2026.08.19

2026.08.06

“絡み”を作品にする。『わんたま☆らいふ』に学ぶ、VTuber IP ゲーム化という育て方

2026年6月25日、サイバーステップのノベルゲームブランド「ラビットフット」から、人気VTuber・犬山たまきが主演を務めるフルボイスノベル『わんたま☆らいふ ~犬山たまきの修学旅行サバイバル~』が発売されました。修学旅行を舞台にしたドタバタコメディで、多くのメディアはこれを「人気VTuberのゲーム化」という見出しで報じています。

ただ、公開された配役表をよく見ると、引っかかる点があります。

主演は犬山たまき。その親友役に神楽めあ。そして先輩教師役に、佃煮のりお氏。配信を追ってきた人ほど、この並びで一瞬、手が止まるはずです。どこかで見た組み合わせだ、と。それもそのはず、この三人はゲームの中で出会う前から、ずっと現実で“絡んで”きた関係だからです。

つまり本作は、一人のVTuberをゲームにした作品ではありません。三人の関係を、関係のままゲームにした作品です。複数のVTuberが一本に出る作品は、同じブランドにも以前からあります。ただし、生みの親と生み出されたキャラクターがそろって本人役で並ぶ構図は、筆者が確認した範囲では他に見当たりません。

そして、この一本は単なる話題作にとどまりません。VTuberというIPをどう育てるか——ゲーム化という選択肢を考えるとき、本作と周辺の事例は「こんな展開の仕方や考え方もある」という具体的な参考になります。一つの新作を入口に、IPの育て方を順番にほどいていきます。

わんたま☆らいふはVTuber(IP)がゲーム化した参考例

『わんたま☆らいふ』は、犬山たまきが主演を務め、神楽めあと佃煮のりお氏が本人役で加わったフルボイスノベルです。プレイヤーは、三人を外から見守る教師の立場に置かれます。

発売日・対応機種・価格

『わんたま☆らいふ』は2026年6月25日にWindowsとNintendo Switchで発売され、PlayStation 4/PlayStation 5、iOS、Androidへの対応も予定されています。対応言語は日本語のほか、英語、簡体字・繁体字中国語などを含みます。

価格は3,960円から18,700円まで四段。この段の刻み方は後段で効いてくるので、頭の隅に置いておいてください。なお、Steamでは体験版も公開されています

つまり本作は、配信のアーカイブのように“その場限り”で流れていくものとは違います。複数のプラットフォームの棚に長く置かれる商品として作られている、ということです。

主演・出演する三人と、それぞれの役柄

物語の舞台は修学旅行。犬山たまきが主演・主役を務め、神楽めあが親友役、佃煮のりお氏が先輩教師役で登場します。主題歌『超DaNger』は犬山たまきと神楽めあが歌っています。

プレイヤーの立ち位置も押さえておくと、話が早くなります。公式のあらすじでは、プレイヤーは教え子の秘密を知ってしまった教師です。親友の神楽めあに振り回され、先輩教師の佃煮のりお氏まで巻き込んで騒ぎが広がる、という筋書きになっています。つまり佃煮のりお氏は、プレイヤーにとっての先輩にあたります。

出演はこの三人だけではありません。友情声優出演にも複数の配信者が名を連ねています。

ここで先ほどの“手が止まる感覚”に戻ります。なぜこの三人なのか。なぜ親友で、なぜ先輩なのか。その配役は、思いつきで割り振られたものではありませんでした。

参考:【本日発売】NintendoSwitchとPCで遊べる『わんたま☆らいふ 〜犬山たまきの修学旅行サバイバル〜』「犬山たまき」「神楽めあ」「佃煮のりお」出演のノベルゲームが2026年6月25日販売開始! - サイバーステップホールディングス

なぜ神楽めあ・佃煮のりおも出るのか

まず、数字を一つ。公式リリースに載った犬山たまきの紹介文には、コラボ企画が1000回を超えると記されています。誰かと一緒に画面に映ることが、活動の例外ではなく常態だったということです。神楽めあはその相手として長く画面に並んできた一人で、二人は本作の主題歌もそろって歌っています。

