NOKID編集部
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「にじさんじで一番人気は誰ですか?」「ホロライブで一番人気は?」
この質問に、一つの答えを返すことはできません。正確に言えば、答えは3つあります。そして、その3つがほとんど一致しないという事実こそが、VTuberの人気を理解するうえで最も重要な手がかりになります。
YouTubeの登録者数ランキングで見れば、ホロライブの宝鐘マリンがVTuber全体のトップに君臨し(約431万人)、にじさんじトップの葛葉(約215万人)はその約半分です。
一方、ファンが選ぶ"2024年に最も活躍した"ランキングでにじさんじ1位を獲得したのは、登録者数では圏外のシェリン・バーガンディ(約39万人)。そして決算(収益のランキング)を見れば、登録者数でホロライブに劣るにじさんじ(ANYCOLOR)の営業利益率は38%で、ホロライブ(カバー)の18.4%の約2倍に達しています。
"認知の1位""熱量の1位""利益の1位"は、まったく別の景色を見せています。
なぜこのズレが生じるのか。にじさんじとホロライブ⸺VTuber業界の二大勢力の決算データとランキングデータを突き合わせて、その構造を解き明かしていきます。

まず、最もわかりやすい人気の指標として引用されることが多い、YouTubeチャンネル登録者数のランキングから見てみましょう。にじさんじとホロライブを並べて比較します。
| 順位 | タレント名 | 登録者数(概数) |
|---|---|---|
| 1位 | 宝鐘マリン | 約431万人 |
| 2位 | 星街すいせい | 約283万人 |
| 3位 | 兎田ぺこら | 約276万人 |
| 4位 | 白上フブキ | 約265万人 |
| 5位 | さくらみこ | 約247万人 |
| 順位 | タレント名 | 登録者数(概数) |
|---|---|---|
| 1位 | 葛葉 | 約215万人 |
| 2位 | 壱百満天原サロメ | 約170万人 |
| 3位 | 叶 | 約137万人 |
| 4位 | ローレン・イロアス | 約127万人 |
| 5位 | 剣持刀也 | 約117万人 |
登録者数では、ホロライブが圧倒しています。宝鐘マリンの431万人は、にじさんじトップの葛葉215万人の約2倍。ホロライブには100万人超のタレントが40名以上いるのに対し、にじさんじの100万人超は数名程度です。
この数字だけを見れば、ホロライブの方が人気が高い、VTuberの人気=登録者数=ホロライブの圧勝で話は終わりそうに見えます。しかし、この結論は記事の後半で根本から揺さぶられることになります。
ファンの体感に基づいたランキングを見ると、景色はまるで変わります。
ねとらぼが2024年末に実施した"2024年に一番活躍したと思うにじさんじ所属タレント"投票(総投票数1,519票)の結果を見てみましょう。
| 順位 | タレント名 | 登録者数(概数) |
|---|---|---|
| 1位 | シェリン・バーガンディ | 約39万人 |
| 2位 | ルンルン | 約57万人 |
1位のシェリン・バーガンディは、登録者数ランキングではTOP10にも入っていません。登録者数では葛葉の約5分の1です。
2位のルンルンに至っては、2024年6月にデビューしたばかりの新人で、活動開始からわずか半年で4年以上活動しているベテラン勢を押しのけました。
ここで注目すべきは、登録者数が多いタレント=ファンの体感で最も活躍したタレントではないという事実です。この乖離はにじさんじに限った話ではなく、ホロライブでも同様の構造が存在します。
ホロライブでも登録者数トップの宝鐘マリンと、メンバーシップ(月額課金)の推定加入者数トップの兎田ぺこらは一致していません。登録者数431万人のマリンに対し、メンバーシップ推定加入者数で最も多いのは登録者276万人のぺこらです。
参考:メン限INFO ホロライブ メンバーシップ推定登録人数ランキング

