2026.09.30

2026.10.04

ちいかわとコラボした企業に何が起きたか。決算書に答えが書いてあった

他社のキャラクターを借りて商品や企画を作る立場の方に向けた記事です。

原作者のナガノ氏は、アニメで自分が指定したのは「表情の部分」だと語り、「出来ることは全部やらせていただきました」と話しています。細部まで本人の手が入っている作品です。

その作品と組んだ企業が、国に提出する決算書類に「ちいかわ」と書いています。

鞄の専門店を全国に展開するサックスバーホールディングスもその1社です。同社は「ちいかわコンバース」を独占販売し、店舗もECも非常に好調な売れ行きだったと有価証券報告書に書きました。そして同じ報告書の中で、次に向けた経営のテーマの名前を、その1件から取っています。

先に断っておきます。ちいかわとのコラボでいくら売れたのかという金額は、どの企業も公表していません。ですからこの記事では、いくら儲かったかには答えられません。

書けるのは、企業が自分の書類に何をどう書いたかと、書いた企業と書かなかった企業で何が違ったのかです。

ちいかわとコラボした企業は、決算書に何を書いたか

ちいかわとコラボした企業の効果は、金額としては誰も公表していません。ただ、企業が自分で国に出す書類の中には残っています。しかもその記述は、商品の紹介から会社の方針へと上がっていくことがあります。

ちいかわの記述が商品の紹介から事業の説明へ変わったことと、金額を書いた企業が0社であることを並べた図

左がはじめの書かれ方、右が後の書かれ方です。金額は最後まで出てきません。

ちいかわと組んだ企業は決算書でわかる

上場企業は、決算の内容を書いた書類を国に出すことが法律で義務づけられています。その書類は金融庁の開示システム(EDINET)で誰でも読めます。ここで「ちいかわ」を全文検索し、当たった書類の本文をすべて読みました。ちいかわに触れている書類は42件、企業の数は19社です。提出日でいうと2022年6月29日から2026年6月25日まで、4年ぶんが対象になります。

これとは別に、当事者が自分で出したプレスリリースが36件・22社ぶんあります。書類に名前が出るのは、コラボが商品や店舗として実際に動いたあとなので、発表のほうが先に立ちます。

この4年ぶんの19社を、ちいかわの借り方で分けると、自社商品に載せるのが11社、集客の仕掛けに使うのが4社、世界観の店を作るのが1社、店舗の運営を受託するのが1社です。残る2社は、貸す側のサンリオと、映画館を運営する中日本興業で、借りて何かを作った企業ではありません。

法定開示でちいかわに触れた記述の数を19社ぶん並べ、借り方の4類型で色分けした横棒グラフ

書く場所も同じではありません。四半期報告書や半期報告書には書いたのに、1年をまとめる有価証券報告書には書かなかった企業が5社あります。年度の総括に残るかどうかは、書類の種類で分かれます。

参考:19社の有価証券報告書・四半期報告書・半期報告書 42件(2022年6月29日〜2026年6月25日提出)。会社ごとの書類は以降の各節に記載

では、その19社は何を書いたのでしょうか。

鞄の会社はコラボを翌年の方針の名前にした

1回のコラボが、その企業の次の期の経営テーマの名前になっています。

サックスバーホールディングスは、鞄とバッグの専門店を全国に展開する企業です。同社の有価証券報告書(提出日2024年6月26日)には、まずその期の実績としてこう書かれています。

独占販売をした「ちいかわコンバース」は「ちいかわ」と「CONVERSE」というキャラクターとブランドとのコラボ企画商品で、店舗、ECともに非常に好調な売れ行きとなりました。

ここまでは、よくある販促の実績報告に見えます。書かれている場所が変わるのは、同じ報告書の中で次の期の方針を説明する箇所です。

「メーク・シナジー」とは、当期に「ちいかわコンバース」が「ちいかわ」キャラクターと「CONVERSE」ブランド、そして当社グループの店舗及びECでの販売力とのシナジーにより大きな効果を生み出したように、さまざまな組み合わせにより大きなシナジーを生み出していくことです。

