NOKID編集部
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。



キャラクターコラボが炎上したと聞くと、原因はたいてい売り方の問題だと受け取られます。数量限定や先着順にして、転売ヤーに買い占められたり、店頭に並ぶ人数を読めていなかったから。企画書のリスク欄に「お一人様1点まで」と一行入れておけば、ひとまず検討したことになります。
ところが、当社が調べたコラボ37件(うち炎上36件)を1件ずつ追いかけると、様子が違いました。荒れたあとにコラボを続けられた企業と、そこで終わった企業に、はっきり分かれていたのです。しかも分かれ目は、批判がどれだけ集まったかではありませんでした。一方のグループでは20件中の大半が立て直し、もう一方は12件で4件しか続いていません。
立て直せていたのは、意外にも売り方でつまずいた側です。
調べたのは、企業・店舗32、作品31にわたる37件です。報道やまとめ記事ではなく、その会社が自社サイト・公式アカウント・PDFで何と書いたかを、1件ずつ読みました。開始の告知を消さずに残した官公庁も、1店舗の判断だったものを全店の慣行ごと廃止した会社もあります。炎上の原因は8つの型に分かれ、どの型にも入らなかったのは1件だけでした。
この記事でわかることは、次の3つです。
自社の企画が立て直せるかどうかは、荒れてからではなく、組む相手を決める段階で決まります。まず、炎上パターンを8つに分けて見ていきます。
キャラクターコラボの炎上は、運や相手の当たり外れではなく、企画のどこで決め損ねたかで分かれます。決め損ねた場所は8つの型に収まり、その8つは、荒れたあとに引き返せたかどうかで3つのグループにまとまります。

調べ方を先に書いておきます。まず解説動画と報道から、コラボが荒れたという候補を集めました。そのうえで当事者の一次情報に1件ずつ当たり、本当に批判が集まったのか、その後に何をしたのかを確かめています。当事者の反応も報道も見つからなかった4件は落としました。まだ確かめていない13件も、この記事の数には入れていません。
数えていないものもはっきりさせておきます。世の中のコラボが年に何件あって、そのうち何件が荒れるのかという割合は出していません。分母を作っていないからです。ですから、どの型が起きやすいかは書けません。書けるのは、確かめられた37件の中で何件がどの型だったか、そしてその後に何をしたかです。
炎上したキャラクターとブランドのコラボ36件を当事者の告知に1件ずつ当たって分けると、8つの型に分かれました。どの型にも入らなかったのは1件です。調べた37件のうち残る1件は、炎上しなかった比較用の事例です。
| 型 | 何を決め損ねたか | 件数 |
|---|---|---|
| 需要を読まず先着・数量限定 | 出す数と売り方 | 8件 |
| 組む相手そのもの | 誰と組むか | 7件 |
| 現場が回らない | 当日の受け入れ設計 | 5件 |
| 敬意を欠いた表現・発言 | 言葉と絵の置き方 | 5件 |
| 特典で買わせる設計 | 特典の配り方 | 3件 |
| 約束と違うものを出した | 品切れ時の扱い | 3件 |
| 条件の後出し・変更 | 条件を書く場所と時期 | 3件 |
| 内部の不正 | 販売する側の統制 | 1件 |
この8つに共通しているのは、どれも「企画のどこかで何かを決めていなかった」ことです。決めていなかったのが出す数なのか、条件を書く場所なのか、誰と組むかなのかが違うだけで、事故そのものはばらばらではありません。
たとえば条件の後出しでは、牛丼チェーンがある漫画作品と組んだ企画で、応募を積み上げた後になって本名限定という条件が示されました。事前の問い合わせには任意の名前でよいと回答していたにもかかわらずです。
公式の謝罪文には「キャンペーンサイトでは明記がなかったにも関わらず」条件を付したと書かれています。条件を決めていなかったのではなく、いつどこに書くかを決めていなかった型です。
8つがどれも「決めていなかった場所」で分かれているということは、自社の企画を発売前にこの8つと照らし合わせられるということでもあります。出す数は決めたか、条件をどこに書くかは決めたか、誰と組むかの根拠は書いたか。照らし合わせれば、まだ決めていない場所が先に見えます。
