2026.04.08

2026.04.05

にじさんじ・ホロライブ人気ランキングの結果は3つある?登録者数・ファン投票が暴く"本当の価値"

「にじさんじで一番人気は誰ですか?」「ホロライブで一番人気は?」

この質問に、一つの答えを返すことはできません。正確に言えば、答えは3つあります。そして、その3つがほとんど一致しないという事実こそが、VTuberの人気を理解するうえで最も重要な手がかりになります。

YouTubeの登録者数ランキングで見れば、ホロライブの宝鐘マリンがVTuber全体のトップに君臨し(約431万人)、にじさんじトップの葛葉(約215万人)はその約半分です。

一方、ファンが選ぶ"2024年に最も活躍した"ランキングでにじさんじ1位を獲得したのは、登録者数では圏外のシェリン・バーガンディ(約39万人)。そして決算(収益のランキング)を見れば、登録者数でホロライブに劣るにじさんじ(ANYCOLOR)の営業利益率は38%で、ホロライブ(カバー)の18.4%の約2倍に達しています。

"認知の1位""熱量の1位""利益の1位"は、まったく別の景色を見せています。

なぜこのズレが生じるのか。にじさんじとホロライブ⸺VTuber業界の二大勢力の決算データとランキングデータを突き合わせて、その構造を解き明かしていきます。

目次

にじさんじとホロライブ人気ランキング比較⸺TOP5を並べたら答えが3つに割れた

登録者数ランキング(2025年最新)

まず、最もわかりやすい人気の指標として引用されることが多い、YouTubeチャンネル登録者数のランキングから見てみましょう。にじさんじとホロライブを並べて比較します。

ホロライブ(カバー株式会社)

順位タレント名登録者数(概数)
1位宝鐘マリン約431万人
2位星街すいせい約283万人
3位兎田ぺこら約276万人
4位白上フブキ約265万人
5位さくらみこ約247万人

にじさんじ(ANYCOLOR株式会社)

順位タレント名登録者数(概数)
1位葛葉約215万人
2位壱百満天原サロメ約170万人
3位約137万人
4位ローレン・イロアス約127万人
5位剣持刀也約117万人

登録者数では、ホロライブが圧倒しています。宝鐘マリンの431万人は、にじさんじトップの葛葉215万人の約2倍。ホロライブには100万人超のタレントが40名以上いるのに対し、にじさんじの100万人超は数名程度です。

この数字だけを見れば、ホロライブの方が人気が高い、VTuberの人気=登録者数=ホロライブの圧勝で話は終わりそうに見えます。しかし、この結論は記事の後半で根本から揺さぶられることになります。

参考:ユーザーローカル VTuberランキング

参考:Vポス チャンネル登録者数ランキング

ファン投票1位は登録者数圏外⸺数字が覆る瞬間

ファンの体感に基づいたランキングを見ると、景色はまるで変わります。

ねとらぼが2024年末に実施した"2024年に一番活躍したと思うにじさんじ所属タレント"投票(総投票数1,519票)の結果を見てみましょう。

2024年に一番活躍したと思う にじさんじ所属タレント ランキング

順位タレント名登録者数(概数)
1位シェリン・バーガンディ約39万人
2位ルンルン約57万人
引用:ねとらぼリサーチ「2024年に一番活躍したと思う にじさんじ所属タレント ランキングTOP29」

1位のシェリン・バーガンディは、登録者数ランキングではTOP10にも入っていません。登録者数では葛葉の約5分の1です。

2位のルンルンに至っては、2024年6月にデビューしたばかりの新人で、活動開始からわずか半年で4年以上活動しているベテラン勢を押しのけました。

ここで注目すべきは、登録者数が多いタレント=ファンの体感で最も活躍したタレントではないという事実です。この乖離はにじさんじに限った話ではなく、ホロライブでも同様の構造が存在します。

ホロライブでも登録者数トップの宝鐘マリンと、メンバーシップ(月額課金)の推定加入者数トップの兎田ぺこらは一致していません。登録者数431万人のマリンに対し、メンバーシップ推定加入者数で最も多いのは登録者276万人のぺこらです。

参考:メン限INFO ホロライブ メンバーシップ推定登録人数ランキング

売上ほぼ同じ、営業利益率は2倍⸺決算が覆すVTuber事務所の"本当の実力"

3つ目のランキングは、どちらの事務所がより効率的に稼いでいるかです。ここでは、にじさんじを運営するANYCOLORと、ホロライブを運営するカバーの決算を並べてみましょう。

