NOKID編集部
1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。
日本でのズートピア2公開初日、筆者はさっそく劇場へ足を運びました。前作から9年も経っていたため、正直ここまで“熱”が戻るとは思っていませんでした。続編は前作を超えにくい、間が空くほど忘れられるという常識が、あっさり踏み潰されていく感覚がありました。
ただ、ここで勘違いすると危ないとも感じています。今回のヒット理由を「9年待たせたから」「プロモが上手いから」で終わらせると、ビジネス的に再現できないからです。むしろ筆者が確信したのは、前作の時点で“勝ち筋”は完成していたのだということです。
脚本の作り直しを厭わない制作姿勢や、徹底リサーチでテーマを寓話に落とし込む設計は、今やDisney+でも制作秘話として配信されている通り、多くの人が知っています。
だからこそ、続編となるズートピア2を語るなら、「ディズニーは元々こだわる」という結論だけでは弱いと思っています。前作で確立した強みを、2になってどう“更新”したかに分けて見る必要があります。

筆者が実際にズートピア2を劇場で体験して特に驚いた点は、扱いづらいテーマの表現方法と、前作からそのテーマが拡張されていたことでした。前作は“心の中の偏見”を扱いながら、エンタメとして走り切りました。ズートピア2では、個人の努力だけでは動かない“仕組み”のほうに踏み込んでいます。
しかもメッセージを押し付けることなく、エンタメとして仕上げられています。ここが一番怖いところで、観客は勉強したという気持ちではなく、面白かったと自然にメッセージを受け入れてしまいます。
ヒットするにはプロモーション(宣伝)の上手さが影響しますが、あくまで点火装置にすぎません。名作として残るのは、やはり脚本の設計にあると感じさせられました。
ズートピア1&2が強いのは、かわいさや映像美の奥に、複数の満足を同時に回収する構造があることです。ミステリーとしての快感、社会テーマとしての刺さり、キャラの関係性の熱、主人公の成長...これらをバラバラではなく、最後に束ねて返してくるような感覚です。
その結果、観終わった人が、感想を言いたくなり、語りたくなるのでしょう。結果として宣伝が観客たちによって自動で広がっていく状態になるのです。
そこで今回は、ズートピア1&2がヒットする理由を紐解いて紹介します。
映画のヒットにおいて、「続編は前作を超えられない」というジンクスや、「公開から時間が空きすぎると忘れられる」という常識は、本作には全く当てはまりません。むしろ、9年という長い空白期間こそが、爆発的なヒットの燃料となりました。

通常、エンターテインメントの流行サイクルは短く、数年でファンの熱は冷めてしまうものです。しかし、前作『ズートピア』は、単発のブームで終わらせることなく、配信サービスなども後押しして知名度と名作としての地位を確立しました。
この9年間の間に、子供だった観客は大人になり、新たな子供たちがファンになるという「世代の蓄積」が起こったことも挙げられるでしょう。
具体的な数字を見てみましょう。2016年の前作は、世界興行収入10億2,552万ドル(約1,026億円)という記録を打ち立てました。そして2025年12月に公開された『ズートピア2』は、公開わずか数日で前作の勢いを遥かに上回るロケットスタートを切りました。

写真の通り、筆者も公開日に劇場へ足を運びましたが多くの人で賑わっていました。
ディズニーの公式発表によると、全世界でのオープニング興行収入はアニメーション映画史上最高額を記録し、公開直後にして歴史的な大ヒットとなっています。
ウォルト・ディズニー・ジャパンのニュースリリース(2025年12月9日)によれば、本作は公開初週末だけで記録的な動員数を達成し、世界中で現象化していることが報告されています。
つまり、9年間の空白はファンを減らすどころか、親子二世代にわたる巨大なファン層を形成する準備期間にもなり、その結果として歴史的なロケットスタートが実現したのです。
参考:映画「ズートピア2」大ヒット情報&こっちのけんとさん声優情報解禁! - Disney
参考:Zootopia (2016) - THE NUMBERS
ディズニー映画の成功要因を「莫大な予算があるから」と考えるのは間違いです。むしろ、予算の制約や制作過程での膨大なリサーチと練り直しこそが、この作品を傑作に変える重要な要因でした。
確かに余裕ある資金があれば美しい映像は作れますが、人の心を動かす物語は資金だけの問題ではないことがあります。
ディズニーの強みは、制作途中の作品を社内のクリエイター同士が厳しく批判し合う「ストーリー・トラスト」という仕組みにあります。