3つ目のランキングは、どちらの事務所がより効率的に稼いでいるかです。ここでは、にじさんじを運営するANYCOLORと、ホロライブを運営するカバーの決算を並べてみましょう。
| 指標 | ANYCOLOR(にじさんじ) | カバー(ホロライブ) |
|---|---|---|
| 決算期 | 2025年4月期 | 2025年3月期 |
| 売上高 | 428.8億円 | 434.0億円 |
| 営業利益 | 163.1億円 | 80.0億円 |
| 営業利益率 | 38.0% | 18.4% |
売上規模はほぼ同じです。にもかかわらず、営業利益率は約2倍の差があります。
登録者数ではホロライブが圧倒しているのに、利益率ではにじさんじが大幅に上回っている⸺この事実は、登録者数が多い=ビジネスとして強いという直感的な等式が成り立たないことを明確に示しています。
出典:カバー IR情報
登録者数とファン投票が一致しないのは、偶然ではありません。構造的な理由があります。
登録者数は、一度でも登録ボタンを押した人の累計です。解除しない限り減らないため、過去のバズや話題で一時的に急増した数字がそのまま残ります。2022年にデビュー即100万登録を達成した壱百満天原サロメの170万人には、当時の社会現象的な注目が含まれています。
一方、ファン投票やメンバーシップ加入で測っているのは、今この人にどれだけ熱量を持っているかです。過去の蓄積ではなく、現在進行形の関係の深さを反映します。
シェリン・バーガンディの登録者数は約39万人。にじさんじ内でも決して多い方ではありません。しかし投票では、200万人超の登録者を持つタレントを押しのけて1位になりました。
これは、シェリンのファンコミュニティが広さではなく深さで際立っていることを示唆しています。彼の配信スタイルは探偵キャラクターを活かした独自路線であり、その世界観に惹かれたファンの定着率が極めて高いと考えられます。
ルンルンの事例はさらに象徴的です。デビューからわずか半年で活躍ランキング2位。これは、新しいファン×高い熱量の掛け算がいかにパワフルかを示しています。
この構造はホロライブ側でも確認できます。
メンバーシップ推定加入者数(月額課金ファンの数)のランキングでは、1位は兎田ぺこら(推定約7.8万人)、2位が宝鐘マリン(推定約7.3万人)です。
登録者数ではマリンがぺこらを約155万人上回っていますが、月額課金というお金を払ってでも応援する行動ではぺこらが上回っています。
さらに興味深いのは、3位に位置する沙花伹クロヱ(推定約6.9万人)です。
登録者数では150万人前後でTOP5圏外ですが、メンバーシップでは3位。認知の広さと関係の深さが独立した指標であることが、ここでも裏付けられます。

ANYCOLORの決算資料には、もう一つ注目すべきデータがあります。ANYCOLOR ID(にじさんじ公式ストアやファンクラブで使われるID)の登録者数が168.7万人に達し、前年比で33.6%増加しているという事実です。
ANYCOLOR IDの増加率は、YouTube登録者数の伸び率よりも高い値を示しています。つまり、動画を見る段階からお金を使う仕組みに参加する段階へ移行するファンが加速度的に増えているのです。
これはVTuber事務所にとって重要な示唆を含んでいます。追うべき数字は何万人に見られたかではなく、何人が関係の次のステップに進んだかです。登録者数を増やすことよりも、すでにいるファンとの関係を深める仕組みを設計する方が、収益に直結します。
ファンの熱量と売上は、どう結びつくのでしょうか。ここからは、にじさんじとホロライブの決算データを比較しながら、ビジネス視点で人気の構造を読み解いていきます。
ANYCOLORの2025年4月期通期売上高は428.8億円、営業利益率38.0%。この利益率は上場エンタメ企業の中でも際立って高い水準です。
その収益を支えているのが、売上の65%を占めるコマース事業⸺グッズ、ボイスコンテンツ、デジタルグッズなどの物販です。
| セグメント | 売上高 | 構成比 |
|---|---|---|
| コマース(グッズ・ボイス等) | 278.4億円 | 64.9% |
| プロモーション | 70.9億円 | 16.5% |
| ライブストリーミング | 50.6億円 | 11.8% |
| イベント | 28.2億円 | 6.6% |
世間でVTuberの収入としてイメージされがちなスーパーチャット(投げ銭)を含むライブストリーミングは、全体のわずか12%にすぎません。