指標ANYCOLOR(にじさんじ)カバー(ホロライブ)
決算期2025年4月期2025年3月期
売上高428.8億円434.0億円
営業利益163.1億円80.0億円
営業利益率38.0%18.4%

売上規模はほぼ同じです。にもかかわらず、営業利益率は約2倍の差があります。

登録者数ではホロライブが圧倒しているのに、利益率ではにじさんじが大幅に上回っている⸺この事実は、登録者数が多い=ビジネスとして強いという直感的な等式が成り立たないことを明確に示しています。

出典:ANYCOLOR 2025年4月期 通期決算説明資料

出典:カバー IR情報

にじさんじとホロライブをファン目線で比較⸺登録者数では測れない"熱量"の正体

登録者数とファン投票が一致しないのは、偶然ではありません。構造的な理由があります。

登録者215万人 vs 投票1位⸺なぜ数字がねじれるのか

登録者数は、一度でも登録ボタンを押した人の累計です。解除しない限り減らないため、過去のバズや話題で一時的に急増した数字がそのまま残ります。2022年にデビュー即100万登録を達成した壱百満天原サロメの170万人には、当時の社会現象的な注目が含まれています。

一方、ファン投票やメンバーシップ加入で測っているのは、今この人にどれだけ熱量を持っているかです。過去の蓄積ではなく、現在進行形の関係の深さを反映します。

登録者39万人が200万人を逆転⸺シェリンとルンルンが証明した"ファンの深さ"

シェリン・バーガンディの登録者数は約39万人。にじさんじ内でも決して多い方ではありません。しかし投票では、200万人超の登録者を持つタレントを押しのけて1位になりました。

これは、シェリンのファンコミュニティが広さではなく深さで際立っていることを示唆しています。彼の配信スタイルは探偵キャラクターを活かした独自路線であり、その世界観に惹かれたファンの定着率が極めて高いと考えられます。

ルンルンの事例はさらに象徴的です。デビューからわずか半年で活躍ランキング2位。これは、新しいファン×高い熱量の掛け算がいかにパワフルかを示しています。

登録者431万人のマリンとメンシ1位のぺこら⸺ホロライブでも一致しない

この構造はホロライブ側でも確認できます。

メンバーシップ推定加入者数(月額課金ファンの数)のランキングでは、1位は兎田ぺこら(推定約7.8万人)、2位が宝鐘マリン(推定約7.3万人)です。

登録者数ではマリンがぺこらを約155万人上回っていますが、月額課金というお金を払ってでも応援する行動ではぺこらが上回っています。

さらに興味深いのは、3位に位置する沙花伹クロヱ(推定約6.9万人)です。

登録者数では150万人前後でTOP5圏外ですが、メンバーシップでは3位。認知の広さと関係の深さが独立した指標であることが、ここでも裏付けられます。

ANYCOLOR ID登録者168万人⸺追うべきは登録者数の先にある数字

ANYCOLORの決算資料には、もう一つ注目すべきデータがあります。ANYCOLOR ID(にじさんじ公式ストアやファンクラブで使われるID)の登録者数が168.7万人に達し、前年比で33.6%増加しているという事実です。

ANYCOLOR IDの増加率は、YouTube登録者数の伸び率よりも高い値を示しています。つまり、動画を見る段階からお金を使う仕組みに参加する段階へ移行するファンが加速度的に増えているのです。

これはVTuber事務所にとって重要な示唆を含んでいます。追うべき数字は何万人に見られたかではなく、何人が関係の次のステップに進んだかです。登録者数を増やすことよりも、すでにいるファンとの関係を深める仕組みを設計する方が、収益に直結します。

参考:ANYCOLOR 2025年4月期 通期決算説明資料

にじさんじとホロライブを決算で比較⸺売上同規模なのに利益率2倍の理由

ファンの熱量と売上は、どう結びつくのでしょうか。ここからは、にじさんじとホロライブの決算データを比較しながら、ビジネス視点で人気の構造を読み解いていきます。

営業利益率38%はどこから来るのか⸺コマース65%、投げ銭はわずか12%

ANYCOLORの2025年4月期通期売上高は428.8億円、営業利益率38.0%。この利益率は上場エンタメ企業の中でも際立って高い水準です。

その収益を支えているのが、売上の65%を占めるコマース事業⸺グッズ、ボイスコンテンツ、デジタルグッズなどの物販です。

セグメント売上高構成比
コマース(グッズ・ボイス等)278.4億円64.9%
プロモーション70.9億円16.5%
ライブストリーミング50.6億円11.8%
イベント28.2億円6.6%
出典:ANYCOLOR 2025年4月期 通期決算説明資料

