2026.03.04

2026.03.05

日本郵便の「ぽすくま」はなぜ人気?企業キャラクター成功のヒントを調査

ぽすくまと聞くと、郵便局で見かけるかわいいクマのキャラクターを思い浮かべる方は多いでしょう。しかし、ぽすくまがなぜここまで根強い人気を持っているのか、その理由をきちんと説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。

「郵便局だから知名度があるだけでしょ?」
「かわいいから人気なんでしょ?」

こうした見方だけでは、ぽすくまの成功を捉えたとは言えないことが今回の調査で判明しました。

ぽすくまは、2016年のゆるキャラグランプリの企業部門で1位を獲得し、2025年(第1回)NIKKEI企業キャラクター総選挙では2位となった実績を持ち、コラボカフェやブランドムック本の出版、ハローキティとのライブショーなど、企業マスコットの枠を超えたIP(知的財産)として活動しています。

同じインフラ企業のキャラクターが数多く存在する中で、なぜぽすくまだけがこうした展開を実現できているのでしょうか。

そこで今回は、ぽすくまが人気の理由を調査し、企業キャラクターの開発やプロモーションに使えるヒントを紹介していきます。

日本郵便「ぽすくま」が人気を得た“企業キャラクターの設計”

ぽすくまの人気の理由を理解するためには、まずキャラクターの基本情報をしっかり押さえておく必要があります。公式の設定を一つひとつ見ていくと、かわいいクマの裏側に、とても丁寧な設計がされていることが分かります。

ぽすくまのプロフィールと誕生経緯は?

ぽすくま(Posukuma)は、日本郵便株式会社が展開する企業キャラクターです。

日本郵便の公式サイトによれば、ぽすくまはくまのぬいぐるみであり、郵便屋さんとして今日も元気に配達していると紹介されています。

ここで注目したいのは、ぽすくまがくまのぬいぐるみだとはっきり決められている点です。生きた動物ではなく、あくまでぬいぐるみ。この設定によって、生き物っぽいリアルさが取り除かれ、見る人に「守ってあげたい」という気持ちを持たれやすくなっています。

また、ぽすくまは切手から生まれたキャラクターで、もりのゆうびんきょく(森の郵便局)という独自の世界を持っています。好きなものはお花と朝食のはちみつトースト。仲間にはぽすみる、ぽすこぐまといったキャラクターがいます。

つまり、ぽすくまには以下の要素が公式設定として組み込まれています。

設定の項目ぽすくまの設定内容
モチーフくまのぬいぐるみ(生き物ではない)
職業郵便屋さん(ちゃんと働いている)
ルーツ切手から生まれた
居場所もりのゆうびんきょく(架空の世界)
好きなものお花、はちみつトースト(日常が見える)
仲間ぽすみる、ぽすこぐま等(物語性)

これらは単なるプロフィールの羅列ではなく、後述するように、それぞれがファン作りにおいて明確な役割を持つと読み取れます。

参考:ぽすくまと仲間たちの紹介 - 日本郵便

くまのぬいぐるみ×郵便屋さんの組み合わせ

ぽすくまの設定でいちばん大事なのは、くまのぬいぐるみと郵便屋さんという2つの要素が組み合わさっている点です。

まず、くまのぬいぐるみという見た目について。心理学の研究によると、人間は人間でないもの(ロボットやぬいぐるみなど)に対しても、まるで心があるかのように感情や意図を読み取る傾向があります。特に、その対象が自分で動いているように見えたり、ポジティブな関わりがあったりすると、その傾向はさらに強まります。

ぽすくまの場合、ぬいぐるみという設定が攻撃性をゼロにし、守ってあげたくなる感じを最大にしています。テディベアが世界中で愛されるのと同じ心理が働いていると考えられます。

一方、郵便屋さんとして今日も元気に配達しているという役割設定は、ただの飾りではありません。企業のメインの仕事を体現する労働者としての一面を持たせているのです。多くの企業キャラクターが商品を持って笑っているだけなのに対し、ぽすくまは配達するという仕事を実際にやっています。

組織行動学の有名な信頼モデルでは、人が誰かを信頼するかどうかは、能力(ちゃんと仕事ができるか)と善意(こちらのことを気にかけてくれているか)の2つの軸で決まるとされています。ぽすくまの見た目は善意(無害で純粋な存在)を、役割設定は能力(仕事をきちんとやる力)を同時に伝えていて、1つのキャラクターでこの2つを両立しているのが、設計として非常に巧みです。

