周年記念イベント動画の作り方は何が違う?キャラの魅せ方より重要なこと
- 公開日
- 最終更新日
- 編集
- NOKID編集部
周年記念の動画を任されると、作り始める前から決まっていることがいくつもあります。登場させたいキャラクターには、それぞれにファンがついています。流す枠をすでに押さえてあるなら、動画の長さ(尺)も公開日も、もう動かせません。
そのなかで、まず気になるのは出来栄えではないでしょうか。「どのキャラクターもかわいく動いていれば、ファンに何か言われることはないはず」。そう考えて参考になる動画を集め、制作会社に「この仕上がりで」と伝えるつもりでいるかもしれません。
公開のあとで「うちの子だけ扱いが雑」と言われないためにも、仕上がりを上げておけば安心だと考えるのは自然なことです。
当社が周年グッズの発売を記念したアニメーションを制作したときも、登場するキャラクターそれぞれにファンがいて、流す枠も公開日も先に決まっていました。屋外広告で広く流れ、それぞれのファンの目に触れる動画だったので、当社は品質を最優先にしました。この記事は、そのとき当社の監督とプロデューサーが下した判断をもとに書いています。
ところが、その品質のなかで当社が最重要にしたのは、1人ずつをうまく描くことではありませんでした。
周年の動画で怖いのは、下手に見えることではなく、誰か1人だけ扱いが軽く見えることでした。当社はそうならないよう、キャラクター全員の映る時間と画面の大きさをそろえる側を選びました。人気や貢献度に合わせて差をつける選択もあり、どちらにするかは案件ごとに決めるものです。1人だけ扱いが軽く見えるのは、どこから起きるのか。まず、キャラクターが出る周年の動画は普通の動画と何が違うのかから見ていきます。
この記事のポイント
- 周年のキャラクター動画は、見る人がキャラクターごとに分かれ、尺と公開日が制作より先に決まっている点で、普通の動画と条件が違います
- 当社が品質のなかで最重要にしたのは、特定のキャラクターだけ動きが少ないという差を出さないことでした
- そろえるか差をつけるかは案件ごとに決め、差をつけるならその理由をファンに説明できる形にしてから発注に臨めます
キャラが出る周年動画の作り方は、普通の動画と何が違う?
キャラクターが出る周年の動画が普通の動画といちばん違うのは、見る人がキャラクターごとに分かれていることです。あわせて、動画が周年企画の一部として頼まれることや、流す枠の都合で公開日が先に決まっていることもあります。どれも、作り始める前の前提を変えます。

3つとも、当社の案件では作り始める前から決まっていました。ここから1つずつ見ていきます。
ファンは、自分のキャラがどう映るかを見ている
当社が作った周年グッズの記念アニメーションでは、登場するキャラクターの一人ひとりにファンがいました。そのため、キャラクターの見え方・公平性・決まりごとへの配慮が欠かせませんでした。
会社の歴史や社員を紹介する周年動画なら、見る人は会社そのものを見ます。キャラクターが出る周年の動画では、見る人がキャラクターの数だけ分かれ、それぞれが自分の好きなキャラクターの映り方を見ます。だから、誰に見せるかを1つに決めるより、どのキャラクターのファンが何を見るかを考えることになります。
キャラクターが1体の周年でも、同じ考え方が要ります。流す本数や媒体が複数あれば、同じキャラクターでも、どの動画で見たかによって見え方に差が出るからです。当社の案件でも、防ごうとした差には、キャラクター同士の差のほかに、映像ごとの品質の差が入っていました。
展示会などで流すものも含めた、イベント動画全般の種類と使い道は、イベント動画の活用方法と制作のコツで解説しています。
公開日が動かせないと、遅れは仕上がりに出る
当社の案件は、YouTubeと屋外広告で流すことが最初から決まっていて、屋外広告は放映枠が固定されているため、納期を守ることを最重要の条件にしていました。公開日が動かなかったのは、周年だからというより、この放映枠が決まっていたからです。周年の日付に合わせて流す枠を先に押さえる案件なら、同じ条件になります。

公開日が動かないと、どこかで遅れが出たときに、後ろへずらして吸収する先がありません。削られるのは制作の時間です。放映枠が固定された媒体では、誰の側で遅れが起きても、削られた時間は最終的な見え方に響きます。当社が確認の期限を細かく管理したのは、そのためです。