じつは前作の制作時、当初はニックを主人公にした少し暗い物語が予定されていましたが、公開の約1年前に「これでは観客が共感できない」と判断され、ジュディを主人公にするという脚本の全作り直しが行われました。このような通常ではなかなか出来ない情熱が品質を高めるのです。
このこだわりは他の部分にも見られます。監督のバイロン・ハワードたちは、徹底的なリサーチのためにアフリカのケニアまで赴き、動物の生態を観察しました。しかし、彼らがそこで得たもっとも重要な知見は、CG技術のためのデータではなく、「動物たちが水飲み場では種を超えて共存している」という物語の核となるアイデアでした。
このアイデアは、ガゼルのライブに動物たちが集まり、種族を問わず同じように楽しんでいるシーンで表現されていると筆者は感じました。
予算はCGだけでなく、こうした入念なリサーチと納得いくまで脚本を書き直す時間に費やされているのです。
映画メディア『Collider』のインタビューにおいて、監督たちは「説教臭い映画を作るつもりはなく、エンターテインメントであることを最優先した」と語っています。
つまり、『ズートピア』の成功は、予算の多さによるものではなく、制作途中での全作り直しも厭わない妥協なき脚本作りと、徹底したリサーチによる共感の設計によるものなのです。
参考:Zootopia Directors Byron Howard & Rich Moore Interview - Collider
この映画は「子供向けアニメーション」の皮を被っていますが、その実態は「大人向けの社会派サスペンス」であり、子供に見せるには複雑すぎるとさえ言えるかもしれません。しかし、その「複雑さ」こそが全世代を夢中にさせています。
ヒット作の多くは、ターゲットを絞り込むことで成功しますが、『ズートピア』は逆にターゲットを全方位に広げるように大人向けのテーマと、子どもにも伝わる表現を巧みに使っています。

表向きは、小さくて可愛いウサギが頑張るストーリーですが、その裏側には現実社会の差別や偏見を鋭く描いた「社会ドラマ」が流れています。
子どもは表情豊かなキャラクターの動きを楽しみ、大人はその背後にあるメッセージを読み解くという2つの層が同時に存在することで、親子が隣同士で観ていても、それぞれまったく違うレベルで満足することができるのです。
例えば、作中で「肉食動物は野蛮だ」と決めつけるシーンがありますが、これは子供にとっては「いじめっ子といじめられっ子」の構図に見えます。一方で、大人にとっては現実世界における人種差別や、特定の属性(趣味趣向など)への偏見として映ります。
子供騙しではない本気のテーマ設定があるからこそ、大人は子供を連れて行くだけの引率者にならず、自らが熱心なファンになるのです。
『Los Angeles Times』の記事では、制作陣が偏見というテーマをどのようにアニメーションに落とし込んだかが詳細に語られています。
つまり、「誰もが偏見を持っている」という事実をエンタメとして描くことで、子供向けの分かりやすさと、大人向けの深みを完璧に両立させた構造が、世代や属性を超えた普遍的な支持を生み出していると言えるでしょう。
もしこの映画が、人間たちの演じる実写映画だったら、これほど世界中でヒットすることはなかったでしょう。むしろ、人間を描くために、人間を出さないという遠回りが必要だったのです。
人間社会の問題(差別や対立)を人間が演じると、どうしても生々しくなりすぎたり、特定の国や地域の事情に見えたりしてしまいます。観客は無意識に「これは自分たちの話ではない」と壁を作ってしまうかもしれません。