参考:Mayer, R. C., Davis, J. H., & Schoorman, F. D. (1995). An integrative model of organizational trust. Academy of Management Review, 20(3), 709–734. https://doi.org/10.5465/amr.1995.9508080335

はちみつトースト・もりのゆうびんきょく──細部の設定

ぽすくまの設定には、見落とされがちでも重要な要素があります。それが朝食のはちみつトーストが好きという、仕事とは直接関係のない日常っぽい描写です。

一見ささいに見えるこの設定が、実はファン作りにおいて3つの大きな役割を果たしています。

共感と親しみやすさを生む

第一に、共感と親しみやすさの源です。郵便事業という大きくてかたい話に対して、朝食のはちみつトーストという身近な日常を組み合わせることで、見る人との心の距離をぐっと縮めています。

UGCを生むきっかけになる

第二に、ファンが自分から何かを作りたくなる余白です。ファンアートやSNS投稿でぽすくまのはちみつトーストがよく題材になるのは、この設定が描きたくなる隙間として機能しているからです。コラボカフェのメニュー開発でも、この好みの設定がコラボのきっかけになっています。

現実の問題と切り離せる

第三に、もりのゆうびんきょくという「架空の世界」だからこその役割です。日本郵便という現実の大きな組織には、料金の値上げやサービスの変更、時にはネガティブなニュースなど、いろいろなことが起こります。ですが、ぽすくまはもりのゆうびんきょくという別の世界の住人なので、現実の問題がキャラクターのイメージに直接ダメージを与えにくくなっています。

現実の郵便事業がどう変わっても、もりのゆうびんきょくの世界はそのまま守られるのです。

仲間キャラクターである「ぽすみる」や「ぽすこぐま」の存在も大切です。ぽすくま一人では描ききれない、キャラクター同士のやりとりを楽しむという遊び方を可能にし、物語が自然と広がっていく土台になっています。

参考:「ぽすくまと仲間たち」スペシャルサイト - 日本郵便

「ぽすくま」の人気が証明する“リアル接点(巨大インフラ)”の重要性

ぽすくまの人気の理由として真っ先に挙がるのが、日本郵便という巨大インフラの力です。全国約2万4千局の郵便局、全世帯への配達網、そして切手という媒体。これらはほかのどの企業にもない圧倒的な強みであることは間違いありません。

しかし、それだけでは説明できない重要な事実があります。

全国2万4千局の郵便局と切手=リアル接点の強み

まず認めるべきは、日本郵便が持つ物理的な接点のスケールです。

全国約2万4千局の郵便局は、コンビニに匹敵する店舗網であり、国民の生活圏をほぼすべてカバーしています。さらに切手は、買って、使って、保存できる媒体であり、キャラクターにとって最強のリアル接点といえます。ぽすくま自身が切手から生まれたキャラクターだという公式設定も、この接点との結びつきを強めています。

心理学にはザイアンスの単純接触効果という有名な理論があります。これは、あるものに繰り返し触れるだけで、人はそれを好きになりやすいという現象です。ぽすくまのように日常生活の中で何度も目にする機会があれば、自然と好感が高まるのは理にかなっています。

参考:Zajonc, R. B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology, 9(2, Pt. 2), 1–27. https://doi.org/10.1037/h0025848

同じインフラ企業のキャラクターが同等に人気ではない事実

出典:ぽすくま ぬいぐるみキーホルダー&タオルハンカチBOOK - 日本郵便

しかし、ここで大事な疑問が出てきます。もし何度も目にするだけでキャラクターが人気になるなら、同じように巨大なインフラを持つ企業のキャラクターも全部人気でないとおかしいはずです。

実際はどうでしょうか。

JR東日本のSuicaのペンギンは、ICカードという全国的な接点を持ち、知名度はとても高いです。しかし、ペンギン自身に決まった職業や人格を伴う物語はあまりなく、洗練されたデザインシンボルとしての役割が中心です。独立した絵本シリーズやコラボカフェの継続展開という点では、ぽすくまとは違うアプローチです。

東京ガスのパッチョは、かたいイメージのインフラ企業にユーモアとかわいさを加える役割を担っています。ただし、独立した絵本やアニメなどのストーリー展開は限られており、企業の宣伝活動にひもづいている度合いが高めです。

りそなグループのりそにゃは、ゆるキャラグランプリの企業部門で上位の常連です。SNSでの毒舌・自虐キャラで話題を集めるスタイルで、正統派の優しさで勝負するぽすくまとは正反対のやり方です。

ドン・キホーテのドンペンは、すごい量のグッズ展開と店舗での露出が特徴ですが、にぎやかな店内を案内するナビゲーター的な役割であり、安心・確実を体現するぽすくまとは設計の方向性がまったく違います。

