボディソープ475mL1,100円
ユー シャンプー&ヘアトリートメント キット各475mL3,300円
ユー シルキーヘアオイル100mL1,650円
ユー CBD&リフレッシングカーム ボディソープ475mL1,210円

販売は3段階に分かれていました。5月27日に公式ECで先行予約、6月24日に楽天やYahoo!ショッピングなどで発売、7月1日から全国のバラエティショップやドラッグストアの店頭に並ぶ、という流れです。ドラッグストア最大手のひとつ、ツルハグループ限定のデザインパッケージも用意されていました。

価格を吊り上げないことで下げた、ファンの財布のハードル

この一覧、ただの商品リストとして眺めると見落とすのですが、価格の置き方に企画の意図が透けて見えます。

エイトザタラソの通常のシャンプー&トリートメントは、ドラッグストアで気軽に手に取れる価格帯のブランドです。今回のコラボキットは各475mLで3,080円。容量が標準サイズより大きいことを差し引いても、キャラクターデザインのために大きく値段を吊り上げてはいません。プレミア価格で「コラボ税」を取りにいく作りではない、ということです。

ここから読めるのは、このコラボが狙った顧客の心理です。買う人の多くは、未知のブランドに冒険として手を出すのではなく、「いつも使っているもの、あるいは抵抗なく試せる価格のものに、好きなドラクエが乗っている」から手を伸ばします。つまり、ファンに払わせているのは新ブランドへの不安料ではなく、「好きなものが日用品になる」ちょっとした上乗せ分だけ。コラボ商品を設計する側からすると、価格を据え置きに近づけるほど、ファンの財布のハードルは下がる。ここは派手な見どころではありませんが、土台の設計として効いています。

ここまでは、よくあるコラボ商品の発表です。面白いのはここからです。

キャラを“貼る”か、容器ごと“作る”か——ホイミスライムのボトルが分けた道

ボトルの形そのものをホイミスライムにした

ポンプボトルの容器そのものが、ホイミスライムの形に造形されています。シールやラベルで足すのではなく、型から起こしている。

しかもただ可愛いだけでなく、意味が乗っています。ホイミスライムは、ゲームの中で回復呪文「ホイミ」を使って仲間を癒やしてくれる存在。そのホイミスライムのポンプを押して中身を出す動作が、髪に「ホイミをかける」ような体験になるよう設計されているんです。

公式の言葉を借りれば、「髪にホイミ!と唱えるように潤いをチャージ」する、という世界観です。

ここで起きているのは、キャラクターの「貼り付け」ではなく、使う動作そのものへの意味づけです。毎朝ポンプを押すという、何の変哲もない行為が、ファンにとっては小さなごっこ遊びになる。商品が機能(髪を洗う)に留まることなく、体験(ホイミを唱える)を売り始めた瞬間です。

容器ごと作ると、コストも納期も跳ね上がる

ここが「貼る」コラボと「作る」コラボの分かれ目だと思います。キャラを印刷するだけなら、既存のボトルにシールやラベルを足せば済みます。型は変えずに表面のデザインだけ差し替えればいいので、コストも納期も読みやすい。手堅いやり方です。

一方で容器ごと作るとなると、金型から起こす話になります。設計し直して、新しい型を作って、量産する。当然、手間もお金も段違いです。

しかも数量限定なので、たくさん作って単価を下げる、という逃げ道も使いにくい。それでもこのやり方を選んだ、という事実そのものが、このコラボの本気度を物語っています。

最初に決めるべきことは、IPを乗せるのか、体験させるのか

この対比は、可愛いボトルの話にとどまりません。コラボ商品を企画する人が、いちばん最初に立つ分かれ道そのものです。

問いはシンプルです。あなたがやろうとしているのは、キャラクターを商品に「乗せる」ことなのか、それともキャラクターの世界を「体験させる」ことなのか。前者なら、印刷・ラベルで十分です。コストも読めて、失敗してもダメージは小さい。後者を狙うなら、容器の造形や、使う動作の設計にまで踏み込む必要があり、その分コストもリスクも跳ね上がります。

