2026.09.09

2026.10.04

デジモンが過去最高益を出したとき、作り直していたのはキャラクターではなかった

2026年8月、バンダイナムコエンターテインメントの社長が、デジモンというIPがグループとして過去最高益を記録したと語りました。1999年にアニメが始まったシリーズです。放送当時の勢いを、25年以上たった今、上回っている。

引っかかるのは、その理由として社長が挙げたものです。

デジタルゲーム。カードゲーム。この2つでした。アニメが出てきません。

新作アニメは実際に放送中で、テレビシリーズも続いています。それでも、最高益を説明する言葉の中に映像は入っていませんでした。では何が効いたのか。

調べていくと、2019年に社内で始まった1つのプロジェクトに行き当たります。動かしたのはアニメの会社ではなく、玩具を作って売る側の会社でした。そこで決められたのは、キャラクターを変えることではありません。

デジモンが過去最高益を出すまでに起きたこと

デジモンの最高益を説明する言葉に、アニメは入っていません。名前が挙がったのは、手に取って遊ぶ商品のほうでした。長く続けてきたから実った、という説明では届きません。

最高益の理由として社長が挙げたのはデジタルゲームとカードゲームで、アニメは挙がっていないことを並べた図

左が、社長が最高益の理由として挙げたものです。アニメは新作が動いていましたが、そちらには入っていません。

デジモンは25年前の全盛期を、いま超えた

バンダイナムコエンターテインメント代表取締役社長の宇田川南欧氏が、ファミ通のインタビューでこう述べています。

デジタルゲームとカードゲームの双方の好調が噛み合い、2000年のアニメ放送当時を超え、デジモンIPがバンダイナムコグループとして最高益を記録しています

デジモンは1997年に発売された携帯型の液晶ゲーム機から始まり、1999年にアニメ化されました。その放送当時が、これまでの最高地点だったわけです。25年以上たった今、そこを超えている。

ただし記事の中に金額の記載はありません。バンダイナムコホールディングスはデジモン単体の売上や利益を開示していないため、規模を数字で示すことはできない状態です。ここは押さえておいてください。

参考:グループ連携の強みを活かして過去最高益を達成。バンダイナムコエンターテインメント 宇田川南欧社長が語る、グローバルでのIP展開とファン獲得に向けた挑戦 - ファミ通.com

バンダイナムコの社長は、アニメを挙げなかった

もしアニメがIPを動かす主役なら、最高益の理由を聞かれたときに真っ先に出てくるはずです。実際には出てきませんでした。

これは新作アニメが存在しないという話ではありません。『DIGIMON BEATBREAK』は2025年10月から放送されています。東映アニメーションはこの作品について、従来のキッズ向けから視聴ターゲットを10〜20代に変更した意欲作だと説明しています。シリーズディレクターは宮元宏彰氏、主人公は15歳の設定です。

つまりアニメも手を入れられていました。それでも、利益を説明する言葉としては、ゲームとカードが先に来ています。映像は動いていなかったのではなく、映像が主役ではなかった。 順序の問題です。

いま稼いでいるのはゲームとカード

具体的に何が動いているのかを見ると、2つの商品が浮かびます。

家庭用ゲーム『デジモンストーリー タイムストレンジャー』は、全世界累計出荷本数がシリーズ最速で100万本を突破しました。2025年12月時点の数字で、PlayStation 5、Xbox Series X|S、Steamで展開されています。日本ゲーム大賞2025のフューチャー部門も受賞しています。2026年7月にはNintendo Switch版とSwitch 2版が加わり、2027年には大型の追加コンテンツも予定されています。

もう1つが『デジモンカードゲーム』です。バンダイのリリースによれば、世界で累計5.9億枚以上を出荷しています。こちらは2022年11月時点なので、現在はさらに積み上がっているはずです。