ですが、登場人物を動物に抽象化する=動物というクッションを挟むことで、観客は政治的な身構えを解き、客観的に自分たちの社会を見つめ直すことができるようになります。これは「寓話(ぐうわ)」と呼ばれる形式です。
例えば、「キツネはズルい」という偏見を人間でやろうとすると、特定の人種や民族を連想させてしまい、炎上するリスクがあります。一方で、動物であれば「昔話でもよくある設定だ」として受け入れられます。
そして観客は、笑って見ているうちに「あれ? でもこれって、人間の世界でも同じことをしていないか?」とハッとするのです。この「気づき」を与える手法は、動物アニメーションならではの魔法と言えるでしょう。
『Los Angeles Times』のインタビュー記事では、この手法について「寓話の形式をとることで、説教にならずに真実を語ることができる」と分析されています。動物というフィルターを通すことで、メッセージがより純粋に伝わるという戦略です。
つまり、人間を動物に置き換えることは、単にかわいくするためではなく、観客の心のガードを下げさせ、世界中の誰もが共感したり、自分にも置き換えてメッセージを受け取ってもらえるようにするための戦略なのです。
参考:In making ‘Zootopia,’ the message began to feel all too real - Los Angeles Times

続編である本作のテーマは、前作の使い回しではありません。むしろ、前作の結論を「それだけでは不十分だ」と自己批判し、さらに厳しい現実を突きつけるような進化を遂げています。
2016年の前作では、「偏見は誰の心にもある」という個人の内面(マインドセット)に焦点が当てられていました。しかし、それから9年が経ち、心構えだけでは解決できない都市の構造や歴史そのものに組み込まれた差別があることに、多くの人が気づき始めました。
そこで本作は、個人の努力ではどうにもならない構造的に起こる差別という、極めて現代的で重いテーマに踏み込んでいます。
例えば、シリーズを通じて描かれる捕食者と被食者の関係性は、現実世界における多数派と少数派、または歴史的な対立のようです。ディズニーがあえてこのタブーに近い領域に踏み込んだことは、観客に強い衝撃を与えたはずです。
オンラインメディア『Mashable』のレビュー記事では、前作『ズートピア』の時点で既に、動物たちの世界を通じて「偏見やステレオタイプ、マイクロアグレッション(些細な差別的言動)」といった大人の社会問題を扱っていることを「子供が親を連れて行くべき映画」と高く評価しています。
つまり、時代の変化に合わせてテーマを「個人の心」から「社会構造」へとアップデートしたことで、本作は現代を生きる観客にとって切実で、無視できない物語へと進化したのです。
参考:'Zootopia' is a movie every kid should take their parent to see - Mashable
主人公のジュディ・ホップスが人気なのは、彼女が「正しいから」ではありません。むしろ、彼女が時として「間違えるから」、そして「偏見を持っているから」こそ、圧倒的に愛されているのです。
物語の主人公が完璧な聖人君子だと、観客は「すごい人だ」と感心はしても、「自分と同じだ」とは感じません。