この積み重ねがあったうえで、ゲームの中での役どころは「親友役」でした。順番が逆ではありません。関係のほうが先にあって、役はその後から付いています。

VTuberの配信で心を掴まれる瞬間は、多くの場合、台本ではなく掛け合いの中に生まれます。誰と誰が仲が良くて、どんなやり取りをするのか。その蓄積が、ファンにとっての一番の財産です。

だとすれば、自分のIPで最初に数えるべきものも変わります。登録者数の並んだ表ではなく、直近一年のコラボ履歴です。誰と何回一緒に画面に映ったか。その回のアーカイブが単独配信より伸びているか。1000回という数字が示しているのは、人気の大きさではなく、関係が作品に持ち込めるほど固まっていた、という事実のほうです。

主役の“生みの親”が、先輩役で同席する

そして、最も不思議な配役が佃煮のりお氏です。

普通に考えれば、この同席は起きません。キャラクターを生み出した作り手と、生み出されたキャラクターが、同じ作品に本人役で並ぶ。実写の俳優では起こりえないし、純粋な二次元キャラでも起こりえない構図です。

ところが本作では起きています。犬山たまきは、漫画家・イラストレーターである佃煮のりお氏が生み出したキャラクターです。本人の公式YouTubeチャンネルは、「漫画家 佃煮のりおが個人運営している」バーチャルYouTuberだと自ら説明し、両名が出演すると明記しています。公式X(@norioo_)もアカウント名が二人一体で表記されています。ゲームの公式リリースでも、佃煮のりお氏は「のりプロの社長兼プロ漫画家」として、犬山たまきのプロデュースをきっかけにVTuber業界へ入った人物だと紹介されています。二人を別人格として扱いながら同じ運用で活動する——いわば“親子”という建前を保ったまま、両者が地続きに存在しているのです。

その建前は、ゲームの中でも壊されていません。生みの親は主役の隣ではなく、プレイヤーの先輩教師という一段離れた位置に置かれています。近すぎず、遠すぎない場所です。

では、なぜこの配役が実現できたのか。公式サイトのクレジットには、企画協力としてのりプロと神楽めあが並んでいます。出演者の側が、出演するだけでなく企画の段階から座組みに入っている。三人の関係をそのまま持ち込めた経緯は、ここにあります。演者を外から起用したのではなく、内側から一緒に作っている——クリエイター発のIPが「メディア」になる流れの、ひとつの現れ方でもあります。

IPを預かる立場で考えれば、これは「一つの座組みに乗せられる相手が、どこまで身近にいるか」を問い直すきっかけになります。事務所をまたぐ交渉相手ばかりを探す前に、生みの親、元からの共演者、社内で長く関わってきた人。声をかけるのに稟議も契約変更も要らない関係が、意外と近くに残っていることがあります。

「役に人を当てる」前提が、逆になる

通常、ゲームのキャスティングは制作側が物語の都合に合わせて設計します。役があって、そこに人を当てはめる。物語が先、人が後です。

本作はその順序が逆になりました。先に現実の関係があり、物語のほうがそれに合わせにいっている。親友だから親友役、生みの親だから先輩役。友情出演の顔ぶれまで含めて、普段そろっている面々がそのまま画面に並びます。二つの作り方は「物語と関係のどちらを先に固定するか」で分かれていて、本作は後者を選んだわけです。

この違いは、企画書の一行目に効いてきます。主役を一人決めてから相手役を探すのではなく、すでに定着している二人組・三人組を先に固定して、その関係が自然に成立する舞台を後から選ぶ。修学旅行という舞台が選ばれたのも、その順序で見ると納得がいきます。

では、この作り方は、これまでのVTuberゲーム化と比べて何が新しいのか。他のVTuberがどうゲーム化されてきたかを並べると、本作の立ち位置がくっきり見えてきます。

参考:Tamaki Ch. 犬山たまき / 佃煮のりお - YouTube

VTuber(IP)のゲーム化は“一人”から“関係”へ移りつつある

VTuberのゲーム化には、大きく二つの型があります。一人のIPを一本の作品にする型と、複数の関係をまるごと収める型です。前者はすでに実績が積み上がっています。後者も、複数人が本人役で並ぶ作品自体は珍しくありません。ただ、現実の関係をそのまま配役に写した例となると、本作以外に見当たらないのが現状です。