世間でVTuberの収入としてイメージされがちなスーパーチャット(投げ銭)を含むライブストリーミングは、全体のわずか12%にすぎません。

TCGで延べ15万人動員、MD売上64.6%増⸺ホロライブが選んだ"もう一つの道"

一方、ホロライブを運営するカバーの決算も、認知の広さとは異なる軸で成長を遂げています。

カバーの2025年3月期売上高は434.0億円。その中で最も成長が著しかったのが、マーチャンダイジング(グッズ・物販全般を指すMD)分野です。前期比64.6%増の205.4億円に達しました。

出典:ホロライブプロダクション

この急成長を牽引したのが、2024年9月に販売を開始したトレーディングカードゲーム"hololive OFFICIAL CARD GAME"です。

半年強の運営ながら、大会やショップイベントで延べ15万人を動員。TCG市場において中堅タイトルとして認知される規模にまで成長しました。注目すべきは、このTCGの購入者が既存のホロライブファンだけでなく、TCGファンがホロライブを知るきっかけにもなっている点です。

つまり、ホロライブは登録者数の認知の広さを活かしつつ、TCGという新しい接点を通じてファンの購買行動を設計しています。

にじさんじがボイスやグッズを中心としたコマースで利益率を追求しているのに対し、ホロライブはTCGやライブイベントで認知→体験→購買のファネル(段階的な導線)を広げています。

女性ファン71%×ユニット施策 vs TCG×ワールドツアー⸺"稼ぎ方"比較

ここで、冒頭で提示した決算比較に立ち戻りましょう。

指標ANYCOLOR(にじさんじ)カバー(ホロライブ)
売上高428.8億円434.0億円
営業利益163.1億円80.0億円
営業利益率38.0%18.4%
最大の収益源コマース(グッズ・ボイス)65%MD(TCG含む)47% + ライブ18%
ファン層の特徴女性ファン比率71%、グッズ購買力が高い男女混合、TCG・ライブで接点拡大

この差は、どちらが優秀かという話ではありません。稼ぎ方の構造が違うのです。

ANYCOLORは、女性ファン比率71%という強固なファンベースの購買力を、ユニット施策(複数タレントの組み合わせを軸にしたグッズ展開やイベント企画)やグッズ・ボイス企画で効率的にコマース売上に変換しています。

グッズ施策数は年間190件(前年比33%増)、イベント視聴チケットは53.6万枚(前年比36%増)。一つひとつの施策のコスト効率が高く、結果として38%という突出した利益率が実現しています。

カバーは、登録者数の認知の広さを活かしながら、TCGやワールドツアーなど大型投資で新たなファン接点を創出しています。

利益率はANYCOLORに劣りますが、TCG英語版のグローバル展開やライブの海外公演など、将来の成長に向けた投資フェーズにあると考えられます。

重要なのは、どちらの事例でも登録者数の多さが直接的に利益率を決定していないということです。利益を決めているのは、ファンの購買行動を設計する仕組みなのです。

出典:ANYCOLOR IR資料

出典:カバー IR情報

登録者数400万 vs 30万⸺タイアップで成果が出るのはどちらか

ANYCOLORの決算によれば、企業からのプロモーション案件は993件で前年比11.4%増加しています。企業がVTuberタイアップに投じる予算は年々増えているということです。c

しかし、タイアップ先の選定で登録者数が多い=リーチが大きいという基準だけで選ぶと、期待した効果が出ないことがあります。登録者数はあくまで認知の広さであり、そのファンがあなたのブランドのターゲット層と重なっているかは別の問題だからです。

登録者数400万のVTuberと、登録者数30万のVTuberがいたとします。後者のファン層の70%があなたのブランドの主要ターゲット(例えば20〜30代女性)と重なっているなら、後者の方がプロモーション効果は高い可能性が十分にあります。

見るべきは何万人に届くかではなく、ターゲットに何%重なるか⸺これがANYCOLORとカバー、2つの決算データが示す本質的なメッセージです。

にじさんじとホロライブの比較でなぜ答えが割れるのか⸺人気を三層モデルで解明

ここまでの分析を整理すると、VTuberの人気は三つの層で構成されていることが見えてきます。そして、にじさんじとホロライブの比較は、この三層が独立して動いていることの最も説得力のある証拠です。