流す枠が先に決まった周年の動画では、気になるところを何度も確認して直す、という進め方が最初から取れません。
登場キャラと本数は、動画を頼む前に決まることがある
当社に相談をくださったのは発注元のグッズ部門で、依頼は周年グッズの発売を記念したアニメーションでした。5名ずつ8つの属性(グッズ企画の側で決めたグループ分け)に分ける登場の組み方は、もとのグッズ企画の構成に合わせたもので、1本15秒という長さは流す広告枠に合わせたものです。当社が決めたのは、その条件の中で全員をどうそろえ、どう見せるかで、組み合わせや本数を設計したわけではありません。
周年の動画は、このようにグッズのような周年企画の一部として頼まれることがあります。その場合、登場の組み方や流す枠は動画の外で先に決まっていて、動画はその条件を受け取って作ることになります。
見る人がキャラクターごとに分かれていること、流す枠で公開日が動かせないこと、登場の組み方が動画の外で決まること。自分の案件でもこの3つを先に書き出しておけば、制作会社との最初の打ち合わせで何を決めればいいかが見えてきます。
3つ目の登場の組み方には、キャラクター1人ずつに使える時間も含まれています。当社の案件では、その時間は、制作の打ち合わせを始める前に、企画の数字でほぼ決まっていました。
キャラの出番と尺は、周年動画の企画・構成で先に決まる
キャラクターが出る周年の動画の尺と出番は、登場の組み方・本数・1本の長さを決めた企画の段階で、ほぼ決まります。どの組み方を選ぶかは、誰がどれだけ映るかを選ぶことでもあります。

左の3つを企画で決めた時点で、右の持ち時間と、誰が映るかがほぼ決まります。
キャラ1人あたりの尺の目安は、企画の割り算で出せる
発注元の企画を受け取った時点で、当社の案件は1本15秒の動画が8本で、1本に5名、全部で40名のキャラクターが登場する構成でした。プロデューサーによれば、1人あたりの持ち時間は約2秒でした。15秒を5名で割ると3秒なので、実際の持ち時間は割り算の数字より短かったことになります。

実際の持ち時間が割り算より短くなることはあっても、おおよその目安は、本数・1本の長さ・登場の組み方という企画の数字を割れば、制作を頼む前に出せます。
尺を広げたいときに動かせるのは、制作会社の工夫より先に、本数・1本の長さ・登場の組み方という企画の数字のほうです。
他社のキャラの周年動画は、どんな構成だった?
当社の案件は組み方が発注元の企画で決まっていましたが、組み方から自分たちで考える周年企画もあります。その場合にどんな組み方があるのかを知るために、公開された周年のキャラクター映像について、告知や報道の文章に書かれている構成を読みました。
報道によれば、スーパー戦隊50周年のカウントダウンPVは、50から1へ数え下ろしながら歴代のヒーローたちを次々に映す構成でした。ペルソナ30周年の記念ムービーは歴代主人公の描き下ろしイラストを1作品の曲にのせたものだとファミ通が、名探偵コナン30周年の記念ムービーは主人公が小さくなる場面から名場面をたどるものだとアニメハックが報じています。GAME Watchによれば、ハローキティ50周年の記念動画は、主役が自分の誕生日を忘れているコメディです。
作り手の側からは、サイバーフォーミュラ35周年の記念PVが名シーンを振り返り、最後に新作の予告を置くと告知されています。あんさんぶるスターズ!!の8周年記念ムービーは、運営会社Happy Elementsのデザイナーによれば、8年間を振り返る動画です。
| 組み方 | 公開された例 |
|---|---|
| 歴代を順に並べる | スーパー戦隊50周年のカウントダウンPV/ペルソナ30周年記念ムービー |
| 過去の名場面や映像でたどる | 名探偵コナン30周年の記念ムービー/サイバーフォーミュラ35周年の記念PV/あんさんぶるスターズ!!8周年記念ムービー |
| 物語仕立てにする | ハローキティ50周年の記念動画 |
表の分け方は、当社が公開された文章から立てたものです。検索で見つかった例を並べただけなので、どの組み方が何割かまでは言えません。それでも並べてみると、組み方は何を振り返るかの選択であると同時に、誰を映して誰を映さないか、誰に何秒使うかの選択にもなっています。
流す場所が複数なら、1本だけ見ても分かる形にする