二つは似て見えますが、作り手が最初に集めるべき材料が違います。順に見ていきます。

これまでは「一人の作品化」だった

VTuberのゲーム化自体は、もう珍しくありません。ホロライブの湊あくあが主演・プロデュースした『あくありうむ。』は、チャンネル登録者100万人を記念して、本人の「ゲームに自分が出てみたい」という願いを形にした作品でした。猫又おかゆ主演の『おかゆにゅ~~む!』も、累計販売本数が3万本を突破しています

これらに共通するのは、一人のVTuberのIPを一つの作品に落とし込む構造です。企画の変数を分解して考えるとき、この型は「誰を主役に据えるか」に最も重い比重がかかります。主役は基本的に一人で、物語はその人の魅力を中心に組み立てられます。あくありうむが本人の「メイドになりたい」という願望から出発したように、企画の起点は個人の世界観でした。

同じ「VTuberのゲーム化」でも、この二つの型では勝負所がずれます。一人選び型で先に必要になるのは、本人の願望や世界観を掘り起こす取材です。誰を主役にするかを決め、その人が何をやりたいかを物語に翻訳する作業が中心になります。一方、関係型で先に必要になるのは取材ではなく、コラボ履歴の棚卸しです。集める材料からして違うので、どちらの型で考えているかを決めないまま企画に入ると、途中で材料が足りなくなります。

個人勢でも、ゲーム化は成立している

しかも、これは大手事務所だけの話ではありません。個人勢VTuberの朝ノ瑠璃が主演したノベルゲーム『ルリイロデイズ』は、クラウドファンディングで895人から1,257万円を集めて成立しました。あおぎり高校のうる虎がーるは、自作ゲームの一作目だけで15万ダウンロードを突破しています。

注目したいのは、その成立のさせ方です。『ルリイロデイズ』を立ち上げたのは、有志の個人が集まった制作チームでした。事務所の資本ではなく、ファンからの直接支援で制作費をまかなっています。うる虎がーるは、企画からシナリオ、プログラム、ドット絵、UIまでを自分で手がけています。

ここから言えることは、無条件に「規模は関係ない」ということではありません。条件付きです。ファンから直接お金を受け取る窓口があり、なおかつ制作の中核を自分たちで回せる。この二つがそろっている場合に限り、事務所の資本がなくてもゲーム化は成立します。裏を返せば、諦める前に確かめるべきはチャンネルの規模ではなく、この二点です。支援を受け取る窓口が今あるか。作れる人が中にいるか、いなければ組める相手がいるか。

演者が去っても作品は残る——光と影

本人がいなくなれば、その人のゲームも終わる。そう思うのが自然です。

ところが実際には、そうなっていません。湊あくあがホロライブを卒業した際、エンターグラムは制作中止と販売継続を同時に告知しました。それから2年近く経ったいまも、『あくありうむ。』は購入できる状態が続いています。ラビットフットの『なつめ繚乱』も、主演の紙代なつめが「蒼真なひろ」という名義で再始動した後、旧名義のまま販売が続き、PlayStation 4版も追加発売されました。完成した作品は、演者の状況が変わっても棚に残ります。卒業後も価値が続く形にはいくつかの型があり、ゲーム化はそのうち最も物理的に残るものの一つです。

止まるのは、続きのほうです。あくありうむの新作は中止になった一方で、活動が続いている猫又おかゆの『おかゆにゅ~~む!』には続編が生まれ、『おかゆにゅ~~む!R』が2026年3月26日に発売。同じ「一人の作品化」でも、演者が続いているかどうかで、シリーズが伸びるか一本で止まるかが分かれています。

本作のように関係そのものを核に据えた作品なら、その振れ幅はさらに大きく出ます。三人のうち一人でも活動を離れれば、続編で同じ配役は組めません。関係を配役にしたからこそ得られる濃さと、関係だからこそ抱えるもろさは、同じ一枚のコインの裏表です。だから関係型でいくなら、続編ありきで投資を組まないほうが安全です。一本で完結する形に予算を寄せ、続編は出せたら儲けもの、くらいの位置に置いておく。そう考えておけば、誰かが離れたときに企画ごと崩れずに済みます。