ジュディは正義感が強い一方で、無意識のうちに「キツネは信用できない」という差別心を持っていました。そして、そのせいで相棒を深く傷つけてしまいます。
善意の人が犯す過ちが、人間らしさを感じるポイントになり観客の共感を呼んだのでしょう。私たちもまた、良かれと思って誰かを傷つけたり、無自覚な偏見を持ったりして生きているからです。
例えば、ジュディが記者会見で失言をしてしまい、ニックに絶交されるシーンがあります。ここで彼女は言い訳をせず、自分の愚かさを認め、警察バッジを置いて謝罪に行きます。
こうした、変わろうとする姿勢が尊いとされる時代なのです。
バイロン・ハワード監督は「観客が主人公を応援するためには共感要素が必要であり、それが物語の鍵である」といった旨を語っています。完璧ではないジュディの姿こそが、その共感の源泉となっています。
つまり、ジュディの魅力は、清廉潔白なところよりも、自分の弱さや偏見と向き合い、傷つきながらも成長しようとする「泥臭い人間味(ウサギ味)」にあるのです。
参考:Finding the Emotional Core of Zootopia - creativescreenwriting
ニック・ワイルドというキャラクターの魅力は、彼が「クールでかっこいい」ことではなく、実は「誰よりも傷つきやすく、臆病である」という点にあります。彼の皮肉な態度は、攻撃ではなく防御なのです。
ニックは常に斜に構え、世の中を冷めた目で見ています。しかし、それは「どうせ頑張っても偏見はなくならない」という諦めから来ています。幼少期に「キツネだから」という理由だけで口輪をはめられたトラウマが、彼の心を閉ざさせました。

「傷つかないためには、誰にも期待しなければいい」という彼の生存戦略は、現代社会で人間関係に疲れた多くの大人の心に深く刺さります。だからこそ、彼がジュディにだけ心を開く瞬間に、観客は救われたような気持ちになるのです。
例えば、物語の中でニックがサングラスをかけるシーンや、本心を隠して冗談を言うシーンは、すべて彼の「心の鎧(よろい)」です。しかし、ジュディとの関わりの中でその鎧を少しずつ脱いでいく過程が描かれます。ただのかっこいい詐欺師ではなく、「傷ついたインナーチャイルド(内なる子供)」を抱えた大人として描かれているからこそ、女性層を中心に熱狂的な支持を集めているのです。
リッチ・ムーア監督は『Collider』のインタビューで、「ニックは我々が描いた中で最も複雑な層を持つキャラクターの一人であり、彼の皮肉は防衛機制(自分を守るための心理的な壁)だ」と語っています。この心理学的な深みが、キャラクターにリアリティを与えています。
つまり、ニックの魅力の本質は、大人の余裕に見せかけた「弱さ」と「脆さ」にあり、その隠された傷が観客の「守ってあげたい」「幸せになってほしい」という母性本能や応援欲求を刺激するのです。
この映画のラストシーンで観客が得る満足感は、計算し尽くされた4種類の異なる報われるポイントが関係しているのです。

優れた脚本は、複数の問題を同時に解決します。『ズートピア』のクライマックスでは、以下の4つの解決が同時に起こります。
| ミステリーの解決 | 「犯人は誰か? 動機は何か?」という知的興奮の着地。 |
| 社会正義の実現 | 差別を利用して権力を握った悪党が裁かれるという道徳的満足 |
| 内面的な成長 | ジュディが自分の偏見を乗り越え、より広い視野を手に入れる感動。 |
| 関係性の修復 | 決裂していたジュディとニックが、最強のバディとして復活する喜び。 |
この4つが別々のタイミングではなく、最後の瞬間に一気に収束するため、観客は「知的」「道徳的」「感情的」な満足を総取りすることになります。
例えば、ラストシーンで二人が軽口を叩き合いながら事件現場に向かう姿は、「事件は解決したが、差別のない社会への道のりはまだ続く」というリアリティを残しつつ、それでも「二人なら大丈夫だ」という強い希望を感じさせます。
こうした、ほろ苦さと希望のバランスが絶妙であるため、観客は映画館を出たあとも心地よい余韻に浸ることができるのです。
多くの映画脚本術の書籍や分析において、外的葛藤(事件)と内的葛藤(心の問題)の同時解決はストーリーテリングの定石とされています。『ズートピア』はこの法則を極めて高いレベルで実践しており、観客の無意識レベルでの満足度を高めています。
つまり、ミステリー、社会正義、個人の成長、そして友情という4つの物語が完璧に編み込まれ、最後に一つに結集する構造になっています。そのため、観客は大きな満足感と報われた感覚を得ることができるのでしょう。