当社の案件では、8本を、1本だけで流しても続けて流しても成り立つように組みました。外部で作った音楽を8本で共通して使い、キャラクター同士のつながりを意識してカットを組んだのも、8本全体の統一感を出すための工夫です。映像は横型を基本にして、縦型のサイネージ(電子看板)など流す場所の画面の大きさに合わせてリサイズしました。本編は同じまま、サイネージごとに尺や続けて流す本数を変えています。
当社の案件から考えると、流す場所によって本数や順番が変わるなら、どの1本も単独で見られる前提で作る必要があります。1本の中で完結していないと、その1本だけを見た人には、そこに出るキャラクターが中途半端に見えるおそれがあるからです。
サイネージで流す広告の特徴や、始める前に知っておきたいことは、デジタルサイネージ広告の効果と注意点で紹介しています。
代表のキャラだけ出すと、選ばれない1人が出る
ガンダムシリーズ50周年に向けたプロローグ映像では、最後に歴代の主人公がさかのぼって登場します。マグミクスの記者によれば、SDガンダムやガンプラを題材にしたビルドシリーズ、OVAの主人公は、その並びに入っていませんでした。
機動戦艦ナデシコ30周年のPVは、乗組員を次々に見せる構成です。そのなかで、報道が新しく録った声として名前を挙げたのは、オペレーターのホシノ・ルリでした。ガンダムは代表を選ぶ組み方、ナデシコは全員を並べたうえで特定のキャラクターに見せ場を足す組み方の例です。
どちらの組み方をしても、選ばれた人と選ばれなかった人の境目が画面に出ます。境目が見えれば、外れたキャラクターのファンは、なぜ外れたのかが気になります。ところがガンダムの映像では、公式の告知に、主人公をどう選んだかは書かれていませんでした。
1人あたりの持ち時間も、誰を並べて誰を外すかも、制作が始まる前の企画書の段階で決まります。この段階で決まるのは尺と出番の差までで、動きやキャラクターらしさの差は、この先の描き方と確認で出ます。尺と出番の差を動かせるのは、制作会社への注文ではなく、企画の数字を持っている発注側です。
では、並びの外に置かれた1人を、ファンはどう受け取るのでしょうか。当社が探した範囲で、それを記者が文章に残していた周年映像は1件だけで、不満が向いた先は作画ではありませんでした。
参考:「ガンダム50周年映像」に一部ファンが困惑? ←それを覆すレベルの「細かいこだわり」とは - マグミクス
当社が周年動画で最重要にしたのは、キャラの扱いに差を出さないこと
周年の動画で当社が品質の中で最重要にしたのは、特定のキャラクターだけ動きが少ないという差を防ぐことで、発注元からも同じ要望が出ていました。公開された他社の周年映像の1件でも、記者が多く見かけた不満は、並びの中の1人の不在に向いていました。

左は1人ずつの仕上がり、右はキャラクター同士の差です。当社が先に見たのは右でした。
品質で先に見るのは、出来栄えよりキャラ同士の差
当社のプロデューサーに、企画・予算・スケジュール・品質の優先順位を聞いたとき、並んだ順番は品質、スケジュール、予算と企画(同列)でした。屋外広告で広く流れ、登場するキャラクターそれぞれのファンが見る動画だったからです。ただ、並行して作る8本の管理で、プロデューサーがまず挙げたのは、スケジュールとクリエイターの進行管理でした。
そのうえで品質の面で最重要だったのは、1人ずつの出来栄えを上げることではありませんでした。聞き取りの記録では、管理項目の1つとして「映像ごとの品質差や、特定キャラクターだけ動きが少ないといった不公平感を防ぐこと」が挙がっています。誰かの動きが少なすぎて不公平にならないように、という要望は発注元からも出ていて、プロデューサーは「そこが最重要ですね」と振り返っています。
全員の映る時間と画面の大きさはそろえ、特定のキャラクターだけ動きが少なくならないようにしました。全員を同じ基準・同じ品質で見せることが、品質の面での目標でした。1人ずつの出来栄えを見ているだけでは、この目標が守れているかは確かめられません。1人ずつはよく描けていても、1人だけ動きが少ない、映る時間が短いといった差は、並べて比べないと見えないからです。
品質を下げたわけではありません。当社にとっての品質の中身が、キャラクターの間に差がないことだったのです。
ガンダム50周年映像、不満はどこに向いた?