同じキャラクターコラボでも、売る形が商品なのか店舗なのかで、決め損ねる場所が変わります。商品とのコラボは需要と売り方に集中し(需要を読まず先着で売った型が8件)、店舗とのコラボは当日の受け入れ方に集中します(現場が回らない型が5件)。
商品側の例を挙げます。コンビニ大手があるキャラクターのグッズを出した件では、発売リリースに購入個数の制限がありませんでした。全国およそ3,000店で、売り切れ次第終了という告知です。発売当日、店頭に行った利用者が、先に来た人の取り置きで店頭販売はないと言われたという報告が専門メディアに載りました。批判の向かった先は転売業者ではなく、店頭の販売体制です。
店舗側は性質が違います。コラボカフェを運営する会社が、ノンアルコールとして出した飲み物にアルコールを入れて提供していた件では、公式が認めたのは40度のリキュールを30ccずつ、32杯提供したという事実でした。
別のカフェ運営事務局は、事前の案内と違う内容のものを出して一部が品切れになったことを詫びる告知で、「店舗運営上の問題にとどまらず、問題を事前に把握できなかった管理体制にも課題があった」と書いています。現場のミスで済ませず、把握できなかった側に踏み込んだ書き方です。
期間限定のコラボカフェには、通常営業では効く平準化が効きません。期間が決まっていて、特典目当ての人が初日に集中するからです。初日の受け入れ数をどこまで落とすか、注文の導線を紙で持つかどうかは、開ける前にしか決められません。商品なら追加生産や受注販売へ逃げられますが、店舗の当日はやり直しがきかないところです。
自社が出すのが商品なのか店舗なのかで、先に潰しておく型が変わります。
参考:キャラクターグッズの発売リリース / カフェ運営事務局の謝罪
8つの型を「決め損ねた場所が企画の内側か外側か」でまとめ直すと、3つのグループになります。
分類としては、ここまでなら8つの型で足りています。この3つの束ね方に意味が出るのは、炎上した36件それぞれの「その後」を1件ずつ追ったときです。追ってみると、荒れたあとに仕組みを変えて続けられたかどうかが、グループごとにはっきり違っていました。
| グループ | 含まれる型 | 件数 | うち仕組みを変えて続いた件数 |
|---|---|---|---|
| 売り方まわりの炎上 | 先着・約束違い・条件の後出し・現場・内部の不正 | 20件 | 15件 |
| 表現と相手の炎上 | 敬意を欠いた表現・組む相手そのもの | 12件 | 4件 |
| 特典で買わせる設計の炎上 | 特典で買わせる設計 | 3件 | 0件 |
同じ「炎上」という言葉でくくられていても、終わり方が同じではありません。
自社の企画が3つのどれに当たるのかは、荒れてからではなく、企画を立てる段階で決まります。ここから先は、その差がどこで生まれたのかを追っていきます。まず、実際に何が起きたのかを4件で見ます。
実際に起きたことを1件ずつ追うと、炎上は一度に起きるのではなく、決め損ねた場所から批判が出て、そのあと引き返す場所を探す、という順番で動いています。引き返せるかどうかは、決め損ねた場所がどこだったかで決まります。

ここで取り上げるのは、当事者の告知が2本以上残っていて、いつ何が起きて何を出したかを時系列で追える4件です。報道の要約しか残っていない事例は選んでいません。経緯が書けないからです。
法務省は2026年8月5日、更生保護の広報として、ある配信番組とのタイアップを告知しました。更生保護の理念と番組の内容が通じるという理由です。ところが16日後の8月21日、このタイアップを取りやめています。
中止の告知には、寄せられた声が2つに整理して書かれていました。ひとつは犯罪被害者側の受け止めで、告知の言葉では「不快感や割り切れない思いを抱かれるのではないか」という懸念です。もうひとつは、更生保護に協力してきた民間ボランティアからの心配の声でした。当初の意図を全うできないという判断で、企画そのものを取りやめています。