大事なのは、どちらが上ということではなく、自分がどちらを狙っているかを最初に決めることです。体験を売りたいのに印刷で済ませれば「ただのキャラ商品」に埋もれ、乗せるだけでいい商品に金型を起こせば、コストが回収できません。

ホイミスライムのボトルが教えてくれるのは、「容器から作るとすごい」という単純な話ではなく、狙いとコストのかけどころを一致させる、という判断の順序です。

コラボのIPは知名度よりも意味の重なり(親和性)で選ぶ

ネーミングが自然に響くのは、エイトザタラソがもともと「髪に潤いを与えて回復させる」ことを核にしたブランドだからです。ホイミという回復呪文と、ブランドの中身がずれていません。

「洗う保水美容液」というブランドの成り立ち

作り込みは、容器だけにとどまりません。中身の処方にも、コラボ専用の名前が付いています。その名も「タラソホイミ処方」。なぜこのネーミングが成立するのか。ここでエイトザタラソというブランドの成り立ちを少し知っておくと、腑に落ちます。

© ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX

シャンプーやトリートメントなのに、考え方の出発点が「肌を保湿する」発想。幹細胞エキスや海洋由来の美容成分をブレンドした「タラソ幹細胞成分」を配合し、ダメージで傷んだ髪を内側から保水・補修する、という考え方を掲げています。

つまりこのブランドは、もともと「ダメージを受けた髪に潤いを補給して回復させる」ことを売りにしてきたわけです。

ホイミ(回復)と保水ケアが「回復」で一致する

そう考えると、回復呪文「ホイミ」との相性の良さが見えてきます。ホイミは傷ついた仲間を回復させる呪文。エイトザタラソは傷んだ髪に潤いを与えて整えるブランド。「回復させる」という一点で、ゲームの記号と商品の機能がきれいに重なります。

だから「タラソホイミ処方」という名前に、こじつけ感がありません。たまたまキャラを借りてきたという話ではなく、ブランドの核とIPの意味がもともと噛み合っていた、という土台があるわけです。

そしてここに、コラボのIP選びで最も応用が効く教訓があります。

IPは知名度の大きさで選びがちですが、本当に効くのは「自社の商品が約束していることと、IPが背負っている意味が重なるか」です。ホイミ(回復)とエイトザタラソ(保水・補修)のように、両者の意味が一本の線でつながると、ネーミングも世界観も嘘っぽくなりません。

逆に、どれだけ人気のIPでも、商品の中身と意味が噛み合わなければ、「人気者を借りてきただけ」の薄さが透けます。知名度ではなく意味の重なりでIPを選ぶ。この視点は、どんなジャンルのコラボにもそのまま使えます。

「ドラクエの日」に便乗して予約枠を即日埋めたエイトザタラソの売り方

商品の作り込みだけでなく、売り出し方も効いていました。同じ日に複数の他業種ブランドが同じIPでコラボを発表し、その熱量のなかで、当初用意していた予約分はすぐに埋まっています。

同日に各社が一斉発表し、お祭りの空気が生まれた

ここまでは商品そのものの作り込みでした。最後は、その商品をどう売り出したか、という話です。

冒頭で触れたとおり、このコラボが発表されたのは5月27日の「ドラクエの日」。この日には、エイトザタラソだけでなく、複数の他業種ブランドが同じくドラクエ40周年コラボを一斉に発表しています。たとえばメガネのZoffは、スライムやはぐれメタルなどをモチーフにしたメガネ10種を、6月5日発売で発表していました

同じIPのコラボが、同じ日に、ジャンル違いのブランドからいくつも出てくる...そうなると「今ドラクエがすごいことになっている」という空気が一気に出来上がります。つまり、一社だけで広告を打つよりも、同じお祭りに乗ったほうが大きな注目を共有できるということです。

ただし、この「お祭り便乗」には条件があります。記念日に乗っただけで自社の商品の作り込みが薄ければ、話題の波が過ぎたあとに何も残りません。

同日に何社も発表する以上、その日のタイムラインの中で「これは他と違う」と一瞬で伝わる作り込みがあって初めて、便乗が意味を持ちます。エイトザタラソの場合、それがホイミスライムの造形ボトルでした。