2026年5月15日、ガンダムシリーズ50周年(2029年)に向けたプロジェクトの始まりとして、プロローグ映像『少年とガンダム』が公開されました。ガンダム公式サイトは、テレビシリーズから受け継がれてきた時間と、それぞれの記憶や想いが重なるイメージで制作したと告知しています。
記者の加々美利治氏によれば、映像は初代を見た少年が大人になり、子や孫とガンダムに触れ続ける流れで、最後に歴代の主人公がさかのぼって登場します。そのなかに、テレビシリーズ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主人公が入っていませんでした。同氏は、入っていなかった主人公について「多くの不満の声をSNSで見かけました」と書いています。
記者自身は、この不満を『SEED DESTINY』の主人公をめぐってファンの間で以前から意見が分かれていた議論が、映像をきっかけに再燃したものと見ています。同じ記事の2ページ目では、作品の登場順が歴史的におかしいと指摘する人もいたとも書いています。
公開当日の報道は、作画への評価も集まったと伝えています。出来栄えだけが問題なら、作画に不満が集まるはずです。実際には作画は喜ばれ、記者が多く見かけた不満は並びに1人いないことに向いていました。
記者の見立てに沿えば、並びから1人を外すと、そのキャラクターをめぐってファンが以前から持っていた思いまで表に出ることになります。ただ、当社が探した範囲で、周年映像へのファンの反応を記者や公式が文章に残していた例はこの1件だけでした。ほかの周年映像でも同じことが起きるとまでは言えません。
キャラに差をつけても、不満が出るとは限らない
加々美氏は、最後に登場した主人公がテレビシリーズと劇場版の作品に絞られたのだろうと推し量ったうえで、その選び方自体への不満はそれほどなかったようだとも書いています。公開当日の報道にも、この映像に感動したという反響が広がったとあります。
記者の見立てどおりなら、不満が出たのは選び方(絞ること)そのものではなく、選ばれなかった1人をめぐってでした。1件についての見立てなので、差をつければ不満が出ないとまでは言えません。それでも、差をつけること自体で不満が出るとは限らない、とは言えます。
だとすれば、差をつける選択を最初から外す必要はありません。気をつけるのは、誰を外すかのほうです。ガンダムの映像でも、記者が見た不満は、以前からファンの意見が分かれていた主人公が外れたところに集まっていました。
キャラ同士の差は、尺・大きさ・動き・らしさに出る
当社が全員でそろえたのは、映る時間、画面の大きさ、アップ(寄りの正面カット)、動きの量の4つでした。らしさは、そろえるのではなく各キャラクターに反映しました。
| 差が出るところ | 当社がしたこと |
|---|---|
| 映る時間(尺) | 全員の尺をそろえた |
| 画面の大きさ | 全員の画面上のサイズ感をそろえた |
| アップ(寄りの正面カット) | 全員に必ず入れた |
| 動きの量 | 特定のキャラクターだけ動きが少ない状態を防いだ |
| らしさ | 公式資料や配信から読んだ個性を反映し、ファンから見て違和感のない表現にした |

当社の見立てでは、この5つは決まる時点がそれぞれ違い、映る時間は企画で、画面の大きさとアップは絵コンテ(カットごとの構図や流れを描いた設計図)で、動きの量は描く段階で、らしさは渡される資料で決まります。決まる時点が違えば、相談の相手と時期も違います。映る時間は、自社の企画書で確かめます。画面の大きさとアップは絵コンテで、動きの量は描く段階の確認で、制作会社と確かめます。らしさは、資料を渡す前に自社で確かめます。