日本での『ズートピア』のヒットは、映画の内容が良いからだけではありません。ディズニー・ジャパンが仕掛けたプロモーションは、さまざまな工夫がされています。日本向けで面白い取り組みだったのが、映画を観るだけのものから自分も参加するものへと変質させるような現実と映画の世界観を融合させたプロモーション事例です。
従来の映画宣伝は、テレビCMや予告編を流して「観に来てください」とお願いする一方的なものでした。しかし、今回のプロモーション戦略はまったく異なります。

「もし日本がズートピアの世界だったら?」という仮定に基づき、観客をその世界観に没入させるイマーシブ(没入型)体験を提供しました。観客以外にも、各都道府県を巻き込んだことで、宣伝が自然発生的に広がっていくことも想定できます。
「『ズートピア』は、あります!」というキャッチコピーとともに展開されたキャンペーンでは、47都道府県ごとのご当地ポスターが作られたり、現実のニュース番組と連動した演出が行われたりしました。これにより、観客は映画館に行く前から「自分たちの街がズートピア化している」というワクワク感を感じ、映画鑑賞が単なる視聴体験ではなく、一種のイベント参加のような体験に変わったのです。
マーケティングの分野では、こうした手法を「体験価値(UX)の提供」と呼びます。単なるモノ(映画)ではなくコト(体験)を売る戦略が、特に日本の若年層の行動様式に合致したといえます。 (マーケティング理論に基づく分析)
つまり、観客を受動的な「視聴者」から、世界観を楽しむ「参加者」へと変える巧みなプロモーション戦略が、日本市場における熱狂的な盛り上がりを下支えしたのです。
参考:この冬、ディズニー映画最新作『ズートピア2』がシネマイクスピアリにて公開! - イクスピアリ
参考:「日本ズートピア化計画」本格始動! この冬、日本中の劇場も“ズートピア”一色に。 - Disney

この映画における最大の広告塔は、ディズニーの広報担当者ではありません。映画館のポスターや背景に隠された「小ネタ」を見つけ出し、それをSNSで拡散してくれる一般のファンたちこそが、最強の宣伝担当でした。
制作陣は、映画の背景や小道具に、ディズニーの過去作品や有名映画のパロディを大量に仕込んでいます。これらはストーリーの本筋には関係ありませんが、「見つけた!」という発見の喜びを観客に与えます。

そして重要なのは、人は「発見」をすると、それを誰かに教えたくなる(シェアしたくなる)という心理的欲求を持っていることです。この欲求が、SNS上での爆発的な口コミ(UGC:ユーザー生成コンテンツ)を生み出すことにつながっているのです。
ディズニー過去作品のズートピア版ポスターが劇中に一瞬だけ映ったり、有名なブランドのパロディロゴが登場したりします。これらをSNSで発信することで、さらに投稿を見た他の人が「自分も確認してみよう」と思って劇場に足を運ぶという循環が生まれています。
実際、筆者もこうした投稿を見て気づけたものが多くありました。