出典:日本郵便

つまり、インフラの力で多くの人の目に触れる企業キャラクターはほかにもいるのに、コラボカフェ、ブランドムック本、ハローキティとの対等なライブショー、NFTアートといったIPとしての独立した展開を実現しているのは、ぽすくまが飛び抜けています。

この事実は、何度も目にするだけでは人気は説明しきれないことをはっきり示しています。

参考:楽天NFT - 日本郵便

参考:ぽすくまのおきにいり2025 - 日本郵便

ぽすくまの人気の本質は接触の「質」にある

近年の心理学研究では、単純接触効果についても、どんな場面で触れるかが好きの深さを左右するという補足的な知見が出てきています。

ぽすくまの場合、ユーザーがぽすくまに触れる場面に注目すると、とても戦略的な設計が見えてきます。

切手や郵便局の窓口という接点は、手紙を送る・受け取るという、人と人をつなぐうれしい体験のなかで成り立っています。LINEスタンプでの接触もメッセージを届けるという場面であり、一貫して届けるという体験にぽすくまがいるのです。

さらに、YouTubeのぽすくまのポッス〜TVやぽすくまとあそぼでは動くストーリーが展開され、絵本(ぽすくまの おてがみりょこう、ぽすくまと郵便屋さん)では深い世界観にどっぷり浸れます。これらは、切手のように日常で自然に目に入る受け身の認知とは違い、ユーザーが自分から見に行く能動的な体験です。

つまり、ぽすくまは2種類の接触をうまく組み合わせています。

ファンとの接点接点の違い
受け身の認知(切手・郵便局)広く浅く、日常のなかで自然に目に入る
能動的な体験(LINE・YouTube・絵本)狭く深く、自分から物語や世界観に触れる

この広く浅くと狭く深くがスムーズにつながっているからこそ、ただ知っているだけの状態から好き・応援したいという愛着に変わっていくのです。

何度も目にすることはインフラ企業だけの特権ですが、どんな場面で触れてもらうかの設計は、どの企業にも応用できるポイントです。ここにぽすくまの人気を分析する本当の価値があります。

ゆるキャラグランプリ上位獲得が裏づけるファン心理

出典:キャラクターがつなぐ 企業と社会の新しい関係 - 日経マーケティングポータル

ぽすくまは、国内最大級のキャラクター人気投票だったゆるキャラグランプリ2018の企業・その他ランキングで、トップクラスの支持を獲得しています。

この結果をどう読むべきでしょうか。組織票だから意味がないという声もありますが、事実を丁寧に見ていくと、もっと深い発見があります。

ゆるキャラグランプリのようなオンライン投票は、ただの知名度ランキングではありません。1日1回投票できるシステムなので、毎日わざわざサイトを開いてボタンを押すほどの熱意が必要です。知っているだけでは投票にはつながりません。

たしかに、日本郵便のような全国に約40万人の従業員がいる組織なら、みんなで投票しようという呼びかけも可能でしょう。しかし、もし結果がただの組織動員だけによるものなら、投票期間が終わったあとにキャラクターの活動は急速にしぼむはずです。

実際には、ぽすくまは2018年以降もどんどん展開を広げています。

コラボカフェ、ハローキティとのライブショー、NFTアートの販売、ブランドムック本の出版──これらはすべて、ファンが自分のお金を払う施策です。したがって、投票での上位獲得は、組織の力がきっかけになった面は否定できないものの、その過程で生まれた認知がほんとうのファン作りに結びついた結果だと考えるのが自然です。

「投票をする」こと自体が巻き込む仕掛け

ここでさらに面白いのは、毎日投票するという行動そのものがファンを育てた可能性です。心理学の認知的不協和理論によると、人は自分の行動と気持ちのあいだにズレがあると居心地が悪くなり、そのズレを解消するために気持ちのほうを変えてしまう傾向があります。

つまり、最初は会社に言われたから仕方なく投票していた人でも、毎日投票を続けるうちに、毎日投票するくらいだから、自分はぽすくまが好きなんだと気持ちが変わっていく可能性があるのです。

この行動が気持ちを変えるメカニズムは、組織票をきっかけに始まった投票が、本物のファン心理へと育っていく仕組みとして働いたと考えられます。ファンにちょっとした行動を促すこと(投票、スタンプの使用、SNSでのシェアなど)が、結果として愛着を深める効果を持つことを、ぽすくまの事例は教えてくれます。