映像作品ではなく、手に取って遊ぶ商品が収益の中心にいます。

25年続けたから、では説明がつかない

ここで、よくある説明が思い浮かびます。25年以上続けてきたから、積み重ねが実を結んだのだ、という読み方です。

続けてきたのは事実です。ただ、続けただけで放送当時を超えられるなら、長く続いているシリーズはすべて最高益になっているはずです。実際にはそうなりません。

しかも、いま売れている商品の顔ぶれを見ると、昔から続いていたものばかりではありません。カードゲームは2020年4月から発売中のもので、腕に着ける玩具は2021年に出ています。続いてきたシリーズの中で、比較的新しい商品が売上を引っ張っている。 積み重ねが自然に実った、という説明では届きません。

続けている間に何をしていたのか。 問いはそちらに移ります。

デジモンが作り直したのは商品の形だった

作り直されたのはキャラクターではなく、買える形のほうでした。カードの遊び方も玩具の使い方も入れ替わっていますが、キャラクターとバトルの仕組みには手がついていません。順番としては、変えない部分の線を先に引いています。

内側にキャラクターとバトルの仕組み、外側にカード・玩具・ゲームの出る場所を置いた同心円の図

内側が、手をつけなかった部分です。線の外側だけが作り替えられています。

転機は2019年1月に始まっている

転機の時期は特定できます。バンダイナムコでデジモンプロジェクトリーダーを務める原田真史氏が、電撃ホビーウェブの取材でこう説明しています。

2019年の1月より、『デジタルモンスター』20周年にあわせる形で新プロジェクトが動き始めました

きっかけは20周年という節目と、グループ全体の方針でした。IPを中心に置く方針が掲げられる中で、デジモンをもう一度見直そうという流れが生まれます。

注目したいのは順番です。ヒット作が出たから勢いに乗ってプロジェクトが立ったのではありません。先にプロジェクトがあり、そこから商品が出ています。カードゲームの刷新が2020年4月、腕に着ける玩具が2021年、家庭用ゲームの新作が2025年。発足から順に、形になったものが並んでいきます。

自然に人気が戻ってきたのではなく、社内で誰かが決めています。 起点に人の判断がある事例だということです。

アニメ会社ではなく、玩具会社のIP

見直しの理由としてデジモンプロジェクトリーダーの原田氏が挙げたのが、デジモンの出自です。

貴重な玩具発のIPということで、そのポテンシャルを見直そう

デジモンはアニメ会社が生んだキャラクターではありません。1997年の液晶ゲーム機が出発点で、アニメ化はその2年後です。権利表示にもバンダイと東映アニメーションの両方が並びます。

ここは、自社でキャラクターを持っている会社にとって読みどころです。キャラクターで収益を上げられるのは、もともとキャラクターや映像を本業にしている会社だけではないか——そう感じる場面は少なくありません。デジモンはその前提に当てはまりません。玩具を作って売る会社が持っていたものを、20年以上たってから見直しています。

しかも見直しの言葉が「ポテンシャル」でした。すでに持っているのに使いきれていない、という認識が先にあったことになります。

狙いは大人でも子どもでもなかった

原田氏は同じ取材で、そのとき掲げた目標も語っています。

コアなファンには喜んでもらい、新しいファンにも好きになってもらえること

昔からのファンだけに向けたのでも、新しい層だけを取りにいったのでもありません。両方に届けることが最初から前提でした。

一般には、大人になった元ファンに狙いを定めた話として語られやすいところです。ただ、社内で立てられた目標はそうなっていません。片方を選んだのではなく、両方を条件にしています。 どちらか一方に振れば、商品の作り方はもっと単純になったはずです。そうしなかったことが、このあと見ていく商品の中身に効いてきます。

カードは名前だけ残して作り直した

では具体的に何が変わったのか。1つ目がカードゲームです。

現行の『デジモンカードゲーム』は2020年4月に発売されました。バンダイの説明によれば、1999年発売の「デジタルモンスターカードゲーム」からはルールもカードデザインも一新しています。名前は同じでも、旧作の続きではありません。