この件がたどれるのは、開始の告知が削除されずに残っているからです。今回追いかけた37件では、荒れたあとに開始側の告知が消えている例が少なくありません。始めたときに何と言っていたのかが消えると、外からは中止の一報しか読めなくなります。
この件は開始と中止の両方が同じサイトに並んでいるので、16日のあいだに判断がどう変わったのかを、当事者の言葉のまま読めます。官公庁なので実名で書けますが、同じ構図は民間でも起きています。
注目したいのは、理念の一致で相手を選んだ企画が、別の当事者の受け止めで止まったことです。更生保護は、罪を犯した人の立ち直りを支える取り組みで、被害者に向き合う仕事でもあります。理念が通じているという判断そのものは、書かれた範囲で読むかぎり番組の内容に沿ったものでした。それでも、その理念の当事者である被害者側から、割り切れないという声が上がっています。
ここで打てる手が見当たりません。番組の側にも商品にも表現にも、後から直せる場所がなかったからです。売り方の炎上なら、売り方を変えて再開するという道が残ります。組む相手の選定でつまずくと、企画そのものを取りやめる以外の道が細くなります。
参考:更生保護タイアップの取りやめ - 法務省 / タイアップの開始告知 - 法務省
健康機器メーカー系のカフェが、ある音楽原作作品と組んだ企画で起きた件です。缶バッジは全16種あり、うち4種がシークレットでした。ランダムで配られる特典を、店舗の側が扱っていたことになります。
2019年2月8日、運営会社は社内調査の結果として「不正行為は認められず」と発表しました。疑いが向けられた期間は2月1日から8日までで、調査を始めたのは2月5日です。ところが6日後の2月14日、同じ会社が従業員による不正な購入を認めて謝罪しています。そこに書かれた言葉が「弊社の管理体制の甘さ」でした。打った手は、対象店舗でのスタッフの購入を全面的に禁止することです。
なぜ6日で覆ったのかは、告知には書かれていません。読めるのは、第1報と第2報の日付と結論だけです。ただ、この型がどう動いたかは並べられます。
16種のうち4種だけがシークレットという配り方は、その4種に二次流通の値が付きうるということでもあります。ランダムで配る特典を店舗側が扱えば、どの箱にどの絵柄が入っているかを知りうる立場の人が社内に生まれます。そこから流出が起きれば、買った人の側から見て、企画そのものが疑わしく映ります。
この6日間のあいだも企画は動いていました。第2報より前の2月9日に、販売方法は変わっています。
調査の結論が出る前に手は打っていたのに、対外的には「不正は無かった」と言い切った状態が残っていたことになります。第1報は結論ではありません。調べ切る前に否定してしまうと、覆したときに失うものが増えます。前言を覆した記録が、否定した側も認めた側も両方とも公式に残っているのは珍しい例です。
第1報を出す前に、どこまで調べ切ったのか。
参考:社内調査結果の第1報 / 不正を認めた第2報
カラオケ運営会社が、あるコラボ企画で起こした件です。事案が起きたのは2021年11月7日で、対象は2組3品でした。
11月9日の第一報では謝罪だけで原因を示していません。8日後の11月17日、社内調査の結果が出ます。「版権元様への事前のご了承なく」正規と異なる商品を提供していたこと、しかも今回だけでなく過去にも上長の判断で同じことをしていたことを、会社自身が認めました。そのうえで打った手が、代替品を出すという慣行そのものの廃止です。告知には「品切れ対応とすることを全店舗で統一」と書かれています。
1店舗の逸脱として処理せず、現場に裁量が残っていたことのほうを問題として扱った形です。動いた順番は、欠品したときの扱いを決めていなかったところから始まります。決まっていないので、現場は良かれと思って近いものを出します。その商品は版権元の了承を受けていません。
対象が2組3品だったことは、規模の小ささを示すと同時に、この件の性質も示しています。3品の代替提供が、全店の運用を変えるところまで行きました。会社が調べた結果として書かれているのは、今回が初めてではなかったということです。つまり、これまでは表に出ていなかっただけで、同じ判断が現場で繰り返されていました。