参考:ぽすくま | ゆるキャラグランプリ - ゆるバース

参考:ぽすくま の詳細情報 - ゆるナビ

参考:Festinger, L., & Carlsmith, J. M. (1959). Cognitive consequences of forced compliance. The Journal of Abnormal and Social Psychology, 58(2), 203–210. https://doi.org/10.1037/h0041593

人気の「ぽすくま」に学ぶ、世界観と物語の構築法

ここまで、ぽすくまのキャラクター設定と接触の質を見てきました。この章では、ぽすくまがただ作っただけで終わるキャラクターにならず、IPとして愛され続けている理由を、世界観と物語の視点から掘り下げます。

企業リスクからキャラクターを守る仮想の舞台

ぽすくまが活動する舞台は、現実の郵便局ではなく、もりのゆうびんきょく(森の郵便局)という架空の世界です。

この世界観設定には、2つの大きな意味があります。

1つ目は、宣伝っぽさの緩和です。ぽすくまのYouTube動画や絵本は、もりのゆうびんきょくという架空の舞台で展開されるので、見ている人は企業の宣伝を見せられているという感じがしません。日本郵便のサービスをストレートに売り込むのではなく、純粋に楽しめるコンテンツになっているのです。

2つ目は、トラブルからキャラクターを守る防火壁です。現実の企業には、値上げやシステム障害、ネガティブなニュースなど、いろいろなリスクがつきものです。一方で、ぽすくまはもりのゆうびんきょくという別世界の住人なので、現実の問題がキャラクターのイメージに直撃するのを防いでくれます。

この考え方は、キャラクターを長く育てる上でとても大切なポイントです。もし企業キャラクターを現実の自社オフィスや店舗を舞台にして展開すると、会社で何か問題が起きたときにキャラクターまで巻き込まれるリスクがあります。自社の仕事をモチーフにした別の世界を作ることで、この問題を回避できるのです。

仲間キャラクターが物語を自然に広げていく

ぽすくまには、ぽすみる、ぽすこぐまをはじめとするぽすくまと仲間たちがいます。この仲間の存在には、2つの重要な役割があります。

まず、キャラクター同士の関係性を楽しむという遊び方が生まれることです。最近のキャラクターコンテンツでは、一人のキャラクターを応援するだけでなく、キャラクター同士の会話や協力、日常のやりとりを楽しむのが主流になっています。ぽすくま単体ではかわいい郵便屋さんですが、仲間がいることで、ぽすくまがぽすこぐまの面倒を見る、ぽすみると冒険に出かけるといったストーリーが生まれます。

次に、物語のバリエーションが自然に増えることです。主人公が一人だけだと話のパターンに限界が出てきますが、仲間がいればそれぞれの視点から物語を描けるので、新しいコンテンツを作り続けやすくなります。

実際に、ぽすくまの絵本(ぽすくまの おてがみりょこう、ぽすくまと郵便屋さん)やYouTube動画では、仲間との関係性が物語の中心になっています。この群像劇の設計は、キャラクターを長く展開し続けるための基本ルールといえるでしょう。

今日も元気に配達している──働く姿が生む共感と信頼

ぽすくまの人気を支えるいちばんの特徴ともいえるのが、働いている姿がちゃんと見えるという点です。

公式プロフィールに今日も元気に配達していると書かれていて、絵本でも配達する姿が描かれています。つまりぽすくまは、ただかわいいだけの飾りではなく、企業の本業を体現する仲間──いわば社会を支えるエッセンシャルワーカー──として作られているのです。

多くの企業キャラクターは、商品を持ってポーズをとったり、イベントで手を振ったりする応援団のような役割にとどまっています。一方、ぽすくまは配達という仕事をこなしています。この違いは小さく見えて、心理的にはとても大きいです。

このキャラクターは自分たちと同じように毎日働いて、社会のインフラを支えている──そう感じると、かわいいを超えて、お疲れ様、ありがとうという気持ちが自然と湧いてきます。心理学では返報性の原理といって、相手から何かをしてもらったとき、お返しをしたくなる気持ちが働くとされています。この原理が、人気投票での投票やグッズ購入といったファンの行動を後押ししていると考えられます。

この働く姿を見せるという設計は、どの企業のキャラクターにも応用しやすいポイントです。キャラクターに自社のメインの仕事と同じ役割を持たせることで、会社が何をしている会社なのかが直感的に伝わり、キャラクターの行動に説得力が生まれます。

参考:Gouldner, A. W. (1960). The norm of reciprocity: A preliminary statement. American Sociological Review, 25(2), 161–178. https://doi.org/10.2307/2092623