かつて同じ名前の商品が存在したシリーズを再開するとき、当時の遊び方をそのまま戻す選び方もあります。懐かしさで手に取ってもらえますし、作り直す手間もかかりません。デジモンはその道を取っていません。中身を作り直したうえで、あらためて売り場に出しています。

ちなみにカードゲームという市場自体も動いています。バンダイナムコホールディングスは統合レポートで、2025年3月期の国内市場規模を3,197億円(前期比11.7%増)とし、第1世代の顧客が大人の層を形成したことが追い風になっていると説明しています。デジモン固有の話ではなく、市場の側でも買い手が入れ替わっていました。

エサやりをやめ、腕に着ける玩具へ

2つ目が玩具です。2021年に発売された「バイタルブレス デジタルモンスター」は、キーチェーン型だった従来の液晶玩具をウェアラブル端末に変えました。

バンダイのバイタルブレスプロデューサー、関戸大彦氏はその理由をこう話しています。

スマートバンド・スマートウォッチなどが我々の日常にとって当たり前になってきているなかで

そのうえで、食事やうんちの世話といった機能をなくし、代わりに持ち主の心拍数や歩数といった活動データをデジモンに送り込む形に変えました。世話をする玩具から、着けて生活すると育つ機械へ。 遊び方そのものが置き換わっています。

バトルだけは、変えなかった

一方で、残したものもあります。関戸氏の言葉です。

ここは変えない方が良いよね

バトルの仕組みについて、変えるべきかどうかを慎重に検討したうえで、残す判断をしています。世話の機能は捨て、バトルは残す。この線引きは自動的に決まったものではありません。

判断を支えたのが人の配置です。企画段階から、初代の液晶玩具を開発していたメーカーの人間が加わっていました。何が本質で何が付随物かを知っている人が、決める場所にいたことになります。

何を変えるかと同じくらい、何を残すかに時間をかけています。 新しくすることだけが目的なら、この検討は要りませんでした。

キャラクターには手をつけていない

ここまで見てきて、変わっていないものが1つあります。

デジモンそのものです。デザインを一新したわけでも、性格を設定し直したわけでも、世界観を作り替えたわけでもありません。変わったのは、カードのルールであり、玩具の遊び方であり、ゲームの出るプラットフォームでした。

自社のキャラクターが伸び悩んだとき、まず候補に挙がるのは絵柄の刷新です。制作会社に相談すればデザイン案が返ってきますし、変えた実感も持ちやすい。ただ、その場合に動くのはキャラクターの側だけで、売り場や遊び方は元のままです。

デジモンは逆でした。キャラクターの作り直しではなく、買える形の作り直しです。 同じ「作り直し」という言葉で呼ばれますが、手をつける場所がまったく違います。

キャラクターそのものを見直す進め方については、キャラクター活用のリブランディング戦略で失敗例とあわせて整理しています。

先に決めたのは、変えない場所

順番にも特徴があります。バトルの仕組みを残すという判断は、機能を削る判断とセットで語られていました。つまり変える前に、変えない部分の線が引かれている。

線が引かれていれば、その外側はいくら変えても元の姿は保たれます。世話の機能を捨てても、腕に着ける形にしても、デジモンはデジモンのままでいられました。逆に線がないまま作り直すと、どこまで変えていいのかが判断のたびに揺れます。関わる人が増えるほど、その揺れは大きくなります。

デジモンの場合、線の内側にキャラクターとバトルが入っていて、外側に商品の形が置かれていました。この線引きが先にあったから、外側を大胆に変えられた。 順番が逆だったら、どこまで手をつけていいのかを毎回議論することになります。

参考:なぜ2021年に『デジモン』のまったく新しい玩具が登場することになったのか?――「バイタルブレス デジタルモンスター」プロデューサー&プロジェクトリーダーに直撃! - 電撃ホビーウェブ