「メーク・シナジー」は、これから取り組む経営のテーマとして掲げられた言葉です。そのテーマが何を指すのかを説明するために、同社はちいかわとの1件を持ち出しています。方針の名前の中身が、その企画そのものになっているということです。

前の年の同社の有価証券報告書(提出日2023年6月27日)を見ると、ちいかわは「ドラえもん」「ムーミン」と並ぶキャラクターの1つとして書かれ、「リアル店舗、ECともに大変な好評を博し、大きな集客効果を得ることができました」とまとめられていました。1年で、並んだ名前の1つから、方針を説明するときの実例へと位置が変わっています。

ここは注意が必要です。コラボをしたから方針の名前になった、という因果は書けません。言えるのは、1件のコラボを方針の説明に使った企業が実在する、ということだけです。

それでも、社内で説明する材料としては十分に強いはずです。効果の記録は自社で作るものではなく、組んだ相手の書類に残ります。そして残る場所は、販促の記述より上に上がることがあります。

これは1社だけの話なのでしょうか。

参考:有価証券報告書 - 株式会社サックスバー ホールディングス

ちいかわの受託は、事業の説明に変わった

書かれる場所が動いていく例は、ほかにもあります。まず、一度の受託が事業の柱の説明に変わった企業から。

DDグループは、飲食店を運営する企業です。同社の四半期報告書(提出日2024年7月12日)には、「IPコンテンツを活用するノウハウを生かし、株式会社ダイヤモンドダイニングにおいては、株式会社パルコが運営する名古屋PARCO 内に期間限定でオープンする『ちいかわラーメン 豚』の運営を受託いたしました」と書かれています。

1年3か月後の半期報告書(提出日2025年10月15日)では、書き出しが変わります。「これまでのノウハウの蓄積により」で始まり、受託先は池袋PARCO(渋谷PARCOより移転)と広島PARCOに広がっています。名古屋から渋谷、心斎橋、池袋、広島へと、受託した店舗が増えていった過程がそのまま書類に並んでいます。1件の企画が、事業の柱の説明に変わっています。

ただし、この書類はもう増えません。同社は2025年11月21日に東京証券取引所プライム市場を上場廃止しています。跡が残る場所そのものが、相手の事情で無くなることがある、ということです。相手を選ぶときに見るのは、過去に書いてきたかどうかだけでは足りません。

参考:有価証券報告書 - 株式会社DDグループ

3年書いた企業は、ちいかわを定番に変えた

同じ「書く場所が動く」でも、年をまたいで書き続けた企業は別の動き方をします。

なとりの場合は、狙いを先に書いています。有価証券報告書(提出日2023年6月30日)で「『まろやかチータラ® ちいかわコラボパッケージ』などを発売し、おつまみと比較的馴染みの薄い年齢層など新たなお客様の開拓に努めました」と、何のためにやったのかを明記しました。

そして3年続けて同じコラボについて書き、3年目の有価証券報告書(提出日2025年6月26日)で「『ちいかわ』とコラボした期間限定パッケージ等の販促効果もあり」と、効果があったことを自分の言葉で認めています。

粧美堂は、扱いの分類そのものを変えました。有価証券報告書(提出日2025年12月18日)に「『サンリオ』や『ちいかわ』を中心とした定番の人気キャラクターに加え」とあります。「定番」は同社が使った分類の言葉で、売上構成比などの裏づけが添えられているわけではありません。それでも、一時的な話題としてではなく、続けて扱うものとして書いています。

4社に共通しているのは、書く場所が動いていることです。商品の紹介から、事業の柱の説明へ。そして扱いの分類へ。一度きりの販促として組んだ企業は販促の記述で終わり、事業として組んだ企業は事業の記述になります。