ここが自社商品との違いです。自社の商品なら、品切れのときに近いものを出す判断は現場で完結します。借りているものは、あいだに版権元の了承という第三者の手続きが挟まるので、現場が親切心で動いた瞬間に約束が破れます。欠品したときに誰が何を決めてよいのかを、コラボでは事前に決めておく必要があるのはそのためです。
参考:カラオケ運営の第一報 / 社内調査結果の続報
売り方の側は、構造ごと作り直した企業が実際にあります。ただし、その企業が書いている変更理由は、炎上でも転売でもありません。
牛丼チェーンがある人気ゲームのフィギュアを付けた企画です。前年の2024年8月、1日の販売数量に達して買えなかった人に向けたお詫びを出しています。これは荒れたという話ではなく、買えなかった人に向き合った報告です。
翌2025年1月22日、同じ企業が売り方を作り替えました。先着で現物を渡す構造をやめ、期間内に条件を満たした人全員が、種類を選んで後日受け取る引換方式に変えています。450円ごとに1ポイント、2ポイントで1つ、全7種です。公式サイトのQ&Aには「数量限定のフィギュアはありますか?」という問いが立てられ、答えとして「ありません。」と書かれています。特典の希少性そのものを設計から外したということです。
そのうえで注意しておきたいのが、変更理由の書き方です。同じ日に出た変更の告知に書かれているのは「確実にフィギュアをお届けするため」であって、転売対策とも炎上対策とも書かれていません。あくまで欠品への手当てとして売り方の構造を変え、結果として奪い合いそのものが起きにくくなっています。
段取りも具体的です。ポイントを貯める期間は2025年1月28日から2月17日まで、交換の申し込み期限が2月24日、発送は同年7月上旬の予定と告知されています。発売日に店頭へ並ぶ理由がどこにもありません。並ぶ必要が無ければ、開店前の行列も、その場で売り切れて買えない人も出ないという順序です。前年のお詫びも取り下げられずに残っているので、何を受けて何を変えたのかを2年ぶんまたいで読めます。
先着で現物を渡す設計と、期間内に条件を満たした全員が選んで後日受け取る設計。この2つを分けているのは、特典に希少性を持たせるかどうかです。「お一人様1点まで」の一行は、希少性を残したまま当日の店頭を回す道具でしかありません。売り切れた後に何へ切り替えるかは、発売前にしか決められないほうの話です。
参考:引換方式の特設ページ / 引換方式への変更告知
やり直せるかどうかは、批判の量ではなく、どこで決め損ねたかで決まります。売り方でつまずいた炎上は売り方を変えて再開できますが、組む相手や表現でもめた炎上は、商品を直しても批判の材料が消えないため戻れません。

同じように荒れても、その後の道は同じではありません。差がどこにあるのかを、グループごとに見ていきます。
どの炎上も同じように終わるのであれば、続いた割合もグループごとに揃うはずです。実際には揃いませんでした。敬意を欠いた表現と、組む相手そのもの。この2つの型を合わせた12件で、荒れたあとに仕組みを変えて続いたのは4件です。中止や撤退が3件、変えていないのが5件でした。
続いた4件が直したのは、企画の中ではありませんでした。ポスターの掲示場所を移す、イラストを変えて掲出し直す、許諾の段階の審査項目に人権関連を加える、社内のチェック体制を強化する。商品や売り方ではなく、決め方や置き場所のほうを直しています。
12件のうち組む相手そのものが批判された7件に絞ると、別のことが見えます。
この7件で、借りた側が自社の告知を出したのは2件だけでした。取りやめを告知した官公庁(法務省)と、貸した側の公表から2日後に個別の謝罪を出した雑貨チェーンです。残る5件は0件で、高級ブランドと人気漫画のコラボは釈明も販売中止も確認できず、牛丼チェーンと格闘漫画のコラボで残ったのは取材へのコメントだけでした。
仕組みを変えていない5件も、記録の残り方からして続いた4件と違います。当事者の告知は0件で取材へのコメントだけ、投稿を削除せずメール回答だけで謝罪、釈明も仕様変更も探したが見つからず、謝罪は出したが改善策は非公表。何をしたのかが外から確かめられません。