一方、ホロライブを運営するカバーの決算も、認知の広さとは異なる軸で成長を遂げています。
カバーの2025年3月期売上高は434.0億円。その中で最も成長が著しかったのが、マーチャンダイジング(グッズ・物販全般を指すMD)分野です。前期比64.6%増の205.4億円に達しました。

この急成長を牽引したのが、2024年9月に販売を開始したトレーディングカードゲーム"hololive OFFICIAL CARD GAME"です。
半年強の運営ながら、大会やショップイベントで延べ15万人を動員。TCG市場において中堅タイトルとして認知される規模にまで成長しました。注目すべきは、このTCGの購入者が既存のホロライブファンだけでなく、TCGファンがホロライブを知るきっかけにもなっている点です。
つまり、ホロライブは登録者数の認知の広さを活かしつつ、TCGという新しい接点を通じてファンの購買行動を設計しています。
にじさんじがボイスやグッズを中心としたコマースで利益率を追求しているのに対し、ホロライブはTCGやライブイベントで認知→体験→購買のファネル(段階的な導線)を広げています。
ここで、冒頭で提示した決算比較に立ち戻りましょう。
| 指標 | ANYCOLOR(にじさんじ) | カバー(ホロライブ) |
|---|---|---|
| 売上高 | 428.8億円 | 434.0億円 |
| 営業利益 | 163.1億円 | 80.0億円 |
| 営業利益率 | 38.0% | 18.4% |
| 最大の収益源 | コマース(グッズ・ボイス)65% | MD(TCG含む)47% + ライブ18% |
| ファン層の特徴 | 女性ファン比率71%、グッズ購買力が高い | 男女混合、TCG・ライブで接点拡大 |
この差は、どちらが優秀かという話ではありません。稼ぎ方の構造が違うのです。

ANYCOLORは、女性ファン比率71%という強固なファンベースの購買力を、ユニット施策(複数タレントの組み合わせを軸にしたグッズ展開やイベント企画)やグッズ・ボイス企画で効率的にコマース売上に変換しています。
グッズ施策数は年間190件(前年比33%増)、イベント視聴チケットは53.6万枚(前年比36%増)。一つひとつの施策のコスト効率が高く、結果として38%という突出した利益率が実現しています。
カバーは、登録者数の認知の広さを活かしながら、TCGやワールドツアーなど大型投資で新たなファン接点を創出しています。
利益率はANYCOLORに劣りますが、TCG英語版のグローバル展開やライブの海外公演など、将来の成長に向けた投資フェーズにあると考えられます。
重要なのは、どちらの事例でも登録者数の多さが直接的に利益率を決定していないということです。利益を決めているのは、ファンの購買行動を設計する仕組みなのです。
出典:カバー IR情報
ANYCOLORの決算によれば、企業からのプロモーション案件は993件で前年比11.4%増加しています。企業がVTuberタイアップに投じる予算は年々増えているということです。c
しかし、タイアップ先の選定で登録者数が多い=リーチが大きいという基準だけで選ぶと、期待した効果が出ないことがあります。登録者数はあくまで認知の広さであり、そのファンがあなたのブランドのターゲット層と重なっているかは別の問題だからです。

登録者数400万のVTuberと、登録者数30万のVTuberがいたとします。後者のファン層の70%があなたのブランドの主要ターゲット(例えば20〜30代女性)と重なっているなら、後者の方がプロモーション効果は高い可能性が十分にあります。
見るべきは何万人に届くかではなく、ターゲットに何%重なるか⸺これがANYCOLORとカバー、2つの決算データが示す本質的なメッセージです。