自社の企画が来年どこに書かれる種類のものになるかは、企画の大きさを決める段階でおおよそ決まっている、ということです。

では、金額はいくらと書いてあるのでしょうか。

参考:有価証券報告書・半期報告書 - 株式会社なとり / 有価証券報告書 - 粧美堂株式会社

金額を書いた企業は1社もない

書かれていた中身を型に分けました。多いほうから、新商品の投入を書いたのが13社、効果があったという記述が11社、店舗や催事が10社です。

いっぽうで、ちいかわ単独の金額を書いた企業は0社でした。19社すべてが開示していません。

法定開示に書かれた中身を型で分け、19社のうち何社が書いたかを並べた横棒グラフ。上2つは語られなかったもの

実額や数量に当たる記述は8社ぶんありますが、どれもちいかわだけの数字ではありません。

BEENOSの四半期報告書(提出日2023年2月14日)には「コスメシリーズの累計出荷数が193万個」とあります。ただしこれは自社ブランド「Lovisia」のコスメシリーズ全体の累計で、同じ分母にポケモンや星のカービィとのコラボ商品も入っています。

くら寿司の有価証券報告書(提出日2025年1月30日)は、台湾子会社について「日本でも大変話題となった『ちいかわ』とのコラボ企画などによりお客様に大変ご好評をいただきました」と書いています。同じ書類にアジア地域の売上高も載っていますが、それは地域全体の数字で、コラボがどれだけ押し上げたかを示すものではありません。

「新しい顧客層を獲得した」に近い記述もサンリオの1社だけで、それも複数の施策を並べた書き方になっており、ちいかわの分がどれだけかは書かれていません。

つまり、読者が探している場所に金額が無いのは本当です。調べ方が足りないのではなく、そこには書かれていません。ただし、効果があったと自分の言葉で書いた企業は11社あります。金額という形では無いだけで、企業の言葉としては残っています。

参考:有価証券報告書アーカイブ - BEENOS株式会社 / 有価証券報告書 - くら寿司株式会社

数字が見えるかは、相手が決めている

売上の数字として外から見えたコラボは、19社の中で1社だけでした。

くら寿司は月ごとの既存店売上を公表しています。ちいかわとのコラボを実施した2024年3月の既存店売上は、前年同月の123.0%でした。

くら寿司の既存店売上前年同月比の推移。2024年3月が123.0

この数字を、コラボの効果そのものとして読むことはできません。同じ月には別のフェアも動いていますし、1社の1か月ぶんです。ここで言えるのは、数字が外から見えた理由のほうです。

見えたのは、同社が月ごとの数字を出しているからです。

ほかの18社は月ごとの売上を公表していません。ですから同じ調べ方をしても、コラボの月だけを取り出すことができません。これは探し方の問題ではなく、相手の側の公表の仕方で決まっています。

ここに、順番を入れ替える余地があります。企画を通したあとに効果を確かめる方法を探すと、相手がすでに決まっているので打つ手がありません。逆に、相手を決める段階で「この企業は月ごとの数字を出しているか」を見ておけば、過去のコラボ月がどう動いたかを企画書に書く前に確かめられます。

見に行く先も決まっています。上場企業であれば、月ごとの売上は自社サイトの投資家向けのページに毎月出ています。

では、書かれた企業と書かれなかった企業は、何が違ったのでしょうか。

参考:月次報告書 - くら寿司株式会社

ちいかわコラボで、企業の結果が分かれたのは何か

同じちいかわを借りていても、企業によって結果は分かれます。分かれ目は予算の大きさではなく、キャラクターの絵を載せるのか、作品に出てくるものを実際に作るのかという、企画の段階での決め方にありました。

絵を載せる場合と作品のものを実際に作る場合で、結果が分かれることを並べた比較図

左が絵を載せた場合、右が実際に作った場合です。

くら寿司はちいかわの場面をメニューにした

この企業は、ちいかわの絵を皿に印刷したのではなく、作品に出てくる料理を実際に作りました。

2025年6月16日に出したプレスリリースで、くら寿司は2つのコラボメニューを発表しています。「湧きドコロごはんのお寿司茶漬け」480円と、「討伐成功!報酬袋うどん」530円です。