この差は、原因の置かれた場所で説明がつきます。売り方は自社の設計なので、直せば消えます。組んだ相手の言動や、その相手が過去に表明した立場は、商品を直しても消えません。ただし続かなかった8件について、直せなかったとまでは書けません。できなかったのか、やらないと決めたのかは、当事者しか知らないからです。それでも、相手選びを売り方より前に決める材料にはなります。
売り方・約束違い・条件の後出し・現場・内部の不正。この5つの型を合わせると20件になり、そのうち15件が、仕組みを直したうえでコラボ自体は続けました。中止や撤退に至ったのは3件、変えていないのが1件、告知が読めず判断できないものが1件です。

打った手には共通の形があります。受注生産への切り替え、公式アプリの購入券方式、1会計あたりの上限とチャネルの制限。条件の側では、条件そのものの撤回と、到達済みの人への個別の案内です。現場の側では、提供方式と人員と慣行を直しています。先ほどのカラオケ運営の「品切れ対応とすることを全店舗で統一」がその形です。フリマ事業者と組んで特定期間の出品を禁止した例もありました。
直した中身が当事者の告知に残っているのは、この側の特徴です。報道の要約ではなく、その会社が何を変えたと書いたかが逐語で読めます。切り替え先も一様ではありません。受注生産のように出す数のほうを動かした企業、購入券や引換のように渡す順番のほうを動かした企業、代替提供の廃止のように現場の裁量を閉じた企業に分かれています。どれも、荒れた場所とそろえて手を入れているのが共通点です。
結果が見える形で残っている件もあります。第2弾の店頭を確かめた記者は、2回目は午後3時でも問題なく購入できたと報告しました。ただし、この1件をもって対策が効いたとまでは書けません。変えたあとを全件で追ってはいないからです。
原因が自社の設計の中にあれば、自社の判断だけで直せます。荒れた場所と直す場所が同じところにあるので、何を変えれば批判が止まるのかが自分たちで分かります。売り方の失敗には、あとから引き返す道がありました。
対策の時間をどちらに先に振るかは、企画の前段で決まります。
特典で買わせる設計の3件では、仕組みを変えた記録が確認できませんでした。1件は顧客への注意喚起だけで、残る2件は公式の告知に痕跡がありません。変えなかった理由は、どの告知にも書かれていません。
ただ、この型には板挟みがあります。スイーツビュッフェのある人気ゲームとのコラボでは、等身キャラクターのコースターが16種、ちびキャラクターが17種ありました。メニュー1品ごとにランダムで配られ、しかも受け取るには別途バイキング料金がかかります。集めきろうとするほど、食べきれない量の注文が積み上がる仕組みです。
ところが特典を減らすと、商品の魅力まで落ちます。絵柄そのものが商品だからです。
そして特典は、配り始めたあとでは動かせません。絵柄と種類を先に決めて店頭に出した時点で、途中の変更は「買った人と買っていない人で条件が違う」という別の問題になります。残るのは顧客への注意喚起だけです。
3件とも仕組みは変えず注意喚起で対応したのは、そういう位置に追い込まれた状態だと読めます。
先に打てる手は、発売前にはあります。ここからは当事者の告知に書かれていたことではなく、板挟みの構造から考えられる選択肢です。種類を絞るのではなく選べる方式を併設する、全種セットを用意する、1回の注文数に上限を先に決めておく。どれも企画段階なら選べて、開けてしまってからでは動かしにくいものばかりです。
37件のうち、仕組みには手をつけず、顧客への注意喚起や謝罪だけで終えたのが6件でした。何もしていないのが4件、判断できないものが1件です。少なくとも26件は、何らかの形で仕組みのほうを変えています。
注意喚起で終えた側に何が起きたか、追える形で残っているのが先ほどのスイーツビュッフェの件です。運営側は公式アカウントで、食べきれない量での注文を控えてほしいと呼びかけました。そこには「特典をご返却いただく場合がございます」という一文が入っています。
ところが批判は、この告知の文面には向かいませんでした。
向かったのは、顧客に警告するだけで仕組みを変えないという姿勢のほうです。ゲーム系メディアは、食べ残しが生まれやすい商業的な構造そのものに問題があると書いています。記者の見方であって確かめた事実ではありませんが、批判の向き先は言い当てています。呼びかけで終えたのは6件で、そのうち矛先が企業へ向き直った記録があるのは2件です。