絵コンテの目的や書き方は、動画制作のための絵コンテとは?で詳しく解説しています。
確認のときに見るものを、出来栄えの感想から、キャラクターごとのこの5つの表に移しておけば、1人だけ扱いが軽く見える事態に、公開の前に気づけます。キャラクターが1体の周年でも、流す動画ごとに表を作れば、映像ごとの差を同じ見方で確かめられます。
ただ、尺も大きさも全員でそろえると、別の心配が出てきます。全員が同じに見えて、平凡な動画にならないか。当社の監督は、そろえた映る時間と画面の大きさには手を付けずに、1人ずつの魅力を別の手で残していました。
参考:「ガンダム50周年映像」に一部ファンが困惑? ←それを覆すレベルの「細かいこだわり」とは - マグミクス / 『少年とガンダム | 機動戦士ガンダム50周年 -Road to 50- プロローグムービー』公開! - ガンダム公式サイト / 『ガンダム』“50周年ムービー”にファン感涙 登場メカ&キャラに「細かすぎる」「作画やばい」 - マグミクス
キャラの扱いをそろえた、周年動画の見せ方(演出)
短い尺で全員の映る時間と画面の大きさをそろえると、1人ずつに見せ場を足す余地は小さくなります。当社は、キャラクター本体の動きに頼りきらず、画面の見せ方で動きと見分けを作り、そろえた時間と大きさの中で1人ずつの魅力を残しました。

上の帯が、全員でそろえた映る時間と画面の大きさです。3つの手は、どれもこの帯の内側で使いました。
そろえる側を選んだ当社の案件で、監督への聞き取りの記録(質問ごとに答えを整理したもの)から、1本15秒の中で監督が大事にしたことを並べると、次の6つになります。
- カットとカットをシームレスにつなぐこと(企画を初めて聞いた時点から重視)
- キャラクターと映像を見ただけで、属性が一目で分かること
- キャラクターの顔と個性、映える瞬間を優先すること
- 情報を詰め込みすぎず、エフェクトとカメラワークで印象をつくること
- キャラクター本体の動きだけに頼らないこと
- ポーズ・表情・カメラワーク・背景を監督1人で決めず、コンポジット(撮影・合成)の担当と、キャラクターが最も魅力的に見え、カット同士を自然につなげられるかを基準に相談すること
ここからは、全員の映る時間と画面の大きさをそろえたまま使えた手を3つ詳しく見ます。アップで見せる顔、カメラで出す動き、そして背景の描き方です。
尺をそろえても、アップで1人ずつの魅力は残せる
監督が決めたのは、全員にアップ(寄りの正面カット)を必ず入れることでした。顔や個性を見分けやすくするための演出で、各キャラクターの「一番映える顔」をメインに据えています。尺と画面の大きさは全員でそろえたうえで、アップと引きの画を組み合わせ、カメラの動きでも動いている感じを出しました。
そろえたのは、映る時間と画面の大きさという枠です。枠の中でどの顔を見せるかは、1人ずつ選べます。全員同じにしたら平凡になる、という心配は、この枠と中身をひとまとめにしたところから来ています。
短い尺なら、キャラ本体よりカメラで動きを出す
1人あたり約2秒の尺の中で、監督は、キャラクター本体の動きだけに頼らず、アップと引きの切り替え、カメラの動き、エフェクト、カットのつなぎで動きを感じさせました。無音で見ても伝わるように、エフェクトで8つの属性を一目で見分けられるようにもしています。属性が一目で分かることは、監督が企画を聞いた時点から重視していたことでした。
監督が特に見てほしい演出として挙げたのも、2Dのアニメーションでありながら、文字や図形を動かす映像(モーショングラフィック)のように、カット同士がシームレスにつながる部分でした。