デジモンの海外売上は、どこまで言えるのか

デジモンの伸び方は、東映アニメーションの海外版権が全体として伸びたぶんでは説明がつきません。国内より先に海外の枠に入り、そこへ残り続けています。ただし見えているのは一部で、デジモン全体でいくらになるのかは公開されていません。

この記事の数字で言えることと言えないことを2列に分けた図。言えるのは東映の海外版権のうちデジモン分まで

左が、公開情報から確かめられる範囲です。右は、どこにも出ていません。

数字は東映の決算書で追いかけられる

判断が効いたかどうかは、数字で確かめられます。東映アニメーションは決算資料で、作品ごとの売上を上位4作品まで開示しています。デジモンのアニメを製作している会社なので、権利を貸して得た収入がここに載ります。

海外版権の売上を並べると、2018年3月期が2億2800万円、2020年3月期が3億4100万円でした。上位4作品の4番目に、ときどき顔を出す程度の規模です。『ONE PIECE』や『ドラゴンボール』が数十億円台で並ぶ表の中では、末席にあたります。

なお、この表に載らない年もあります。それは売上がゼロだったのではなく、5番目以下で開示の対象外になったという意味です。

参考:決算計数資料 FY2022/3(通期)主要セグメント別作品内訳 - 東映アニメーション

東映の上位4作品の版権売上を9年ぶん並べた

この開示には、もう少し使い道があります。

上位4作品までという区切りは、裏を返せば「その部門で4番目より上にいるかどうか」を毎期記録し続けているということです。東映アニメーションの通期の計数資料は1冊に5期ぶんを載せているので、5冊を重ねると2018年3月期から2026年3月期までの9期がつながります。国内版権・海外映像・海外版権の3部門に、それぞれ上位4作品。枠の数は108になります。 重なっている期は別々の冊子どうしで突き合わせて、食い違いがないことを確かめました。

並べてみると、108の枠を分け合っているのは8作品でした。『ONE PIECE』と『ドラゴンボール』は3部門とも9期すべてを占めています。

東映アニメーションが決算資料で開示した上位4作品を、3部門×9期=108枠の全数で並べた表。デジモンが入っている枠を色で示している

デジモンが入っている枠は10でした。内訳は海外版権が7期、海外映像が2期、そして国内版権は1期です。海外版権では2023年3月期から2026年3月期まで4期続けて3位に入っている一方、国内版権に名前が出たのは2026年3月期の1回しかありません。

国内の上位4作品に入れたのは、最後の1年

初めて枠に入った時期も離れています。海外版権は2018年3月期、国内版権は2026年3月期。その間には8期あります。

8作品それぞれについて、3部門ごとに上位4作品へ入った期の数と初登場の期を横棒で並べた図

8作品を同じ形で並べると、この入り方が他と違うことが見えます。残る7作品は、国内と海外の初登場が同じ期に揃っているか、国内の枠に一度も入らないかのどちらかでした。海外の枠に載り続けたあとで国内の枠に初めて載ったのは、8作品のうちデジモンだけです。

ただし、これは「海外で先に売れて、あとから国内で売れた」という話ではありません。ここで見ているのは東映アニメーションの開示に載る順序であって、商品がどの国から売られ始めたかではないからです。それでも、権利を貸した側の帳簿に最初に現れたのが国外だったことは記録として残っています。

自社のキャラクターに手応えが出ているかどうかを、国内の売上だけで確かめようとすると、この8期は空白に見えます。見る場所が1つだと、動き出しは見えないことがある。 そういう形をした事例です。

2022年、売上が4.5倍に跳ねた

その数字が動きます。2022年3月期は15億3200万円。前に開示された3億4100万円から、およそ4.5倍です。

以降は表から消えることなく上位に残り続け、直近の2026年3月期は22億8000万円で、デジモンが開示された7期のうち最も多い額になりました。順位も『ONE PIECE』『ドラゴンボール』に次ぐ3番手です。ときどき顔を出す作品から、毎期並ぶ作品に変わっています。