それでも、当事者が自社を名指しした言葉のほうは複数残っています。「当社の対応が不十分であった」「弊社の管理体制の甘さ」。いずれも、顧客ではなく自分たちの設計を問題として書いたものです。
注意喚起を対策の欄に書いて締めてしまうと、仕組みは元のまま残ります。
参考:コラボカフェの注意喚起 / 大手外食チェーンの謝罪
キャラクターコラボの炎上は、あとから直しにくいことほど企画の前半で決まります。だから決める順番は、直しにくい側から先です。相手をどう選ぶかを最初に置き、売り方をその後に回します。

売り方の話から入らないのは、そちらがあとから直せる側だからです。
組む相手そのものが批判された7件は、商品にも表現にも問題がありませんでした。批判の材料は、契約する前からその企業や個人の側にあったものです。つまり、選ぶ段階でしか手が打てません。相手選びでもめた12件で、その後も続いたのが4件にとどまっているのは、この打ちどころの少なさから来ています。
ではどう選ぶか。他社の判断を参考にしようとすると、そこで止まります。なぜその相手を選び、なぜ後から手を引いたのかは、当事者の告知には書かれていないからです。ライセンス管理会社が単独で出した謝罪声明がその形で、組んだ相手企業の社名が一度も出てきません。何が起きたかは書いてあるのに、誰とのあいだで何を判断したのかは書かれていないのです。

そのうえ、告知は残るとも限りません。今回追いかけた当事者の一次情報43本のうち、いま開けるのは17本です。
だとすると、判断の材料は自前で用意するしかありません。相手のこれまでの発信、過去に立場を表明した論点、取引先や親会社の状況。契約の前に一度見る、というだけの手順です。IPにどれだけ人気があるかは、荒れるかどうかも直せるかどうかも教えてくれませんでした。企画書のリスク欄より前に、相手を選んだ根拠を書く欄を作るほうが効きます。
荒れたときに誰が表に立つかは、3つに分かれていました。借りた側が出す、貸した側が出す、どちらも出さない。事前に決まっていた形跡は、どの件にもありません。
貸した側だけが出た例が2件あります。1件目は、ライセンス管理会社が単独で謝罪し、許諾の段階の審査項目に「人権関連についても厳しく審査」を加えた件です。2件目は、IPを保有する会社が単独で謝罪し、販売していた側の名義では謝罪も回収も返金の告知も0件でした。借りた側の名前は、どちらの告知にも出てきません。
順番に出た例もありました。貸した側がまず公表し、2日後に借りた側が個別に謝罪し、その翌日に社長名の謝罪を掲げた件です。ただしこの件では、報道の取材は同じ日に辞退しています。
どちらも出さなかった例もあります。海外の高級ブランドと人気漫画のコラボでは、釈明も仕様変更も販売中止も、当事者の告知としては見つかりませんでした。牛丼チェーンと格闘漫画のコラボでは、当事者の告知は0件で、取材への「これ以上のコメントは控えさせていただきます」というコメントだけが残っています。批判は残り、説明は残りませんでした。
単独の企業の不祥事なら、説明する主体は1つしかありません。コラボには借りる側と貸す側がいて、説明の役割が契約の相手と自分のあいだで宙に浮きます。契約書に足せるのはここです。荒れたときに、どちらの名義で、どこに、いつまでに出すか。
決めていなければ、荒れている最中に相手と交渉することになります。
購入制限は、当日の店頭を回す道具です。売り切れた後の手当てではありません。制限を書いた企業も、書かなかった企業も、発売後にあらためて動いています。
書かなかった側が、先ほどのコンビニ大手の件です。全国およそ3,000店で同時に出す規模に、借りたIPのファンが開店前から並ぶ需要が重なりました。書いた側も同じで、上限の数字だけでは売り切れた後の批判は止まっていません。一行の購入制限と、売り切れた後の切り替え先は、当日を回すか、その後を決めるかという違いがあります。