タイミングを借りるなら、借りたタイミングの中で勝てる中身を用意しておく。中規模のブランドが巨大IPの話題性に乗るときの、地味だけれど外せない前提条件です。

予約枠が当初の予定数に達し、増枠して再開された

そして反応は、数字より先に「予約枠がすぐ埋まった」という形で表れました。公式の告知によれば、当初予定していた予約数にすぐ達し、追加の数量を用意して予約を再開しています。「完売しました」で終わらせず、増枠してでも需要に応えにいったわけです。

念のため補足すると、「何分で埋まった」「何個売れた」といった規模の数字は公表されていません。なので、ここで言えるのは「当初の予約枠をすぐ埋め、増枠を迫られるほどの需要があった」というところまでです。

前回の「貼る」コラボとの差が、反応の差を生んだ

興味深いのは、エイトザタラソにとってキャラクターコラボ自体は初めてではない、という点です。過去にはサンリオのキャラクターとのコラボをドラッグストア限定で展開した実績もあります。このときはパッケージにキャラクターをあしらう、いわば「貼る」寄りのコラボでした。

同じブランドが、同じ「キャラクターコラボ」というくくりの中で、今回は容器の造形まで踏み込んだ。ここに変化があります。

買い手が今回とりわけ強く反応したのは、単に「ドラクエだから」でも「コラボだから」でもなく、いつものコラボより一段深く作り込まれた「容器ごと」の本気度に対してだった、と読むのが自然です。ファンは、ブランドがどれだけ手間をかけたかを、案外きちんと見ています。

エイトザタラソ×ドラクエのコラボを絶対正解とは呼べない理由

金型を起こす分、在庫リスクも高くなる

ここまで作り込みと売り方を見てきましたが、これを「コラボの正解」みたいに持ち上げるつもりはありません。

容器ごと作るのは、当然ながらコストも在庫リスクも高くなります。金型を起こして専用の容器を作り、数量限定で出して、もし売れ残ったら……というリスクは、印刷だけのコラボとは比べものになりません。型代は最初にまとめてかかるので、数が出なければそのまま損になります。

今回はうまくいったように見えますが、同じやり方がどんな商品でも、どんなブランドでも通用するわけではないはずです。

「予約枠が埋まった」は数量設定しだいでもある

それに、予約枠がすぐ埋まったという現象も、見方を変えれば「最初に用意した数を絞っていたから」とも言えます。限定数が少なければ、それだけ早く埋まります。今回は増枠して予約を再開していますが、当初の枠も増枠後の枠も具体的な数字は公表されていません。枠が埋まる華やかさと、供給の慎重さは、コインの裏表でもあります。

だからこれは「こうすれば売れる」という教科書ではなく、「ここまでやったコラボがあった」という一つの事例です。そのうえで、容器の造形まで踏み込んだ作り込みと、ブランドの核とIPの意味をきちんと重ねたネーミングは、企画として素直に面白い。そう思える事例でした。

まとめ:エイトザタラソ×ドラクエのコラボ事例から持ち帰れること

キャラもののコラボ商品は世の中にあふれています。その多くは、既存の商品にキャラを「貼る」やり方です。それ自体は手堅い選択で、コストも納期も読みやすい。

そんな中でドラクエ×エイトザタラソは、容器ごと「作る」ほうを選びました。ホイミスライムの形をしたポンプ、ホイミと髪の回復を重ねた「タラソホイミ処方」というネーミング。そこにブランドがもともと持っていた「潤いを与える」という核がぴったり乗った。だから単なる話題づくりに見えず、妙な説得力がありました。

整理すると、この事例から持ち帰れる判断材料は3つです。ひとつ、価格は据え置きに近づけるほどファンの手は伸びる。ふたつ、キャラを乗せるのか体験を売るのかを最初に決め、狙いとコストのかけどころを一致させる。みっつ、IPは知名度ではなく、自社の商品との意味の重なりで選ぶ。

自分がもしコラボ商品を企画する立場なら、どこまで作り込むか。貼るので十分なのか、容器から作るのか。その判断を考えるうえで、覚えておいて損のない一例だと思います。


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NOKID編集部

1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。

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