前者について、同社はこう書いています。

アニメ第12話に登場する、お寿司を持って走っていたハチワレが転んでできた「お寿司茶漬け」を再現。

後者は、作中で討伐対象を倒すともらえる報酬袋を、「うどんにトッピングしている餅巾着で再現」したものです。どちらも、キャラクターの絵をどこかに置いたのではなく、作品の中で起きた出来事を食べ物として作り直しています。

同社にとって、これは3度目のコラボでした。リリースには「『ちいかわ』とのコラボ企画は、昨春以来の3度目となります」とあります。初回は2023年2月10日から実施されており、そのときのリリースには「『お寿司』がテーマのストーリーがきっかけとなり、くら寿司初となる『ちいかわ』とのコラボ企画が実現しました」と書かれています。最初から、作品の中身が起点になっていたということです。

ここで、企画書に書く一行が変わります。「ロゴをどこに置くか」ではなく「何を作るか」になります。

餅巾着で報酬袋を再現するのに、特別な予算は要りません。要るのは、作品を読んでいることと、それを自社の商品に翻訳する手間です。決め方の違いであって、費用の違いではありません。

参考:ちいかわコラボキャンペーン(3度目) - くら寿司 / ちいかわコラボ初開催の発表 - くら寿司

ちいかわ商品は、形にしたほうが反応が高い

くら寿司1社の工夫なのかを確かめるために、別のデータを見ます。

ちいかわ公式アカウントが出した商品の発売告知162件を、2つに分けました。ぬいぐるみ・マスコット・フィギュアのように形そのものを作った商品と、Tシャツ・シール・クリアファイル・缶バッジのように既存の物に絵を載せた商品です。分け方は、結果を見る前に決めてあります。

いいね率(表示100回あたりのいいねの数)の真ん中の値は、絵を載せた商品が1.00%、形を作った商品が1.48%でした。ひらきは46.4%で、幅で見ると31.1%から63.6%です。

形を作った商品と絵を載せた商品のいいね率の比較

分類の線を4通り引き直しても、ひらきは41.8%から49.9%の範囲に収まりました。アクリル製品をどちらに入れるか、キーホルダーを加えるかで結果がひっくり返るなら、この分け方自体が怪しいことになりますが、そうはなりませんでした。

ほかのキャラクターでも向きは同じでした。

サンリオ単独で41.1%、ちいかわ以外の3つのIPをまとめて27.7%のひらきが出ています。

ただし、必ず勝つわけではありません。形を作った商品と絵を載せた商品を1件ずつ突き合わせると、形を作った側のほうが高いのは78%です。残る22%は、絵を載せた側のほうが高くなっています。「形にすれば売れる」とは書けません。

ひとつ断っておきます。くら寿司のメニューの話と、この162件は別の集まりです。片方は1社の店舗メニュー、もう片方はちいかわ公式アカウントの商品告知で、同じものを数えたわけではありません。別々の場所から同じ向きを指している、という関係です。

読まれた投稿は、ちいかわより作りを語る

買った人が何を書いているかも見ました。コラボ相手のブランド名で集めた投稿のうち、実際にコラボに触れていた815件が対象です。

書いた人の数で並べると、味・品質が18%、商品のつくりが16%、キャラクターへの言及が12%でした。ここまでは、人数の多い順に並んだだけの表に見えます。

同じ815件を、集めたいいねの数で並べ直すと、順番が入れ替わります。商品のつくりが54%、味・品質が27%、そしてキャラクターへの言及は8%まで下がります。

反応の集中度と、書いた人の数といいねの数で構成が入れ替わることを示した図

なぜこうなるかというと、反応が一部の投稿に極端に集まっているからです。いいねの94%は、上位81件(全体の1割)が集めています。多くの人に読まれた投稿ほど、キャラクターそのものではなく、何をどう作ったかを語っているということです。

