2024.09.06

2024.09.06

【取材】独自のコンセプトを持つコラボIP事業「META TAXI」がどのようにして誕生したのか?

ゲスト同士の対談形式を取り入れ、リアルなタクシー体験とメタバースの融合を象徴するMETA TAXI

「アバターキャラクターを乗せて、リアルなタクシーが東京の夜を走る・・・」今までにはない新しい世界観はどのように構築されていったのか。構想から制作過程、そして今後の展開についてプロデューサーの二人にインタビューをしました。

新しい時代のIP事業を検討している方には必見の記事です。

META TAXI
ゲスト:
株式会社講談社 担当役員直轄
クリエイターズラボ メタバースラボチーム チーム長 佐川俊介氏

大日本印刷株式会社 出版イノベーション事業部 ビジネスクリエイション本部
コンテンツビジネス開発部 ビジネス開発課 中尾沙希氏

META TAXIのプロデューサー。今までにない全く新しい世界観と、様々な二人組の本音トークが人気を博している今注目のコンテンツ。

公式サイト:https://metataxi.jp/
YouTube:https://www.youtube.com/@METATAXI.official
X(旧Twitter):https://x.com/METATAXI_jp
Instagram:instagram.com/metataxi.official
TikTok:tiktok.com/@metataxi.official

インタビュアー:iBerry 
ギタリストとしても活動。 NOKIDでは主に映像・楽曲のプロデュースを担当。

YouTube:https://www.youtube.com/@iBerryGYM1515
X(旧Twitter):https://x.com/iberry_guitar
Instagram:https://www.instagram.com/iberry_guitar/

出典:META TAXI(メタタクシー) ティザームービー

なぜ「タクシー空間」×「架空の世界(メタバース)」になったか?

中尾さん:講談社でメタバースラボが立ち上がった際に、「何もしないのが心地良いバーチャルタクシー」というコンセプトの企画を佐川さんが持っており、共同プロジェクトとしてそれを具体化していきました。YouTubeでやるかどうかは当時決まっていませんでしたが、企画を詰めていく中で今の形になって行きました。

META TAXIの世界観はタクシーに何度も乗って考えた

佐川さん:先ほどお話ししたように、タクシーの異空間や、チルい空間を再現したいという思いがあって、音に関してはタクシーに乗る時に「環境音があってのものだよね」っていうのは感じていました。実際にタクシーに何度も乗って、アングルなども擬態するメタさんと話し合い「チルを感じられるものはこれかな」っていうのを探していきました。

中尾さん:サイバーパンクのような空間ではなく、「著名な人が本当に乗ってきてもおかしくないようなリアルと地続きの空間」というところを意識しました。

佐川さん:META TAXIはリアルとフィクションの間を意識しています。そういう意味ではメタバースという感じではなく、いろんな表現を内包する「メタ空間」を目指して作っています。

参考:「擬態するメタ」インタビュー!実写とアニメーションを融合し未開拓の表現を生む彼らの出会いからこれまで、制作過程に迫った。 - CG WORLD.jp

タクシーでは景色がフロントとサイドガラスから流れていく魅力に気づいた

出典:META TAXI(メタタクシー) ティザームービー

佐川さん:発見は、すごくたくさんありました!自分でカメラ機材を持って、夜に後輩と二人でタクシーで都内一周したこともあるんですけど、後で撮った映像を見て、景色がフロントとサイドガラスから流れていくのがタクシーならではだな・・・と感動したのを覚えています。

中尾さん:サイドガラスから景色が流れていくのが特に良い・・・!!

佐川さん:音の部分で言うと、実際にタクシーに乗って撮影した映像を見直してみると、すれ違う救急車のサイレン音、走行音、シートベルトを外す音などの環境音が心地よかったんです。

中尾さん:実際にタクシーには、擬態するメタさんとも乗ったし、佐川さんとも乗りました。走行中の窓に映る光の加減の変化が「面白いな」と思ったし、タクシーという空間の独特のエモさを再現したいなと思いました。

佐川さん:タクシーは車内が暗い。暗いからこそ外の東京の光が車内に差し込んで映える・・・渋谷周辺だと青白っぽいとか、一方でこのエリアは赤っぽいとか、そういった感じで場所によってミラーボールのように車内の光が変わるのが面白いと感じました。