時期を重ねてみます。プロジェクトが動き出したのが2019年1月。カードゲームの発売が2020年4月、腕に着ける玩具が2021年。そして数字が跳ねたのが2022年3月期です。判断から結果まで、およそ3年。

発表を増やす施策なら、反応は数週間で見に行きます。商品の形を作り直す判断は、開発と発売を挟むぶん、結果が出るまでの時間の流れ方が違います。

判断の3年前から、開発は動いていた

その長さは、作っている側の言葉にも出ています。100万本を超えた『デジモンストーリー タイムストレンジャー』について、プロデューサーの原良輔氏は4Gamerの取材で開発に8年以上かかっていると述べています。ディレクターの友野祐介氏の言葉はもっと直接的でした。

発売前は“恐怖”の感情が大きかった

8年かけたものが面白くないと言われたら大きな痛手になる、という趣旨の発言です。プロジェクトの発足が2019年1月ですから、このゲームはそれより前から動いていたことになります。 判断が先にあって商品がついてきたのではなく、進んでいた開発と、売り方を決め直す判断が、途中で合流した形です。

参考:決算計数資料 FY2026/3(通期)主要セグメント別作品内訳 - 東映アニメーション

会社全体が伸びただけではないのか

ここで一度、逆から疑ってみます。

金額が増えたこと自体は、それだけでは何も言えません。東映アニメーションの海外版権は部門として大きく伸びていて、その中にいれば金額は自然に増えるからです。デジモンの数字は、部門が伸びたぶんを写しているだけかもしれない。

そこで2018年3月期を100とする水準に直して、部門全体と並べました。

2018年3月期を100とした水準で、東映アニメーションの海外版権の部門全体とデジモンを並べた折れ線グラフ

海外版権は部門全体で106億7200万円から342億2000万円へ、3.21倍になっています。同じ期間のデジモンは2億2800万円から22億8000万円で、10.0倍。部門が伸びたぶんを差し引いても、3.12倍の差が残ります。

一本調子でもありません。2024年3月期には11億4700万円まで下がっています。それでも、その谷の期の水準が部門全体の水準を上回っています。

金額は5分の1でも、伸び率は4作品で1位

同じ期間を他の作品とも比べられます。ただし比べられるのは、2018年3月期と2026年3月期の両方で開示されている作品だけです。片方が非開示だと、増えたのか減ったのかすら分かりません。条件を満たしたのは4作品でした。

2018年3月期から2026年3月期までの倍率を4作品で比べた横棒グラフ。部門全体の倍率を破線で示している

デジモンが10.0倍、『ONE PIECE』が4.54倍、『ドラゴンボール』が2.17倍、『聖闘士星矢』が0.75倍。部門全体は3.21倍です。金額で言えば、デジモンは上位2作品の5分の1ほどしかありません。変化の速さで言えば、4作品のうち最も大きい。

自社のキャラクターを大きなIPと並べて「うちとは規模が違う」と結論を出すとき、比べているのは規模のほうです。金額の順に並べれば、デジモンは上位2作品にまるで届いていません。規模の順位と、動きの順位は別のものを測っています。 同じ表の中で、その2つは逆に並ぶことがあります。

なお、この比較にも先ほどの留保がそのままかかります。枠に載らない期は5位以下だったという意味で、金額がゼロだったわけではありません。順位は他の作品の増減でも動きます。そして金額は、あくまで東映アニメーションがアニメの権利を貸して得た分です。

伸びたのは北米と中国だった

中身についても会社が説明しています。2021年4月から12月までの決算について、東映アニメーションは北米での商品化権販売が好調だったと述べています。加えて、中国で配信されたアプリゲームがセールスと無料の両方でランキング首位を取りました。跳ねた期に会社が名前を挙げた場所は、日本国内ではありません。

直近の期についても書き方は同じです。2026年3月期の決算短信で、会社は海外版権の増収理由として、「デジモンアドベンチャー」シリーズの商品化権・ゲーム化権販売が好調だったと書いています。東映に入っているのは、バンダイの側が海外で売った玩具・カード・ゲームのライセンス料だということです。100万本のゲームと、この版権収入の増加は、別々の出来事ではありません。