一人の作品化から、関係の作品化へ

ここまで並べると、『わんたま☆らいふ』の立ち位置が見えてきます。

湊あくあやおかゆの事例が一人のIPを軸にしていたのに対し、本作は犬山たまき・神楽めあ・佃煮のりお氏という三人の関係を丸ごと作品に収めています。主役一人の魅力ではなく、親友や生みの親との間にあるやり取りが物語を動かす。

そう考えると、配役表の意味も変わります。配役表とは、制作側が物語の都合で決めた割り当て表ではありません。本作にとってそれは、三人が何年もかけて積み上げてきた関係の記録です。誰が誰の親友で、誰が誰を生んだのか。その履歴が、そのまま一枚の表になっている。あなたが推しの配信で何より楽しんでいる、あの掛け合いそのものが商品になっている——そう考えると、この一本の見え方が少し変わってくるはずです。

ただ、ここで当然の疑問が浮かびます。複数のVTuberを本人役で同席させ、全編フルボイスで多機種に出す——通常なら回収の読みにくいこの企画が、なぜ実現できたのか。答えは作品の中にはありません。

参考:『あくありうむ。』湊あくあインタビュー。マリン船長 義母化の真相を直撃 - ファミ通.com / 【「あくありうむ。」完全新作ゲーム】制作中止のお知らせ - ENTERGRAM/エンターグラム公式X / 「VTuber主演のノベルゲーム」VNovel ルリイロデイズ プロジェクト始動 - CAMPFIRE

VTuber(IP)のゲーム化は、企画の中身より“土台”で決まる

複数の本人役をそろえ、全編フルボイスで六つのプラットフォームに広げる。一本あたりの制作費は軽くありません。それでもこの座組みが組めた理由は、企画書の出来にはありません。

発売元ラビットフットの作り方をたどると、量産の型、価格の刻み方、資金の回収順という三つが見えてきます。冒険できたのは、冒険しなくていい土台があったからです。裏を返せば、この三つが揃っていない側では、どれだけ良い企画でも同じ座組みは組めません。自分たちで作るなら自分の側に、外に頼むなら組む相手の側に、それがあるかどうかを見ていきます。

同じ型で十作を量産している

『わんたま☆らいふ』を手がけるラビットフットは、「推しが登場するノベルゲーム」を掲げ、VTuberや配信者が本人役で登場するノベルゲームを次々と送り出しているブランドです。本作を含めて、確認できるだけで十作。公式が「第8弾」と銘打った毒ヶ衣ちなみの『ちなみほりっく』のように一人が主役の作品もあれば、歌い手グループめろんぱーかーの五人が本人役で並ぶ作品や、五人の配信者が主演した『妄想推理アドベンチャー アルティメットジャンボジェット殺人事件』のように、複数人がそろって出る作品もあります。DMM GAMESへの一括展開では、複数のタイトルが同じ日にまとめて配信されました。

並べてみると、主役が替わっても共通する作りがはっきり見えてきます。

  • 全編フルボイス
  • 作品によっては一部シーンをバイノーラルマイク(左右の耳で立体的に聞こえる収録方式)で録ったASMR
  • 英語・簡体字・繁体字中国語などへの多言語対応
  • Switch・Steamから順次スマホ・PlayStationへ広げる多機種展開

この共通仕様から何が起きているかを読むと、段階はこうなります。一作目でシナリオの型と収録・翻訳・移植の手順を固める。二作目以降は、その型に主役だけを入れ替えて流し込む。すると一作あたりの固定費が下がり、下がった分だけ「今回は少し変わったことをやろう」という余白が生まれる——ここは制作体制が公表されていないため、外から見た筆者の読みです。ただ、新しい配信者を迎えるたびにゼロから作り直していたら、十作を同じ仕様で並べることは難しいはずです。

自分たちで一本目を作る場合も、同じことが言えます。完成前に確認すべきなのは出来の良さだけではありません。この作り方を二本目でもう一度使えるか。使えないなら、それは作品を一本作っただけで、型を作ったことにはなっていません。自分たちで作るなら自分に、頼むなら相手に向ける質問です。