タクシーに乗って会話を盗み聞くイメージから広がった

中尾さん:タクシーだからいろんな人が乗ってくる形にしたいと思っていました。

制作に入る前にチームでプロトタイプの映像を作っていたんです。それが佐川さんと後輩の二人が実際にタクシーに乗って話すという映像だったのですが、仕事に向き合う上司と部下のパーソナルな話をされていてすごく魅力的でした。

そこから、仕事終わりの二人によるリアルな会話を再現したいなと思ってアイデアを膨らませていきました。仕事終わりの二人って色々な組み合わせがあるよな・・・と。私も佐川さんも音楽が好きなので「アーティストの方々が武道館ライブ終わりにタクシーに乗ってきてその会話を盗み聞きしている」ということも出来そうだなと思いました。

擬態するメタさんを見つけてMETA TAXIの依頼を即決した

佐川さん:本当に運命的に出会いました。自分たち二人はクリエイターではないので、「クリエイティブを具現化できる人がいないといけない」という点で悩んでいたんです。そんな時に偶然、YouTubeで擬態するメタさんの『企劇』という作品を見て、即決しました。擬態するメタさんを見つけた時は本当に二人でピッタリ意見が合いましたね。

「お任せで」誰が見てもかっこいいものを作ってもらえた

出典:META TAXI(メタタクシー) ティザームービー - YouTube

中尾さん:ティザーは結構お任せでしたが、本当に誰が見てもかっこいいものを作ってくれました。そして、CG、アニメ、実写の組み合わせが絶妙で、構図もすごくかっこいい・・・!!

本編は、ドライバーがハンドルを切るところや、チラチラバックミラーを見る仕草などアニメーションの細部をしまぐちニケさんに再現していただきました。CG、アニメと実写とを組み合わせると、ガチャガチャしがちになってしまいそうなものを、Biviさんがバランス良くまとめてくれました。ご本人は「映像がイラスト的に収まるように意識した」とおっしゃっていましたが、本当に1枚の絵に収まるような見飽きない映像に仕上げてくれました。

また、ドライバーのキャラクターデザインも擬態するメタさんにお任せしました。ドライバーの性格や服装などの設定も、しまぐちニケさんにお伝えして、デザインに落とし込んでもらいました。

佐川さん:ドライバーの切れ長の目とかホクロなどは、しまぐちニケさんの良さが出ているポイントです。映像内でドライバーの顔が映る部分が、フロントガラスに映る目くらいなので「目にインパクトを持たせたい」と、細部まで拘って描いていただきました。

中尾さん:ドライバーの裏設定として口数は少ないけど丁寧な仕事をするという人物像がありました。なので、ドライバーが手袋をしているのも「丁寧な仕事をする」という人物像にピッタリあっています。

佐川さん:アバターに関しては擬態するメタさんチームにすべてお願いしました。作風が偏らないキャラクターデザインにしたいとお願いして、カラーバリエーション含めて100体以上も書き分けてもらいました。

企画には制作の1.5倍も時間を費やして解像度を上げた

佐川さん:擬態するメタさんにお声掛けしたのが2022年12月です。そこから2023年の年明けすぐに始動して、4ヶ月くらいは擬態するメタさんにも一緒に企画に入ってもらって、GW明けに制作が始まりました。擬態するメタさんの制作期間はおおよそ3ヶ月くらいだったと記憶しています。

企画の方が制作より長いです!大体1.5倍くらいかな・・・

企画に関しては、特に擦り合わせの部分に時間がかかって、META TAXIというコンテンツへの解像度を上げていく時間でした。

中尾さん:企画ではブレストを繰り返して、詰めれば詰めるほど、実際のYouTubeの運用を意識した時にどういう構成が最適か考えていきました。

佐川さん:コンテンツのクオリティと同時に、YouTubeの運用という部分も意識して、2つが成立するように考えました。

ユーザー目線で考えた時にYouTubeがベストなプラットフォームだった

佐川さん:プラットフォーム選定は常にユーザーにとって良いものという視点で考えています。動画ということを考えた時に、ユーザー視点だったらYouTubeが最も接しやすいプラットフォームだと思っています。

バーチャルタクシーの運行を再現することはチャレンジだった

中尾さん:順を追って話すと「YouTubeでチルっぽいのを毎週配信しましょう」まではそんなに時間かかっていなくて、そこから「会話的な盗み聞きのコンテンツにしましょう」に辿り着くまでもそんなにかかりませんでした。大枠のコンセプトは既に決まっていて、「バーチャルタクシーの運行っていうものをどうやって再現するんだ」という具体化するところに時間がかかりました。

佐川さん:「運営ができるか、実現できるのかどうか・・・」という部分に時間がかかりました。

中尾さん:YouTubeを運営できる状態に持っていくのと、映像制作を並行して考える必要がありました。

佐川さん:参考にできるコンテンツがないので、運営可能性と、ユーザーにとって面白いコンテンツなのか・・・という部分で悩みました。

スカート澤部渡さん× 街裏ぴんくさんの回は現場が大爆笑でした

佐川さん:楽しかった収録は本当にたくさんあります!!