上位の投稿に引っぱられているだけではないか、という疑いも確かめてあります。いいねの多い投稿を上位1件、3件、10件、30件と外して計算し直しても、商品のつくりは25%から54%、キャラクターへの言及は8%から14%の範囲で動き、上下が入れ替わりませんでした。

これは、発表文と商品説明に書く中身を変えられる、という話です。かわいさを説明する行を減らし、何をどう作ったのかを書く行を増やす。それだけで、読まれる側の投稿が拾いやすい材料になります。

なお、ちいかわの人気そのものの理由についてはちいかわグッズが売れる理由で扱っています。

ちいかわ新商品の告知は反応だけが伸びる

告知の中身によっても、反応の出方は変わります。ちいかわ公式アカウントの投稿756件(2025年10月から2026年8月まで)を、POP UP・催事の告知を基準にして比べました。

新商品の告知は、届いた数では基準との差が14.2%で、偶然の範囲に収まります。ところが反応率(届いた人のうち、いいねを押した人の割合)では31.8%高くなります。

[投稿の型ごとの、届く量と反応率への効きを並べた図

届く量は変わらないのに、届いた先での反応が違います。

同じアカウントが同じフォロワーに向けて出していても、中身によって反応が分かれるということです。

逆に、イベント情報は両方でマイナスでした。届いた数で32.6%、反応率で47.3%低くなっています。会期や会場を伝える投稿は、そもそも見られる数が少なく、見た人の反応も薄いという結果です。

自社の発表を出す順番を考えるときの材料になります。商品そのものを先に出し、催事の案内はその後に回す。逆にすると、いちばん反応が取れる材料を、いちばん反応の薄い型で出すことになります。

ただし、これは1つのアカウントの10か月ぶんです。ほかのアカウントで同じことが起きるかは確かめていません。社外に出す資料に使うなら、確かめている途中の材料だと添えたほうが安全です。

ここまでは他社の話でした。自社の場合はどうでしょうか。

コラボで作るものは企画の段階で決まる

ここまでの3つは、どれも企画の段階で決まる話でした。

作るものが絵を載せたものになるか、形のあるものになるか。発表文に何を書くか。告知を新商品として出すか、催事の案内として出すか。いずれも、予算が確定したあとの実行段階ではなく、企画書を書く段階の判断です。

社内で通すことを考えると、この順番は都合がよいはずです。効果を測る仕組みを先に作ろうとすると、調査の予算が要ります。予算を取るには効果の見込みが要り、その見込みを出すために測りたい、という堂々巡りになります。

作るものを決めるのは、もともと担当者の仕事の範囲です。予算の承認を待たずに動かせる場所が、いちばん結果を左右していたことになります。

他社がどんな組み方をしているかはIPコラボの事例に、借りるときの権利の仕組みはキャラクターライセンスとはにまとめてあります。

ちいかわとコラボできる企業に、条件はあるか

ちいかわとコラボした企業に、規模の条件は見当たりませんでした。決算書類に多く書いていたのは、売上の大きい企業ではありません。そして自分で発表を出した企業の側は、ほぼ半分が二度目をやっています。

ちいかわとコラボした企業に規模の条件が無かったことを示す3項目のチェックリスト

3つとも、規模ではなく相手の使い方の話です。

社内で必ず聞かれるのは、規模が釣り合うのかということと、一時的な流行りではないのかということの2つです。どちらも、公開されている書類と発表から確かめられます。

深く使っているのは、大きい企業ではない

決算書類に書いた19社のうち、通期の売上高が取れるのは14社です。その真ん中の値は437億円でした。

売上の大きさで企業を並べても、ちいかわについて書いた件数の順番とは揃いません。売上が大きい企業ほど多く書く、という関係はありませんでした。

借り手19社を、売上高と言及件数で置いた散布図。色は借り方の4類型

最も多く書いたのは、年商489億円のなとりで、4年のあいだに7件の書類で触れています。年商6,692億円の日清食品ホールディングスは1件でした。売上でいうと13倍以上の差がある2社が、書いた量では逆になっています。