切り替え先の選択肢は、実際に取られたものが並んでいます。受注生産、抽選、会員限定、売る場所の限定、公式アプリの購入券方式、フリマ事業者との連携、そして先ほどの牛丼チェーンのような引換方式です。「お一人様1点まで」の一行は残してかまいません。足りないのは、その後を書いた一行のほうです。
発売前に決めておくのは3つです。売り切れたら何に切り替えるか、それを誰が決めるか、いつまでに決めるか。
参考:購入券方式への変更
謝罪は起点であって、終点ではありませんでした。今回の37件では、対応が2段階に分かれた例が複数あります。
健康機器メーカー系の件では、第1報が「不正行為は認められず」でした。6日後の第2報で不正を認め、「弊社の管理体制の甘さ」と書いて謝罪しています。カラオケ運営の件でも、第一報では原因を示せず、8日後の続報でようやく慣行の廃止に踏み込みました。どちらも、第1報のあとに社内調査があり、第2報で認定と仕組みの変更が出るという運びです。
第1報で言えることが少ないのは仕方がないところです。ただ、第1報だけで終わった企業と、第2報まで出した企業では、その後の残り方が違います。何を変えたかまで書いた企業は、いま読んでも何が起きて何を直したのかが分かります。謝罪だけで改善策が非公表のものは、外からは何も分かりません。
進め方としては、調査の途中経過を出すなら、否定で終わらせずに再調査の余地を残した書き方にすることです。第1報で断定して第2報で覆すと、覆したこと自体が新しい話になります。第1報のひな形に「何を変えるか」の欄を足しておくだけでも、書き方は変わります。
最後に、8つの型のどれにも入らなかった1件を置いておきます。飲料ブランドがあるアニメ作品と組んだキャンペーンで、購入した側の使い方が問題になった件です。
報道2媒体とも、企業の落ち度を指摘していません。買った人がどう使うかまでは、運営の側で決められないからです。
企業が特設サイトに掲げたのも謝罪ではなく、遺憾の意を示す文面だったと報じられています。
ただしその特設サイトは現在たどれないので、文面そのものは報道でしか確かめられていません。キャンペーンは予定どおり最後まで走りました。炎上した36件のうち、これが唯一、購入した側に原因があると説明がついた件です。裏を返せば、残る35件では企業の側の設計が問われていました。
9つ目の型にはしません。1件だからです。
この記事が言えるのは、確かめた37件の範囲までです。荒れる割合は分母を作っていないので出せず、どの型が起きやすいかも書けません。件数の多い型は、動画や記事になりやすい型でもあるからです。変えたあとも追いかけていないので、変えたから収まったとも言えません。言えるのは、仕組みを変えた側には、その後もコラボを続けている例が複数あるということまでです。変えていない側がその後どうなったかは追っていないので、続いているとも続いていないとも書けません。
少なくとも26件が、何らかの形で仕組みを変えていました。
37件を1件ずつ追って見えたのは、炎上という言葉でひとまとめにされているものの中に、性質の違う2つが混ざっていることでした。
分かれ目は、原因が企画の内側にあるか外側にあるかでした。
売り方は自社の設計なので自社の判断だけで直せますが、組んだ相手のこれまでの言動は、商品を直しても消えません。だとすれば、企画書に書く順番が変わります。売り切れたら何に切り替えるか、誰が決めるか、いつまでに決めるか。この3つを先に書いておけば、当日の判断で迷いません。そしてその3つより手前に置くのが、誰と組むかという一行です。
IPにどれだけ人気があるかは、この問いの答えにはなりませんでした。
他社IPを借りる進め方の全体像はコラボ戦略と活用事例で、キャラクターが会社の外から来ることの意味はクリエイター発IPの位置づけで扱っています。
NOKID(ノーキッド)は、キャラクターの企画・開発からショートアニメの制作まで、IPを自社の資産として育てる工程を一貫して手がけています。他社IPを借りる企画でも、自社キャラクターを立ち上げる企画でも、契約前に決めておくことと発売前に決めておくことを整理するところからご相談いただけます。お気軽にご相談ください。

NOKID編集部
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。