人気の「ぽすくま」に学ぶ、メディア戦略とIPの格上げ

ぽすくまの人気は、キャラクター設定と世界観の巧みさだけでは完結しません。その設計を、どのメディアで、どれくらいの深さで届けるかというメディア戦略と、外部の有名キャラクターとの連携がぽすくまをエンタメIPとして成り立たせています。

切手(静的な接点)とYouTube・LINE(動的な接点)の使い分け

ぽすくまのコンテンツ展開を全体的に見ると、動かないメディアと動くメディアで情報の深さが意図的に変えられていることが分かります。

動かないメディアの代表が切手です。切手では、ぽすくまはきれいな絵柄として登場しますが、細かい設定や物語は語られません。かわいいクマがいるなと気づいてもらう役割です。

一方、動くメディアとして、YouTube動画(ぽすくまのポッス〜TV、ぽすくまとあそぼ)やLINEスタンプ、絵本があります。こちらでは、仲間たちとのストーリーが展開され、もりのゆうびんきょくの世界観にどっぷり浸れます。

この使い分け──多くの人の目に触れる場では広く浅く、デジタルやコンテンツでは狭く深く──という設計は、ファンに発見の喜びを与えています。

切手でぽすくまの存在に気づいた人が、LINEスタンプを使い始め、YouTubeで動画を見てもりのゆうびんきょくの世界を知る。こうした段階的な体験の導線が作られていて、軽い興味から熱心なファンへと進んでいく道筋ができています。

ハローキティ等との外部IP連携がエンタメIPとしての格を上げた

ぽすくまのIP展開で見逃せないのが、外部の有名キャラクターとの戦略的な連携です。

ぽすくまは、サンリオのハローキティとのライブショーを実施しています。コラボカフェ、NFTアート、ブランドムック本の出版など、メジャーなキャラクターと同じ土俵でのビジネスを成立させています。

この外部連携が持つ意味は、ただ話題になるだけではありません。

ハローキティのような世界的なエンタメキャラクターと対等に共演することで、ぽすくまに対する見方が変わります。日本郵便の宣伝キャラクターからエンタメの世界で通用するキャラクターへと、消費者の認識がアップデートされるのです。

ただし、この戦略がうまくいくには前提条件があります。自分のキャラクターの世界観がしっかりしていて、有名キャラクターと並んでも個性が埋もれないことです。世界観が弱いキャラクターが有名IPとコラボしても、借り物っぽさが出てしまい、逆効果になりかねません。

ぽすくまの場合、独自の世界観、はっきりした役割、仲間キャラクターという土台がしっかりしているからこそ、ハローキティと共演してもぽすくまらしさが保たれているのです。

ぽすくまに学ぶ“企業キャラクター”成功のヒントについてのまとめ

ここまでのポイントをまとめます。

  • 「ぬいぐるみのクマ」設定で、無害さと守りたくなる感情を強く引き出している
  • 「郵便屋さんとして働く」役割で、日本郵便の本業とキャラの行動が一致している
  • 善意(かわいい)×能力(ちゃんと配達)を1キャラで同時に伝える設計である
  • はちみつトースト等の日常設定が、親しみ・共感・二次創作の余白を生んでいる
  • 「もりのゆうびんきょく」世界観が、宣伝っぽさを薄めつつ企業リスクから守っている
  • 仲間キャラの存在が、関係性の面白さとストーリー量産の土台になっている
  • 郵便局・切手の物理接点で、日常の中に自然な接触回数を作れている
  • 同じインフラでも人気が分かれる事実が、接触回数だけでは不十分だと示している
  • 受け身(切手/窓口)→能動(LINE/YouTube/絵本)の導線で、知名度を愛着に変えている
  • 投票・購入など小さな行動を積み上げ、熱量とファン心理を育てる設計になっている

ぽすくまの人気は、認知度を持つ郵便局が土台だからというだけでは説明できません。うれしい体験の中での接触、受け身の認知と能動的な体験の使い分けという、接触の質と場面の設計が好きという感情を育てています。

ゆるキャラグランプリでの上位獲得は、組織の力がきっかけになった面はあるものの、その後もIP展開が広がり続けている事実は、本物のファンが生まれた証拠です。

ぽすくまの事例がいちばん教えてくれるのは、キャラクターの人気は偶然やインフラの力だけでは生まれず、役割・世界観・接点の設計という構造的な設計の結果であるということです。自社のキャラクター施策やIP展開を考える際に、この構造的な視点を持つことが、成功への出発点になるのではないでしょうか。


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NOKID編集部

1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。

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