借り方で見ると、別の並びが出ます。売上高が取れる14社を借り方で分けると、集客の仕掛けに使う3社は真ん中が1,845億円、自社商品に載せる7社は489億円です。店に人を呼ぶ使い方をしているのは規模の大きい企業で、自社の商品にキャラクターを載せる使い方をしているのは、それより小さい企業ということになります。

規模で決まるのは、使い方の種類のほうでした。

自社の規模を理由に見送る材料にはならない、ということです。見るべきは規模ではなく、自社の商品とキャラクターの近さのほうです。

二度目をやった企業が、ほぼ半分ある

当事者が自分で出した発表は36件・22社ぶんあります。このうち二度目以上のコラボをやったのは10社で、組んだ企業のほぼ半分にあたります。

年で見ると、2022年から2026年まで5年続いています。カテゴリで見ると、食品・菓子・日用品・アパレル・文具・玩具・飲食・雑貨・コスメの9つすべてに実績があり、空いているところがありません。

くら寿司は3度、丸大食品は3度、BEENOSは4度と、同じ企業が繰り返しています。

一度やってみて終わりにした企業と、続けた企業が、およそ半々に分かれています。

ただし、これはプレスリリースに出る範囲での数え方です。公式の直販だけで売っている商材、企業間の取引、海外で権利を借りている企業は、この数えには乗りません。「1件も無い」ではなく「発表に出る範囲では見当たらない」と書くほうが正確です。

それでも、社内で「一時的な流行りものではないか」と言われたときには返せます。組んだ企業の側が繰り返しているという事実は、外から確かめられるからです。宣伝する側の言葉ではなく、借りた企業の行動として残っています。

反対に、空いているカテゴリを狙うという話は成り立ちません。空きが無いためです。

まとめ:跡が残る相手を先に選ぶ

効果の跡は、自社で作るものではありません。組んだ相手の開示に残ります。そして残るかどうかは、相手の側で決まります。

この記事で見てきたのは、その1点です。サックスバーホールディングスは1件のコラボを翌期の方針の説明に使い、DDグループは受託の広がりを事業の話として書き、なとりは3年続けて書いて効果を認め、粧美堂は定番に分類しました。いずれも、借りた企業が自分の言葉で書いたものです。

そして、金額を書いた企業はありませんでした。数字として外から見えたのは、月ごとの売上を公表しているくら寿司の1社だけです。

だとすると、相手を決める段階で見ておくことが3つあります。

  • その企業が上場していて、決算書類を出しているか。出していなければ、そもそも書かれる場所がありません。上場をやめれば書かれる場所は消えるので、いま出しているかを見ます
  • 月ごとの売上を公表しているか。していれば、コラボの月の動きを外から確かめられます
  • 過去にコラボを決算書類にどう書いてきたか。商品の紹介で終わっているのか、事業の話になっているのか

3つとも、公開されている書類を読むだけで確かめられます。調査の予算は要りません。EDINETの全文検索でキャラクター名を入れれば、どの企業が何を書いてきたかは30分ほどで一覧になります。

そのうえで、自社が作るものを決めます。絵を載せるのか、作品の中にあるものを作るのか。ここまで見てきた範囲では、後者のほうが読まれやすく、書かれやすい傾向がありました。ただし必ずそうなるわけではないので、幅を添えて社内に出すのが正確です。

キャラクターが会社の外から来たものであること自体が持つ意味はクリエイター発IPの位置づけで、他社IPを借りる進め方の全体像はコラボ戦略と活用事例で扱っています。

来期の企画書に足せる行は1つです。「この相手は、うちとの取り組みをどこに書く企業か」。

それは、企画を通す前に確かめられます。


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NOKID編集部

キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。

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