値段を刻むのではなく、買い手の役割で器を分ける

もう一つ、ラインを支えているのが価格の作り方です。ただし効いているのは段数ではなく、買い手の役割で器を分けている点です。

本作の商品情報は、三つの役割に分かれます。物語が読めればいい人にはダウンロード版が3,960円。手元に形で残したい人には特典ボックス。全部そろえたい人には公式ショップのスペシャルボックス。

面白いのは真ん中です。特典ボックスは八つの店舗で扱われますが、価格は9,900円で共通。付いてくる特典だけが店舗ごとに違います。値段で選ばせるのではなく、どの特典が欲しいかで選ばせている。上の段も同じで、14,300円と18,700円の差はB2タペストリー一点です。階段を細かく刻んでいるのではなく、役割を決めてから、その中を特典で横に割っている。

同じ作品を買う人が、一つの塊ではないということです。最初の層に18,700円は高すぎるし、最後の層に3,960円しか用意しないのは受け取り損ねになります。『ちなみほりっく』では最上段が39,600円のオーダーメイド版で、購入者の名前をゲーム内で呼ぶ100名限定でした。一番上の役割は、ここまで伸ばせます。

自社のグッズや商品が一価格帯しかないなら、増やすべきは価格の段ではありません。いま買ってくれている人が「どこまで欲しいか」で分かれるかどうか、そこから確かめることになります。

“予約で先に回収する”から、冒険ができる

予約商品の意味は、単なる物販ではありません。発売前の予約段階で、制作費の相当部分を先に回収できる——ここが資金面の肝だと筆者は見ています。

作ってから売るのではなく、ファンの熱量を予約という形に先に変えてから届ける。この受注生産に近い流れがあるからこそ、「複数の本人役を同席させる」「全編フルボイスで多機種に出す」といった、通常なら回収の読みにくい企画にも踏み込めます。

裏返せば、自分のIPでゲーム化のような挑戦を考えるなら、企画の中身より先に確かめるべき数字があります。発売前の予約だけで、制作費の何割まで戻せるか。この割合が読めていれば踏み込める企画の幅は広がり、読めていなければ、どんなに良い企画でも決裁は下りません。

参考:DMM GAMESにてラビットフット作品を販売開始!リリース記念セールを同時開催! - サイバーステップホールディングス / ラビットフット第8弾! VTuber「毒ヶ衣ちなみ」が主役のフルボイスADV!『ちなみほりっく -Chinami Holic-』2025年10月28日(火)より予約販売開始! - サイバーステップホールディングス

まとめ|あなたのIPは、どう育てられるか

ゲーム化を考えるとき、「まず人気のある一人を選べばいい」と考えてしまうと、最初にやる作業は登録者数の並んだ表を作ることになります。表はすぐ埋まりますし、上から順に声をかければ企画は動き出す。それで一本目までは進みます。ただ、その一人が卒業や活動休止を選んだ瞬間、続きの計画がまるごと止まる。そして手元には、次の一本で使い回せる型が何も残っていない、ということが起こります。

本作を一本のニュースとしてではなく、IPの育て方の参考事例として読むと、別の順路が見えてきます。

ひとつは、配信で積み上げた関係そのものが作品の素材になるということ。誰と誰の掛け合いがファンに愛されているか——コラボ履歴を数えるところから始めれば、作品化の入口は一人選びより広がります。もうひとつは、これが大手だけの話ではないということ。ファンから直接支援を受け取る窓口と、制作を回せる体制。この二つがそろえば、規模は決定的な壁になりません。そして最後に、冒険を支える体制です。同じ型を二本目でも使えるか、予約で制作費の何割を先に戻せるか。この二つの答えを持っている側だけが、回収の読みにくい企画に踏み込めます。

VTuberを広告素材として扱う発想から抜けたところに、この選択肢はあります。VTuberのゲーム化は、一人のIPを作品にする段階から、関係そのものを作品にする段階へと選択肢を広げました。あなたのIPなら、どの型で育てられるか。手を動かす最初の一歩としては、直近一年のコラボ履歴を開いて、どの組み合わせが一番伸びているかを数えてみてください。その表の一番上に並んだ名前が、あなたの手元にある“配役表”の下書きです。


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NOKID編集部

1000件以上の映像制作実績を誇る株式会社NOKIDの編集部メンバーが監修。キャラクター・アニメーション分野のノウハウやトレンドの活用手法の紹介が得意です。

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