中尾さん:特に、スカート澤部渡さん× 街裏ぴんくさんの回とかは初期ということで思い入れも深く、映像が出来上がっていない中で収録したのですが現場が大爆笑でした。全て嘘の話をする回を即興で作ってくださって、スタッフ一同大盛り上がりしました。

大爆笑でいうと、もののけさん× 深見シンジさんの回も、クリエイターや作家の裏話が聞けるかなと思いきやずっとボケ合っていて収録しながら笑い疲れた記憶があります。

出典:META TAXI #1 | MOROHA アフロ × サツマカワRPG、スカート澤部渡 × 街裏ぴんく

出典:META TAXI #19 | もののけ × 深見シンジ、Skaai × 平野啓一郎、東問 × 東言

META TAXIのゲスト同士が楽しく会話できるかを考えて決めている

出典:#36 | 大童澄瞳 × 男性ブランコ 平井、鉄塔 × 須貝駿貴、黒田崇矢 × マフィア梶田 / META TAXI

中尾さん:META TAXIを知らない人がわざわざ見に来る理由を作りたいと思いました。そうすると「誰が会話するのか?」という企画性が大事だと思って、ファンの方目線で、「この二人を並べた時に面白くなりそう」という組み合わせを考えています。あとはゲストに来られるお二人自身が楽しく会話できそうだな・・・というのも考えています。

キャスティングは自然と異業種のコラボへ

佐川さん:異業種というテーマは当初は意識していなかったです。最初は、「推しとファンの二人」とか「⚫️⚫︎な二人」というのテーマを100個作りました。その後、「⚫️⚫︎な二人」というテーマでキャスティングしていった結果、自然と異業種になるケースが増えていきました。

中尾さん:タクシーというコンセプトを最上位に置いているからです。タクシーなので色々な人が乗降しているイメージがあって、複数のペアが1つの動画に登場する形になりました。

リアルな人物とキャラクターの境目を作らない

出典:META TAXI #4 | バーバパパ × 五分目悟、MOROHA アフロ × サツマカワRPG、スカート澤部渡 × 街裏ぴんく

佐川さん:そうですね。最初期から、フィクションの世界のもの同士、例えば、アニメキャラクター同士が会話するといったことも実現可能な形で作っています。META TAXIを作るにあたって、リアルな有名人でも仮想世界のキャラクターでも交流をとれる空間であることをベースに考えています。「メタ」への意味も込めて、リアルとかキャラクターとかそういった境目がないコンテンツを意識しています。

今後のゲストはクリエイションに関わる人を呼びたい

佐川さん:例えば、声優さんと演じているアニメキャラクターが話すなど・・・META TAXIだからこそできることをやりたいと思っています。

中尾さん:積極的にクリエイターさんもお呼びしたいと思っています。クリエイションに関わる人を呼びたい!イラストレーターさん、漫画家さん、作家さん・・・そして、アーティストさんや芸人さんもクリエイションに関わる人だと思っているので本当に色々な人をお呼びしたいです。

イベントやグッズも企画していろんなクリエイターを巻き込みたい

佐川さん:今はYouTubeの色が強いと思いますが、さらに幅広くコンテンツを広げていきたいです。直近の話だと、リアルトーク企画的なものをやる予定です。

中尾さん:アーティストさんとのコラボ企画や、アパレルグッズもやります!YouTubeにとどまらない多数の接点を増やしていきたいです。

佐川さん:また実はアバターにはそれぞれ設定があります。アバターキャラクターたちの背景を深堀りしていくコンテンツもSNS上で始まりました。今後は「タクシーの会話を盗み聞き」だけではなく、アバターやドライバーなどMETA TAXIのキャラクターを活かした展開を広げていく予定です!

iBerry

ギタリストとしても活動。 NOKIDでは主に映像・楽曲のプロデュースを担当。【主な仕事経歴】TM NETWORK「Whatever Comes」REC参加、COUNTDOWN JAPAN 23/24 設置の企業ブースにて演奏、Positive Grid Spark セミナー出演‥その他多数

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