当社の見立てでは、本体を大きく動かすには、キャラクター1人ずつに手をかける必要があり、その量の違いが差になりえます。周辺で動きを作れば、全員に同じ手を使えます。
背景を描き込まず、キャラに時間と予算を回す
背景は、当社から作り方を提案した部分です。最初は背景を描く案もありましたが、現実的な背景ではなく、白黒2分割のグラフィカルな背景を提案しました。理由は3つで、背景の情報量でキャラクターの魅力を邪魔しないこと、現実的な背景を描く時間と予算を抑えること、映像と映像のあいだを気持ちよくつなぐことです。白黒の背景とエフェクトを組み合わせて、画面の主役をキャラクターと属性にしました。
キャラクターの絵柄や動きも、グッズのビジュアルを損なわない範囲でどこまで簡略化できるかを初期の段階で検討し、制作中にも、監督が上がってきた素材を見ながら随時判断しました。描かない部分を先に決めると、キャラクターに時間を集められ、背景の手厚さの差も生まれにくいと当社は見ています。
アップで顔を残す、カメラで動きを出す、背景を描き込まない。当社がしたこの3つは、どれも全員の枠をそろえたままで使えた手です。制作会社とは、見せ場を足す相談ではなく、そろえた枠の中で魅力を出す相談ができます。
ここまでは、当社がそろえる側を選んだあとの話です。そろえるにしても差をつけるにしても、発注の前に決めておくことがあり、当社の案件では、確認してもらう範囲の取り決めと、受け取った資料の向きが、その後の進め方と描き方を左右しました。差をつける側を選ぶなら、そこにもう1つ、ファンに向けた理由の説明が加わります。
周年動画の発注前に、キャラをそろえるか差をつけるかを決める
発注の前に決めておくのは、そろえるか差をつけるかと、その差をファンに説明できるかです。当社はそろえることを選びました。どちらを選ぶ場合も、自社で確認する範囲と制作会社に渡す資料は、発注の前に決めておけます。

当社が選んだのは左です。右を選ぶ場合も、下の帯の2つは同じように決めておきます。
発注前に、確認の範囲をキャラの見え方に絞る
当社の案件で難しかった条件の1つは、登場する全員分の確認を、制作スケジュールの中に組み込まなければならないことでした。そこで制作の初期に、発注元に確認していただく範囲を、キャラクターの見え方・印象・決まりごとに限る取り決めをしました。
制作の工程、スケジュール、修正できる範囲も、あわせて最初に決めています。方向は、初回の打ち合わせの時点で当社から絵コンテを起こすことを提案し、絵コンテと、動きをつけた下書きの映像(Vコンテ)で固めました。
確認を絞るのは、手を抜くためではありません。限られた日程で、全員分の確認を通すための取り決めです。
映像制作を外注するときの全体の流れは、映像制作を外注する流れとポイントで解説しています。
渡すキャラ資料の向きで、描けるカットが決まる
受け取ったキャラクターデザイン資料は、正面からの絵だけでした。横や後ろの向きは、描く手がかりがありませんでした。監督は、不確かな向きを無理に使わず、確実な正面の資料を活かせるカット構成に変えています。個性は、公式資料やライブ配信から普段の好みや振る舞いを読み取り、ファンから見て違和感がない表現を各キャラクターに反映しました。
当社の見立てでは、資料に無い向きを描けばファンから見て違和感が出るおそれがあり、その違和感は、そのキャラクターだけ雑に扱われたと受け取られうるものです。

発注の前に、全キャラクターの資料が同じ向き・同じ枚数でそろっているかと、らしさの根拠になる公式資料や普段の発信を渡せるかを確かめておけます。
差をつけた周年企画は、理由をどう説明した?