一方、国内版権にデジモンが載った2026年3月期の金額は2億5200万円で、同じ期の海外版権22億8000万円とは9倍近い開きがあります。ただし、この差について会社は何も書いていません。書かれていないことは、こちらで埋めないでおきます。

参考:東映アニメ、第3四半期の「デジモン」海外版権収入が急増、10億円超に 商品化権販売伸びる、アプリも中国で1位に - gamebiz

制作の当事者は「大人狙い」を否定した

ここまで読むと、大人になった昔のファンに狙いを定めた話に見えるかもしれません。ところが当事者はそれを否定しています。

ファミ通の取材で、記者が正面から聞いています。30代前後をメインターゲットに想定しているのか、と。原田氏の答えはこうでした。

決してその世代だけを狙っているわけではない

そのうえで、目指しているのは親子二世代のキャラクターに育つことだと説明し、子ども向けの玩具についてはこれからが勝負だとも語っています。作った本人たちは、大人に絞ったとは言っていません。

参考:『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。 - ファミ通.com

大人向けは2012年から始まっていた

もう1つ、時期についての留保があります。

『デジモンストーリー タイムストレンジャー』の開発陣は、4Gamerの取材で、2012年に発売された『デジモンワールド リ:デジタイズ』を振り返ってこう話しています。

大人であっても楽しめる内容にしていった

そして今作をその延長線上に置いています。大人が遊べる形にする動きは、2019年に始まったわけではありません。 7年前から続いていたものが、プロジェクトによって商品全体に広がったと読むほうが実態に近そうです。

参考:[インタビュー]「デジモンストーリー タイムストレンジャー」が大切にしたのは,デジモンの進化とゲームの普遍的な面白さ(2ページ目) - 4Gamer

この数字は、デジモンの全部ではない

最後に、この記事で扱った数字の範囲を整理しておきます。

過去最高益を語ったのはバンダイナムコエンターテインメントですが、同社はデジモン単体の金額を開示していません。金額が確認できるのは東映アニメーションの側だけで、しかもそれはアニメの権利を貸して得た分です。カードゲームや玩具、家庭用ゲームの売上はそこに入っていません。

さらに、東映の開示は上位4作品までです。デジモンが載っていない年は、売上がゼロだったのではなく、5番目以下で表に出なかったというだけです。9期ぶんを並べた108の枠も、この区切りの内側にあります。枠の順位は他の作品が増えたり減ったりしても動くので、順位が上がった年にデジモンの側だけが動いたとは言えません。

デジモンIP全体でいくらになるのかは、公開情報からは分かりません。 この記事の数字は、権利を持つ会社のうち1社が開示した一部だと理解してください。

まとめ:先に決めるのは変えない場所

デジモンが過去最高益を出したとき、作り直していたのはキャラクターではなく、買える形のほうでした。

カードはルールごと出し直し、玩具は世話をやめて腕に着けるものになりました。その一方で、キャラクターとバトルの仕組みには手をつけていません。順番としては、変えない部分の線を引いてから、外側を作り替えています。

自社のキャラクターが伸び悩んでいるとき、次に足すものとして発表や露出が思い浮かびます。デジモンの場合、そこではありませんでした。先に決めたのは、何を変えないかのほうです。 そのうえで、誰に、どの形で売るかを組み直しています。

そして数字が動くまでには3年かかりました。短い期間で結果を見に行く施策とは、時間の流れ方が違います。

しかも最初に動いたのは、国内の数字ではありませんでした。権利者の開示を9期ぶん並べると、国内の枠にデジモンの名前が出たのは最後の1期だけです。手応えを1つの場所だけで確かめようとすると、動き出しは見えないまま過ぎていきます。 どこを見るかも、何を変えるかと同じくらい先に決めておく話だと思います。

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