認知・熱量・購買力は独立して動く⸺VTuber人気の三層構造

意味代表的な指標にじさんじの例ホロライブの例
認知"知っている"の広さ登録者数、総再生回数葛葉:約215万人宝鐘マリン:約431万人
熱量"好き"の深さファン投票、メンバーシップ加入率、ANYCOLOR IDシェリン:ファン投票1位(39万人)兎田ぺこら:メンバーシップ推定1位(約7.8万人)
購買力"買う"の強さグッズ売上、TCG売上、イベント動員コマース65%、利益率38%MD205億円(TCG牽引)、延べ15万人動員

各層は独立して動いています。認知が高くても熱量が低ければ"知ってるけど興味ない"状態ですし、熱量が高くても購買力に接続されていなければ"好きだけど買わない"状態です。

認知で劣る側が利益率で勝つ⸺2社の決算が証明する三層の独立性

2社の比較は、三層モデルの独立性を明確に証明しています。

認知ではホロライブが圧倒します。登録者数100万超のタレントが40名以上おり、宝鐘マリンの431万人はVTuber全体のトップです。にじさんじの最大値(葛葉215万人)はその半分にとどまります。

熱量では両社に異なる強みがあります。にじさんじはファン投票でシェリン(39万人)が1位になる深い関係性。ホロライブはメンバーシップで兎田ぺこらが登録者数1位のマリンを上回る課金行動への転換率。

購買力では稼ぎ方の構造が異なります。

にじさんじは、女性ファン71%×ユニット施策×グッズ・ボイスで利益率38%。

ホロライブは、TCGという新商材で延べ15万人を動員しMD売上を64.6%伸ばしました。

認知で劣るにじさんじが利益率で勝ち、認知で勝るホロライブがTCGで新たな購買層を開拓する⸺この構図は、三つの層が独立していることの何よりの証拠です。

タイアップ・参入・運営⸺目的で見るべき層が変わる

三層モデルを使えば、自分は何のためにVTuberの人気を知りたいのかによって、見るべき指標が変わります。

VTuberとのタイアップを検討しているなら、見るべきは認知ではなく熱量×購買力です。登録者数がそこまで多くなくても、ファンの行動転換率が高いVTuberの方が、プロモーション効果は出やすくなります。むしろ、認知が広すぎるとファンの属性が分散し、ターゲット層への刺さりが弱くなることすらあります。

VTuber事業への参入を考えているなら、見るべきは購買力の構造です。ANYCOLORの決算が示すように、ライブストリーミング(投げ銭含む)は全体の12%にすぎず、収益の本体はコマースにあります。カバーの事例もTCGがMD成長の牽引役であることを示しています。

配信で稼ぐモデルではなく、関係性を物販に接続する仕組みを設計できるかが勝負の分かれ目です。

VTuber事務所を運営しているなら、見るべきは熱量の設計です。登録者数を競うゲームでは大手に勝てません。しかし、ファンとの関係の深さは事務所の規模と無関係に設計できます。シェリンの事例が示すように、39万人の深い関係は、200万人の広い認知を凌駕する力を持っています。

まとめ⸺2社の比較が教える"知名度で選ぶ時代の終わり"

「にじさんじとホロライブ、どちらが人気か?」

その答えは、あなたが人気で何を測ろうとしているかによって変わります。認知の広さならホロライブ。ファンの深い関係性ならにじさんじのシェリン的な構造。利益率という経営効率ならANYCOLOR。新規層の開拓と商材の多角化ならカバー。

この市場をビジネスに活用するとき、登録者数という一枚のランキング表だけを見て判断すると、本質を見誤ります。見るべきは知名度ではなく、ターゲットに対する影響力です。

この原則は、企業のIPプロモーション全般にも当てはまります。

有名IPを高額なライセンス料で使い、競合も同じIPを使い、消費者の記憶に残るのはIPの名前であって自社ブランドではない⸺そんな"有名だから選ぶ"消耗戦から抜け出すためのカギも、まったく同じ構造にあります。

大衆的な知名度はまだ低いが、ターゲット層の中では圧倒的な影響力を持つIP⸺VTuberであれ、SNS発クリエイターであれ⸺を先に押さえる企業が、より少ないコストで、より深い効果を得ています。

これは実際に、筆者が5〜6年前のインフルエンサー市場で起きたのを見てきた経験からも言えます。

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NOKID編集部

1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。

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