マーベラスは、牧場物語シリーズの30周年とルーンファクトリーシリーズの20周年を記念して、両シリーズの歴代キャラクターの人気投票を行い、人気上位のキャラクターを新たに描き下ろすと告知しました。候補は両シリーズ合わせて総勢560名で、描き下ろしになるのは牧場物語から10名、ルーンファクトリーから5名です。
サイバーフォーミュラ35周年でも、周年グッズのぬいぐるみにするキャラクターを利用者の投票で決めると告知されています。セガのCHUNITHMは、10周年の企画にボイス争奪キャラクター人気投票と名付けていて、名前からは、声を付けるキャラクターを投票で取り合う形だと読めます。
周年企画ではありませんが、サンリオが毎年開いているキャラクター大賞も、順位で差をつける人気投票です。41回目の開催にちなんで第41位のキャラクターに贈る賞を設け、大きく順位を伸ばしたキャラクターや、一緒に投票された回数が最も多いキャラクターにも賞を贈っています。上位以外にも、理由のついた見せ場があります。
一方、スーパー戦隊50周年の記念ビジュアル(静止画)は、歴代レッド50人を1枚に集めたと報じられていますが、その記事に、なぜ各戦隊からレッドを選んだかは書かれていません。
| 企画 | 差のつけ方 | 告知や記事に書かれていた理由 |
|---|---|---|
| 牧場物語30周年・ルーンファクトリー20周年 | 人気上位のキャラクターを新たに描き下ろす | 人気投票 |
| サイバーフォーミュラ35周年 | 周年グッズのぬいぐるみにするキャラクターを決める | 利用者の投票 |
| CHUNITHM 10周年 | 声を付けるキャラクターを投票で取り合う形(企画名から読める範囲) | 人気投票(企画名) |
| サンリオキャラクター大賞(周年企画ではない) | 順位で差をつけ、上位以外にも賞を贈る | 人気投票 |
| スーパー戦隊50周年の記念ビジュアル(静止画) | 歴代レッド50人を1枚に集めた | 書かれていない |
| ガンダム50周年に向けたプロローグ映像 | 最後に歴代の主人公がさかのぼって登場する | 公式の告知に書かれていない |
公開された周年企画で、差の理由として書かれていたのは、どれも人気投票でした。差をつけるなら、その理由(投票・役割・貢献度など)を発注の前に決め、告知で説明できるかを確かめておきます。貢献度や役割を差の理由にしたと書いた例は、当社が探した範囲(検索6回、読めた公式の告知や報道7本)にはありませんでした。投票以外の理由を選ぶなら、説明の書き方は手本がないまま自分で組み立てることになります。
参考:『牧場物語』『ルーンファクトリー』キャラクター人気投票開催。Wアニバーサリーで両作品から総勢560名がノミネートし、上位は新規描き下ろしイラスト化 - ファミ通.com / 「2026年サンリオキャラクター大賞」結果発表 - 株式会社サンリオ
まとめ:下手より、1人の扱いが軽く見えるほうが怖い
当社が周年グッズの記念アニメーションで品質の面で最重要にしたのは、特定のキャラクターだけ動きが少ないという差を防ぐことでした。ガンダムの50周年に向けた映像でも、記者が多く見かけた不満は、作画ではなく並びの中の1人の不在に向いていました。下手に見えないかと、1人だけ軽く見えないかは、別の物差しです。当社の案件では、見る人がキャラクターごとに分かれていたので、1人だけ軽く見えないかを先に見ました。
当社はそろえることを選びました。差をつけるなら、公開された例の人気投票のように、その理由をファンに説明できる形にしておきます。どちらを選んでも、発注の前に次の4つを決めておけば、制作会社との最初の打ち合わせに持っていけます。
- 登場するキャラクター・本数・1本の長さと、そこから出る1人あたりの持ち時間の目安
- キャラクターごとの尺・画面の大きさ・アップ・動き・らしさを並べた確認の表
- 発注元で確認する範囲と、制作会社に渡すキャラクター資料の向きと枚数
- そろえるか差をつけるかと、差をつけるならファンへの理由の説明のしかた
周年の動画を作るときに先に確かめるのは、出来栄えではなく、誰か1人だけ扱いが軽く見えていないかです。
この記事を引用・参照するとき
NOKID Lab「周年記念イベント動画の作り方は何が違う?キャラの魅せ方より重要なこと」株式会社NOKID、2026年10月30日公開(2026年11月1日更新) https://nokid.jp/blog/16455/
キャラクターIPの専門メディア NOKID Lab の編集部です。アニメーションとキャラクター制作を手がける株式会社NOKIDの知見をもとに、IPの起用事例やコラボ・ライセンスの実務、業界の動きを解説しています。