映画レビューサイトやSNSの分析によると、公開後の投稿には「あの映画のパロディがあった」「某企業の店舗みたいなのが合った」という発見報告で占められています。
つまり、思わず誰かに言いたくなる「隠れネタ」を大量に仕込むことで、ファンを自発的な宣伝媒体として機能させ、SNSを通じた情報の拡散を自動化することに成功したのです。
『ズートピア』のグッズが売れているのは、子供がおもちゃとして欲しがるからだけではありません。むしろ、大人が自分のアイデンティティや「好き」を表現するためのコミュニケーションツールとして購入している側面が強いのです。
現代の日本において、キャラクターグッズは子ども向けの所有物ではなくなっています。推し活の一部として、ぬいぐるみを持ってカフェに行き写真を撮る「ぬい撮り」や、バッグに大量の缶バッジをつける行為は、推しの良さを周囲に知ってほしい気持ちを表す手段です。
ディズニーはこの文化を深く理解し、連れて歩くためのグッズやSNS映えするグッズを戦略的に展開しています。併せてSNSキャンペーンも開催し、認知度アップやグッズ購入のきっかけ作り、または将来のファン作りまでを考えられています。
また、コラボカフェの内装もどこを切り取っても写真映えするように設計されています。ファンが店内やグッズを購入し、それを撮影してSNSにアップすることで承認欲求を満たし、同時に映画の宣伝にも貢献してくれるのです。
推し活市場の研究データによれば、消費者は推しを応援したい気持ちを特に持っている場合が多いことがわかっています。『ズートピア』のグッズ展開は、こうした消費のトレンドを的確に捉えた事例と言えます。
つまり、グッズを単なる商品としてではなく、ファンの自己表現やコミュニケーションを助けるツールとして設計・販売したことが、大人を巻き込んだ巨大な市場を生み出す鍵となったのです。
参考:ディズニー映画最新作『ズートピア2』Instagram楽曲投稿キャンペーン第二弾 開催! - Disney
参考:OSHINOMICS Report - HAKUHODO & SIGNING
世界中でヒットしている『ズートピア』ですが、国によって「何を楽しんでいるか」はまったく違います。日本とアメリカの口コミを比較すると、まるで別の映画について語っているかのような違いが見えてきますが、この解釈の幅こそが世界的ヒットの要因かもしれません。

文化が違えば、物語の受け取り方も変わります。日本の観客は、感情移入やキャラクター同士の関係性(尊さ、エモさ)を重視する傾向があります。
一方で欧米の観客は、物語の構造や社会的なメッセージ性(風刺、批評)を重視し、知的な分析を楽しむ傾向があります。
本作は両方のニーズを満たす懐の深さを持っているのです。
例えば、日本の口コミサイト(Filmarks等)では「ニックとジュディの距離感が最高」「二人の絆に泣いた」という、情緒的でキャラクター愛にあふれた感想が溢れています。
対照的にアメリカの口コミサイト(Reddit等)では、「都市構造のメタファーが秀逸だ」という投稿や、ジェントリフィケーション(地域の高級化)やコロニアリズム(植民地化)への言及といった、社会学的な議論が活発です。
一つの作品でありながら、日本では最高のバディ・ムービー、アメリカでは最高の社会風刺映画として消費されているのです。
映画批評サイト『Rotten Tomatoes』と『Filmarks』のレビューを比較分析すると、日米の評価軸の違いが明確に浮かび上がります。
つまり、キャラへの愛着にも、知的な社会分析にも耐えうる作りになっているため、文化背景が異なるどの国の観客も、自分たちの好きな切り口で熱狂することができるのです。
参考:Zootopia 2 - Rotten Tomatoes
参考:reddit

ここまでのポイントをまとめます。
ズートピアシリーズが世界的ヒットになった最大の理由は、長く待たせたことや有名IPだからという理由だけではありません。
物語・キャラクター・社会テーマ・プロモーションのすべてが、“観る人が自分ごととして関われる設計”になっていた点にあります。子どもはキャラクターに、大人は社会の写し鏡に、自分なりの意味を見つけられる。だから世代も国も越えて語られ、広がり続けるのです。
これは映画に限らず、IP開発やブランドづくりにも通じる重要な示唆です。物語とキャラをどう設計すれば、長く愛され、語られ続けるのか。
これは時代の変化とともに少しずつ変化させるべき部分もありますが、対立や社会問題、親近感の持てるキャラクターなど、普遍的な部分もあります。ぜひ今回の分析を活用して、視聴者が目を離せないコンテンツを生み出していきましょう。
株式会社NOKID(ノーキッド)はショートアニメ/アニメーションCMの企画・制作・SNSアカウント運用・プロモーションを得意とする東京の企画・制作会社です。キャラクターIPの開発・企画立案・制作からプロモーション企画立案・実施まで話題性を意識したサービス提供が可能です。

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