ここまでの分析を整理すると、VTuberの人気は三つの層で構成されていることが見えてきます。そして、にじさんじとホロライブの比較は、この三層が独立して動いていることの最も説得力のある証拠です。

| 層 | 意味 | 代表的な指標 | にじさんじの例 | ホロライブの例 |
|---|---|---|---|---|
| 認知 | "知っている"の広さ | 登録者数、総再生回数 | 葛葉:約215万人 | 宝鐘マリン:約431万人 |
| 熱量 | "好き"の深さ | ファン投票、メンバーシップ加入率、ANYCOLOR ID | シェリン:ファン投票1位(39万人) | 兎田ぺこら:メンバーシップ推定1位(約7.8万人) |
| 購買力 | "買う"の強さ | グッズ売上、TCG売上、イベント動員 | コマース65%、利益率38% | MD205億円(TCG牽引)、延べ15万人動員 |
各層は独立して動いています。認知が高くても熱量が低ければ"知ってるけど興味ない"状態ですし、熱量が高くても購買力に接続されていなければ"好きだけど買わない"状態です。
2社の比較は、三層モデルの独立性を明確に証明しています。
認知ではホロライブが圧倒します。登録者数100万超のタレントが40名以上おり、宝鐘マリンの431万人はVTuber全体のトップです。にじさんじの最大値(葛葉215万人)はその半分にとどまります。
熱量では両社に異なる強みがあります。にじさんじはファン投票でシェリン(39万人)が1位になる深い関係性。ホロライブはメンバーシップで兎田ぺこらが登録者数1位のマリンを上回る課金行動への転換率。
購買力では稼ぎ方の構造が異なります。

にじさんじは、女性ファン71%×ユニット施策×グッズ・ボイスで利益率38%。
ホロライブは、TCGという新商材で延べ15万人を動員しMD売上を64.6%伸ばしました。
認知で劣るにじさんじが利益率で勝ち、認知で勝るホロライブがTCGで新たな購買層を開拓する⸺この構図は、三つの層が独立していることの何よりの証拠です。
三層モデルを使えば、自分は何のためにVTuberの人気を知りたいのかによって、見るべき指標が変わります。
VTuberとのタイアップを検討しているなら、見るべきは認知ではなく熱量×購買力です。登録者数がそこまで多くなくても、ファンの行動転換率が高いVTuberの方が、プロモーション効果は出やすくなります。むしろ、認知が広すぎるとファンの属性が分散し、ターゲット層への刺さりが弱くなることすらあります。
VTuber事業への参入を考えているなら、見るべきは購買力の構造です。ANYCOLORの決算が示すように、ライブストリーミング(投げ銭含む)は全体の12%にすぎず、収益の本体はコマースにあります。カバーの事例もTCGがMD成長の牽引役であることを示しています。
配信で稼ぐモデルではなく、関係性を物販に接続する仕組みを設計できるかが勝負の分かれ目です。
VTuber事務所を運営しているなら、見るべきは熱量の設計です。登録者数を競うゲームでは大手に勝てません。しかし、ファンとの関係の深さは事務所の規模と無関係に設計できます。シェリンの事例が示すように、39万人の深い関係は、200万人の広い認知を凌駕する力を持っています。

「にじさんじとホロライブ、どちらが人気か?」
その答えは、あなたが人気で何を測ろうとしているかによって変わります。認知の広さならホロライブ。ファンの深い関係性ならにじさんじのシェリン的な構造。利益率という経営効率ならANYCOLOR。新規層の開拓と商材の多角化ならカバー。
この市場をビジネスに活用するとき、登録者数という一枚のランキング表だけを見て判断すると、本質を見誤ります。見るべきは知名度ではなく、ターゲットに対する影響力です。
この原則は、企業のIPプロモーション全般にも当てはまります。
有名IPを高額なライセンス料で使い、競合も同じIPを使い、消費者の記憶に残るのはIPの名前であって自社ブランドではない⸺そんな"有名だから選ぶ"消耗戦から抜け出すためのカギも、まったく同じ構造にあります。
大衆的な知名度はまだ低いが、ターゲット層の中では圧倒的な影響力を持つIP⸺VTuberであれ、SNS発クリエイターであれ⸺を先に押さえる企業が、より少ないコストで、より深い効果を得ています。
これは実際に、筆者が5〜6年前のインフルエンサー市場で起きたのを見てきた経験からも言えます。
NOKIDでは、こうした認知度ではなく影響力で選ぶIP活用の設計・実行を、IPの選定からアニメーション制作、SNS運用まで一気通貫で支援しています。IPの活用に関心がある方は、無料相談で自社に合うかどうかを確認してみてください。
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